
風邪の引き始めや、辛い花粉症の時期に病院で処方されることが増えている漢方薬「麻黄附子細辛湯(マオウブシサイシントウ)」。
即効性があり、高齢者や体力が低下している方の風邪によく使われますが、実は飲み合わせや体質によっては「危険」な副作用が出ることもある漢方薬です。
「病院で出されたけれど、自分に合っているかわからない」
「高齢者が飲む薬と聞いたけれど、副作用は大丈夫?」
そんな疑問をお持ちの方へ。
この記事では、麻黄附子細辛湯の効果・効能から、なぜ「危険」と言われるのかという注意点、小青竜湯や苓甘姜味辛夏仁湯との違いが一目でわかる比較表を用いて、漢方のプロが詳しく解説します。
麻黄附子細辛湯とは?どんな漢方薬?
「麻黄附子細辛湯(マオウブシサイシントウ)」は、その名の通り以下の3つの生薬から構成される非常にシンプルな漢方薬です。
- 麻黄(マオウ)
- 附子(ブシ)
- 細辛(サイシン)
この漢方薬の最大の特徴は、「身体を強力に温める」という点です。
漢方では「温剤(おんざい)」や「熱剤(ねつざい)」に分類され、冷えが原因で起こる様々な不調を改善する力を持っています。
体を温めるメカニズム
- 附子(ブシ):漢方薬の中でも特に身体を温める力が強い「熱薬」です。新陳代謝を高め、芯からの冷えを取り除きます。
- 細辛(サイシン):身体を温めながら、痛みを和らげたり、咳を鎮める働きがあります。
- 麻黄(マオウ):発汗を促し、身体に溜まった「水毒(余分な水分)」を排出することで、鼻水やくしゃみを止めます。
麻黄附子細辛湯の効果・効能|どんな症状に効く?
麻黄附子細辛湯は、主に「ひどい寒気(冷え)」がある症状に適しています。
1. 風邪の初期(悪寒があり、熱はそれほど高くない)
「ゾクゾクと背筋が寒い」「手足が冷える」といった、風邪の引き始め特有の悪寒がある場合によく効きます。体力がなく、普段から冷え性の方の風邪(陰証の風邪)に最適です。
2. 花粉症・アレルギー性鼻炎
サラサラとした透明な鼻水が止まらない、くしゃみが連発するといった花粉症症状に効果的です。特に、体が冷えると症状が悪化するタイプの方に向いています。
3. その他の適応症状
体を温める力が強いため、以下のような症状にも応用されます。
- 気管支炎、気管支喘息
- 寒冷蕁麻疹(冷たい風に当たると出る湿疹)
- 冷えからくる神経痛・関節痛
「実は危険」と言われる理由|副作用と注意点
「高齢者向けの風邪薬」として知られる一方、麻黄附子細辛湯は取り扱いに十分な注意が必要な漢方薬でもあります。
その理由は、構成生薬の性質にあります。
附子(ブシ)の毒性と副作用
附子はトリカブトの根を減毒処理した生薬ですが、過剰に摂取したり体質に合わない場合、以下のような中毒症状が出ることがあります。
- のぼせ、顔のほてり
- 動悸、不整脈
- 口や舌のしびれ
- 悪心、嘔吐
麻黄(マオウ)による心臓への負担
麻黄に含まれるエフェドリンという成分には、交感神経を刺激する作用があります。これにより、血圧上昇や頻脈(脈が速くなる)、不眠、排尿障害などが起こるリスクがあります。
高齢者や心疾患のある方は要注意
一般的に「高齢者の風邪」に使われる薬ですが、心臓病、高血圧、前立腺肥大などの持病がある高齢者の場合、症状を悪化させる恐れがあります。
自己判断で服用せず、必ず専門家や医師に相談してから服用するようにしましょう。
似ている漢方薬との違い・使い分け【比較一覧表】
風邪や花粉症でよく使われる漢方薬ですが、自分の体質に合ったものを選ばないと効果が出ないばかりか、体調を崩す原因になります。
代表的な4つの漢方薬の違いを表にまとめました。
鼻炎・風邪によく使われる漢方薬の比較
| 漢方薬名 | 麻黄附子細辛湯 | 小青竜湯 | 苓甘姜味辛夏仁湯 | 葛根湯 |
| 体力の目安 | 虚弱 〜 体力がない | 中程度 | 虚弱(胃腸虚弱) | 中程度 〜 体力がある |
| 冷えの程度 | 非常に強い (手足が氷のよう) | 普通 〜 やや冷える | 冷える (貧血気味) | 寒気はあるが発熱もする |
| 主な症状 | 悪寒、透明な鼻水、のどの痛み | 透明な鼻水、くしゃみ、鼻づまり | 薄い痰、咳、透明な鼻水 | 発熱、悪寒、首筋の凝り |
| 特徴 | 体を温める力が最強クラス。 | アレルギー性鼻炎の第一選択薬。 水分代謝を調整する。 | 「麻黄」を含まない。 胃腸や心臓に優しい。 | 風邪の初期の代表薬。 発汗させて熱を下げる。 |
| 注意点 | 動悸・のぼせ・高血圧 | 胃腸が弱い人は胃痛に注意 | むくみ(甘草含む)。 即効性は穏やか。 | 胃腸虚弱・多汗の人は不向き |
このように、麻黄附子細辛湯は「最も体力がなく、冷えが深刻な状態」に適しています。
また「高齢者や虚弱体質向け。」と一般的には書かれていますが、私自身はあまりそうは思いません。
理由としては前述している「麻黄」と「附子」の副作用があるからです。
しっかりした生薬ではないとお年を召した方には負担が大きすぎるかなと思います…
一方で、胃腸が弱く「麻黄(マオウ)」で胃が荒れてしまう方や、貧血気味の方には「苓甘姜味辛夏仁湯(リョウカンキョウミシンゲニントウ)」が安心です。作用はマイルドですが、体に負担をかけずに症状を和らげることができます。
比較する漢方薬の詳しい説明
「小青竜湯」・「苓甘姜味辛夏仁湯」・「葛根湯」を詳しく説明をしています。
ぜひご覧になってみて下さい。
麻黄附子細辛湯に関するよくある質問(FAQ)
薬局で患者様からよくいただく質問をまとめました。
眠くなる成分は入っていますか?
逆に「麻黄(マオウ)」に含まれるエフェドリンには興奮作用があるため、夜遅くに服用すると目が冴えて眠れなくなること(不眠)があります。夕食後の服用で眠れなくなる場合は、夕方の少し早い時間に飲むなどの調整が必要です。
一般的な風邪薬や抗ヒスタミン薬(アレルギー薬)のように強い眠気が出る成分は含まれていません。
他の薬との飲み合わせで気をつけるものは?
「麻黄(エフェドリン)」を含む薬との併用に注意が必要です。
葛根湯、小青竜湯、防風通聖散などの漢方薬や、市販の総合感冒薬、咳止め薬には「麻黄」や「エフェドリン」が含まれていることが多いです。
これらを重ねて飲むと、動悸、血圧上昇、震え、発汗過多などの副作用が強く出るリスクがあります。
妊娠中・授乳中でも飲めますか?
基本的には不可です。
構成生薬の「附子(ブシ)」や「麻黄(マオウ)」は作用が強いため、赤ちゃんへの影響を考慮すると妊娠中の方には慎重に投与する必要があります。また、授乳中の方も、避けるケースが多いです。
どのくらいの期間飲み続けてもいいですか?
基本的には「短期決戦」に使う事が多い漢方薬です。
風邪であれば数日〜1週間程度が目安です。花粉症シーズンなどで長期服用(1ヶ月以上)になる場合は、体に負担がかかっていないか定期的にチェックする必要があります。
まとめ:麻黄附子細辛湯は「諸刃の剣」?正しく服用しよう
麻黄附子細辛湯について解説いたしました。
辛い冷えや鼻炎症状を強力に改善してくれる頼もしい漢方薬ですが、その分、体に合わない時の反動も大きい薬です。
- 強い悪寒がある風邪や鼻炎には特効薬となる
- 心臓に持病がある方、高血圧の方、極端に暑がりな方は避けるべき
- 「附子」と「麻黄」の副作用(動悸・のぼせ等)に注意する
「自分の体質に合っているかわからない」「副作用が心配」という方は、ぜひ一度、漢方専門の薬局へご相談ください。体質に合わせた最適な漢方薬をご提案いたします。
また、「花粉症・アレルギー性鼻炎」・アレルゲンが関係しない鼻炎「血管運動性鼻炎」に関しては、以下の記事でも詳しく解説しています。ぜひ参考にされてみてください。

