
「せっかく症状が落ち着いていたのに、また顔の発疹と微熱が出てきた。この寛解と再燃の繰り返しが一生続くのかと思うと、本当に苦しい」
「ステロイドの量を減らしていくと必ず調子が崩れる。でも、ずっと今の強いお薬を飲み続けるのも副作用が不安でたまらない」
「病院では『検査の数値は落ち着いているよ』と言われるのに、鉛のような疲れや関節の痛みがずっと抜けない」
全身性エリテマトーデス(SLE)は、本来は身体を守るはずの免疫システムが、自分自身の身体を攻撃してしまうことで、皮膚の発疹(蝶形紅斑)・関節痛・発熱・強いだるさ・内臓(腎臓など)の炎症といった全身に症状が出るご病気です。
この病気の最も大きな特徴は、症状が落ち着いている時期(寛解:かんかい)と、再び症状が強く出る時期(再燃:さいねん)を「繰り返す」ことです。そして、この「いつまた再燃するのかという恐怖の繰り返し」こそが、患者さまの心を一番深くすり減らします。
今回は、「再燃を繰り返す不安」「減薬の不安」「数値は良いのに残る不調」というSLEの患者さまが抱える3つの深いお悩みに、病院の治療と並走しながら漢方薬がどう向き合うかを、薬剤師の視点から詳しく解説いたします。
【この記事の結論:「寛解と再燃を繰り返すSLE」に対する漢方の考え方】
- 起こる理由(原因): 西洋医学では自己抗体による免疫の過剰な働きと全身の炎症とされますが、漢方では長期の炎症による身体の潤い不足(陰虚)と、血流の滞り(瘀血)、そして生命エネルギーの枯渇(気虚)が土台にあると考えます。
- 漢方の解決策: 病院の治療(ステロイド等)を主役としながら、漢方で「自己免疫のバランスを調節し、消耗した潤いとエネルギーを補う」ことで、免疫が暴走しにくい身体の環境(土台)を育てます。
- 対象となる主な疾患・お悩み: 全身性エリテマトーデス(SLE)、膠原病、寛解と再燃を繰り返している方、ステロイドの減薬に不安のある方、数値は落ち着いているのに疲れ・関節痛・冷え・微熱が残る方
3つのお悩みは、つながっている——ご相談の実像
SLEは20〜40代の女性に圧倒的に多く発症し、太陽堂にご相談に来られる方も、ステロイド(プレドニン等)や免疫抑制剤、プラケニルなどの西洋薬を長期間服用中の方が大半です。店頭で伺う切実なお悩みは、大きく以下の3つに分かれます。
- 再燃を繰り返す不安: 薬で一旦は落ち着いたと思ったら、仕事の疲れや精神的なストレス、少し紫外線を浴びたことをきっかけに、また発疹・微熱・関節痛が戻ってくる。「また入院になるのでは」という恐怖が常にある。
- 減薬の不安と板挟み: 症状が落ち着いてステロイドを減らしていくと、必ず途中で調子が崩れて振り出しに戻ってしまう。かといって、ステロイド(副作用)を一生飲み続けることへの強烈な不安もある。
- 数値は良いのに残る不調: 血液検査(補体や抗DNA抗体など)の数値は落ち着いていると主治医に言われるのに、鉛のようなだるさ・関節痛・ひどい冷えが全く抜けない。
この3つは、実は別々の問題ではありません。「免疫が暴走しやすい身体の環境(体質)」がそのままになっていることが、再燃のしやすさにも、減薬の難しさにも、残る不調にも、すべてつながっている——というのが漢方の見方です。だからこそ、西洋薬で症状を抑えることと並行して、漢方薬で「環境(土台)の側」を整えることに意味があると考えています。
【薬剤師コラム①】ステロイドの扱いは、特に慎重に
担当薬剤師:林
漢方のご相談をお受けする前に、薬剤師として最初に一番大切なことをはっきりとお伝えします。
「ステロイド(プレドニン等)や免疫抑制剤を、自己判断で勝手に減らしたり、飲むのをやめたりすることは、絶対に避けてください」
SLEの治療において、ステロイドは臓器を炎症から守る『治療の要』です。症状が強い時にはステロイドパルス療法(大量のステロイドを短期間集中的に使う治療)が行われるほど、強力で大切なお薬なのです。だからこそ、量の上げ下げは、主治医の先生が検査の数値と症状を見ながら慎重に判断するものなのです。
漢方薬は、決して「ステロイドを今すぐやめるための代わりの薬」ではありません。
私たちがお手伝いするのは、「病院のお薬が身体を守ってくれている間に、免疫が暴走しにくい身体の環境(土台)を内側から整えておくこと」です。
漢方で土台がしっかりと整ってくれば、主治医の先生の判断でいざステロイドの減薬を進める時にも、身体がそのホルモン変化に耐えやすくなり、ぶり返し(再燃)しにくい状態を目指せる——それが、漢方薬が受け持てる「減薬の不安」への向き合い方です。焦らず、順番を守って進めましょう。
【比較表】西洋医学(病院)と漢方薬(太陽堂)のアプローチの違い
| 比較項目 | 西洋医学(病院のアプローチ) | 漢方薬(太陽堂の体質ケア) |
| 主な目的 | 暴走する免疫をお薬で強力に抑え込み、臓器を炎症から守り抜く | 免疫が暴走しにくい身体の環境(熱・潤い・血流)を内側から整える |
| 得意なこと | 活動期の激しい炎症の制圧、血液検査による病状の正確な把握 | 数値が落ち着いても残る「だるさ・関節痛・冷え」等へのアプローチ |
| 代表的な手段 | ステロイド、免疫抑制剤、プラケニル、生物学的製剤(ベンリスタ等) | 自己免疫を調節する漢方薬 + 症状・時期に合わせた漢方薬の組み合わせ |
| 気になる点 | 長期服用による副作用、減薬の途中で症状がリバウンドして戻ることがある | 体質からの根本的な変化のため、効果の実感までに月単位〜年単位の期間が必要 |
| 両者の関係性 | 命と臓器を守る「治療の主役」——続けることが大前提 | 主役を邪魔せず、再燃しにくい土台を陰から育てる「並走のサポーター」 |
漢方の組み立て——「免疫の調節」+「症状と時期に合わせる」
太陽堂では、SLEの複雑な症状に対して、以下の2つの太い軸を組み合わせてオーダーメイドで漢方を調合します。
軸① 自己免疫を調節する漢方薬
- 狙い: 漢方組み立ての最大の軸に据えるのは、過剰に働いて自分を攻撃している自己免疫のバランスを優しく「調節」する方向の漢方薬です。免疫を「強める」のでも「無理に止める」のでもなく、免疫システムが暴走しにくい落ち着いた状態へと整えることを目指します。(※単純に免疫力を上げる健康食品などは、かえって自己免疫疾患を悪化させる恐れがあるため太陽堂では使用しません。)
軸② その方の症状・病気の時期(活動期か安定期か)に合わせた漢方薬
SLEは症状が多岐にわたるため、今の時期に一番辛い症状に合わせて漢方を微調整します。
- ほてり・微熱・不眠・発疹が気になる時期(活動期〜回復期): 身体の冷却水である「潤い」が極度に不足して、炎症の熱が暴走しやすい状態(陰虚火旺:いんきょかおう)と捉え、身体にたっぷりと潤いを補い、血の熱を穏やかに冷ます方向(滋陰清熱)で組み立てます。
- 関節の痛みや冷え・あざが気になる時: 炎症によって細かい毛細血管の血流が滞った状態(瘀血:おけつ)と捉え、血の巡りを促して関節の痛みを和らげる方向(活血化瘀)を組み合わせます。
- 数値は安定しているのに、極度にだるい時期(安定期・寛解期): 長い闘病とお薬の負担で、生命エネルギー(気)と栄養(血)が完全に消耗し切った状態(気血両虚)と捉え、胃腸の働きを立て直しながら活力を力強く補う方向(補気補血)にシフトします。
【薬剤師コラム②】「再燃の波」と付き合うための、生活の土台づくり
担当薬剤師:前原
SLEの再燃には、きっかけがあることが少なくありません。店頭でお話を伺っていると、「疲れが溜まった時」「強いストレスがかかった時」「睡眠不足が続いた時」「日光(紫外線)を浴びすぎた時」に調子を崩す方が多い印象です。
だからこそ、漢方薬を飲むことと全く同じくらい、日常の『生活の土台づくり(養生)』を徹底していただくことをおすすめしています。
- 無理をしない・疲れを持ち越さない: 「最近調子が良いから」と頑張りすぎた後に、波が来ることがあります。良い時こそ、活動量を『腹八分目(余力を残す)』に抑えてあげてください。
- 紫外線対策を習慣に: 日光(紫外線)で悪化しやすいご病気です。日傘・日焼け止め・帽子・長袖は、夏だけでなく一年中の習慣にしてください。
- 睡眠を最優先にする: 免疫と自律神経を整える一番の土台は「良質な睡眠」です。夜更かしは避けましょう。
- 調子の記録(日記)をつける: 「どんな時に微熱が出たか、関節が痛んだか」のメモは、私たち漢方薬剤師の調整にも、主治医の先生への報告にも役立つ最高のデータになります。
そして、「高熱が続く・発疹が急に広がる・足がひどくむくむ・尿が泡立つ」といった変化が出た時は、迷わず早めに主治医の先生に連絡してください。波と上手に付き合いながら、穏やかな期間を少しずつ長くしていく。それを漢方と生活の両面から、私たちと一緒に目指していきましょう。
よくあるご質問(FAQ)
病院のステロイドや免疫抑制剤と、漢方薬は併用できますか?
はい、基本的には併用可能です。病院の治療を続けることが大前提となります。
現在飲んでいるすべてのお薬(ステロイド・免疫抑制剤・プラケニル・生物学的製剤など)を、ご相談時にお薬手帳などでお知らせください。飲み合わせを確認したうえで、漢方の組み立てを考えます。
漢方薬を飲めば、ステロイドをやめられますか?
漢方薬は「ステロイドをやめるための代わりの薬」ではありません。
ステロイドの量の判断は、検査の数値を見て主治医の先生が行うものです。漢方薬の役割は、お薬が身体を守ってくれている間に、再燃しにくい身体の土台を整えておくこと。減薬はその土台の上で、主治医の先生と慎重に進めてください。
数値は落ち着いているのに、だるさや関節痛が残っています。相談できますか?
はい。まさにその「数値は良いのに残る不調」が、漢方の受け持ち分野です。
長い闘病で消耗した気(エネルギー)と血(栄養)を補い、血流を整えることで、日々の活力を底上げしていきます。残っている症状(冷え・しびれ・微熱など)を具体的にお聞かせください。
どんな時は、漢方より先に病院に連絡すべきですか?
高熱が続く・発疹が急に広がる・ひどいむくみや尿の異常(泡立ちなど)が出た時は、早めに主治医の先生へ連絡してください。
再燃や合併症(ループス腎炎など)のサインであることがあり、病院での対応が最優先です。定期的な検査と診察は必ず続けながら、漢方はその上に並走させてください。
改善した実例はありますか?
サイトに掲載できる形のSLEの症例記録は、現在準備を進めています。
同じ自己免疫のご病気(バセドウ病など)では、症状が落ち着いて服用終了に至った実例を公開しています。自己免疫疾患への漢方の向き合い方の参考にご覧ください。
どのくらいの期間で変化を感じられますか?
長く付き合っていくご病気ですので、月単位〜年単位でじっくり見ていただくのが基本です。
「だるさが少しましになった」「波の間隔が延びてきた」という小さな変化を、一緒に確認しながら漢方を調整していきます(個人差があります)。焦らず、腰を据えて進めましょう。
まとめ:再燃の波を小さくし、穏やかな期間を長くする
「またいつ再燃して、病院に逆戻りするのではないか」という不安を抱えながらの毎日は、病気の症状そのもの以上に、患者さまの心を深くすり減らします。
- 治療の主役は病院のお薬(ステロイド等)。漢方はそれを置き換えず、並走して土台を整える
- 組み立ては「自己免疫の調節」+「症状と時期(活動期か安定期か)に合わせた漢方」
- ステロイドの扱いは特に慎重に。減薬は必ず主治医の先生と進める
再燃の不安、減薬の不安、数値は良いのに残る不調——どれか一つでも抱えて苦しんでいる方は、どうぞ一人で我慢せずに太陽堂へご相談ください。
これまでの闘病の経過、お薬の内容、今の辛い症状と体質を丁寧にお伺いし、全国対応のオンライン相談・店頭相談にて、あなたの身体をいたわりながら優しく支える漢方ケアをご提案いたします。
【ご相談をご希望の方へ】
全身性エリテマトーデス(SLE)に対する具体的な漢方アプローチについては、こちらのページにて詳しく解説しております。全国対応のオンライン相談も承っておりますので、まずはお気軽にお声がけください。
関係性の深い病気;ご相談も多数いただいております。
自己免疫に関するさまざまなお悩みについて、以下のページもあわせてご覧ください。
▼むくみ・尿の異常が気になる方へ(ループス腎炎)
▼膠原病・自己免疫疾患の全体像
太陽堂の特徴
”当薬局のHPをご覧いただき、ありがとうございます。
私たち太陽堂は「一人でも多くの方の笑顔を見る為に」という思いのもと開局しました。
漢方薬とお客様の出会いがお悩み、体質改善の一助になれれば幸いです。”
特徴その1.
当薬局では、お客様「ひとりひとりに合わせた漢方薬」をその場で調合いたします。
そのため初めてのご相談では、「約1時間~1時間半」ほど相談時間をいただいております。
(遠方のお客様や、お忙しいお客様へは配送の受付もしております。詳しくはお問合せください)
特徴その2.
お作りする漢方薬は、国内外から厳選した生薬の力を、余すことなくお客様に届けるため
「煎じ薬」をお勧めしております。
特徴その3.
当薬局は漢方専門の薬剤師が「得意とする専門分野」にわかれて日々研鑽しています。
お客様の健康を第一に考え、漢方の勉強会なども積極的に開催しております。
太陽堂がはじめての方へ
ご相談を考え始めた方は、まずこちらをどうぞ。
記事作成者 薬剤師 石川 満理奈

得意な疾患:胃腸疾患・耳鼻咽喉疾患・不妊症・婦人科・肝臓・腎臓
開業医だった父の影響で小さい頃から医療は身近に。
薬学部を卒業後、調剤薬局に勤務。
自分自身の胃腸の不調も漢方薬により改善。
よりご来局頂いた方の体質に沿った治療の選択をできるようになりたいという思いから「漢方の道」へ。
記事作成者 薬剤師 林 泰太郎

実績:伝統漢方研究会 2015~2017年・2019年・2020年・2022年・2025年 学術発表
調剤薬局で3年間勤め、西洋の薬だけでは治療が難しい病気の壁に直面。
・「治療の難しい病気をなんとか治したい。」
・「ひとりでも多くの患者さんを笑顔にしたい。」
という想いから漢方の道へ。
漢方薬局で3年間修業をして、2015年 『漢方薬局 太陽堂』を立ち上げ。
開局10年を迎えた今も1ヶ月の平均来局数は900名を超え、お客様にご愛顧いただいている太陽堂の漢方薬剤師です。








