
「毎日メルカゾールをきちんと飲んでいるのに、心臓がバクバクする動悸や、異常な汗、息切れするようなだるさが全くスッキリしない」
「病院の先生からは『血液検査の数値は落ち着いてきていますよ、順調ですね』と言われるけれど、身体はまだ辛いまま。このズレは一体何なの?」
「目の腫れや突出(バセドウ病眼症)が気になって仕方ないのに、眼科に行っても『これ以上は様子を見ましょう』と言われるばかりで不安でたまらない」
バセドウ病(甲状腺機能亢進症)は、本来は身体を守るはずの免疫システムが自分自身の甲状腺を攻撃して刺激し続け、全身の代謝のエンジンとなる「甲状腺ホルモン」が過剰に作られてしまうご病気です。
その結果、動悸・異常な発汗・手の震え・極度のだるさ(疲労感)・体重減少・眼の症状など、全身に多彩で激しい症状が嵐のように現れます。
太陽堂へのご相談も20代〜40代の女性が中心で、ほぼ皆様がすでに病院で診断を受け、メルカゾールなどの「甲状腺ホルモンを抑えるお薬」を服用中の方です。
今回は、「お薬で数値は良くなってきたのに、辛い症状が残っている」という方に向けて、病院の治療と並走しながら、身体の側(体質)から自律神経と免疫を整える漢方の考え方を、実際の改善実例とともに、薬剤師の視点から詳しく解説いたします。
【この記事の結論:「メルカゾールを飲んでいるのに症状が残る」に対する漢方の考え方】
- 起こる理由(原因): 西洋医学では過剰な甲状腺ホルモンによる全身の代謝亢進とされますが、漢方では自己免疫の過剰反応による「異常な熱」と、エネルギーの消耗が土台にあると考えます。数値が整っても、高ぶった自律神経や疲弊した身体が戻るまでには『時間差』があります。
- 漢方の解決策: 西洋薬(メルカゾール)でホルモン数値を管理しながら、漢方で「自己免疫の過敏さを和らげ、異常な熱を冷まし、消耗したエネルギーを補う」ことで、残っている辛い症状を身体の内側から鎮めます。
- 対象となる主な疾患・お悩み: バセドウ病、甲状腺機能亢進症、バセドウ病眼症(眼球突出・まぶたの腫れ)、メルカゾール・チウラジール・プロパジール等を服用中で症状が残っている方、動悸・多汗・手の震え・だるさにお悩みの方
「数値は良くなってきたのに、辛い」——ご相談の実像
バセドウ病は女性に圧倒的に多く(男女比はおよそ1:5)、太陽堂へのご相談も大半が働き盛りや育児中の女性です。そしてご相談に来られる方のほとんどは、病院で処方される抗甲状腺薬(メルカゾール、チウラジール、プロパジールなど)を服用し、治療を頑張っていらっしゃる方々です。
お薬の効果で血液検査の数値(FT3、FT4など)が落ち着いてきても、「身体の辛さがまだ取れない」と訴える方は多くいらっしゃいます。
太陽堂の店頭で伺う「残りやすい症状」は、次のようなものです。
- 身体の症状: 少し動いただけで激しく脈打つ動悸、じっとしていても吹き出す異常な発汗、首より上の強いほてり、手の震え、寝ても全く抜けない強烈なだるさ・疲労感
- 心の症状: 不眠、焦り・落ち着きのなさ、突然のイライラや不安感
- 特徴的な症状: 眼球突出やまぶたの腫れ(バセドウ病眼症)、甲状腺腫(首・喉仏のあたりの目立つ腫れ)
※なお、メルカゾールの副作用(かゆみや肝機能の数値など)で悩んでご相談に来られる方は、店頭の実感としてはあまり多くありません。ご相談の中心はあくまで「薬を飲んでいるのに残る症状」です。
【薬剤師コラム①】数値と体感の「時間差」に、漢方の出番があります
担当薬剤師:林
「血液検査のたびに主治医の先生からは『ホルモンの数値は良くなっていますよ、順調ですね』と笑顔で言われるんです。でも、動悸も汗も、だるさも、まだ全然辛くて……。数値と自分の身体の感覚が全く合っていない気がして、先生にも言い出せなくて苦しいです」
バセドウ病のご相談で、私たちが本当によくお伺いする、患者さまの孤独で切実なお話です。
病院のお薬(メルカゾール等)の最大の役割は、「過剰に作られている甲状腺ホルモンをブロックして抑え込み、数値をコントロールすること」です。これはバセドウ病治療の土台であり、とても大切なものです。
ただ、患者さまの身体に何が起きているかというと、長い間ホルモンの異常な高ぶり(嵐)にさらされてきたことで、ドキドキしやすくなった心臓、汗をかきやすくなった自律神経、消耗した体力は、数値が整ったからといって、すぐには元の状態に戻らないのです。
ここに、検査の「数値」と、ご自身の「体感(辛さ)」の大きな『時間差(ズレ)』が生まれます。
このズレのすき間を埋めるのが、漢方薬の受け持ち分野です。数値のコントロールは病院のお薬に任せ、漢方は「高ぶりが残っている身体そのもの」を落ち着かせにいく。役割がぶつからないからこそ、並走する(併用する)ことに意味があるのです。
「数値が良いのだから、このだるさは気のせいだ」などと自分を責めないでください。残っている辛い症状を、そのまま私たちに教えてくださいね。
【比較表】西洋医学(病院)と漢方薬(太陽堂)のアプローチの違い
| 比較項目 | 西洋医学(病院のアプローチ) | 漢方薬(太陽堂の体質ケア) |
| 主な目的 | 過剰な甲状腺ホルモンの分泌をお薬で直接抑え込み、数値を管理する | 高ぶりの残る身体(動悸・汗・だるさ・眼の腫れ)を体質の側から落ち着かせる |
| 得意なこと | 血液検査による正確な診断と数値の迅速なコントロール、重症時の治療 | 数値が整っても残る自覚症状や、眼症などへの「一人ひとりに合わせた」アプローチ |
| 代表的な手段 | 抗甲状腺薬(メルカゾール等)の内服、アイソトープ(放射性ヨウ素)治療、手術 | 甲状腺を落ち着かせる漢方薬 + 症状に合わせた漢方薬(熱を冷ます・潤すなど) |
| 気になる点 | 数値は良くなっても自覚症状が残ること、長期服用の必要性 | 体質からの根本的な変化のため、効果を実感するまでに月単位の期間が必要 |
| 両者の関係性 | 数値をコントロールする「治療の軸」 | 残る症状を鎮め、再燃しにくい体質を育てる「並走のサポーター」 |
漢方の組み立て——「甲状腺を落ち着かせる」+「残る症状に合わせる」
太陽堂では、バセドウ病の複雑で激しい症状に対して、以下の2つの軸を組み合わせてオーダーメイドで漢方を調合します。
軸① 甲状腺を落ち着かせる漢方薬(自己免疫の調整・清熱)
- 狙い: バセドウ病の根本的な原因である「自己免疫の過剰反応(TRAb等の抗体)」が考えられる場合は免疫機能を優しく整える漢方薬を、「ストレスなど環境の変化によるホルモン分泌の乱れ」が考えられる場合はホルモン分泌を整える漢方薬を選びます。まずは高ぶっている甲状腺そのものを落ち着かせにいくことが組み立ての第一の軸となります。
軸② 残っている症状に合わせた漢方薬(随証治療)
- 狙い: その太い軸のうえで、動悸や異常な発汗、だるさ、不眠、イライラなど、患者さまお一人おひとりに「今一番強く残っている症状」に合わせた漢方薬を組み合わせます。
- 甲状腺腫(首の腫れ)や眼球突出・まぶたの腫れ(眼症)を伴う場合は、滞った水分や血流を流し、腫れを鎮めていく方向の漢方薬をあわせて組みます(※実例②の女性もこの組み立てです)。
バセドウ病は患者さまによって症状の出方が本当に「多彩」なご病気です。だからこそ「バセドウ病にはこの漢方薬」という決まった型(一手)ではなく、一人ひとりの残っている症状と体質に合わせた『オーダーメイドの組み立て』を最も大切にしています。
【薬剤師コラム②】病院のお薬との付き合い方——「最初は併用」から
担当薬剤師:前原
「漢方薬を始めるなら、病院のメルカゾールはすぐにやめた方がいいですか?」
——漢方薬局でよくいただくご質問ですが、私たちの答えは明確に「いいえ、絶対に自己判断でやめないでください」です。
太陽堂でおすすめしているのは、「最初は病院のお薬と漢方薬を併用し、症状と数値が安定してきたら、主治医の先生と相談しながら徐々にお薬の量を減らしていく方向を目指す」という形です。
甲状腺ホルモンの数値は、命や心臓に関わる大切な指標です。自己判断でお薬を急にやめると、抑えられていたホルモンの高ぶりが戻って症状がぶり返すことがあります。
お薬を減らす・やめるの判断は、必ず血液検査の数値を見ながら、主治医の先生と慎重に進めてください。
現在飲んでいるお薬の内容は、ご相談の際にお薬手帳などですべてお知らせください。飲み合わせを確認したうえで、安全な漢方の組み立てを考えます(※服用するタイミングは、西洋薬と漢方薬で少し時間をずらしていただく形が基本となります)。
【改善実例】症状が落ち着いていったエピソード
太陽堂に実際にご相談に来られた方の実例を、記録からご紹介します。
①【発汗・動悸・だるさと甲状腺腫】40代 女性|1ヶ月で腫れが治まり、3年2ヶ月で服用終了
【ご相談時の状態】 10年ほど前にバセドウ病と診断され、症状がきついとのことでご相談に来られた方です。症状は発汗・動悸・だるさで、一番つらいのは発汗がひどいこと。甲状腺腫は、形が分かるくらいくっきりと腫れていました。
【太陽堂の提案】 ①甲状腺腫に効く漢方薬 ②だるさと発汗を取る煎じ薬 の2種類をお出ししました。
- 1ヶ月後: はっきり形を成していた甲状腺腫の腫れが治まっていました。発汗もだいぶなくなり、だるさも取れているとのこと。
- 6ヶ月後: 動悸・疲れ・だるさはほぼなくなり、発汗のみ少し気になる程度に。
- 1年〜2年6ヶ月後: 調子に波はあるものの大きく崩すことはなく、一番暑い季節でも異常な発汗ではなくなったとのこと。
- 3年2ヶ月後: 病院の検査でも問題がないと言われたとのこと。その後、服用終了となりました。
②【バセドウ病眼症・まぶたの腫れと眼球の刺激】30代 女性|3ヶ月で腫れが治まりはじめ、1年10ヶ月で服用終了
【ご相談時の状態】 半年前から目に違和感を覚え、病院で「バセドウ病眼症」と診断された方です。ステロイドパルス治療は副作用が心配だったため、漢方薬で改善できればとご相談に来られました。眼球突出や腫れ・まつ毛による眼球の刺激・まばたきの困難があるとのことでした。
【太陽堂の提案】 ①甲状腺の機能を改善する煎じ薬 ②炎症を鎮める煎じ薬 の2種類をお出ししました。
- 3ヶ月後: 眼球周辺の腫れが治まってきたとのこと。
- 8ヶ月〜1年2ヶ月後: まばたきのしづらさがかなり軽減し、まつ毛の刺激をほとんど受けなくなってきたとのこと。
- 1年10ヶ月後: 日常生活がかなり楽になり、当初に比べて楽に過ごせているとのことで、服用終了となりました。
※効果の感じ方や必要な期間には個人差があります。症状の改善を保証するものではありません。
▼自己免疫疾患(膠原病・甲状腺)の改善実例をもっと見る
よくあるご質問(FAQ)
メルカゾールと漢方薬は一緒に飲んで(併用して)大丈夫ですか?
はい、基本的には併用可能です。服用のタイミングを少しずらしていただく形が基本です。
最初は併用でスタートし、症状と数値が安定してきたら、主治医の先生と相談しながら徐々にお薬を減らしていく方向を目指すのが太陽堂の考え方です。自己判断での休薬は避けてください。
病院で「数値は正常」と言われるのに、動悸やだるさが辛いのは気のせいでしょうか?
気のせいではありません。数値が整っても、症状が残っている方は多くいらっしゃいます。
長くホルモンの高ぶりにさらされてきた身体は、数値が落ち着いた後もすぐには戻らないことがあります。残っている症状に合わせて、漢方の組み立てを考えますので、ご自身を責めずにお聞かせください。
目の腫れや眼球突出(バセドウ病眼症)も相談できますか?
はい、ご相談いただけます。実例②の方も、バセドウ病眼症でのご相談でした。
腫れを鎮める方向の漢方薬をあわせて組み立てます。眼科・内分泌科での検査結果や治療方針が分かるものをお持ちいただけると、組み立てがより正確になります。
イライラや不安、焦り、不眠などの「心の症状」も対象になりますか?
はい。バセドウ病では、焦りや落ち着きのなさ、不眠といった心の症状を伴う方が多くいらっしゃいます。
身体の症状も心の症状も、どちらもホルモンの高ぶりと自律神経の乱れから来ています。両方をあわせて伺ったうえで、一人ひとりに合わせた組み立てを考えます。
どんな時は、漢方より先にすぐ病院に行くべきですか?
激しすぎる動悸・息苦しさ・高熱・意識がぼんやりするなど、急な悪化を感じた時は、迷わずすぐに病院(救急・主治医)を受診してください。
バセドウ病は、状態が急に大きく崩れることがあるご病気です。定期的な血液検査と主治医の診察は必ず続けたまま、漢方はその上に並走させてください。
どのくらいの期間で変化を感じられますか?
実例では、1〜3ヶ月ほどで腫れや発汗に変化を感じ始めた方がいらっしゃいます(個人差があります)。
そこから年単位でじっくりと安定を目指していく経過が一般的です。焦らず、症状の変化を一緒に確認しながら調整していきましょう。
まとめ:数値のケアは病院に、残る辛い症状のケアは漢方で
「毎日忘れずにお薬を飲んでいるのだから、この残っているだるさや動悸は、私が我慢するしかないんだ」——どうか、そんなふうに一人で耐え込まないでください。
- お薬で数値が落ち着いてきても、動悸・発汗・だるさ・眼の症状が残る方は非常に多い(気のせいではありません)
- 漢方薬は「甲状腺の熱を落ち着かせる」 + 「残っている辛い症状に直接合わせる」というオーダーメイドの組み立てで、病院の治療と並走します
- 最初は必ず併用から。お薬を減らす判断は、数値を見ながら必ず主治医の先生と進めてください
病院の治療だけでは取り切れない残っている症状、そして「いつまで薬を飲むのか」という不安を抱えている方は、どうぞ一人で我慢せずに太陽堂へご相談ください。
症状の出方、現在飲んでいるお薬、検査の数値、そしてあなたの体質を丁寧にお伺いし、全国対応のオンライン相談・店頭相談にて、あなたの身体を支える漢方ケアをご提案いたします。
【ご相談をご希望の方へ】
バセドウ病(甲状腺機能亢進症)に対する具体的な漢方アプローチについては、こちらのページにて詳しく解説しております。全国対応のオンライン相談も承っておりますので、まずはお気軽にお声がけください。
関係性の深い病気;ご相談も多数いただいております。
甲状腺・自己免疫に関するさまざまなお悩みについて、以下のページもあわせてご覧ください。
▼橋本病(甲状腺機能低下症)——バセドウ病とは逆の「機能低下」でお悩みの方へ
▼膠原病・自己免疫疾患の全体像
太陽堂の特徴
”当薬局のHPをご覧いただき、ありがとうございます。
私たち太陽堂は「一人でも多くの方の笑顔を見る為に」という思いのもと開局しました。
漢方薬とお客様の出会いがお悩み、体質改善の一助になれれば幸いです。”
特徴その1.
当薬局では、お客様「ひとりひとりに合わせた漢方薬」をその場で調合いたします。
そのため初めてのご相談では、「約1時間~1時間半」ほど相談時間をいただいております。
(遠方のお客様や、お忙しいお客様へは配送の受付もしております。詳しくはお問合せください)
特徴その2.
お作りする漢方薬は、国内外から厳選した生薬の力を、余すことなくお客様に届けるため
「煎じ薬」をお勧めしております。
特徴その3.
当薬局は漢方専門の薬剤師が「得意とする専門分野」にわかれて日々研鑽しています。
お客様の健康を第一に考え、漢方の勉強会なども積極的に開催しております。
太陽堂がはじめての方へ
ご相談を考え始めた方は、まずこちらをどうぞ。
記事作成者 薬剤師 石川 満理奈

得意な疾患:胃腸疾患・耳鼻咽喉疾患・不妊症・婦人科・肝臓・腎臓
開業医だった父の影響で小さい頃から医療は身近に。
薬学部を卒業後、調剤薬局に勤務。
自分自身の胃腸の不調も漢方薬により改善。
よりご来局頂いた方の体質に沿った治療の選択をできるようになりたいという思いから「漢方の道」へ。
記事作成者 薬剤師 林 泰太郎

実績:伝統漢方研究会 2015~2017年・2019年・2020年・2022年・2025年 学術発表
調剤薬局で3年間勤め、西洋の薬だけでは治療が難しい病気の壁に直面。
・「治療の難しい病気をなんとか治したい。」
・「ひとりでも多くの患者さんを笑顔にしたい。」
という想いから漢方の道へ。
漢方薬局で3年間修業をして、2015年 『漢方薬局 太陽堂』を立ち上げ。
開局10年を迎えた今も1ヶ月の平均来局数は900名を超え、お客様にご愛顧いただいている太陽堂の漢方薬剤師です。









