
「血液検査で『甲状腺の数値は正常にコントロールできていますよ』とお医者様に言われたのに、身体に鉛を背負ったような強烈なだるさがずっと抜けない」
「夏でも極端に寒がりで、手足が氷のように冷たく、顔や足のむくみも全然取れない」
「病院で『数値が良いんだから、そのだるさはもう甲状腺のせいじゃないよ』と言われてしまい、この辛い不調をどこに相談すればいいのか分からなくなった」
橋本病(慢性甲状腺炎)は、本来身体を守るはずの免疫システムが、自分自身の甲状腺を異物と見なして攻撃して慢性的な炎症を起こし、全身の代謝のエンジンとなる「甲状腺ホルモン」が不足してしまうご病気です。
病院では、不足したホルモンを直接補うお薬(チラージン)が処方され、多くの方はそのお薬を飲むことで血液検査の数値(TSH、FT3、FT4)は「正常範囲」へと綺麗に整っていきます。
しかし、太陽堂に寄せられるご相談で多いのは、「数値は正常になった後も、だるさ・冷え・むくみ・気分の落ち込みなどの不調が残っていて辛い」というお声です。今回は、その「検査数値とご自身の体感とのすき間」に真っ直ぐに向き合う漢方の考え方を、薬剤師の視点から詳しく解説いたします。
【この記事の結論:「数値は正常なのに不調が続く橋本病」に対する漢方の考え方】
- 起こる理由(原因): 西洋医学ではホルモンの不足とされますが、漢方では、長くホルモンが不足していたことで身体の芯(胃腸と腎)が冷え切り、エネルギーと栄養が枯渇した状態が「残る不調の正体」と考えます。
- 漢方の解決策: 病院のお薬(チラージン)は続けたまま、漢方で「身体の芯を温め直し、気と血を補う」ことで、ご自身の力で代謝のエンジンを回せる身体の土台を育てていきます。
- 対象となる主な疾患・お悩み: 橋本病(慢性甲状腺炎)、甲状腺機能低下症、チラージンを服用中で数値は正常なのに、だるさ・極度の冷え・むくみ・体重増加・気分の落ち込み・抜け毛が続く方
「数値は正常」と「体感」のすき間——ご相談の実像
橋本病は圧倒的に女性に多いご病気であり、太陽堂にご相談に来られるのも女性が中心です。そしてご相談者のほとんどが、すでに病院で診断を受けてチラージン(甲状腺ホルモン薬)を毎日服用中で、血液検査の数値の上では「正常(コントロール良好)」になっています。
それでも、ご本人にとっては以下のような辛い症状が残っていることが非常に多いのです。
- 鉛を背負ったような強烈なだるさ・何もやる気が起きない(無気力)
- 夏でも厚着が必要なほどの極端な寒がり・手足の冷え
- 顔や足のひどいむくみ・食べていないのに増えていく体重
- 抜け毛が増える・肌がカサカサに乾燥する・気分の激しい落ち込み
同じ甲状腺の病気でも、バセドウ病(機能亢進症)のような「激しい動悸や多汗、眼球突出」といった見た目に分かりやすい症状に比べると、橋本病の症状は非常に穏やかで静かに見えます。
しかしその分、「ただ怠けているだけなんじゃないの?」と周囲に誤解されやすく、外からは分からない深い疲労感の中で、孤独に悩まれている方が多いのが、このご病気の辛い特徴なのです。
【薬剤師コラム①】ガソリンを入れても、エンジンが冷えたままなら走れない
担当薬剤師:林
「先生に『数値は完璧だから、だるいのはもう甲状腺のせいじゃないよ』と言われて、ショックでした」
店頭でこうしたご相談を、私は本当によくお受けします。
病院のお薬(チラージン)を飲めば、確かに血液中のホルモンの「数値」は正常に整います。しかし東洋医学の視点から身体を診ると、全く違う景色が見えてきます。
長い間甲状腺ホルモンが不足していたことで、全身の細胞——特に胃腸や筋肉、そして生命力の根本である「腎」——が芯から冷え切り、エネルギーを作り出す機能(代謝の力)そのものが弱ってしまっている状態になっているのです。
車に例えるなら、ガス欠で止まっていた車に「ガソリン(チラージン)」を入れたのに、「エンジン自体が冷え切っている」ため、うまく前に進めない状態です。
漢方薬の役割は、この「冷え切ったエンジン」に再び火を灯し、ご自身の力で身体を温め、エネルギーを回せるようにすることです。ガソリンを直接入れる治療(チラージン)と、エンジンそのものを温め直す漢方薬——役割が違うからこそ、両方を『併用』していただく形が理にかなっているのです。
【比較表】西洋医学(病院)と漢方薬(太陽堂)のアプローチの違い
| 比較項目 | 西洋医学(病院のアプローチ) | 漢方薬(太陽堂の体質ケア) |
| 主な目的 | 不足している甲状腺ホルモンをお薬(チラージン)で直接補い、数値を整える | 冷え切った身体の芯を温め直し、気と血を補って「動ける身体」を育てる |
| 得意なこと | 血液検査(TSH・FT3・FT4等)による正確な診断と、ホルモン数値の厳格な管理 | 数値が正常になっても残る、だるさ・冷え・むくみ・無気力へのアプローチ |
| 代表的な手段 | チラージンS(レボチロキシンナトリウム)の内服、定期的な血液・エコー検査 | 芯から温める漢方薬、気と血(栄養)を補う漢方薬、水の巡りを整える漢方薬 |
| 気になる点 | 数値が整っても、冷えやだるさ等の自覚症状が残ることが多い | 体質の根本からの変化のため、効果の実感までに月単位の期間が必要なこと |
| 両者の関係性 | 代謝と命を支える「補充の軸」——続けることが大前提 | 身体のエンジンを温め直す「頼もしい土台の軸」——併用可能です |
漢方の組み立て——「温める」「補う」「巡らせる」
太陽堂では、橋本病の残る不調に対して、以下の3つの軸を患者さまの体質に合わせてオーダーメイドで組み立てます。
軸① 身体の芯(胃腸と腎)を温め、余分な水(むくみ)を流す(温陽利水)
- こんな方に: 極度の寒がりで、顔や足のむくみがひどく、食べていないのに体重が落ちない方。全身を温める大元の火が弱った状態(脾腎陽虚:ひじんようきょ)と捉え、身体を芯から温めてエンジンをかけ、身体に溜まった冷たい水分(水毒)を尿としてしっかりと流し出します。
軸② 気と血(エネルギーと栄養)を補う(補気補血)
- こんな方に: 鉛のように身体がだるく、少し動いただけで疲れ果ててしまう方。抜け毛や肌のカサカサ乾燥が気になる方。身体のエネルギーと栄養が完全に枯渇した状態(気血両虚:きけつりょうきょ)と捉え、胃腸の働きを助けながら気と血をたっぷりと補って、日々の活力を根本から底上げします。
軸③ ストレスによる気の滞りをほぐす(疏肝理気)
- こんな方に: 喉のつかえや首まわりの違和感(ヒステリー球)、イライラ・気分の落ち込みが強い方。自己免疫疾患の背景にあるストレスで、気の巡りが滞った状態(肝気鬱結)と捉え、張り詰めた自律神経を優しくほぐして巡りを整えます。
【薬剤師コラム②】橋本病の方は「海藻の摂り方」にご注意を
担当薬剤師:前原
食生活の養生について、薬剤師として一つ大切な注意点をお伝えします。
「海藻はミネラルが豊富で身体に良いから」と、わかめや昆布、もずくを毎日たくさん召し上がる方がいらっしゃいます。確かに健康な方や骨を丈夫にしたい方には良い食材なのですが、橋本病(甲状腺機能低下症)の方は、海藻類に多く含まれる「ヨウ素(ヨード)」の摂りすぎに注意が必要です。
ヨウ素は甲状腺ホルモンの材料になるものですが、過剰に摂り続けると、かえって甲状腺の働きに影響することがあると言われているためです。
特に「昆布(昆布だし・昆布茶を含む)」はヨウ素が多い食材です。病院からヨード制限の指導を受けている方は、必ず主治医の指示に従ってください。指導を受けていない方も、「身体に良いから」と昆布や海藻サラダを毎日大量に食べ続けるのは避け、ほどほどの量を心がけるのが安心です。
そのうえで、橋本病の方にお願いしたい日々の養生の基本は、「身体(特に下半身)を冷やさないこと」と「胃腸に優しい温かい食事を摂ること」です。冷たい飲み物や生野菜・生ものを極力控え、温かいスープや根菜類でお腹の中から身体のエンジンを支えてあげてくださいね。
よくあるご質問(FAQ)
病院のチラージンと、漢方薬は併用できますか?
はい、基本的には併用可能です。チラージンは続けたまま、漢方が並走する形になります。
チラージンは身体に必要なホルモンを補う大切なお薬ですので、自己判断でやめたり減らしたりしないでください。量の調整は、血液検査の数値を見ながら主治医の先生が行うものです。飲んでいるお薬の量はご相談時にお知らせください。
病院で「数値は正常だから問題ない」と言われました。このだるさは気のせいでしょうか?
気のせいではありません。数値が正常になっても症状が残っている方は多くいらっしゃいます。
血液検査の数値は「血中のホルモンの量」を映しますが、長い不足で冷え切った身体の状態までは映しません。その「検査には映らない、残っている側」に向き合うのが漢方の受け持ちです。ご自身を責めないでくださいね。
海藻やヨウ素は、どのくらい気をつければいいですか?
病院からヨード制限の指導がある方は、必ずその指示に従ってください。
指導がない方も、昆布や昆布だしなどヨウ素の多い食材を「毎日大量に」摂り続けるのは避けるのが安心です。味噌汁のわかめを食べる程度の普通の食事の範囲であれば、神経質になりすぎる必要はありません。気になる方はご相談時に食生活を一緒に確認しましょう。
気分の落ち込みや無気力もあります。うつ病なのか、橋本病のせいなのか分かりません。
甲状腺の機能低下は、気分の落ち込みや無気力を伴うことが多く、うつ病や更年期障害と誤解されやすいご病気です。
まだ甲状腺の検査を受けたことがない方は、まず内科や内分泌科での血液検査をおすすめします。すでに診断がついている方は、心と身体の両方の症状を伺ったうえで、漢方の組み立てを考えます。
改善した実例はありますか?
サイトに掲載できる形の橋本病の症例記録は、現在準備を進めています。
同じ甲状腺の自己免疫疾患であるバセドウ病では、症状が落ち着いて服用終了に至った実例を公開しています。経過の雰囲気の参考にご覧ください(症状は正反対のご病気です)。
どのくらいの期間で変化を感じられますか?
冷えの深さや罹患期間によりますが、まずは数ヶ月単位(3ヶ月〜半年)でじっくり見ていただくのが基本です。
長い時間をかけて冷えてきた身体は、温め直すのにも時間がかかります。「朝起きるのが少し楽になった」「手足の冷えがましになった」という小さな変化から、一緒に確認していきましょう(個人差があります)。
まとめ:「数値」と「体感」の両方を、大切にしていい
「検査の数値は正常なのだから、この鉛のようなだるさは自分の気の持ちようなのかもしれない」——そんなふうに、どうかご自身を責めないでください。
- チラージンで数値が整っても、身体の芯が冷え切っているため、だるさ・冷え・むくみが残る方は非常に多い。
- 漢方薬は「芯から温める・気血を補う・滞りをほぐす」の組み立てで、冷え切ったエンジンを温め直す。チラージンとの併用が基本。
- 海藻(特に昆布・ヨウ素)の摂りすぎには注意。日々の養生の基本は「冷やさないこと・温かい食事」。
外からは分かりにくい、誰にも分かってもらえないその深い不調を抱えている方は、どうぞ一人で我慢せずに太陽堂へご相談ください。
残っている辛い症状、検査の数値、日々の食生活、そしてあなたの体質を丁寧にお伺いし、全国対応のオンライン相談・店頭相談にて、あなたの身体を芯から支え、温め直す漢方ケアをご提案いたします。
【ご相談をご希望の方へ】
橋本病(甲状腺機能低下症)に対する具体的な漢方アプローチについては、こちらのページにて詳しく解説しております。全国対応のオンライン相談も承っておりますので、まずはお気軽にお声がけください。
関係性の深い病気;ご相談も多数いただいております。
甲状腺・自己免疫に関するさまざまなお悩みについて、以下のページもあわせてご覧ください。
▼バセドウ病(甲状腺機能亢進症)——橋本病とは逆の「機能亢進」でお悩みの方へ
▼膠原病・自己免疫疾患の全体像
太陽堂の特徴
”当薬局のHPをご覧いただき、ありがとうございます。
私たち太陽堂は「一人でも多くの方の笑顔を見る為に」という思いのもと開局しました。
漢方薬とお客様の出会いがお悩み、体質改善の一助になれれば幸いです。”
特徴その1.
当薬局では、お客様「ひとりひとりに合わせた漢方薬」をその場で調合いたします。
そのため初めてのご相談では、「約1時間~1時間半」ほど相談時間をいただいております。
(遠方のお客様や、お忙しいお客様へは配送の受付もしております。詳しくはお問合せください)
特徴その2.
お作りする漢方薬は、国内外から厳選した生薬の力を、余すことなくお客様に届けるため
「煎じ薬」をお勧めしております。
特徴その3.
当薬局は漢方専門の薬剤師が「得意とする専門分野」にわかれて日々研鑽しています。
お客様の健康を第一に考え、漢方の勉強会なども積極的に開催しております。
太陽堂がはじめての方へ
ご相談を考え始めた方は、まずこちらをどうぞ。
記事作成者 薬剤師 石川 満理奈

得意な疾患:胃腸疾患・耳鼻咽喉疾患・不妊症・婦人科・肝臓・腎臓
開業医だった父の影響で小さい頃から医療は身近に。
薬学部を卒業後、調剤薬局に勤務。
自分自身の胃腸の不調も漢方薬により改善。
よりご来局頂いた方の体質に沿った治療の選択をできるようになりたいという思いから「漢方の道」へ。
記事作成者 薬剤師 林 泰太郎

実績:伝統漢方研究会 2015~2017年・2019年・2020年・2022年・2025年 学術発表
調剤薬局で3年間勤め、西洋の薬だけでは治療が難しい病気の壁に直面。
・「治療の難しい病気をなんとか治したい。」
・「ひとりでも多くの患者さんを笑顔にしたい。」
という想いから漢方の道へ。
漢方薬局で3年間修業をして、2015年 『漢方薬局 太陽堂』を立ち上げ。
開局10年を迎えた今も1ヶ月の平均来局数は900名を超え、お客様にご愛顧いただいている太陽堂の漢方薬剤師です。








