
「健康診断の尿検査で『蛋白尿(または血尿)』の再検査通知が届いた」
「病院で精密検査を受けたけれど『まだ治療の段階ではないので、経過観察しましょう』と言われ、本当に放置して大丈夫なのか不安」
「20代・30代の若さで尿検査に引っかかってしまい、将来が不安になった」
健診で尿の異常を指摘されると、「腎臓が壊れ始めているのではないか」と強いショックや不安を受ける方が多くいらっしゃいます。太陽堂にも、若い世代からご年配の方まで、蛋白尿や血尿に関するご相談が寄せられています。
しかし結論からお伝えすると、蛋白尿や血尿が出たからといって、すぐに「深刻な腎臓病」だと決まったわけではありません。
今回は、尿検査の仕組みと西洋医学的な「経過観察」の本当の意味、そして焦らずに自分の体を正しく守っていくための漢方の考え方について、薬剤師の視点から詳しく解説いたします。
【この記事の結論:「健診での蛋白尿・血尿」に対する漢方の考え方】
- 痛みの正体(原因): 西洋医学では体調変化による一時的なろ過膜の変化、あるいはIgA腎症等の初期慢性腎炎とされますが、漢方では疲労による「気(エネルギー)」の低下や、腎臓周りにこもった熱(湿熱)、血流の滞り(瘀血)が要因と考えます。
- 漢方の解決策: 血液検査数値(クレアチニン・eGFR)が正常で無症状な段階では焦って治療を始めず、定期検査を続けながら、数値に動きが出た際や確定診断(IgA腎症等)がついた段階で、腎臓の炎症・血流・ろ過機能を体質から整えます。
- 対象となる主な疾患・お悩み: 蛋白尿、血尿・潜血反応、無症候性蛋白尿、IgA腎症、慢性腎臓病(CKD)初期、健診で再検査と言われた方
蛋白尿・血尿が出る西洋医学的な仕組みと「経過観察」の意味
私たちの腎臓には、「糸球体(しきゅうたい)」と呼ばれる毛細血管が丸まった高性能なろ過フィルターが左右合わせて約200万個存在しています。
通常、血液が糸球体を通過する際、身体に必要な「タンパク質」や「赤血球」はフィルターの網目を通過できず、血液中に回収されます。尿として排泄されるのは、余分な水分と老廃物だけです。
しかし、何らかの理由でこのフィルターの網目がゆるんだり、炎症を起こして傷ついたりすると、タンパク質が漏れ出て「蛋白尿」になり、赤血球が漏れ出て「血尿(潜血)」になります。
なぜ「1回の検査」で腎臓病と決めつけられないのか?
尿検査(試験紙法)は非常にデリケートで敏感な検査です。実は、腎臓そのものに病気がなくても、以下のような一時的な体調の変化によって蛋白や血尿が検出されることがよくあります。
- 激しい運動や筋トレを行った直後(運動性蛋白尿)
- 長時間の立ち仕事や姿勢(起立性蛋白尿)
- 過度なストレスや強い疲労の蓄積
- 発熱時や風邪を引いているとき
- 水分不足による尿の濃縮
そのため病院では、1回の尿検査で「陽性(+)」が出たからといって直ちに「腎臓病」と確定診断することはせず、時間をおいて再検査を行い、一時的なものか持続的なものかを見極めます。
見極めの鍵は「血液検査の数値(クレアチニン・eGFR)」
西洋医学において、蛋白尿や血尿の「深刻さ」を正しく評価するためには、尿検査だけでなく血液検査の数値をセットで見ることが不可欠です。
- クレアチニン(Cr): 筋肉を使った後に出る老廃物。腎臓のろ過機能が落ちると血液中に溜まり、数値が高くなります。
- eGFR(推算糸球体ろ過量): 腎臓が1分間にどれだけの血液を綺麗にできるかを示す指標です。
尿に蛋白や潜血反応が出ていても、血液検査のクレアチニンやeGFRが正常範囲内で安定しており、浮腫(むくみ)や高血圧などの自覚症状がない状態を「無症候性蛋白尿・血尿」と呼びます。
病院で「経過観察でいいでしょう」と言われたのは、放置してよいという意味ではなく、「現時点では無理に強いお薬を使う段階ではなく、腎機能自体は保たれているので、時間をかけて観察しましょう」という西洋医学的な正当な判断なのです。
【薬剤師コラム①】石川先生が解説:焦らなくていい。でも、忘れないでほしいこと
担当薬剤師:石川 満理奈(調剤薬局での勤務経験あり)
健診の結果用紙で「蛋白尿+1」や「要再検査」の文字を見て、強い不安を抱えて太陽堂へご相談に来られる患者さまに、私はまず正直にこうお伝えしています。
「血液検査の数値(クレアチニン・eGFR)が正常で、大きな症状も出ていない無症候性の段階なら、そもそもまだ、焦って無理に治療を始めなくて良いことが多いですよ」
漢方薬局がこのようなことをお伝えするのは、少し意外に思われるかもしれません。しかし、一時的な疲れや運動でも出やすい尿検査の結果だけで過剰に不安を煽り、漢方薬を無理にお勧めするのは、誠実ではないと考えているからです。
ただし、「焦らなくていい」ということと「すべて忘れて放置していい」ということは全く違います。皆様にお願いしたい大切なルールは以下の2つです。
- 定期的な検査(年1回の健診や数ヶ月ごとの尿・血液検査)は必ず続けること。
- 病名(IgA腎症など)が確定した時、またはクレアチニン等の数値が動いた時が「本格的な体質ケアの始めどき」であると知っておくこと。
「経過観察」と言われた期間は、パニックになる時間ではなく、ご自身の生活習慣や疲れの溜まり具合を優しく見直す貴重な準備期間と捉えてくださいね。
【比較表】西洋医学(病院の経過観察・治療)と漢方薬(太陽堂)のアプローチの違い
| 比較項目 | 西洋医学(病院のアプローチ) | 漢方薬(太陽堂の体質ケア) |
| 主な目的 | 定期検査による進行の判定、腎生検による病因確定、降圧薬等の処方 | 腎臓周辺のこもった熱(炎症)の鎮静、微小血流改善、ろ過機能の補強 |
| 得意なこと | 腎生検による組織診断(IgA腎症等)、クレアチニン数値の正確な管理 | 「経過観察」と言われた不安の整理、疲れや冷えのケア、初期炎症への予防的サポート |
| 代表的な手段 | 定期尿検査・血液検査、腎生検、ARB/ACE阻害薬、ステロイドパルス療法 | 清熱解毒薬(炎症を抑える)、活血薬(血流改善)、補気薬(気を補う)の選定 |
| 両者の関係性 | 病態の変化を客観的数値で早期発見する「観察の防波堤」 | 数値に動きが出た際に、身体の内側から腎臓を守る「頼もしい土台作り」 |
漢方から見た「蛋白尿・血尿が出やすい体質」3つのタイプ
経過観察の段階を経て、精密検査(腎生検など)で「IgA腎症」などの病名がついたり、クレアチニンやBUN(尿素窒素)の数値が上がり始めたりした場合は、本格的な漢方による体質ケアの出番となります。
東洋医学では、腎臓のフィルターから蛋白や赤血球が漏れ出てしまう背景を、主に以下の3つの体質タイプから見立てて整えます。
① 疲れや過労でろ過バリアのキープ力が落ちているタイプ(脾虚・気虚)
- 主な症状: 夕方になると身体や足がだるい、疲れると蛋白尿が出やすい、風邪を引きやすい、食後に眠くなる。
- 漢方的見解: 東洋医学において「気(エネルギー)」には、体内の必要な物質(蛋白や血液)を外に漏らさず留めておく「固摂作用(こせつさよう)」という働きがあります。過労や胃腸の弱り(脾虚)で気が不足すると、ろ過バリアのキープ力が落ちて蛋白が漏れ出やすくなります。
- アプローチ: 胃腸の働きを助け、気を補う生薬(人参、黄耆、白朮など)を用いて、漏れ出さない固摂力を取り戻します。
② 腎臓の中に熱や炎症がくすぶっているタイプ(湿熱・IgA腎症など)
- 主な症状: 風邪を引いた後や喉が痛むと血尿(潜血)が強くなる、口が渇きやすい、体がほてりやすい、尿の色が濃い。
- 漢方的見解: 体内に侵入した邪気や偏った食事によって、腎臓の中に粘り気のある熱(湿熱)がこもり、慢性的な微小炎症を引き起こしている状態です。IgA腎症の初期などに多く見られます。
- アプローチ: 腎臓のこもった熱と炎症を静かに冷ます生薬(黄芩、黄連、牡丹皮、阿膠など)を用いて、傷ついたろ過フィルターを保護します。
③ 毛細血管の血流が滞っているタイプ(瘀血:おけつ)
- 主な症状: 冷え性がある、肩こりや腰痛が強い、唇や舌の色が暗い紫っぽい、検査で潜血反応が続く。
- 漢方的見解: 糸球体毛細血管の血流(血:けつ)が滞って「瘀血」となり、ろ過膜に過剰な負担がかかっている状態です。
- アプローチ: 滞った血流をスムーズに巡らせる生薬(川芎、丹参、桃仁など)を用いて、腎臓の微小循環を改善し、フィルターにかかる圧力を和らげます。
【薬剤師コラム②】林先生が解説:数値が動き出したら、そこが体質ケアの始めどき
担当薬剤師:林 泰太郎(調剤薬局での勤務経験あり)
「無症候性の段階なら焦らなくていい」とお伝えしましたが、血液検査のデータ(クレアチニンやeGFR)を定期的にチェックすることは、ご自身の体を守るうえで極めて重要です。
もし、病院での経過観察を続けていく中で、
- 「クレアチニンの数値が少しずつ上向き始めた」
- 「eGFRが年々低下してきている」
- 「腎生検で『IgA腎症』などの確定診断がついた」
という変化が現れたならば、そこが本格的に漢方薬による体質ケアを始めるタイミングです。
腎臓の糸球体組織は、完全に破壊されて硬化(線維化)してしまうと元に戻すことが非常に難しくなります。しかし、炎症やくすぶりによって「休眠している組織」が残っている段階で体質ケアを開始できれば、残された腎機能を保護し、悪化のスピードを緩やかにすることを目指せます。
数値や病名という「客観的なサイン」を逃さず、適切なタイミングで身体の内側からの手当てを加えていきましょう。
【サポート実例】太陽堂での体質ケアのエピソード
【IgA腎症・蛋白尿+1・クレアチニン上昇】昭和50年生 男性|数値が改善し安定
【ご相談時の状態】 2年ほど前に病院で「IgA腎症」と診断。その後、クレアチニンの数値が上がってきたことを心配されて太陽堂へご相談に来られました。ご相談時の血液検査データはクレアチニン1.56・蛋白尿+1で、自覚症状は特にありませんでした。
【太陽堂の提案】 ①腎臓のこもった炎症を取る漢方薬 ②腎臓の血流を良くする漢方薬 の2種類を組み合わせてお渡ししました。
- 1ヶ月後: クレアチニンが1.33へ下がり、蛋白尿も±0に改善。
- 3ヶ月後: クレアチニンがさらに1.17まで改善。体調も良く、元気に過ごせているとのことでした。
- 9ヶ月〜1年後: クレアチニン1.1台で安定し、潜血・蛋白ともに±。体調良く過ごせているとのことでした。
- 2年7ヶ月後: 引き続き数値は安定し、体調良く過ごされています。
※効果の感じ方や必要な期間には個人差があります。
自宅でできるセルフケア・日常生活の注意点
健診で蛋白尿や血尿を指摘された段階から取り入れられる、腎臓に優しい生活習慣をご紹介します。
- 風邪や感染症の予防を徹底する: IgA腎症をはじめとする腎炎は、風邪や喉の炎症(扁桃炎など)をきっかけに蛋白尿や血尿が強くなることがあります。手洗い・うがいの徹底と、喉の乾燥を防ぎましょう。
- 過労を避け、十分な睡眠をとる: 身体の激しい疲労は「気」を消耗させ、ろ過バリアのキープ力を低下させます。夜は早めに布団に入り、身体を休ませましょう。
- 自己判断で「過度なタンパク質制限」をしない: ネットの情報だけで肉や魚、卵を一切食べないような極端な制限をすると、かえって身体を弱らせてしまいます。食事制限は必ず病院の医師や管理栄養士の具体的な指導に基づいて行いましょう。
- 「塩分」を控えめにする: 塩分の摂り過ぎは血圧を上げ、糸球体の毛細血管に負担をかけます。まずは汁物の汁を残す、減塩調味料を使うなど、無理のない塩分ケアから始めましょう。
- 身体を冷やさない: 冷えは下半身の血流を悪化させ、腎臓への酸素供給を妨げます。温かいお風呂に入り、腹巻などで腰回りを保温しましょう。
よくあるご質問(FAQ)
若くても本格的な腎臓の病気の可能性はありますか?
はい、可能性はゼロではありません。だからこそ定期的な検査の継続が大切です。
例えば「IgA腎症」などは、20代〜30代の若い世代で発見されることが多い代表的な慢性腎炎です。初期は痛みがなく無症状で進むため、健診の尿検査はそうした病気のサインを早期発見するための重要な入り口となります。指摘が何度も続く場合は、一度腎臓内科で精密検査を受けておくことをお勧めします。
経過観察と言われている無症状の段階でも、漢方相談をする意味はありますか?
不安の整理や、普段の疲労・冷えといった体調の土台作りの意味ではあります。
ただし、お身体の状態(検査数値が正常で安定している場合など)によっては、薬剤師から「今の段階では無理に漢方薬を飲まなくても大丈夫ですよ」と正直にお伝えすることもあります。ご自身の今の段階を正しく把握し、過度な不安を解消するための整理の場としてご活用ください。
病院で降圧薬などの西洋薬を処方されている場合、併用しても大丈夫ですか?
はい、基本的には安心して併用していただけます。
病院のお薬で血圧などをコントロールしながら、漢方薬で「血流改善やろ過機能の補強」を行うのは相性の良いアプローチです。服用のタイミングをずらしていただければ問題ありません。お使いのお薬手帳をぜひご提示ください。
漢方薬を始めた場合、どのくらいの期間で数値の変化を評価しますか?
お身体の状態によりますが、まずは「3ヶ月」を一区切りの目安としてお願いしております。
3ヶ月で治るという意味ではなく、検査結果の数値や体調面に少し変化を感じられる可能性が出てくる目安です。数ヶ月ごとの検査結果の紙を一緒に確認しながら進めてまいります。
まとめ:焦らず、忘れず、数値が動いたら早めの体質ケアを
健康診断の尿検査で「蛋白尿」「血尿」と書かれているのを見たときのショックや不安は、とても大きいものです。しかし、太陽堂からお伝えしたいメッセージは以下の3つです。
- 蛋白尿や血尿が出たことだけで、すぐに深刻な腎臓病だと決めつけないこと
- 血液検査(クレアチニン・eGFR)が正常で無症状なら、焦って治療を始めなくて良いことが多い
- ただし検査を忘れず継続し、病名がついた時や数値が動いた時が「本格的な体質ケアの始めどき」
「経過観察と言われたけれど、どう過ごせばいいのか分からない」
「今の自分の段階を客観的に見てほしい」
そんなお悩みを抱えている方は、どうぞ一人で抱え込まずにお気軽に太陽堂へご相談ください。今が慌てる段階なのかどうかも含めて、正直にお伝えいたします。
【ご相談をご希望の方へ】
無症候性血尿・蛋白尿に対する太陽堂の考え方については、こちらのページにて詳しく解説しております。全国対応のオンライン相談も承っております。
関係性の深い病気;ご相談も多数いただいております。
ご自身の状態に近いものを下の表から選んで、詳しいページをご覧ください。
| こんな方は | 病気・記事 | 詳しいページ |
| 健診の蛋白尿・血尿を指摘され、経過観察と言われている | 無症候性血尿・蛋白尿 | 👉 無症候性血尿・蛋白尿の解説へ |
| 精密検査でIgA腎症と診断された | IgA腎症 | 👉 IgA腎症でお悩みの方へ |
| 蛋白尿が多く、むくみを伴っている | ネフローゼ症候群 | 👉 ネフローゼ症候群でお悩みの方へ |
| クレアチニンの数値が上がり始めて心配 | クレアチニンと漢方(記事) | 👉 クレアチニンの記事へ |
太陽堂の特徴
”当薬局のHPをご覧いただき、ありがとうございます。
私たち太陽堂は「一人でも多くの方の笑顔を見る為に」という思いのもと開局しました。
漢方薬とお客様の出会いがお悩み、体質改善の一助になれれば幸いです。”
特徴その1.
当薬局では、お客様「ひとりひとりに合わせた漢方薬」をその場で調合いたします。
そのため初めてのご相談では、「約1時間~1時間半」ほど相談時間をいただいております。
(遠方のお客様や、お忙しいお客様へは配送の受付もしております。詳しくはお問合せください)
特徴その2.
お作りする漢方薬は、国内外から厳選した生薬の力を、余すことなくお客様に届けるため
「煎じ薬」をお勧めしております。
特徴その3.
当薬局は漢方専門の薬剤師が「得意とする専門分野」にわかれて日々研鑽しています。
お客様の健康を第一に考え、漢方の勉強会なども積極的に開催しております。
記事作成者 薬剤師 石川 満理奈

得意な疾患:胃腸疾患・耳鼻咽喉疾患・不妊症・婦人科・肝臓・腎臓
開業医だった父の影響で小さい頃から医療は身近に。
薬学部を卒業後、調剤薬局に勤務。
自分自身の胃腸の不調も漢方薬により改善。
よりご来局頂いた方の体質に沿った治療の選択をできるようになりたいという思いから「漢方の道」へ。
記事作成者 薬剤師 林 泰太郎

実績:伝統漢方研究会 2015~2017年・2019年・2020年・2022年・2025年 学術発表
調剤薬局で3年間勤め、西洋の薬だけでは治療が難しい病気の壁に直面。
・「治療の難しい病気をなんとか治したい。」
・「ひとりでも多くの患者さんを笑顔にしたい。」
という想いから漢方の道へ。
漢方薬局で3年間修業をして、2015年 『漢方薬局 太陽堂』を立ち上げ。
開局10年を迎えた今も1ヶ月の平均来局数は900名を超え、お客様にご愛顧いただいている太陽堂の漢方薬剤師です。









