
「また胸が張って、石のようなしこりができた。授乳のたびに痛くて、赤ちゃんに飲ませるのが怖い……」
「熱が出て抗生物質を飲んだら一度は落ち着いたけれど、しこりと違和感が残ったまま。また詰まりそうで、油ものを食べるのも怖い……」
「母乳外来や助産院でマッサージを受けると楽になる。でも数日するとまた同じところが詰まる。いつまでこの繰り返しなんだろう……」
新宿の漢方薬局「太陽堂」では、授乳中の乳腺炎(にゅうせんえん)を繰り返す方に、最初に「詰まりを何度も繰り返すのは、詰まりやすい身体のまま授乳を続けているからです。身体の側から整えましょう」とお伝えしています。
このページでは、乳腺炎の2つのタイプ、繰り返す詰まりに対する漢方の考え方、病院・助産院のケアとの役割分担、ご家庭でできる養生をご説明します。
(※乳腺炎のケアは、産婦人科・母乳外来・助産院での対応が基本です。漢方は「治療」の代わりではなく、詰まりを繰り返しにくい身体づくりの立場からお手伝いします。産後の不調全体のご案内は「産後の不調と漢方 まとめガイド」をご覧ください。)
【この記事の結論:繰り返す乳腺炎(授乳中の詰まり・しこり)に対する漢方の考え方】
- 起こる理由(原因): 乳腺炎には、細菌が原因で膿がたまる「化膿タイプ」と、乳管が詰まって起こる「うっ滞タイプ」があります。抗生物質が効くのは主に化膿タイプで、繰り返す詰まり・しこりの多くは「うっ滞タイプ」=お薬だけでは解決しにくい領域です。
- 漢方の解決策: 母乳はお母さんの血液から作られます。産後は出産で血を消耗したうえに、毎日母乳として分け続けるため、血の不足・疲れ・冷えが重なって巡りが滞り、詰まりやすくなります。漢方では「詰まりの通りを良くする」「母乳のもとになる血を補い巡らせる」「疲れと冷えの土台を立て直す」の3方向で、「詰まっても軽く済む」「詰まる間隔が空いていく」状態を目指します。
- 対象となる主なお悩み: 何度も詰まり・しこりを繰り返す方、葛根湯を試したが追いつかない方、抗生物質のあともしこりや違和感が残る方、断乳・卒乳のときのトラブルが心配な方
乳腺炎には2つのタイプがあります
同じ「乳腺炎」でも、中身は大きく2つに分かれます。
ひとつは、傷ついた乳頭などから細菌が入って起こる「化膿タイプ(急性化膿性乳腺炎)」。赤く腫れて強く痛み、高い熱が出て、進むと膿がたまります。これは抗生物質が効く領域で、膿がたまった場合は処置が必要なこともあるため、迷わず病院で診てもらう場面です。
もうひとつが、乳管の中で母乳が滞って起こる「うっ滞タイプ(うっ滞性乳腺炎)」です。張り・しこり・痛み・微熱が出ますが、細菌が主役ではないため、抗生物質を飲んでも「しこりと違和感が残る」「またすぐ詰まる」ということが起こります。母乳外来のマッサージで通しても、詰まりやすい状態そのものが変わっていなければ、数日でまた同じところが詰まる——店頭でご相談が多いのは、この繰り返しです。
病院・助産院のケアが先。受診してほしいとき
乳腺炎のケアは、産婦人科・母乳外来・助産院が第一の相談先です。授乳の姿勢や含ませ方、マッサージなど、その場の詰まりへの対応は専門家の手当てがいちばん安心です。漢方は、その手当てと並走しながら「繰り返しにくい身体」を担当します。処方されたお薬は自己判断でやめず、お薬手帳をお持ちいただければ飲み合わせを確認します。
※念のため:38度以上の発熱が続く・赤みと痛みが強い・しこりが急に大きく硬くなる・膿のようなものが出る・悪寒やふるえがある——こうした場合は、漢方の相談より先に産婦人科・母乳外来を受診してください。化膿が進むと切開などの処置が必要になることがあります。
産後の不調全体のご案内は、まとめガイドをご覧ください。
漢方の考え方|母乳は「血」から作られる
母乳は、乳腺のまわりの血管から血液の成分を取り込んで作られます。つまり母乳は、お母さんの血液から毎日作られている——これは現代の生理学の説明ですが、漢方が昔から「母乳は血(けつ)から化生する」と考えてきたことと、そのまま重なります。
産後のお母さんは、出産で血を大きく消耗したうえに、毎日母乳として血を分け続けています。そこに、夜間授乳による睡眠不足、ゆっくり湯船に入れない冷え、抱っこによる肩や背中のこわばり、食事の乱れが重なると、血が不足しながら巡りも滞る——この状態が「詰まりやすい身体」が起きる理由だと漢方では考えます。
【比較表】あなたはどれ? 3つのタイプと漢方アプローチ
| タイプ | 出方・体質 | 太陽堂の漢方アプローチ(働き) |
| ①詰まり・張りタイプ (乳管のうっ滞) | 張って痛い、同じところにしこりができる、油もの・甘いもの・お餅のあとに詰まりやすい。 | 【通りを良くする漢方薬】 身体の表面を温めて発散し、乳管の通りを助けます。葛根湯はこの代表ですが、それだけでは追いつかない方が少なくありません。 |
| ②血の不足タイプ (血虚) | 顔色がさえない、疲れが抜けない、母乳の出にむらがある、産後から体調が戻りきらない。 | 【血を補い、巡らせる漢方薬】 母乳のもとになる血を養いながら、滞りを防ぎます。 |
| ③冷え・疲れの土台タイプ | 手足やお腹が冷える、湯船に入れずシャワーだけ、肩・背中がガチガチ、睡眠不足が続いている。 | 【土台を温めて立て直す漢方薬】 冷えとこわばりをゆるめ、疲れの回復を助けて、詰まりにくい状態を保ちます。 |
(※実際には①に②や③が重なっている方がほとんどです。ご自身でどれか分からなくても大丈夫です。授乳の状況とあわせて、こちらで整理します。)
また、「葛根湯が乳腺炎に良い」と聞いて飲んでいる方も多いのですが、葛根湯には身体を目覚めさせる方向の生薬(麻黄)が含まれるため、夜間授乳で睡眠不足のお母さんには合わないことがあります。授乳中であること・眠れていないことを前提に、お薬の内容を選ぶことが大切です。
何を目安に見るか
太陽堂では「まず3ヶ月」を一つの単位として、次の変化を一緒に確認します。
- 詰まる間隔(毎週のように詰まっていたのが、数週間〜1ヶ月と間隔が空いてきたか)
- しこりの引き方(詰まっても、赤ちゃんに飲んでもらうと軽く済むようになってきたか)
- 身体の様子(冷え、肩や背中のこわばり、疲れの抜け方)
ご家庭でできる養生|「詰まりやすい日」を減らす
繰り返す方には、共通する生活の下地があります。全部を完璧にする必要はありません。「疲れ・冷え・食事・睡眠」のうち、いま一番崩れているものから一つずつで大丈夫です。
- 油もの・乳製品・甘いものを続けて摂りすぎない: カレーやシチュー、洋菓子、お餅のあとに詰まりやすいと感じる方は多くいらっしゃいます。やめる必要はありませんが、「2日続けて食べない」などを目安にしてください。
- 身体を冷やさない: 産後はシャワーだけになりがちです。湯船が難しい時期は、足湯や腹巻き・靴下で「下半身と背中を冷やさない」工夫を。肩・背中のこわばりは詰まりのサインでもあるので、蒸しタオルで温めるのもおすすめです。
- 睡眠を「分けてでも」確保する: 疲れがたまった数日後に詰まる、という方がとても多いです。まとめて眠れない時期は、ご家族に一回分の授乳(ミルク)をお願いして仮眠を取るなど、細切れでも睡眠を足してください。
- 授乳の間隔・含ませ方は助産師さんと: 詰まりかけたときの授乳のさせ方・抱き方(フットボール抱きなど)の工夫は、母乳外来・助産院での指導がいちばん安心です。漢方と両輪で進めてください。
※効果の感じ方や必要な期間には個人差があります。症状の改善を保証するものではありません。病院のお薬の中止・変更は、主治医の判断のもとで行ってください。
よくあるご質問(FAQ)
葛根湯を飲んでいますが、繰り返しています。
葛根湯は「詰まりの通りを良くする」方向の代表ですが、それだけでは足りない方が少なくありません。
繰り返す方は、血の不足や冷え・疲れといった「詰まりやすい土台」が残っていることが多いためです。また、葛根湯に含まれる麻黄は身体を目覚めさせる方向に働くため、睡眠不足のお母さんには別の組み立てをご提案することがあります。
抗生物質を飲んだのに、しこりと違和感が残っています。
抗生物質が効くのは、主に細菌による「化膿タイプ」です。乳管の詰まりによる「うっ滞タイプ」のしこりは、お薬の守備範囲の外に残ることがあります。
残ったしこり・違和感、そして「また詰まる」の繰り返しこそ、漢方の相談どころです。なお、処方された抗生物質は自己判断でやめず、指示どおり飲み切ってください。
授乳中に漢方薬を飲んでも大丈夫ですか?
授乳中であることを前提に、お薬の内容を選んでご提案します。
病院のお薬を飲んでいる方は、お薬手帳をお持ちください。飲み合わせを確認したうえでお渡しします。
断乳・卒乳のときのトラブルも相談できますか?
はい。断乳・卒乳の時期は張りや詰まりが起こりやすく、ご相談いただけます。
進め方そのものは母乳外来・助産院の指導と両輪で、漢方は張り・こもった熱・身体の回復の側からお手伝いします。
乳腺炎の実例はありますか?
授乳中の乳腺炎として、経過を詳しくご紹介できる店頭の記録(症例ページ)は、現時点ではまだありません。
ご紹介できる記録ができた時点で、このページに追記します。
費用はどのくらいかかりますか?
漢方薬の費用は、週5,000円前後〜(月2万円前後〜)が目安です。相談料は無料です。
お作りする前に必ず金額をお伝えします。ご予算のご希望も含めて率直にお伝えください。
まとめ|その場の手当てと、繰り返さない身体づくりの両輪で
「マッサージで通してもらえば楽になる。でも、また詰まる。授乳が終わるまでの我慢なのかな」
- 乳腺炎には「化膿タイプ」と「うっ滞タイプ」があります。高熱・強い赤み・膿の気配があるときは、まず産婦人科・母乳外来へ。繰り返す詰まり・しこりは、うっ滞タイプ=漢方の相談どころです。
- 母乳はお母さんの血液から作られます。血の不足・疲れ・冷えが重なると詰まりやすくなるため、漢方では「通りを良くする」「血を補い巡らせる」「土台を立て直す」の3方向で整えます。
- 油もの・乳製品・甘いものを続けない、冷やさない、睡眠を分けてでも確保する。「詰まりやすい日」を減らす養生を、できるものから一つずつ。
「授乳が終わるまでの我慢」とあきらめないでください。詰まりやすい身体は、整えていくことができます。
いつから繰り返しているか、どんなときに詰まりやすいか、母乳外来や病院でのケアの状況を丁寧にお伺いし、全国対応のオンライン相談・店頭相談にて、新宿の漢方薬局「太陽堂」があなたの授乳期に合った漢方ケアをご提案いたします。小さなお子さま連れでも、オンラインでも、どうぞ気兼ねなくご相談ください。
関連するお悩み
産後の身体の回復全体のご案内はこちらです。また、授乳と関係なく胸の張り・痛み・しこりが気になる方は「乳腺症」のページをご覧ください(乳腺炎とは別のお悩みです)。
太陽堂の特徴
”当薬局のHPをご覧いただき、ありがとうございます。
私たち太陽堂は「一人でも多くの方の笑顔を見る為に」という思いのもと開局しました。
漢方薬とお客様の出会いがお悩み、体質改善の一助になれれば幸いです。”
特徴その1.
当薬局では、お客様「ひとりひとりに合わせた漢方薬」をその場で調合いたします。
そのため初めてのご相談では、「約1時間~1時間半」ほど相談時間をいただいております。
(遠方のお客様や、お忙しいお客様へは配送の受付もしております。詳しくはお問合せください)
特徴その2.
お作りする漢方薬は、国内外から厳選した生薬の力を、余すことなくお客様に届けるため
「煎じ薬」をお勧めしております。
特徴その3.
当薬局は漢方専門の薬剤師が「得意とする専門分野」にわかれて日々研鑽しています。
お客様の健康を第一に考え、漢方の勉強会なども積極的に開催しております。
太陽堂がはじめての方へ
ご相談を考え始めた方は、まずこちらをどうぞ。
記事作成者 薬剤師 前原 信太郎

実績:伝統漢方研究会 2017年・2021年・2025年 学術発表
沖縄で開業医をしていた祖父と薬の話しをしていた事から薬剤師の道を目指すように。
調剤薬局の薬剤師として6年間勤務。
漢方の勉強をして、より患者さんの治療の選択肢の幅を広げたいという思いから「漢方の道」に。
調剤薬局も経験している為、西洋学の知識も勉強を積み今に至ります。
記事作成者 薬剤師 石川 満理奈

得意な疾患:胃腸疾患・耳鼻咽喉疾患・不妊症・婦人科・肝臓・腎臓
開業医だった父の影響で小さい頃から医療は身近に。
薬学部を卒業後、調剤薬局に勤務。
自分自身の胃腸の不調も漢方薬により改善。
よりご来局頂いた方の体質に沿った治療の選択をできるようになりたいという思いから「漢方の道」へ。















