
近年、日本の夏は「命に関わる暑さ」と言われるほど過酷になっています。山形県で過去最高の40.8度を記録(2017年)するなど、もはや根性論で乗り切れる暑さではありません。
この時期に急増するのが、「夏バテ」や「熱中症」のご相談です。実は、太陽堂の薬剤師も、あまりの暑さに頭がクラクラして熱中症になりかけたことがあります。専門家であっても、近年の過酷な暑さは油断できません。
今回は、夏を元気に乗り切るための「夏の養生法」と、体調管理に役立つ漢方の考え方を、西洋医学の知識も交えて詳しく解説します。
夏バテの主なサインとは?単なる疲れとの違い
夏バテの症状は、単なる「だるさ」だけではありません。以下のサインに心当たりはありませんか?
- 全身のだるさと疲労感: 朝から体が鉛のように重い。
- 食欲不振: そうめんやアイスなど、冷たいものしか喉を通らない。
- お腹のトラブル: 冷えによる下痢や軟便が続く。
- その他の不調: めまい、立ちくらみ、むくみ、微熱、夜の寝苦しさ。
これらは、暑さによって自律神経が乱れたり、冷たいものの摂りすぎで胃腸機能が低下したりすることで起こります。
【コラム】薬剤師 椙田の視点「熱中症と夏バテ、西洋医学的な対策」
病院や薬局では、夏になると『だるさ』と一緒に『頭痛』を訴える方が増えます。
ここで注意したいのが、熱中症と夏バテの境界線です。西洋医学的に見ると、熱中症は『体温調節機能の破綻』であり、一刻を争う場合があります。一方、夏バテは『慢性的な自律神経の乱れと栄養不足』です。
頭痛があるからとロキソニン(ロキソプロフェン)などの鎮痛剤で一時的にしのぐ方も多いですが、もしそれが脱水や自律神経の乱れが原因であれば、薬で痛みだけを止めても根本的な解決になりません。
また、大量に汗をかくと水分と一緒にナトリウムやカリウムなどのミネラルが失われます。これが不足すると足が攣ったり、激しい倦怠感に繋がります。室内でも『水』だけでなく、状況に応じて経口補水液(OS-1など)を上手に活用し、電解質バランスを保つことが大切です。
夏バテの3大原因と「夏の養生法」
漢方の視点では、夏バテの原因を「暑さ」と「湿気」によるエネルギーの消耗と考えます。
① 発汗による「気(エネルギー)」の漏れ
汗をかくことは体温調節に不可欠ですが、漢方では汗と一緒にエネルギーである「気」も外へ漏れてしまうと考えます。
【養生法】
- 運動は涼しい時間に: 日中の無理な活動は控えましょう。
- お風呂の入り方: 風邪の時と同じく、過度な発汗は体力を奪います。長湯は避け、ぬるめのお湯でリラックスする程度に。
② 冷たいものの摂りすぎによる「脾(胃腸)」の弱り
冷たい飲み物は一時的に火照りを鎮めますが、内臓を直接冷やして働きを鈍らせます。
【養生法】
- 温める食材を添える: 紅茶に生姜を入れる、お味噌汁を飲むなど。
- 炭水化物の選び方: 胃腸が弱っている時は、うどんや白米など消化の良いものを。脂っこいパスタやピザは「肝」や「脾」に負担をかけるため、疲れている時は控えめにしましょう。
③ 冷房による「冷え」と自律神経の乱れ
外気との激しい温度差は、自律神経を疲弊させます。
【養生法】
- タイマー機能を活用し、直接風に当たらない工夫をしましょう。
夏の体調管理をサポートする4つの漢方薬
夏バテの状態を、漢方では「脾虚(ひきょ:胃腸の弱り)」と捉えます。夏の環境に合わせて、以下の漢方がよく用いられます。
| 漢方薬名 | 特徴と適したタイプ |
| ① 清暑益気湯 (せいしょえっきとう) | 【夏の主役】 名前に「暑」とある通り、夏の暑さによる激しい消耗、食欲不振、大量の汗をかく方に。水分とエネルギーを同時に補うイメージです。 |
| ② 補中益気湯 (ほちゅうえっきとう) | 【基本の疲れに】 夏に限らず、胃腸が弱く疲れやすい方のベースアップに。 |
| ③ 人参養栄湯 (にんじんようえいとう) | 【消耗が激しい時に】 夏バテが長引き、顔色が悪い、咳が出る、手足が冷えるなど、体力の衰えが顕著な方に。 |
| ④ 当帰六黄湯 (とうきりくおうとう) | 【寝汗・ほてりに】 体に熱がこもり、特に寝汗がひどく、それによって疲弊している方に。熱を冷ましながら潤いを補います。 |
これらの漢方薬に共通して重要な生薬が「黄耆(おうぎ)」です。黄耆は「補薬の長」とも呼ばれ、皮膚のバリア機能を高めて、汗と一緒にエネルギーが漏れ出すのを防ぐサポートをしてくれます。
【コラム】薬剤師 林の視点「夏を乗り切る『食養生』のポイント」
夏バテ予防で一番大切なのは、『胃腸を疲れさせないこと』です。
スタミナをつけようとして、暑い時期にいきなり『うなぎ』や『焼き肉』などの重いものを食べると、弱った胃腸が悲鳴を上げてしまいます。まずは、白米やじゃがいもなどの『自然な甘みのある炭水化物』で基礎的なエネルギーを補給しましょう。
また、夏野菜(トマトやキュウリ)は体を冷やす作用がありますが、生で食べ過ぎず、生姜や紫蘇などの薬味と一緒に摂るのが、冷房病を防ぐ賢い食養生ですよ。
夏の体調管理に関するよくある質問(FAQ)
熱中症対策として、毎日スポーツドリンクを飲んでも良いですか?
糖分の摂りすぎに注意が必要です。
糖分が多いものを毎日大量に飲むと、急激な血糖値の上昇や、逆に「ペットボトル症候群」による倦怠感を招くことがあります。
室内で過ごす際は「水や麦茶」を基本とし、屋外活動や大量発汗時のみ電解質を含むドリンクを選びましょう。
漢方は夏バテになってから飲むものですか?予防になりますか?
予防としての活用が非常に効果的です。
本格的な暑さが来る前や、お出かけの前から「清暑益気湯」などで土台を整えておくことで、暑さに負けない体づくりをサポートできます。
夏の下痢が止まりません。どうすれば良いですか?
胃腸の「冷え」を取り除きましょう。
冷たい飲食や冷房でお腹が冷え、水分代謝が悪くなっている可能性があります。温かい食事に切り替え、漢方で水分バランスを整えることで、スッキリとした状態を取り戻すお手伝いができます。
まとめ:自分のタイプを知って、健やかな夏を
夏バテは、単なる「暑さによる疲れ」ではなく、胃腸(脾)の弱りやエネルギー(気)の漏れが複雑に絡み合っています。
- 汗をかきすぎないよう注意する
- 冷たいものはほどほどにし、胃を温める食材を取り入れる
- 自分の体質に合った漢方で「底力」を補う
この3点を意識するだけで、夏の過ごしやすさは大きく変わります。
「毎年夏バテが辛い」「自分に合う漢方が知りたい」という方は、ぜひ太陽堂にご相談ください。あなたにぴったりの養生法をご提案いたします。
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太陽堂の特徴
”当薬局のHPをご覧いただき、ありがとうございます。
私たち太陽堂は「一人でも多くの方の笑顔を見る為に」という思いのもと開局しました。
漢方薬とお客様の出会いがお悩み、体質改善の一助になれれば幸いです。”
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記事作成者 薬剤師 林 泰太郎

実績:伝統漢方研究会 2015~2017年・2019年・2020年・2022年・2025年 学術発表
調剤薬局で3年間勤め、西洋の薬だけでは治療が難しい病気の壁に直面。
・「治療の難しい病気をなんとか治したい。」
・「ひとりでも多くの患者さんを笑顔にしたい。」
という想いから漢方の道へ。
漢方薬局で3年間修業をして、2015年 『漢方薬局 太陽堂』を立ち上げ。
開局10年を迎えた今も1ヶ月の平均来局数は900名を超え、お客様にご愛顧いただいている太陽堂の漢方薬剤師です。
記事作成者 薬剤師 椙田 彩純

担当疾患;循環器、身体の痛み
臨床検査技師の両親の影響で、幼い頃から医療に関心を持つ。
大学卒業後、病院薬剤師として勤務。
対症療法が中心の現場で、繰り返す入退院や長期投薬を目の当たりにし、「もっと力になれる方法はないか」と模索する中で漢方と出会う。
現在は漢方の持つ幅広さと可能性に魅了され、一人ひとりの体質に寄り添った根本改善を追求している。















