
「暖房をつけ始めた途端、朝起きるとのどがイガイガ・カラカラになっている…」
「肌がカサカサして粉をふき、すねや背中がムズムズしてくる…」
「リップクリームとハンドクリームが、もう手放せなくなってきた…」
12月7日ごろの「大雪(たいせつ)」は、北国から雪の便りが届き、平地でも朝晩の冷え込みが一段と厳しくなる節気(せっき:昔の暦で季節の移り変わりを表す目印)です。いよいよ冬本番。そしてこの時期、寒さと並んで多くの方を悩ませるのが「乾燥」です。
外の空気がもともと乾いているところへ、各家庭やオフィスで暖房が本格稼働を始めるのがこの頃です。何も対策をしない暖房の部屋は、湿度が20〜30%台まで下がることも珍しくありません。砂漠並みの空気の中で、私たちは一日の大半を過ごしているのです。
今回は、大雪の時期に肌とのどの不調が集中する理由と、漢方における「肺は皮膚まで司る」という考え方、そして大根や白菜など旬の「白い食材」で内側から潤す食事と生活の養生法を、太陽堂の薬剤師が詳しく解説いたします。
【太陽堂が教える、大雪の養生まとめ】
まずは、当薬局が考える「冬本番の乾燥」へのアプローチを簡潔にまとめました。
- 漢方の見立て(原因): 西洋医学では「外気の乾燥に暖房が重なることによる、肌と粘膜の水分の蒸発とバリア機能の低下」とされるこの時期の不調ですが、漢方では、五臓の中で最も乾燥に弱い「肺」が燥邪(そうじゃ:乾燥の邪気)のダメージを受け、肺が司っている「皮毛(ひもう:皮膚やうぶ毛)」まで連動して潤いを失っていく状態に注目して原因を探ります。
- アプローチ(対策): 大根・白菜・梨など「肺を潤す白い食材」を汁ごといただく食事ケアと、加湿・寝るときのマスク・お風呂上がり5分以内の保湿という「水分を逃がさない習慣」(養生)、そしてお一人おひとりの体質に合わせたオーダーメイドの煎じ薬を通じて、「暖房の季節でも乾きにくい、潤いを生み出せる体の土台づくり」をサポートします。
- 今後のステップ(根本ケア): 保湿クリームやのど飴で表面をしのぐだけでなく、根本的な原因(潤いを生み出す力そのものの弱りなど)を見極めるため、まずはじっくりとご相談を重ね、空気が乾き切る真冬に向けて長期的な体質と向き合っていきます。
【薬剤師 林の視点】大雪の頃に乾燥トラブルが集中するメカニズムと、西洋医学・漢方のアプローチ
こんにちは、薬剤師の林です。
「毎年、暖房を入れる頃から肌とのどの調子が一気に崩れる」——これは偶然ではなく、体の仕組みから見るとはっきりした理由があります。
西洋医学の視点:外気の乾燥×暖房で、部屋は「砂漠並み」になる
空気が含むことのできる水分の量は、温度が下がるほど少なくなります。冬の冷たい外気はもともと水分が少ないうえに、その空気を暖房で暖めると、部屋の湿度(相対湿度)はさらにぐっと下がります。これが「暖房を入れた途端に不調が始まる」仕組みです。
乾いた空気の中では、肌の表面から水分がどんどん蒸発し、肌を守っている皮脂膜やバリア機能が壊れやすくなります。のどや鼻の粘膜も同じで、表面が乾くと防御の働きが落ち、ウイルスの侵入も許しやすくなってしまいます。
西洋医学的な視点では、部屋の加湿(湿度50〜60%が目安)、こまめな保湿クリーム、そして水分補給が基本の対策になります。
※かき壊して血がにじむほどの強いかゆみがある場合や、ひび割れ・湿疹ができている場合は、市販の保湿では追いつかない状態ですので、早めに皮膚科を受診することをおすすめします。
漢方の視点:「肺は皮毛を司る」。肌の乾きは、肺の潤い不足のサイン
漢方では、五臓の「肺」は呼吸だけでなく、「皮毛(ひもう)=皮膚やうぶ毛」までを司ると考えます。そして肺は、五臓の中で最も乾燥に弱いデリケートな臓器(嬌臓:きょうぞう)とされ、冬の乾いた空気のダメージを真っ先に受けます。
空気が乾くと、まず入り口であるのど・鼻が乾き、次に肺の潤いが奪われ、その影響はダイレクトに肌へと現れます。つまり、「肌の乾燥は、肺の潤い不足」であり、「のどのイガイガは、肌荒れの予兆」でもあるのです。
この負の連鎖を断ち切るキーワードが「潤肺(じゅんぱい)」です。肺を潤すことは、のどの防御力を保ち、内側からしっとりとした肌を作ることにつながります。
漢方では、体の内側から肺と皮膚に潤いを供給するアプローチ(潤肺、滋陰:じいんなどの考え方)を用いて、「保湿クリームに頼りきらなくても乾きにくい体」づくりを内側からサポートしていきます。
【薬剤師 椙田の視点】旬の白い食材で潤す、大雪の食事と生活養生
薬剤師の椙田です。
この時期の合言葉は「白いものを、汁ごと、温かく」です。ちょうど旬を迎える冬野菜の中に、最高の乾燥対策がそろっています。
大根と白菜。冬の「白い二大食材」を汁ごといただく
- おすすめの食材: 大根、白菜、梨、れんこん、豆腐・豆乳、百合根、白きくらげ、はちみつ など。
「大根」は、肺を潤して咳や痰を鎮めるとされる冬の定番です。消化を助ける働きもあるため、忘年会などで胃腸が疲れやすいこの時期にぴったりの、まさに「天然の消化薬」。のどがイガイガするときは、角切りの大根をはちみつに漬けて、出てきたシロップをいただく「大根飴(だいこんあめ)」が、昔ながらの家庭の特効薬です(作り方は下のFAQで紹介します)。
「白菜」は水分が約95%を占める、まさに「食べる水分補給」。ビタミンCも豊富です。鍋やスープにして、溶け出した栄養ごと汁までいただくのがベストです。潤いを補う食材とされる「豚肉」と一緒に煮込めば、乾燥対策の最強メニューになります。
寝るときの「マスク」と、日中の「ちょこちょこ飲み」
朝起きたときののどの痛みは、寝ている間の口呼吸と部屋の乾燥が原因であることが多いです。加湿器に加えて、「マスクをして寝る」のも非常に効果的です。自分の吐く息が天然のスチームとなり、のどと鼻を一晩中保湿し続けてくれます。綿やシルクなど、通気性の良い天然素材のマスクがおすすめです。
水分補給は、一度に大量に飲んでも体は吸収しきれず排出してしまいます。コップ1杯の白湯や常温の水を、1時間おきを目安に「ちょこちょこ飲み」するのが、細胞まで潤すコツです。コーヒーや緑茶などカフェインを含む飲み物は利尿作用があるため、飲みすぎるとかえって水分を出してしまいます。この時期はノンカフェインの麦茶やハーブティー、温かいほうじ茶がおすすめです。
お風呂上がり「5分以内」の保湿で、潤いにフタをする
入浴後、肌の水分は急速に蒸発していきます。バスタオルで拭いたら、「5分以内」に保湿クリームを塗って、水分にフタをすることを習慣にしましょう。
漢方の考えでは、皮膚の潤いを守ることは、そのまま肺を守ることにつながります。外からの保湿と、白い食材による内からの潤い補給。この両輪がそろって、はじめて「乾きにくい体」が出来上がります。
【比較表】大雪からの乾燥に備える!OK・NG行動リスト
| カテゴリ | 〇 おすすめ(潤いを作り、守る) | × 要注意(潤いを逃がし、乾きを進める) |
| 食事と飲み物 | 大根・白菜などの白い食材を、鍋やスープで汁ごと温かく (肺と肌を内側から潤し、胃腸も温めて防御の土台を保てる) | カフェインの多い飲み物のがぶ飲みや、辛いものの摂りすぎ (利尿と発汗でかえって潤いが失われ、乾きがさらに進んでしまう) |
| 部屋と寝るとき | 湿度50〜60%の加湿+寝るときのマスク (寝ている間の乾燥を防ぎ、朝ののどの痛みと肌の乾きを予防できる) | 加湿をせずに暖房をつけたまま寝る (湿度が砂漠並みまで下がり、朝までにのどと肌の水分が奪われる) |
| 肌のケア | お風呂上がり5分以内の保湿で、水分にフタをする (蒸発する前に潤いを閉じ込め、肌のバリア機能を守れる) | 熱いお湯に長時間つかり、体をゴシゴシ洗う (肌を守る皮脂膜まで洗い流され、乾きとかゆみが一気に悪化する) |
大雪の養生に関するよくある質問(FAQ)
加湿器がありません。手軽にできる部屋の乾燥対策はありますか?
A. あります。「濡れタオル1枚」と「洗濯物の室内干し」だけでも、湿度は大きく変わります。
濡らしたバスタオルを1枚部屋に干しておくだけでも、加湿の効果は十分にあります。洗濯物の室内干しや、入浴後に浴室のドアを開けておくのも手軽な方法です。また、鍋料理は食卓そのものが蒸気で潤ううえ、白菜や大根で内側からも潤える、この時期に一番理にかなったメニューです。湿度計を1つ置いて、50〜60%を目安に調整してみてください。
のどがイガイガします。「大根飴」の作り方を教えてください。
A. 角切りにした大根を、はちみつに一晩漬けるだけです。出てきたシロップをなめたり、白湯で割って飲んだりしてください。
皮をむいた大根を1cm角ほどに切り、清潔な容器に入れて、ひたひたのはちみつを注ぎます。2〜3時間から一晩置くと、大根から水分が出てさらさらのシロップになります。これをスプーン1杯ずつなめるか、白湯に溶かしてゆっくり飲んでください。冷蔵庫で保存して、2〜3日で使い切りましょう。※1歳未満のお子様には、はちみつは絶対に与えないでください。また、のどの強い痛みや発熱を伴う場合は、医療機関を受診してください。
保湿もしているし食事も気を付けているのに、毎年冬は乾燥がひどくなります。
A. 「潤いを生み出す力」そのものが弱っているサインかもしれません。体質からのケアの出番です。
外からいくら保湿しても、内側で潤い(漢方でいう「陰」や「血」)を作る力が弱っていると、乾きは毎年繰り返されてしまいます。特に、肌の乾きに加えて、のどの渇き、空咳、便が固くなるといったサインが揃っている方は、体全体の潤い不足が根本にある可能性が高い状態です。漢方は、この「潤いを生み出す力」を立て直すことを得意としています。毎年のつらさを繰り返す前に、ぜひ一度ご相談ください。
まとめ:潤いは、冬を守る「防御力」そのもの
大雪の時期の乾燥対策は、美容のためだけのものではありません。のど・鼻の粘膜と皮膚がしっかり潤っていることは、ウイルスや細菌を跳ね返す「バリア機能(免疫力)」そのものだからです。
旬の大根と白菜を汁ごといただき、部屋とのどを加湿し、お風呂上がり5分以内に保湿する。このシンプルな養生が、風邪やインフルエンザが流行する真冬を元気に乗り切るための土台になります。
「しっかり対策しているのに、どうしても肌が乾く」「空咳が長引いて止まらない」という方は、体の潤いを生み出す力そのものが弱っている可能性があります。ぜひ太陽堂までお気軽にご相談ください。お一人おひとりの体質に合わせた、無理のない潤い養生をご提案いたします。
関連ページ
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記事作成者 薬剤師 林 泰太郎

実績:伝統漢方研究会 2015~2017年・2019年・2020年・2022年・2025年 学術発表
調剤薬局で3年間勤め、西洋の薬だけでは治療が難しい病気の壁に直面。
・「治療の難しい病気をなんとか治したい。」
・「ひとりでも多くの患者さんを笑顔にしたい。」
という想いから漢方の道へ。
漢方薬局で3年間修業をして、2015年 『漢方薬局 太陽堂』を立ち上げ。
開局10年を迎えた今も1ヶ月の平均来局数は900名を超え、お客様にご愛顧いただいている太陽堂の漢方薬剤師です。
記事作成者 薬剤師 椙田 彩純

担当疾患;循環器、身体の痛み
臨床検査技師の両親の影響で、幼い頃から医療に関心を持つ。
大学卒業後、病院薬剤師として勤務。
対症療法が中心の現場で、繰り返す入退院や長期投薬を目の当たりにし、「もっと力になれる方法はないか」と模索する中で漢方と出会う。
現在は漢方の持つ幅広さと可能性に魅了され、一人ひとりの体質に寄り添った根本改善を追求している。












