
「ゾクゾクして、首の後ろがこわばる。葛根湯は今飲むべき?」
「喉が痛いときにも効く?」「インフルエンザっぽいときは?」
寒暖差が激しい季節や、空気が乾燥する時期。こうした場面で真っ先に「葛根湯(かっこんとう)」を思い浮かべる方は多いでしょう。
葛根湯は非常に優れた処方ですが、もっとも力を発揮するのは「不調を感じた最初の1〜2日(引き始め)」に限られます。時間が経って症状が変化しているのに、そのまま葛根湯を飲み続けるのは、かえって体に負担をかけてしまうこともあるのです。
このページでは、店頭でよく聞かれる4つ——「いつ飲む?」「喉の痛みには?」「インフルエンザには?」「何日まで飲む?」——に、新宿の漢方薬局・太陽堂の薬剤師が答えます。あわせて、合わない体質の見分け方と、時期が過ぎたあとの切り替え先もご説明します。
葛根湯はいつ飲む?——「ゾクゾク」が来た最初の1〜2日、汗が出る前に
答えは、「寒気を感じた、その日のうちに」です。葛根湯が合うのは、ゾクゾクする寒気、首の後ろから肩にかけてのこわばり、頭の重さがあって、まだ汗が出ていない段階。この段階は長くても1〜2日しか続きません。「風邪かな?」と思った時点が、いちばんの出番です。
1日の中での飲むタイミングは、食前か食間(空腹時)に、温かいお湯で。寒気を感じたら時間にこだわらず、その場で1回飲んでください。あとは製品の説明書か、店頭でお伝えした飲み方に従います。飲んだら温かくして布団に入り、体を保温して休むことが大切です。じんわり汗が出て寒気が抜けたら、葛根湯の役目はそこで終わりです。
「葛根湯 3日目」と調べる方も多いのですが、3日目に入ってもまだ寒気が抜けない、あるいは熱っぽさや喉の違和感のほうが主役になっているなら、葛根湯の時期は過ぎています。下の「何日まで飲む?」の表で、次の段階の処方に切り替えてください。
寒気はあるのに熱が出ない、だるさだけが続く、という方は、風邪の引き始めとは限りません。寒気がするのに熱はない・だるいときの見分け方をご覧ください。
よく聞かれる順に、答えを早見表にまとめました。くわしい理由は、それぞれの節でご説明します。
| ご質問 | 答え |
| いつ飲む? | 寒気と首・肩のこわばりが出た引き始めの1〜2日。まだ汗が出ていない段階が目安です。 |
| 飲むタイミング | 食前か食間(空腹時)に温かいお湯で。寒気を感じたらその場で1回。飲んだら温かくして休みます。 |
| 喉の痛みには? | 寒気と一緒の軽いイガイガには合います。赤く腫れて強く痛む喉には向かず、桔梗湯などに切り替えます。 |
| インフルエンザには? | ごく初期の悪寒には使えますが、第一候補は麻黄湯。高熱・関節痛で始まったら早めに受診を。予防には使いません。 |
| 何日まで飲む? | 2〜3日で寒気が取れたらやめます。症状が変わったら下の表の処方へ。長く飲み続ける薬ではありません。 |
| 合わないのは? | すでに汗が出ている方、体力がなく汗をかきやすい方、胃腸が弱い方。桂枝湯など穏やかな処方が安心です。 |
喉の痛みには効く?——「イガイガ」には合う、「赤く腫れてズキズキ」には向かない
店頭での答えは、「喉の痛みの出方で分かれます」です。
寒気と一緒に出てきた軽いイガイガ、乾いた感じなら、引き始めの症状の一部として葛根湯が合います。一方、喉が赤く腫れて飲み込むと強く痛む、熱感が強い、痛みが主役という状態は、喉で炎症が起きています。体を温めて発汗させる葛根湯は向きません。喉の炎症を冷ます「桔梗湯(ききょうとう)」などに切り替えます。
鼻の奥・喉の奥がヒリヒリして長引く、痰が喉に落ちてくる、というタイプは、風邪ではなく慢性上咽頭炎や後鼻漏のことがあります。1〜2週間たっても喉の違和感だけが続くなら、こちらのページもご覧ください。
【薬剤師コラム①】西洋薬(ロキソニン等)と漢方の役割分担
担当薬剤師:椙田
熱や喉の痛みが辛い時、病院では『PL配合顆粒』などの総合感冒薬や、炎症を抑える『ロキソニン(ロキソプロフェン)』、『カロナール』などがよく処方されます。
これら西洋薬の強みは、今起きている『辛い症状(熱・痛み)』をピンポイントで素早く和らげることです。
一方で漢方薬は、『体を温める』『巡りを整える』ことで、体自身のコンディションをサポートするのが得意です。『とにかく今の熱を下げたい』時は西洋薬に頼り、『長引かせないための体づくりをしたい』時は漢方を取り入れるなど、目的によって使い分けるのが賢いアプローチですよ。
インフルエンザには効く?——ごく初期の悪寒には使えるが、第一候補は「麻黄湯」
「インフルエンザに葛根湯は効きますか」も、冬によく聞かれます。答えは、「ごく初期の悪寒には使えますが、第一候補は麻黄湯(まおうとう)」です。
急な高熱、強い寒気、関節や腰の痛みで始まるインフルエンザの初期には、葛根湯より発汗させる力が強い「麻黄湯」が選ばれることが多いです。葛根湯が向くのは、寒気はあるが熱はまだ高くなく、首筋のこわばりが目立つ段階。どちらも「汗が出る前」に使うのが前提で、汗が出始めたら切り替えます。
また、予防のために飲み続ける薬ではありません。インフルエンザが疑われるときは早めに受診してください。病院の薬(抗インフルエンザ薬や解熱剤)との併用は、医師・薬剤師に確認を。
麻黄湯と葛根湯の違いと使い分けは、こちらの記事で表にまとめています。
何日まで飲む?——進行ステージ別・漢方アプローチの選び方
目安は2〜3日です。寒気が抜けて汗が出たら、葛根湯はそこでやめます。数回飲んでも寒気がまったく変わらないときも、同じものを続けず見直してください。
東洋医学では、風邪の状態を「日数」と「症状」で細かく分け、その時々の体に一番寄り添うアプローチを選んでいきます。風邪は時間の経過とともに、体の「どこに」ダメージがあるかが変化するからです。それぞれの時期に合わせた代表的なサポート方法をまとめました。
| 風邪の進行ステージ | 体の主なサイン | 代表的な漢方とアプローチ |
| ① 引き始め(1〜2日目) | ゾクゾクする寒気、首筋・肩のこわばり | 葛根湯・麻黄湯・桂枝湯 体を温めて発汗を促し、初期の不調をスッキリとさせるサポートをします。 |
| ② 中期(3〜5日目) | 熱っぽさが長引く、喉の違和感、口の苦み | 小柴胡湯・柴胡桂枝湯などの「柴胡剤」 不調が体の中に入り込んだ状態。熱感と寒気が入り交じる不快感を和らげます。 |
| ③ 後期(1週間〜) | ずっとスッキリしない、微熱、重だるさ | 補中益気湯 体力が消耗した状態。「人参」などの生薬で、胃腸から元気を補うケアをします。 |
| (番外編)咳が残る時 | コンコンと乾いた咳、痰が絡む | 麦門冬湯・半夏厚朴湯 呼吸器に潤いを与えたり、喉のつかえ感を和らげたりして、穏やかな呼吸を助けます。 |
熱が下がったあとも、咳とだるさだけが2週間以上残るときは、回復しきっていない時期の整え方があります。風邪・インフルエンザのあとに咳とだるさが残るときの考え方をご覧ください。
合う人・合わない人——「もう汗が出ていますか?」「胃は丈夫ですか?」
店頭で聞き分けに使っている質問は2つあります。「もう汗が出ていますか?」「普段、胃は丈夫ですか?」
葛根湯は体をしっかり温めて発汗させる力が強いため、もともと体力が充実している(実証の)方向けの漢方薬です。「引き始めなら全員に葛根湯が合う」というわけではありません。
- 普段から体力がなく、すぐに汗をかいてしまう方
- 胃腸が非常にデリケートな方
- すでに汗が出ている段階の方
このような方が葛根湯を飲むと、汗をかきすぎて逆にグッタリしてしまったり、胃もたれを感じたりすることがあります。体質に自信がない方は、よりマイルドに体を温める「桂枝湯(けいしとう)」などを選ぶのが安心です。
葛根湯には麻黄(まおう)という生薬が入っています。体質によって動悸・不眠・血圧の上昇が出ることがあるため、高血圧・心臓病・腎臓病・甲状腺の病気・排尿のトラブルがある方、妊娠中・授乳中の方、高齢の方は、飲む前に医師・薬剤師に伝えてください。長く飲み続ける薬ではありません。
【薬剤師コラム②】あなたに合わせるオーダーメイドの強み
担当薬剤師:林
市販の漢方薬を飲んでもスッキリしない…というご相談をよく受けます。太陽堂では、お一人おひとりの体質に合わせて、基本の漢方薬に『一味・二味』生薬を加えたり微調整を行っています。
例えば、葛根湯が合う時期でも『喉の赤みが強い』なら熱を冷ます生薬を少し足す、といった工夫ができるのがオーダーメイドの良さです。自分に合ったケアを知りたい方は、ぜひご相談くださいね。
葛根湯(かっこんとう)とは?——「温めて、首の後ろのこわばりをほどく」7つの生薬
葛根湯は、漢方の古典『傷寒論(しょうかんろん)』に登場する、歴史のある処方です。一言でいうと、「体を温めて汗をかかせ、首から背中のこわばりをほどくお薬」です。
- 葛根(カッコン):首の後ろから肩にかけてのこわばりをほどく。
- 麻黄(マオウ)、桂皮(ケイヒ):体を温め、発汗させて邪気を追い出す。
- 芍薬(シャクヤク):筋肉の緊張をゆるめ、発汗が過ぎないように抑える。
- 生姜(ショウキョウ)、大棗(タイソウ):胃腸を守り、お腹から温める。
- 甘草(カンゾウ):全体の調和。
風邪の引き始めだけでなく、首筋から肩のこりや、寒さで固まった肩の痛みにも使われるのは、この「ほどく」働きがあるからです。
【比較表】寒気の出方で選ぶ、4つの漢方薬
「風邪の引き始めなら、とりあえず葛根湯」と思っていませんか?
寒気の強さ、汗の有無、体力で、合う処方は変わります。以下の表でチェックしてみましょう。
| 漢方薬 | 向く場面 | 見分けるサイン | 向いているタイプ |
| 葛根湯 | 引き始めの寒気+首・肩のこわばり | 汗が出ていない、頭が重い | 体力のある方 |
| 麻黄湯 | 急な高熱・強い寒気・関節痛(インフルエンザの初期) | 汗が出ていない、体の節々が痛い | 体力のある方 |
| 桂枝湯 | 引き始めだが、汗がじわっと出る | 寒気は軽い、疲れやすい | 体力のない方・胃腸が弱い方・高齢の方 |
| 葛根湯加川芎辛夷 | 鼻づまり・粘る鼻水が主 | 頭が重い、鼻が詰まる | 鼻かぜ・副鼻腔炎寄りの方 |
葛根湯に関するFAQ(よくある質問)
葛根湯はいつ飲むのが一番良いですか?
寒気を感じた当日、汗が出る前です。食前または食間の「空腹時」に、温かいお湯に溶かして飲むのがおすすめです。
特に引き始めのケアは、温かくして飲んだ後にしっかりと布団に入り、体を保温して休むことが大切です。じんわり汗が出て寒気が抜けたら、そこで終わりにします。
喉の痛みに葛根湯は効きますか?
寒気と一緒に出た軽いイガイガには合いますが、赤く腫れて強く痛む喉には向きません。
喉で炎症が起きている状態に、体を温めて発汗させる葛根湯を続けると、かえってつらくなることがあります。痛みが主役なら、桔梗湯などの炎症を冷ます処方に切り替えます。2週間以上続く喉の違和感は、上咽頭炎や後鼻漏のこともあるので、別のページでご確認ください。
インフルエンザのときに葛根湯を飲んでもいいですか?
ごく初期の悪寒には使えますが、第一候補は麻黄湯です。急な高熱・関節痛で始まったら、早めに受診してください。
予防のために飲み続ける薬ではありません。抗インフルエンザ薬や解熱剤との併用は、医師・薬剤師に確認してください。
病院の風邪薬やロキソニンと一緒に飲んでも大丈夫ですか?
基本的には併用できますが、市販の総合感冒薬(風邪薬)の中には、すでに漢方成分や類似成分が含まれているものがあり、成分が重複してしまう可能性があります。
安全にお飲みいただくため、お薬手帳をご用意の上、事前に薬剤師へご相談ください。
何日飲み続けてもいいですか?3日目でも寒気が残っています。
目安は2〜3日です。3日目に寒気が残るなら、葛根湯の時期は過ぎていると考えます。
熱っぽさや口の苦みが出てきたら柴胡剤、だるさが主なら補中益気湯、咳が残れば麦門冬湯など、段階に合わせて切り替えます(上の「進行ステージ別」の表をご覧ください)。数日たっても良くならない、高熱が続く、息苦しいときは、漢方で様子を見ずに受診してください。
妊娠中・授乳中でも飲めますか?
自己判断では飲まず、医師・薬剤師にご相談ください。
葛根湯には麻黄が含まれ、体を強く温めて発汗させる作用があります。妊娠中・授乳中の方、持病で薬を飲んでいる方は、体の状態を確認してからお渡ししています。
風邪の後にずっとだるさが抜けないのですが……
不調と戦った後は、体のエネルギー(気)がすっかり消耗しています。葛根湯の出番ではなく、「補う」漢方の出番です。
そんな時は、無理に動かず「補中益気湯(ほちゅうえっきとう)」などの気を補う漢方で、胃腸の働きを助け、ゆっくりと活力を取り戻すケアがおすすめです。咳とだるさが2週間以上残るときの考え方は、こちらの記事にまとめています。
まとめ:葛根湯は「最初の1〜2日・汗が出る前」の漢方薬
「風邪の不調には葛根湯」というイメージがありますが、それはあくまで「ひき始めの元気な状態」に限ったお話です。
- 飲むのは、寒気を感じた当日・汗が出る前
- 食前・食間に温かいお湯で。飲んだら温かくして休む
- 赤く腫れて痛む喉、インフルエンザの高熱には別の処方
- 2〜3日で見直す。長く飲み続けない
長引く不調に対して同じケアを続けるのは、体にとって負担になることもあります。今のあなたの状態がどのステージにあるのかを見極め、適切な漢方を選ぶことが、健やかなコンディションを保つ近道です。
「いつもの不調がなかなかスッキリしない」「自分に合う漢方を知りたい」という方は、ぜひ太陽堂にご相談ください。東洋医学の知恵を用いて、あなたが本来持っている健やかなリズムを取り戻すお手伝いをさせていただきます。
喉・風邪のあとの不調のご相談も多数いただいております。
関連する記事
風邪のあとに残る不調や、年に何度も風邪をひく体質については、こちらの記事もご参照ください。
太陽堂の特徴
”当薬局のHPをご覧いただき、ありがとうございます。
私たち太陽堂は「一人でも多くの方の笑顔を見る為に」という思いのもと開局しました。
漢方薬とお客様の出会いがお悩み、体質改善の一助になれれば幸いです。”
特徴その1.
当薬局では、お客様「ひとりひとりに合わせた漢方薬」をその場で調合いたします。
そのため初めてのご相談では、「約1時間~1時間半」ほど相談時間をいただいております。
(遠方のお客様や、お忙しいお客様へは配送の受付もしております。詳しくはお問合せください)
特徴その2.
お作りする漢方薬は、国内外から厳選した生薬の力を、余すことなくお客様に届けるため
「煎じ薬」をお勧めしております。
特徴その3.
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お客様の健康を第一に考え、漢方の勉強会なども積極的に開催しております。
太陽堂がはじめての方へ
ご相談を考え始めた方は、まずこちらをどうぞ。
記事作成者 薬剤師 林 泰太郎

実績:伝統漢方研究会 2015~2017年・2019年・2020年・2022年・2025年 学術発表
調剤薬局で3年間勤め、西洋の薬だけでは治療が難しい病気の壁に直面。
・「治療の難しい病気をなんとか治したい。」
・「ひとりでも多くの患者さんを笑顔にしたい。」
という想いから漢方の道へ。
漢方薬局で3年間修業をして、2015年 『漢方薬局 太陽堂』を立ち上げ。
開局10年を迎えた今も1ヶ月の平均来局数は900名を超え、お客様にご愛顧いただいている太陽堂の漢方薬剤師です。
記事作成者 薬剤師 椙田 彩純

担当疾患;循環器、身体の痛み
臨床検査技師の両親の影響で、幼い頃から医療に関心を持つ。
大学卒業後、病院薬剤師として勤務。
対症療法が中心の現場で、繰り返す入退院や長期投薬を目の当たりにし、「もっと力になれる方法はないか」と模索する中で漢方と出会う。
現在は漢方の持つ幅広さと可能性に魅了され、一人ひとりの体質に寄り添った根本改善を追求している。














