
春先や秋口など、花粉症やアレルギー性鼻炎で「水のようなサラサラした鼻水」が止まらない時、病院や薬局でよく出されるのが「小青竜湯(しょうせいりゅうとう)」です。
しかし、小青竜湯を飲むと、
「鼻水は止まるけれど、なんだか心臓がドキドキする」
「胃がムカムカして食欲が落ちる」
「薬を飲んだ後、どっと疲労感が出る」
といった不調を感じる方もいらっしゃいます。
実はそれ、漢方薬に含まれる一部の成分が、あなたの体力(体質)に合っていないサインかもしれません。
そんな「貧血気味で冷え性」の方に向けた、小青竜湯の優しいバージョンとも言える漢方薬が「苓甘姜味辛夏仁湯(りょうかんきょうみしんげにんとう)」です。
呪文のように長い名前ですが、今回はこの漢方薬がなぜ「体に優しい」のか、太陽堂の薬剤師が分かりやすく解説します。
ズバリ!「小青竜湯」との決定的な違いは「麻黄(マオウ)」の有無
小青竜湯と苓甘姜味辛夏仁湯は、どちらも「体を温めて、鼻水などの余分な水を追い出す(利水)」という基本的な目的は同じです。
一番の違いは、「麻黄(マオウ)」という生薬が入っているかどうかです。
「麻黄」は、発汗を促し、気管支を広げて咳を鎮める強力な作用を持つ素晴らしい生薬です。しかし、作用が強い分、動悸(ドキドキする)、不眠、胃もたれ、強い疲労感などの副作用が出やすくなる事も…
苓甘姜味辛夏仁湯は、小青竜湯からこの「麻黄(および桂皮・芍薬)」をスッパリと抜き、代わりに水はけを良くする「茯苓(ブクリョウ)」と、咳を鎮める「杏仁(キョウニン)」をプラスして作られています。
【比較表】あなたはどっちのタイプ?
| 小青竜湯(しょうせいりゅうとう) | 苓甘姜味辛夏仁湯(りょうかんきょうみしんげにんとう) | |
| 体力 | 体力がある〜普通(実証) | 体力がない、疲れやすい(虚証) |
| 麻黄(マオウ) | 入っている(強力に効く) | 入っていない(体に負担をかけない) |
| 主な働き | 発汗させて、一気に水と寒気を追い出す | 無理に汗をかかせず、尿として優しく水を出す |
| 副作用のリスク | 動悸、胃腸障害、不眠などが出ることがある | 胃腸に優しく、心臓への負担が少ない |

【コラム】薬剤師 林先生の視点「麻黄の正体と、体に負担がかかる理由」
西洋医学の観点から見ると、麻黄の主成分は『エフェドリン』という交感神経を刺激する物質です。
これは市販の風邪薬などにもよく使われていますが、強制的に体のエンジンをフル回転させるような働きがあります。
エンジンを回すためのガソリン(体力)が十分にある人なら良いのですが、ガソリンが少ない『虚弱体質』の方が飲むと、無理やり走らされてエンストを起こしてしまいます。
これが『漢方を飲んで疲れる』という現象です。苓甘姜味辛夏仁湯は、この無理なエンジン回転をさせないため、非常に理にかなった処方なのです。
※ただし生薬の質が良い物を使う、煎じ薬にする事で麻黄を使う場合も極力副作用が出にくくする事は可能です。
体質に合わせたアレルギーの漢方として「小青竜湯」や「麻黄附子細辛湯」の記事もございます。あわせてご覧ください。
貧血傾向・冷え性の方に「苓甘姜味辛夏仁湯」が合う理由
苓甘姜味辛夏仁湯が適しているのは、以下のような特徴を持つ方です。
- 貧血傾向がある: 目のかすみが気になる、立ちくらみがする。アカンベーをした時に、目の裏の粘膜(眼瞼結膜)が白っぽい。
- 冷え性: 手足が冷たく、温かい飲み物を好む。
- 疲れやすい: 高麗人参(人参剤)のような滋養強壮の薬を飲むと調子が良くなるタイプ。
漢方では、体を温める薬を「温剤」「熱剤」と呼びます。
苓甘姜味辛夏仁湯には、体を芯から強力に温める「乾姜(カンキョウ=乾燥生姜)」をはじめ、「細辛(サイシン)」「半夏(ハンゲ)」といった温め成分がたっぷり入っています。
「冷え」が原因で体内に溜まってしまった水(水毒)を、お腹の中から温めることで蒸発させ、スッキリと外へ出してくれるのです。
花粉症だけじゃない!こんな疾患にも使えます
「水はけを良くする(利水作用)」と「体を温める」という特徴を持つため、花粉症やアレルギー性鼻炎以外にも、以下のような症状に応用されます。
- 気管支喘息・気管支炎: 麻黄が使えない方の、ゼーゼーという水っぽい咳や痰(たん)に。
- むくみ・めまい: 体に水がダブついている(水毒)ことで起こる不調に。
- 腎炎・胸水など: 水分の代謝がうまく行かず、体に水が溜まってしまう疾患のサポートに。
【コラム】薬剤師 石川の視点「冷えたペットボトルに水滴がつくように」
夏の暑い日、冷たいジュースを入れたコップの周りに水滴がたくさん付きますよね。人間の体も同じで、体が冷え切っていると、体内に余分な『水(結露のようなもの)』が溜まりやすくなります。これが鼻から溢れ出たのが、花粉症のサラサラした鼻水です。
女性は特に筋肉量が少なく冷えやすいので、花粉の時期に鼻水が止まらない方は、まず『お腹を温めてあげること』が大切です。
苓甘姜味辛夏仁湯は、冷えた体を優しく温めながらお水を捌いてくれる、女性の強い味方なんですよ。
まとめ:自分の体力に合ったアレルギー対策を!
花粉症の漢方薬=小青竜湯、というイメージが強いですが、漢方で最も大切なのは「病名」ではなく「その人の体質」に合わせることです。
- 小青竜湯を飲むと、動悸がしたり疲れてしまう
- 普段から貧血気味で、体力がなく疲れやすい
- 冷え性で、鼻水が透明でサラサラしている
このような方は、無理に強い薬を飲むのではなく、「苓甘姜味辛夏仁湯」のように体に負担をかけないお薬を選ぶことで、アレルギーシーズンをグッと楽に乗り切ることができます。
太陽堂では花粉症はもちろん、その他の鼻の疾患の副鼻腔炎などに対し、表面的な症状を抑えるだけでなく、あなたの体質に合わせた「内側からの根本治療」をご提案しています。ぜひ以下の関連ページも参考にされてみてください。
太陽堂の特徴
”当薬局のHPをご覧いただき、ありがとうございます。
私たち太陽堂は「一人でも多くの方の笑顔を見る為に」という思いのもと開局しました。
漢方薬とお客様の出会いがお悩み、体質改善の一助になれれば幸いです。”
特徴その1.
当薬局では、お客様「ひとりひとりに合わせた漢方薬」をその場で調合いたします。
そのため初めてのご相談では、「約1時間~1時間半」ほど相談時間をいただいております。
(遠方のお客様や、お忙しいお客様へは配送の受付もしております。詳しくはお問合せください)
特徴その2.
お作りする漢方薬は、国内外から厳選した生薬の力を、余すことなくお客様に届けるため
「煎じ薬」をお勧めしております。
特徴その3.
当薬局は漢方専門の薬剤師が「得意とする専門分野」にわかれて日々研鑽しています。
お客様の健康を第一に考え、漢方の勉強会なども積極的に開催しております。
記事作成者 薬剤師 林 泰太郎

実績:伝統漢方研究会 2015~2017年・2019年・2020年・2022年・2025年 学術発表
調剤薬局で3年間勤め、西洋の薬だけでは治療が難しい病気の壁に直面。
・「治療の難しい病気をなんとか治したい。」
・「ひとりでも多くの患者さんを笑顔にしたい。」
という想いから漢方の道へ。
漢方薬局で3年間修業をして、2015年 『漢方薬局 太陽堂』を立ち上げ。
開局10年を迎えた今も1ヶ月の平均来局数は900名を超え、お客様にご愛顧いただいている太陽堂の漢方薬剤師です。
記事作成者 薬剤師 石川 満理奈

得意な疾患:胃腸疾患・耳鼻咽喉疾患・不妊症・婦人科・肝臓・腎臓
開業医だった父の影響で小さい頃から医療は身近に。
薬学部を卒業後、調剤薬局に勤務。
自分自身の胃腸の不調も漢方薬により改善。
よりご来局頂いた方の体質に沿った治療の選択をできるようになりたいという思いから「漢方の道」へ。















