
「健康診断や病院の血液検査で『腎機能(eGFR)が少し下がっていますね。しばらく様子を見ましょう』と言われた」
「病院で特に薬も出されず『経過観察』と言われたけれど、次の検査までただ待つだけなんて不安でたまらない」
「透析になる前に、今自分にできることを始めたい」
病院の診察室で「経過観察」と告げられたとき、多くの方がどうすればよいかわからず、深い不安と焦りを抱え込まれます。
数値が少しずつ動いているにもかかわらず、「治療薬がない」と言われてそのまま何もせずに次の検査を待つ——その「宙ぶらりんの時間」こそが、一番つらい期間ではないでしょうか。
今回は、病院で「様子を見ましょう」と言われる西洋医学的な理由(eGFRやクレアチニンの仕組み)と、経過観察の期間を「腎臓を守る体質づくりの前向きな時間」に変えていくための運動・食事の工夫、そして漢方のアプローチについて、薬剤師の視点から詳しく解説いたします。
【この記事の結論:「腎機能低下・経過観察中にできること」に対する漢方の考え方】
- 痛みの正体(原因): 西洋医学では腎臓のろ過装置(糸球体)の不可逆的な機能低下や血流不足とされますが、漢方では腎臓周辺のくすぶる炎症(湿熱)、微小血管の血流障害(瘀血)、および生命力を司る「腎」のエネルギー不足(腎虚)が根本原因と考えます。
- 漢方の解決策: 病院が「お薬で介入する段階ではない」と判断した経過観察の期間を利用し、漢方で「炎症抑制・血流改善・腎保護」の3方向から環境を整え、残された腎機能を守って悪化させにくい身体の土台を育てます。
- 対象となる主な疾患・お悩み: 慢性腎臓病(CKD)、eGFRの低下、クレアチニン高値、尿蛋白陽性、糖尿病性腎症、経過観察中の不安
病院で「様子を見ましょう(経過観察)」と言われる西洋医学的理由
血液検査の紙に書かれている「eGFR(推算糸球体ろ過量)」は、腎臓の中にあるフィルター(糸球体:しきゅうたい)が「1分間にどれくらいの血液を綺麗にろ過できているか」を示す数値です(正常値は60 mL/min/1.73m²以上)。
また、「クレアチニン(Cr)」は筋肉を使った際に出る老廃物であり、腎機能が落ちると尿から排泄されずに血液中に溜まって高くなります。
なぜ初期や軽度の低下で「お薬が出ない」のか?
西洋医学において、壊れてしまった糸球体を直接元通りに再生させる治療薬は現在のところ存在しません。そのため病院での治療は、主に以下の処方薬を使って「悪化のスピードを遅らせる」ことが中心となります。
- 降圧薬(ARB/ACE阻害薬など): 血圧を下げることで、糸球体にかかる過剰な圧力を減らして負担を軽減します。
- SGLT2阻害薬(フォシーガ、ジャディアンスなど): 血糖値を下げるだけでなく、腎臓を保護する働きが認められ、CKDの治療にも使われています。
- 球状吸着炭(クレメジンなど): 腸内で尿毒症の毒素を吸着して便と一緒に排泄し、腎臓の負担を減らします。
しかし、まだ血圧が高くなかったり、タンパク尿が軽度であったり、急激な数値の悪化が見られない段階では、「今すぐ強い西洋薬で介入する必要はない」と判断され、定期的な血液検査による「経過観察(様子見)」となるケースが一般的なのです。
つまり病院の「様子を見ましょう」は、決して見放されたわけではなく、「現時点では強い薬を使うリスクの方が高い」という医療上の慎重な判断です。
だからこそ、この「薬が出ない経過観察の期間」の過ごし方が、その後の腎機能の維持において重要な鍵を握ります。
【薬剤師コラム①】石川先生が解説:不安の正体は「何もできないこと」
担当薬剤師:石川 満理奈(調剤薬局での勤務経験あり)
「病院で『次は3ヶ月後に検査しましょう』と言われたけれど、その間に数値が悪くなったらどうしようと不安でたまりません」——太陽堂には、こうした切実なご相談が多く寄せられます。
患者さまのお話を丁寧にお伺いしていると、皆さまが抱えている不安の本当の正体は、数値そのものよりも「自分にやれることが何もない」という無力感なのだと感じます。
だからこそ、太陽堂では最初にご相談者さまへこうお伝えしています。「やれることは、ありますよ」と。
西洋医学のお薬で介入する前のアプローチとして、漢方には「腎臓のくすぶる炎症を抑え、血流を巡らせ、残された腎組織を保護する」という明確な役割があります。
「次の検査をただ待つ時間」を「自分の身体を内側から整える前向きな時間」に変えていくこと。自分自身で取り組める手段を持つこと自体が、不安な期間を乗り切るための何よりの心の支えになりますよ。
【比較表】西洋医学(病院の対応)と漢方薬(太陽堂)のアプローチの違い
| 比較項目 | 西洋医学(病院のアプローチ) | 漢方薬(太陽堂の体質ケア) |
| 主な目的 | 検査数値(eGFR・Cr)の定期観察、血圧や血糖の厳格管理 | 腎臓周辺の炎症の沈静化、微小血流の改善、残存組織の保護 |
| 得意なこと | 客観的な機能評価、急激な悪化や高血圧に対する降圧薬治療 | 薬が出ない「経過観察期間」の体質サポート、冷えや疲労感など体調の同時ケア |
| 代表的な手段 | 血液・尿検査、降圧薬(ARB等)、SGLT2阻害薬、食事指導 | 炎症を鎮める生薬、血流を促す活血薬、腎の土台を補う補腎薬の組み合わせ |
| 両者の関係性 | 危険な悪化や合併症を早期発見するための「安全のモニター」 | 悪化のスピードを少しでも緩やかにし、腎臓を守る「頼もしい土台作り」 |
漢方から見た「腎機能が低下しやすい体質」3つのタイプ
東洋医学において「腎(じん)」は、尿をつくる排泄器官としてだけでなく、生命力やエネルギー(精)を蓄える最も重要な土台と考えられています。
腎機能が低下傾向にある方は、主に以下の3つの体質タイプに分けられ、太陽堂ではこれらを組み合わせてオーダーメイドの処方を組み立てます。
① 腎臓に微小な炎症(熱)がくすぶっているタイプ(湿熱・炎症)
- 主な症状: 尿蛋白が出ていると言われた、口が渇きやすい、体がほてりやすい、尿が濁る・臭いが強い。
- 漢方的見解: 糸球体の周辺に「過剰な熱と粘り気のある湿気(湿熱)」がこもり、静かに慢性的な炎症を引き起こしている状態です。この火種が残された組織をじわじわと傷つけていきます。
- アプローチ: 腎臓のこもった熱と湿気を優しく和らげる生薬(黄芩、黄連、茵蔯蒿など)を用いて、炎症の火種を沈静化させます。
② 腎臓への毛細血管の血流が滞っているタイプ(瘀血:おけつ)
- 主な症状: 肩こりや腰痛が強い、手足や腰回りが冷える、顔色がくすみがち、高血圧や脂質異常症がある。
- 漢方的見解: 腎臓は細い毛細血管の集合体です。血流(血:けつ)が滞って「瘀血」になると、糸球体に十分な酸素と栄養が届かなくなり、ろ過効率が低下します。
- アプローチ: 滞った血流をスムーズに巡らせる生薬(丹参、川芎、牡丹皮など)を用いて、腎臓の微小循環を改善します。
③ 生命力や消化機能が落ちて腎臓が疲弊しているタイプ(腎虚・脾虚)
- 主な症状: 疲れやすく力が入らない、足腰がだるい、夜間に何度もトイレに起きる、胃腸が弱く食が細い。
- 漢方的見解: 加齢や過労、胃腸の弱り(脾虚)によって生命エネルギー(腎精)が消耗し、腎臓そのものを動かす体力が不足している状態です。
- アプローチ: 「腎」と「胃腸(脾)」を補強する生薬(地黄、山茱萸、人参、黄耆など)を用いて、身体の底力を支えて腎組織を保護します。
【薬剤師コラム②】林先生が解説:運動と食事で気をつけてほしいこと
担当薬剤師:林 泰太郎(調剤薬局での勤務経験あり)
病院で経過観察と言われた期間中、ご自宅で過ごす際の「運動と食事のポイント」について、太陽堂で日常的にお伝えしている大切な3つのアドバイスをご紹介します。
1. 無理のない「適度な運動」を継続しましょう
昔は「腎臓が悪い人は絶対に安静」と言われていましたが、近年では過度な安静よりも適切な運動(腎リハビリテーション)の方が腎機能の保護につながると考えられるようになっています。ウォーキングなどの軽い有酸素運動は、全身と腎臓の血流を促してくれます。「疲れない程度の散歩」を日課にしてみてください。
2. 自己判断で「タンパク質を極端に減らしすぎる」のは危険です
「腎臓病=タンパク質制限」という言葉だけを聞きかじり、自己判断で肉や魚、卵を一切食べないような過剰な制限をしてしまう方がいらっしゃいます。しかし、腎臓の組織や筋肉の維持にもタンパク質は必要です。極端な制限は体力を奪い、かえって筋力低下を引き起こしてしまうことがあります。タンパク制限は病院の主治医や管理栄養士の具体的な指示に従ってください。
3. カリウムが気になる方は「水さらし・茹でこぼし」の工夫を
血液検査で「カリウム値が高い」と指摘されている方は、生の野菜や果物の摂り過ぎに注意が必要です。カリウムは水に溶け出す性質があるため、「野菜を細かく切って水にさらす」「サッと茹でて煮汁を捨てる(茹でこぼし)」という下ごしらえのひと手間で、食事のカリウム量を減らすことができますよ。
【サポート実例】太陽堂での体質ケアのエピソード
【慢性腎不全+糖尿病・クレアチニン2.34】昭和49年生 男性|2ヶ月で2.0まで改善し、安定
【ご相談時の状態】 10年ほど前に病院で「腎不全」と診断され、腎臓の数値が上がってきたことが心配になり太陽堂へご相談に来られました。血液検査はクレアチニン2.34・HbA1c7.4で、手足のしびれも出ていました。
【太陽堂の提案】 ①腎臓の炎症を改善する漢方薬 ②血流を整える漢方薬 ③腎臓の保護をする漢方薬 の3種類を組み合わせてお渡ししました。
- 2ヶ月後: クレアチニンが2.0まで改善し、順調に良くなってきました。
- 7ヶ月後: 調子は安定し、しびれなどの症状も出ていません。
- 10ヶ月後: 検査はまだですが、引き続き調子良く過ごせています。
※効果の感じ方や必要な期間には個人差があります。
よくあるご質問(FAQ)
病院で「まだお薬はいらない」と言われています。この段階から漢方薬を始めても大丈夫ですか?
はい、むしろ「経過観察」の段階こそ、漢方による体質ケアの良いタイミングです。
西洋医学の「まだお薬はいらない」は、強い西洋薬で介入する段階ではないという意味です。悪化を待つのではなく、薬が出ない今のうちに内側から身体の土台を整えておくのが漢方の役割です。病院の定期検査は必ず受けてくださいね。
減塩以外に、食事は何をどこまで気をつければ良いですか?
自己判断で極端な制限をせず、まずは「塩分を控えること」と「過剰な油物・白砂糖を控えること」から始めましょう。
タンパク質やカリウムの制限範囲は、腎機能のステージ(進行度)によって全く異なります。自己流の過激な制限はせず、必ず病院の医師や管理栄養士の指導をベースにしてください。ご不明な点はご相談時にお伺いいたします。
どのくらいの期間で変化が分かりますか?
お身体の状態によりますが、まずは「3ヶ月」を一区切りの目安としてお願いしております。
3ヶ月で治るという意味ではなく、身体のだるさの和らぎや検査数値の傾向など、少し変化を感じられる可能性が出てくる目安です。定期検査のデータを一緒に確認しながら進めてまいります。
まとめ:「待つだけの経過観察」を「身体の土台づくりの時間」に変えよう
病院の診察室で「経過観察で様子を見ましょう」と言われた時間は、決して「何もできずに諦めて待つ時間」ではありません。
- 「様子見」の間に、ウォーキングなどの適度な運動で全身の血流を促す
- 自己判断で過剰なタンパク制限をせず、塩分を控え、カリウムは水さらしで工夫する
- 漢方薬で「炎症抑制・血流改善・腎保護」の3方向から腎臓が働きやすい環境を育てる
次の検査までの数ヶ月間を、ただ不安に過ごすのか、それとも未来の自分の身体のために土台作りの期間として使うのか。
「今のうちにできることを始めたい」
「自分の検査データに合わせた体質ケアを知りたい」
そんな方は、直近の検査結果を持って、どうぞお気軽に太陽堂へご相談ください。
【ご相談をご希望の方へ】
慢性腎臓病(CKD)に対する具体的な漢方アプローチについては、こちらのページにて詳しく解説しております。全国対応のオンライン相談も承っております。
関係性の深い病気;ご相談も多数いただいております。
ご自身の状態に近いものを下の表から選んで、詳しいページをご覧ください。
| こんな方は | 病気・記事 | 詳しいページ |
| eGFR・クレアチニンの数値が気になり、腎臓を体質から守りたい | 慢性腎臓病(CKD) | 👉 慢性腎臓病でお悩みの方へ |
| 「クレアチニンを下げる漢方はある?」への正直な答えを知りたい | クレアチニンと漢方(記事) | 👉 クレアチニンの記事へ |
| 高血圧から腎機能の低下を指摘されている | 腎硬化症 | 👉 腎硬化症でお悩みの方へ |
| 糖尿病をお持ちで、腎臓の数値も気になり始めた | 糖尿病性腎症 | 👉 糖尿病性腎症でお悩みの方へ |
太陽堂の特徴
”当薬局のHPをご覧いただき、ありがとうございます。
私たち太陽堂は「一人でも多くの方の笑顔を見る為に」という思いのもと開局しました。
漢方薬とお客様の出会いがお悩み、体質改善の一助になれれば幸いです。”
特徴その1.
当薬局では、お客様「ひとりひとりに合わせた漢方薬」をその場で調合いたします。
そのため初めてのご相談では、「約1時間~1時間半」ほど相談時間をいただいております。
(遠方のお客様や、お忙しいお客様へは配送の受付もしております。詳しくはお問合せください)
特徴その2.
お作りする漢方薬は、国内外から厳選した生薬の力を、余すことなくお客様に届けるため
「煎じ薬」をお勧めしております。
特徴その3.
当薬局は漢方専門の薬剤師が「得意とする専門分野」にわかれて日々研鑽しています。
お客様の健康を第一に考え、漢方の勉強会なども積極的に開催しております。
記事作成者 薬剤師 石川 満理奈

得意な疾患:胃腸疾患・耳鼻咽喉疾患・不妊症・婦人科・肝臓・腎臓
開業医だった父の影響で小さい頃から医療は身近に。
薬学部を卒業後、調剤薬局に勤務。
自分自身の胃腸の不調も漢方薬により改善。
よりご来局頂いた方の体質に沿った治療の選択をできるようになりたいという思いから「漢方の道」へ。
記事作成者 薬剤師 林 泰太郎

実績:伝統漢方研究会 2015~2017年・2019年・2020年・2022年・2025年 学術発表
調剤薬局で3年間勤め、西洋の薬だけでは治療が難しい病気の壁に直面。
・「治療の難しい病気をなんとか治したい。」
・「ひとりでも多くの患者さんを笑顔にしたい。」
という想いから漢方の道へ。
漢方薬局で3年間修業をして、2015年 『漢方薬局 太陽堂』を立ち上げ。
開局10年を迎えた今も1ヶ月の平均来局数は900名を超え、お客様にご愛顧いただいている太陽堂の漢方薬剤師です。








