
「人前で字を書こうとすると手が震えてしまい、書類にサインができない」
「会食でグラスを持つ手が震えてこぼしそうになる。お酌をする場面が来るのが怖くてたまらない」
「病院で薬を勧められたけれど、『喘息があるからβ遮断薬は使えない』と言われた。他の薬も、緊張が強いときはあまり効いている気がしない……」
特定の動作をするときに手や首が震える「本態性振戦(ほんたいせいしんせん)」。
太陽堂にご相談に来られる方の多くが、字を書く、食事をする、スマホを操作するといった「人前での困る場面のつらさ」と、病院のお薬の選択肢が限られてしまうという「薬への行き止まり感」の両方を深く抱えていらっしゃいます。
今回は、本態性振戦における病院のお薬でよくある悩みを整理したうえで、太陽堂が導き出した答えである「震える側と、緊張する側の『両方』にアプローチする」という漢方の考え方を、震えのない日が増えていった実例とともに、薬剤師の視点から詳しく解説いたします。
【この記事の結論:「本態性振戦の薬の悩み」に対する漢方の考え方】
- 不調の正体(原因): 西洋医学でははっきりした原因がないまま交感神経が興奮して震えが出るとされますが、漢方では筋肉の過度な緊張と、自律神経の過敏な乱れが重なり合って起きると考えます。そして「緊張するから震える→震えるからもっと緊張する」という悪循環が、店頭でも3割前後の方に見られます。
- 薬の行き止まり感: β遮断薬は喘息のある方には使えず、抗てんかん薬や抗不安薬は緊張が強いと効きにくいという声をよく伺います。頓服の抗不安薬を長く続けることによる依存性の心配も、よくあるご相談です。
- 漢方の解決策: ①筋の緊張を解きほぐす(震える側) ②自律神経の過緊張を和らげる(緊張する側)——この両面アプローチで、震えにくい身体の土台を育てます。
- 対象となる主な疾患・お悩み: 本態性振戦、書痙(しょけい)、手・首・声の震え、喘息でβ遮断薬(アロチノロール等)が使えない方、薬が効きにくい方、頓服薬に頼り続けるのが不安な方、緊張の悪循環から抜け出したい方
なお、病気そのものの基本的な解説と症例は本態性振戦の専門ページにまとめています。この記事では「薬の悩みと、震え・緊張の両面ケア」に絞ってお話しします。
本態性振戦とは?パーキンソン病との違いと、薬の選択肢
本態性振戦は、現在の医学において「はっきりした原因が不明(本態性)」のまま、手や首、声などが震える病気です。
最大の特徴は、字を書く、コップを持つ、箸を使うなど「何か動作をしようとしたとき(姿勢時・運動時)」に震えが出やすいことです。じっと安静にしている時に震えが出やすい「パーキンソン病」とは、この点で大きく区別されます。
命に関わる病気ではありませんが、仕事や食事など「人前での動作」で震えが出るため、日常生活の質(QOL)を大きく落としてしまう、非常に辛いお悩みです。
病院で使われる主なお薬と、よく伺う「悩み」
病院(神経内科など)では、交感神経の興奮を抑えるお薬が処方されます。
- β遮断薬(アロチノロールなど): 震えを抑える第一選択の代表的なお薬です。しかし、気管支を収縮させる作用があるため、気管支喘息の持病がある方には絶対に使えません。「一番効くと言われた薬が、使いたくても使えない」という悲痛な声を店頭でもよく伺います。
- 抗てんかん薬(クロナゼパム等): β遮断薬が使えない・効かない場合の第二選択として使われますが、眠気やふらつきの副作用が気になって続けられない方がいらっしゃいます。
- 抗不安薬(デパス等・頓服): 緊張を和らげるため、大事な場面の前に飲む使い方です。しかし、「緊張が極度に強い場面では効き目を実感しにくい」という声や、「長く飲み続けることによる依存性が心配で、ずっと頓服頼みでいいのか不安」という声が絶えません。
こうした「使えない・効きにくい・頼り続けるのが不安」という行き止まり感こそ、太陽堂の漢方相談にたどり着く方の一番多い入り口なのです。
【薬剤師コラム①】「緊張→震え→また緊張」の悪循環、断ち方には順番があります
担当薬剤師:前原
本態性振戦のご相談をお受けしていると、実に3割前後の方に「緊張するから手が震える → 震えているのを人に見られるから、恥ずかしくてもっと緊張する」という、強烈な悪循環が見られます。
たとえば、受付で字を書く場面で一度でも手が震えてしまうと、次にペンを持つときに「また震えたらどうしよう、変に思われるんじゃないか」と強く身構えてしまいます。この「予期不安による身構え」が自律神経を極限まで緊張させ、さらに激しい震えを呼んでしまうのです。
ここでとても大切なのは、震えの根っこには「筋肉の緊張」と「気持ちの緊張」という、2つの全く異なる緊張が重なり合っているということです。
病院のお薬で筋肉の震えの信号だけを抑えようとしても、「また震えるかも」という気持ちの緊張が残っていれば、それが引き金になって悪循環が回り続けてしまいます。
だからこそ太陽堂では、「震える側(筋肉の緊張を解きほぐす)」と、「緊張する側(自律神経を整え、気持ちを落ち着ける)」のどちらにも同時にアプローチします。
漢方で震えが少し治まると、「あ、今日は字が書けた」「今日は手が震えなかった」という経験が積み上がります。すると、気持ちの緊張も少しずつほどけていく——悪循環を「良い循環」に掛け替えていくことが、私たちの目指す道筋です。
【比較表】西洋医学(病院)と漢方薬(太陽堂)のアプローチの違い
| 比較項目 | 西洋医学(病院のアプローチ) | 漢方薬(太陽堂の体質ケア) |
| 主な目的 | β遮断薬等で、神経から筋肉への震えの信号を物理的に抑え込む | 筋の緊張と気持ちの緊張の両方を整え、震えの出にくい体質を育てる |
| 得意なこと | お薬が効く方には、速やかな震えの軽減と即効性 | 薬が使えない・効きにくい方の受け皿、悪循環そのものへの根本アプローチ |
| 代表的な手段 | β遮断薬(アロチノロール)、抗てんかん薬、抗不安薬(頓服) | 自律神経を整える漢方薬、筋の緊張を解きほぐす漢方薬の組み合わせ |
| 気になる点 | 喘息でβ遮断薬が使えない、極度の緊張下では効きにくい、頓服の依存性 | 体質の変化を実感するまでに一定の期間(まずは3ヶ月が目安)が必要 |
| 両者の関係性 | 特定の場面を速やかにしのぐための「即戦力」 | 震えの出にくい土台を内側からじっくり育てる「頼もしい体質ケア」 |
漢方から見た本態性振戦——「震える側」と「緊張する側」の両面ケア
太陽堂では、本態性振戦の患者さまの年齢層(60代以上が3〜4割、40〜50代が3〜4割、30代以下のお若い世代も2割程度いらっしゃいます)や、お仕事の場面での困りごとに合わせて、以下の「2つのアプローチ」をオーダーメイドで配合します。
アプローチ① 震える側——筋の緊張を解きほぐす(平肝熄風:へいかんそくふう)
- 狙い: 震えが起きている現場である「筋肉の過剰な緊張(こわばり)」を優しく解きほぐします。東洋医学でいう「内風(ないふう:体内に異常な風が吹いている状態)」を鎮める漢方薬(釣藤鈎、天麻など)が中心となり、実例でも軸になっている柱です。
アプローチ② 緊張する側——自律神経と気持ちを整える(疏肝理気・安神)
- 狙い: 「また震えたらどうしよう」という強い身構えや、日々のストレスの溜め込みに対して、自律神経の昂りを鎮め、気持ちを落ち着かせる漢方薬(柴胡や酸棗仁など)を合わせます。悪循環の「緊張側」を根本から断ち切る重要な柱です。
「震える側」と「緊張する側」、どちらの漢方薬をどれだけ厚く配合するかは、震えの出る場面(安静時か動作時か、一人でも震えるか人前だけか)や体質を丁寧にお伺いしながら決めていきます。
【薬剤師コラム②】頓服を手放せない不安と、市販の「芍薬甘草湯」を試した方へ
担当薬剤師:林
「大事な会議や会食の前は、必ず病院の頓服(抗不安薬)を飲みます。でも、これをこの先ずっと何年も続けるとなると、依存性が心配で……」
——店頭で、働き盛りの世代の方からこのご相談を本当によくお受けします。
頓服薬は、震えられない場面をしのぐための「大切な味方(お守り)」です。しかし、長期の服用で依存性が高まる可能性は確かに指摘されています。だからこそ、頓服薬で安心を確保しながら、漢方薬で「そもそも震えが出にくい体質」を育てていくという役割分担を私たちはおすすめしています。頓服に頼る場面を少しずつ減らしていくことを、一緒に目指しましょう。
もう一つ、最近店頭でよく伺うのが、「ネットで調べて、市販の『芍薬甘草湯(しゃくやくかんぞうとう)』を自分で買って試してみたけれど、全く変わりませんでした」というお声です。
私の答えはいつもシンプルです。「緩和が見られるなら続けてもよいですし、変わらないなら中止してもよいのでは」——と。
市販の芍薬甘草湯(こむら返り等によく使われる薬)で変化がなかったとしても、「漢方という治療法全体があなたの体質に合わない」という意味では決してありません。本態性振戦は、単なる筋肉の痙攣ではなく、「筋」と「気持ち」の両面から、プロの目で体質に合わせて複数の生薬を組み合わせてこそ、初めて力を発揮する複雑な分野です。自己流で試して行き止まりを感じたら、ぜひ一度ご相談にいらしてください。
【サポート実例】震えが治まっていったエピソード
①【手の震え・動悸】50代 男性|5ヶ月で震えが半分に、2年2ヶ月で症状のない日も多く
【ご相談時の状態】 5年前から違和感を覚え、病院で「本態性振戦」と診断。経過観察で様子を見ていたものの症状が強くなってきたため、ご相談に来られました。手の震え・動悸が気になり、緊張するとさらに手が震えるとのことでした。
【太陽堂の提案】 ①自律神経を整える漢方薬 ②筋の緊張を解きほぐす漢方薬 をお渡ししました。まさに「緊張する側」と「震える側」の両面アプローチです。
- 2ヶ月後: 手の震えが治まっている感じがするとのこと。
- 5ヶ月後: 当初に比べて震えが半分ぐらいに減っているとのこと。
- 10ヶ月後: 震えが落ち着いてきたので、漢方の量を減らして様子を見ることに。
- 2年2ヶ月後: 量を減らしても震えは減っており、症状のない日も多いとのことでした。
②【右手の震え・緊張時に悪化】30代 女性|2ヶ月で「人と会うときでも治まっている」
【ご相談時の状態】 3年ほど前から症状が気になり始め、病院で本態性振戦と診断された方です。両手、特に右手の震えが気になり、緊張したときに強く出やすいとのことでした。
【太陽堂の提案】 ①自律神経や筋の緊張を鎮める漢方薬 をお渡ししました。
- 1ヶ月後: 震えが治まってきているのを感じられるようになりました。
- 2ヶ月後: 人と会うときでも震えが治まっているとのことでした。
※効果の感じ方や必要な期間には個人差があります。症状の改善を100%保証するものではありません。
ご自宅でできる、震えとうまく付き合う暮らしの基本
- カフェインと「睡眠不足」に気をつける: コーヒー、紅茶、緑茶、エナジードリンクなどのカフェインの過剰摂取や、寝不足は、交感神経を刺激して震えを強くしやすい要因です。大事な場面の前日は、特にカフェインを控え、早めに休むことを意識してみてください。
- 「震えてもいい場面」を意識して増やす: 震えを必死に隠そうとするほど、身体の緊張は強まります。信頼できる友人や同僚に、あらかじめ「私、緊張すると手が震えるクセがあるんです」とカミングアウト(先に伝える)しておくだけで、身構えがほどけて震えが出にくくなる方が多くいらっしゃいます。
- 困る場面を具体的にメモしておく: 字を書くとき・食事のとき・お酌の場面・細かい作業・スマホ操作——どの場面でどのくらい困るのかのメモは、太陽堂での漢方組み立ての非常に大切な手がかりになります。
よくあるご質問(FAQ)
本態性振戦は、漢方薬で良くなりますか?
「震える側」と「緊張する側」の両方を整えることで、震えの頻度や強さを減らし、症状のない日を増やしていくことを目指せます。
実例のように、2ヶ月で人と会う場面の震えが治まった方や、じっくり続けて症状のない日が多くなった方がいらっしゃいます。ただし効果の出方には個人差があります。
喘息があって、病院でβ遮断薬(アロチノロール等)が使えないと言われました。
そうした方にこそ、漢方薬は有力な選択肢の一つとなります。
「β遮断薬が使えない」という理由でご相談に来られる方は決して少なくありません。漢方薬は喘息の有無にかかわらず、体質に合わせて組み立てられます。喘息の治療との兼ね合いも含めて、お薬の内容を伺いながらご提案いたします。
頓服の抗不安薬を長く続けるのが不安です。漢方と併用できますか?
はい、併用できます。頓服で大事な場面をしのぎながら、漢方で震えの出にくい体質を育てる役割分担がおすすめです。
頓服の抗不安薬は、長く服用を続けることで依存性が高まる可能性が指摘されています。減らし方は自己判断せず、処方している主治医の先生と相談しながら進めてください。
芍薬甘草湯を自分で試しましたが、変わりませんでした。
店頭でもよく伺うご相談です。緩和が見られるなら続けてもよいですし、変わらないなら中止してもよいと考えています。
一つの漢方で変化がなくても、漢方全体が合わないという意味ではありません。本態性振戦は「筋の緊張」と「気持ちの緊張」の両面から、体質に合わせて組み合わせる分野です。自己流で行き止まりを感じたら、一度ご相談ください。
緊張すると震えがひどくなります。これは私の性格が弱いからでしょうか?
いいえ、性格の弱さや問題では決してありません。
「緊張→震え→さらに緊張する」という悪循環は、店頭でも3割前後の方に見られる、よくある症状の形です。だからこそ、震えを抑えるだけでなく、緊張する側(自律神経・気持ち)も漢方で一緒に整えることが大切なのです。ご自身を責めず、体質の側から整えていきましょう。
どのくらいの期間で変化を感じられますか?
まずは「3ヶ月」を一区切りの目安としてお願いしております。
実例のように1〜2ヶ月で変化を感じる方もいらっしゃいますが、個人差があります。「今日は字を書く時に震えなかった」という日を一つずつ増やしていく——それが悪循環を良い循環に変えていく、一番の道すじです。
まとめ:「薬の行き止まり」は、漢方の入り口かもしれません
病院のβ遮断薬が喘息で使えない、強い薬を飲んでも効きにくい、頓服に一生頼り続けるのが不安——。
その「治療の行き止まり感」は、決して絶望ではなく、「漢方薬という別のアプローチで打てる手がまだ残っているサイン」です。
- 震える側(筋肉の緊張)と、緊張する側(気持ち・自律神経)の両面を整え、悪循環を断つ
- カフェイン・睡眠不足に気を配り、「震えてもいい場面」を増やして心の身構えをほどく
- 頓服薬はお守りとして持ちながら、漢方で根本の体質を育てる
「人前で字を書く場面が怖くて、仕事の書類作業に差し支えてきた」
「病院の薬の選択肢がなくて、一生このままかと諦めかけている」
そんな深いお悩みを抱えている方は、どうぞ一人で抱え込まずに太陽堂へご相談ください。震えの出る場面・お薬の内容・体質を丁寧にお伺いし、あなたに合わせた漢方ケアをご提案いたします。
ご遠方の方には、ヒアリングシートのやり取りによるご相談も全国から承っておりますので、まずはお気軽にお声がけください。
【ご相談をご希望の方へ】
本態性振戦に対する具体的な漢方アプローチについては、こちらのページにて詳しく解説しております。
関係性の深い病気;ご相談も多数いただいております。
本態性振戦だけでなく、震えや緊張に関するさまざまなお悩みについても、太陽堂では数多くのご相談をいただいております。気になる方は、以下のページもあわせてご覧ください。
パーキンソン病安静時の震えや動作の遅さが気になる方はこちらも。
不安神経症不安や緊張そのものが強い方に。
自律神経失調症自律神経の乱れ全般のご相談に。
太陽堂の特徴
”当薬局のHPをご覧いただき、ありがとうございます。
私たち太陽堂は「一人でも多くの方の笑顔を見る為に」という思いのもと開局しました。
漢方薬とお客様の出会いがお悩み、体質改善の一助になれれば幸いです。”
特徴その1.
当薬局では、お客様「ひとりひとりに合わせた漢方薬」をその場で調合いたします。
そのため初めてのご相談では、「約1時間~1時間半」ほど相談時間をいただいております。
(遠方のお客様や、お忙しいお客様へは配送の受付もしております。詳しくはお問合せください)
特徴その2.
お作りする漢方薬は、国内外から厳選した生薬の力を、余すことなくお客様に届けるため
「煎じ薬」をお勧めしております。
特徴その3.
当薬局は漢方専門の薬剤師が「得意とする専門分野」にわかれて日々研鑽しています。
お客様の健康を第一に考え、漢方の勉強会なども積極的に開催しております。
記事作成者 薬剤師 前原 信太郎

実績:伝統漢方研究会 2017年・2021年・2025年 学術発表
沖縄で開業医をしていた祖父と薬の話しをしていた事から薬剤師の道を目指すように。
調剤薬局の薬剤師として6年間勤務。
漢方の勉強をして、より患者さんの治療の選択肢の幅を広げたいという思いから「漢方の道」に。
調剤薬局も経験している為、西洋学の知識も勉強を積み今に至ります。
記事作成者 薬剤師 林 泰太郎

実績:伝統漢方研究会 2015~2017年・2019年・2020年・2022年・2025年 学術発表
調剤薬局で3年間勤め、西洋の薬だけでは治療が難しい病気の壁に直面。
・「治療の難しい病気をなんとか治したい。」
・「ひとりでも多くの患者さんを笑顔にしたい。」
という想いから漢方の道へ。
漢方薬局で3年間修業をして、2015年 『漢方薬局 太陽堂』を立ち上げ。
開局10年を迎えた今も1ヶ月の平均来局数は900名を超え、お客様にご愛顧いただいている太陽堂の漢方薬剤師です。








