
朝晩の冷え込みが本格的になってくると、「手足が冷たい」「肌が乾く」「朝起きられない」「風邪をひきやすい」——冬ならではのお悩みが一気に増えてきます。
このページは、漢方の視点から見た「冬の過ごし方の全体像」をまとめた入口ページです。冬の養生の基本の考え方と、体を温める食べ物・冷やす食べ物の早見表、そしてお悩み別の詳しい記事へのご案内をひとつにまとめました。
冬は「蓄える」季節。頑張る季節ではありません
約2000年前の漢方の古典『黄帝内経(こうていだいけい)』では、冬は「閉蔵(へいぞう)」の季節とされています。閉じて、蔵(しま)う。つまり、エネルギーを外に発散せず、体の中にしっかりと蓄えるのが冬の正しい過ごし方だという意味です。
また、冬は五臓の中の「腎(じん)」の季節です。腎は生命力を蓄え、体を温めるボイラーのような役割を持つ臓器で、寒さに最も傷めつけられやすい場所でもあります。冬の養生はすべて、この「腎を守り、蓄える」ことにつながっています。
具体的にやることは、次の3本柱です。
- ① 温める: 体を温める食べ物を選び、冷やす食べ物を控える(下の早見表へ)。
- ② 守る: 「首・手首・足首」の3つの首を冷気から守り、シャワーではなく湯船に10〜15分浸かる。
- ③ 蓄える: 冬だけは「早寝・遅起き」が正解。夜長に合わせてしっかり眠り、春に向けた体力の貯金をする。
「守る・蓄える」を今日から始める具体策
「守る」の基本は、「首・手首・足首」の3つの首です。ここは太い血管が皮膚のすぐ近くを通っているため、外気に冷やされると、冷えた血液がそのまま全身を巡ってしまいます。マフラー・手袋・レッグウォーマーで3点を守るだけで、同じ気温でも体感はまったく変わります。特に優先すべきは「足首」。デスクワークの方は、ひざ掛けを腰からぐるりと巻いて、お尻と太ももまで一緒に守りましょう。
入浴は、シャワーで済ませず38〜40度のぬるめの湯船に10〜15分。体の芯まで温まって、軽く汗ばむくらいが目安です。寝る90分ほど前に入ると、湯上がりに体温が下がるタイミングで自然な眠気がやってきて、眠りの質も上がります。湯冷めする前に布団に入りましょう。
そして「蓄える」の柱は睡眠です。漢方の世界では昔から、冬だけは「早寝・遅起き」でかまわないとされてきました。夜長に合わせていつもより30分早く布団に入り、朝は焦らずに起きる。それだけで、春に向けた体力の貯金が着実に貯まっていきます。なぜ冬だけそれで良いのか——その理由となる古典の話は、下でご案内する「冬至」の記事で詳しく紹介しています。
体を温める食べ物・冷やす食べ物の早見表
冬の食養生の基本は、とてもシンプルです。「温める側」を増やして、「冷やす側」を減らす。まずはこの早見表から始めてみてください。
| 分類 | 〇 体を温める食べ物 | × 体を冷やす食べ物 |
| 定番 | 発酵食品:味噌、ヨーグルト、紅茶、お酢 (発酵の力で体を温める。ただし醤油は例外で体を冷やすので注意) | 苦み・アクのあるもの:ゴーヤ、なす、ごぼう、ビール、コーヒー (苦味には熱を冷ます性質がある。夏には良いが冬は控えめに) |
| 意外なもの | 貝類、海老、イカ/加熱したしょうが・山椒などの香辛料 (香辛料は刺激が強く粘膜を刺激するため、炎症があるときは控える) | 生野菜、果物、蟹・ナマコなど背骨のない海産物 (「潤」の性質を持つものは体を冷やす。「水は寒なり」) |
| 飲み物の工夫 | コーヒーを紅茶に替える (紅茶は発酵食品。これだけでも体の温まり方が変わる) | 氷入りの飲み物、ビール (内臓を直接冷やし、温める力を内側から削ってしまう) |
一番のおすすめは「毎日の温かい味噌汁」です。味噌は体を温める発酵食品の代表で、ビタミンB1も豊富なので、眼の疲れや筋肉疲労のケアにもなります。また、お酢は体を温めますがミネラルを排出しやすいため、「もずく酢」「わかめ酢」など海藻類との組み合わせでいただくと、ミネラル補給もできて理にかなっています。
お悩み別・冬の養生の詳しい記事
ここから先は、お悩みに合わせて詳しい記事をご覧ください。それぞれ薬剤師が具体的な対策まで解説しています。
冬の節気カレンダー
昔の暦では、冬は立冬から立春の前日まで。節気(せっき:季節の目印)ごとに、体のケアのテーマも移り変わっていきます。
| 節気 | 時期 | 体のテーマ |
| 立冬(りっとう) | 11月7日ごろ | 冬支度の始まり。3つの首を守り始める |
| 小雪(しょうせつ) | 11月22日ごろ | 本格的な寒さの前に、腎を養う食事へ切り替え |
| 大雪(たいせつ) | 12月7日ごろ | 暖房開始=乾燥本番。白い食材と加湿 |
| 冬至(とうじ) | 12月22日ごろ | 陰が極まる転換点。柚子湯とカボチャ |
| 小寒(しょうかん) | 1月5日ごろ | 寒の入り。年末年始で疲れた胃腸を七草がゆで休める |
| 大寒(だいかん) | 1月20日ごろ | 1年で最も寒い時期。心のケアと春への備え |
冬の養生に関するよくある質問(FAQ)
冬の養生は、いつから始めれば良いですか?
A. 暦の上の冬の始まり「立冬(11月7日ごろ)」からがおすすめです。寒くなりきってからでは、少し遅いのです。
冷えや乾燥の対策は、症状がまだ軽いうちに始めるほうが、ずっと少ない努力で効果が出ます。貯金と同じで、残高があるうちに蓄え始めるのが一番効率が良いからです。11月のうちに食事と入浴の習慣を切り替えておくと、真冬の体調がまるで違ってきます。
一番手軽に始められる「温める食養生」は何ですか?
A. 「毎日の味噌汁」と「コーヒーを紅茶に替えること」。この2つです。
どちらも発酵食品の力で体を温めてくれるうえ、特別な材料も手間もいりません。紅茶が体を温めるというのは意外に思われるかもしれませんが、茶葉を発酵させて作る紅茶は、冷やす性質のコーヒーや緑茶とは反対の、温める性質を持つ飲み物です。寒さが気になる方は、まずこの置き換えから試してみてください。
食べ物も入浴も気を付けているのに、何をしても冷えます。
A. 「温める力そのもの」が弱っているサインかもしれません。体質からのケアの出番です。
外から温め、温める食材を摂っても追いつかない場合、体の中で熱を作り出す力(漢方でいう「腎の陽気」など)そのものが不足している可能性があります。この場合は、お一人おひとりの冷えのタイプを見極めた体質からの立て直しが近道です。上でご紹介した「内臓型冷え性チェックリスト」の記事で自分のタイプを確かめたうえで、ぜひ一度ご相談ください。
まとめ:冬を上手に「蓄えた人」が、春を元気に迎えられる
温める食べ物を選び、3つの首と湯船で熱を守り、夜長に合わせてしっかり眠って蓄える。冬の養生はこの3本柱に尽きます。食べ物を少し気を付けるだけでも、冷えの感じ方は確実に変わってきますので、ぜひ今日の食卓から実践してみてください。
「毎年、冬が本当につらい」「自分の冷えのタイプが分からない」という方は、ぜひ太陽堂までお気軽にご相談ください。お一人おひとりの体質に合わせた、無理のない冬の過ごし方をご提案いたします。
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記事作成者 薬剤師 前原 信太郎

実績:伝統漢方研究会 2017年・2021年・2025年 学術発表
沖縄で開業医をしていた祖父と薬の話しをしていた事から薬剤師の道を目指すように。
調剤薬局の薬剤師として6年間勤務。
漢方の勉強をして、より患者さんの治療の選択肢の幅を広げたいという思いから「漢方の道」に。
調剤薬局も経験している為、西洋学の知識も勉強を積み今に至ります。
記事作成者 薬剤師 椙田 彩純

担当疾患;循環器、身体の痛み
臨床検査技師の両親の影響で、幼い頃から医療に関心を持つ。
大学卒業後、病院薬剤師として勤務。
対症療法が中心の現場で、繰り返す入退院や長期投薬を目の当たりにし、「もっと力になれる方法はないか」と模索する中で漢方と出会う。
現在は漢方の持つ幅広さと可能性に魅了され、一人ひとりの体質に寄り添った根本改善を追求している。











