
「ステロイドの点耳薬を指示通りに減らしていくと、数日でまたドロッとした不快な耳だれが戻ってくる。もう何年もこの出口のない繰り返し」
「最近、明らかに聞こえ(聴力)が落ちてきた気がする。このまま炎症が進んでしまったらどうなるのか、先が見えなくて怖い」
「病院で手術もした。鼓膜にチューブも入れた。それでもまた再発してしまった」
「喘息もあって、鼻茸(ポリープ)ができる副鼻腔炎もある。身体じゅうが炎症を起こしているみたいで、飲み薬のステロイドを増やすと言われたけれど、副作用が心配で……」
好酸球性中耳炎(こうさんきゅうせいちゅうじえん)は、ふつうの細菌感染による中耳炎とは違い、アレルギーに関わる白血球の仲間である「好酸球」が、耳の奥(中耳粘膜)に集まり、慢性的な炎症を起こし続ける、長引きやすいご病気です。
気管支喘息や好酸球性副鼻腔炎をお持ちの方に多く、「ステロイドを減らすと耳だれが戻る」「だから薬が減らせない」という出口の見えない状態に長く悩まれている方が、太陽堂にも多くご相談にいらっしゃいます。
この記事では、「漢方を始めたら、どんな順番で何が変わっていくのか」という『経過の道筋』を、時間軸に沿って正直に解説します。同じ病気で悩む方の「この先どうなるのか」という不安に、できるだけ具体的にお答えしたいからです。
【この記事の結論:「好酸球性中耳炎の経過」に対する漢方の考え方】
- 起こる理由(原因): 西洋医学では好酸球による炎症で粘り気の強い耳だれ(肉芽)が作られ続ける状態とされます。漢方では、身体の奥にこもった「熱(炎症)」と、ドロドロの老廃物を流せない「水はけの悪さ(痰湿)」が、呼吸器系(肺・鼻・耳)全体に広がっている状態と考えます。
- 漢方の解決策: 病院の治療は続けながら、漢方で①こもった熱を冷まして老廃物を流す ②肺を潤してバリア機能を助ける ③血と水の巡りを促す——という3本柱で、「お薬を減らしても再発しにくい環境」を身体の土台から作ります。減らす判断は主治医と相談して進めます。
- 対象となる主な疾患・お悩み: 好酸球性中耳炎、ステロイド点耳薬(リンデロン等)や内服薬が減らせない方、難聴(聞こえの低下)が心配な方、鼓膜チューブ留置後に再発した方、気管支喘息・好酸球性副鼻腔炎を併せ持つ方
太陽堂での経過は、こう進むことが多い——「3ヶ月」を最初の区切りに
ご相談にいらっしゃる方の年代はさまざまですが、共通しているのは「もう何年も、薬を減らしては耳だれが戻るを繰り返している」という長い経過です。だからこそ、漢方薬を始めるときにも「いつ、何を物差しに見ればいいのか」を最初に患者さまと共有しておくことが、とても大切だと考えています。
始めてすぐ〜1ヶ月目:変化を焦らず、「耳だれの量」を記録する時期
この時期は、漢方を飲んですぐに「耳だれがピタッと止まった」という大きな変化を期待するよりも、いまのご自身の状態をきちんと客観的に把握する時期です。
ステロイドの点耳薬や内服薬は、主治医の指示通りこれまでどおり絶対に続けてください。「漢方を始めたから」といって自己判断で西洋薬を急に減らすと、耳だれが戻り、漢方が効いているのか、ステロイドを減らした反動なのかが分からなくなってしまいます。
この1ヶ月間は、「耳だれの量」「液の粘り気(ネバネバ度合い)」「聞こえの感覚」を、簡単で構いませんのでカレンダーや手帳に日々メモしておいてください。それが、あとで変化を見る大切な手がかりになります。
3ヶ月目:最初の区切り。「量が減ってきたか」を一緒に確認
太陽堂では、まず「3ヶ月」を最初の区切り(チェックポイント)として、耳だれの『量』が減ってきているかどうかを患者さまと一緒に確認します。
漢方で体質が動き始めるとき、液の「粘り(ドロドロ感)」や「聞こえの回復」よりも先に、まずは「耳から出てくる液体の『量』そのものが減る」という形に表れることが多いのが、私たちの印象です。
ここで量に手応えがあれば、そのまま土台づくりを継続します。手応えが薄い場合は、体質のとらえ方を再検討し、漢方の組み立てを調整します。この見直しを含めて、3ヶ月は「漢方を続けるかどうか」をご自身で判断する一つの目安とお考えください(※効果の感じ方には個人差があります)。
その先:主治医と相談しながら、減らせるところを探す
漢方で耳だれの量が落ち着いてきたら、そこで初めて「ステロイド(点耳や飲み薬)を減らせないか」を主治医の先生と相談していただく段階に入ります。
薬を減らす判断は、必ず耳の中の様子(鼓膜や肉芽の状態)を診ている主治医と相談して進めてください。漢方の役割は「薬を減らしても炎症が戻りにくい環境」を身体の側に作っておくことであり、減薬の指示をすることではありません。
また、この病気は喘息や好酸球性副鼻腔炎と根っこを同じくしていることが多いため、耳の経過が良くなるのと一緒に、「そういえば鼻の通りが良くなった」「喘息の息苦しさが減った」と、呼吸器全体の調子が変わってくる方も少なくありません。
【薬剤師コラム①】耳・鼻・肺は「一つのシステム」です
担当薬剤師:前原
好酸球性中耳炎の方のお話を伺うと、多くの方が「気管支喘息」や「好酸球性副鼻腔炎(鼻茸・ポリープ)」を併せ持っています。これは決して偶然ではありません。
東洋医学には「肺は鼻に開竅(かいきょう)する」という言葉があります。「肺(呼吸器の根幹)」の不調や炎症状態は、そのまま「鼻(そして耳)」に表れる、という考え方で、耳・鼻・肺を切り離さず「一つの呼吸器のシステム」として捉えます。
ですから私たち太陽堂では、耳だれが出ているからといって「耳の局所だけ」を見て漢方を組み立てることはしません。呼吸器全体の「好酸球が炎症を起こしやすい体質」そのものに働きかけることで、耳の経過と一緒に、喘息や副鼻腔炎の調子も変わってくる方は多い、というのが店頭での実感です。
「耳だれが減ってきたら、いつの間にか鼻の詰まりも取れて呼吸が楽になってきた」——そんなお声を伺うたびに、この病気は『身体全体で繋がっているもの』なのだと改めて感じさせられます。
ステロイド・手術・チューブ——病院治療との付き合い方
好酸球性中耳炎は、ふつうの中耳炎(細菌感染)のように抗生物質を飲めば治るものではありません。ステロイド(点耳・内服)が好酸球の炎症を直接抑えるための主役であり、ネバネバした液が溜まって鼓膜が癒着する危険がある場合は、鼓膜チューブの留置や、肉芽(ポリープ)を取り除く手術が行われます。
こうした病院での治療は、病気の進行を止め、何よりも大切な「聞こえ(聴力)」を守るために欠かせないものです。漢方を始めても、病院の治療は必ず続けてください。私たちは病院治療を否定しませんし、併用できます。
そのうえで、「薬を減らすと戻る」「手術してもまた再発する」という壁に対して、両者の役割の違いをしっかりと知っておいてください。
【比較表】西洋医学(病院)と漢方薬(太陽堂)のアプローチの違い
| 比較項目 | 西洋医学(病院のアプローチ) | 漢方薬(太陽堂の体質ケア) |
| 主な目的 | ステロイドで好酸球の炎症を抑え、手術で溜まった液や肉芽を取り除く | 液を作り続ける「熱」と「水はけの悪さ」を整え、減らしても戻りにくい環境を作る |
| 得意なこと | 炎症をしっかり抑え、聴力(聞こえ)の悪化を食い止める | 喘息・副鼻腔炎を含む『呼吸器全体の体質』へのアプローチ |
| 代表的な手段 | ステロイド点耳・内服、鼓膜換気チューブ挿入、鼓室形成術 | 呼吸器の熱を冷ます漢方薬、老廃物(痰湿)を流す漢方薬 |
| 気になる点 | ステロイドを減らすと戻りやすい。長期使用の副作用が心配 | 体質からの変化のため、3ヶ月を区切りにじっくり取り組む必要がある |
| 両者の関係性 | 対立ではなく併用OK。聴力を守る主役は病院の治療。漢方は減らしても戻りにくい「土台」を作る二段構え。減薬は主治医と相談 | |
漢方の組み立て——「呼吸器」と「水はけ」を整える3つの視点
太陽堂では、好酸球性中耳炎の複雑な病態に対して、以下の3つの視点で漢方薬をオーダーメイドで調合します。
軸① こもった熱を冷まし、老廃物を流す漢方薬(清熱化痰)
- 狙い: にかわのように粘り気の強いドロッとした黄色い耳だれは、漢方では身体の奥にこもった「熱」と「老廃物(湿熱・痰濁)」が結びついた表れと考えます。この熱を穏やかに冷まし、耳の奥に溜まった老廃物(痰)をサラサラにして流す方向を、組み立ての中心に据えます。
軸② 肺を潤し、バリア機能を助ける漢方薬(補肺滋陰)
- 狙い: 耳・鼻・肺は一つのシステムです。漢方では、呼吸器の粘膜が乾いて守る力が落ちていると、炎症の火種が生まれやすいと考えます。呼吸器の粘膜に潤いを与えて守る力を助けることで、炎症の火種そのものが生まれにくい呼吸器全体の土台を育てます。喘息や副鼻腔炎をお持ちの方では、ここが要(かなめ)になります。
軸③ 血と水の巡りを促す漢方薬(活血利水)
- 狙い: 全身の血流や水分代謝(巡り)が滞ると、発生した液が耳の奥に長く留まりやすく、炎症も長引いてしまいます。血と水の巡りを促して、耳に液が停滞しにくい(むくみにくい)スッキリとした状態を目指します。
日常で気をつけたいこと——「炎症を起こしやすいもの」を控える
漢方と並行して、日常では炎症を起こしやすいものをできるだけ避けることをお勧めしています。甘いもの・脂っこいもの・お酒の摂りすぎは、身体に熱と老廃物を溜めやすくします。鼻をすすらない・鼻の炎症を長引かせないことも、耳を守るうえで大切です。疲れや睡眠不足で悪化しやすい方は、無理をしない時期を意識してください。詳しい養生は、体質に合わせてご相談時にお伝えします。
【薬剤師コラム②】「減らせない」のは、あなたのせいではありません
担当薬剤師:石川
ステロイドは、好酸球の炎症に対してよく効くお薬です。ただ、長く使うほど「副作用」が心配になり、患者さまが「なんとかして早く減らしたい」と焦るお気持ちは、本当に自然なことです。
それでも、いざ減らそうとすると耳だれが戻ってしまう。その時に、「ああ、やっぱりダメだ。私の生活が悪いんだ、私の治す力がないからだ」とご自身を責めてしまう方がいらっしゃいます。
でも、はっきり言います。それは、あなたの努力が足りないわけではありません。
ステロイドというお薬が一時的に炎症を抑え込んでくれている間も、身体の側では「粘り気のある液を絶えず作り出し続ける体質(水はけの悪さと熱)」という乱れが、そのまま残ってしまっているからです。原因が残っているのだから、抑えを取れば戻るのは自然なことなのです。
私たち漢方薬局が得意とするのは、まさにこの「液を作り出す乱れ」そのものを整えて、お薬を減らしても再発しにくい環境を作ることです。
減らす判断は主治医の先生と相談しながら、私たちはそのための「土台づくり」を裏方として受け持ちます。焦らず、ご自身を責めず、一緒に一歩ずつ進んでいきましょう。
(※ただし、急に聞こえがガクッと落ちた・激しいめまいや強い痛みが出た、というときは、漢方のことよりまず最優先で主治医にご連絡ください。)
よくあるご質問(FAQ)
病院のステロイドの点耳薬や内服薬と、漢方薬は併用できますか? 自分で減らしてもいいですか?
はい、併用いただけます。病院の治療は続けたまま漢方を始めてください。そして、自己判断でお薬を減らすことは絶対に避けてください。
漢方薬の役割は「減らしても戻りにくい環境」を身体に作ることです。漢方薬が「減薬の指示」をすることはありません。減らすかどうかの判断は、耳の中を直接診察している主治医の先生と必ず相談して進めてください。現在使用中のお薬は、ご相談時にお薬手帳ですべてお知らせください。
喘息や好酸球性副鼻腔炎も持っています。一緒に相談できますか?
はい。むしろ一緒にご相談いただくのが自然です。
コラムでもお伝えした通り、私たちは耳・鼻・肺を「一つの呼吸器システム」として捉えて漢方を組み立てます。そのため、耳の経過と一緒に、鼻の詰まりや喘息の呼吸の調子が変わってくる方は多いです。それぞれで出ているお薬(吸入薬や点鼻薬など)も、すべて私たちにお知らせください。
病院で手術やチューブ留置(鼓膜換気チューブ)をしても再発しました。それでも相談できますか?
はい、もちろんご相談いただけます。手術後の再発は、この病気では決して珍しいことではありません。
手術は「すでに溜まってしまった液を取り除く」「空気の通り道を作る」ことに有効ですが、「液を作り出し続ける身体の側の乱れ(体質)」までは取り除けないためです。漢方薬はまさにその「残った乱れ」を整える役割を受け持ちます。
どのくらいの期間で変化が出ますか?
まずは「3ヶ月」を最初の区切りにして、耳だれの『量』が減ってきたかを患者さまと一緒に確認します(※個人差があります)。
体質からの変化は、液の粘りや聴力(聞こえ)よりも先に、まずは「出てくる量そのもの」に表れることが多い印象です。何年も繰り返してきた長い経過の病気ですので、そこから季節をまたいで、じっくりと腰を据えて土台を育てていく必要があります。
実際に改善した例はありますか?
好酸球性中耳炎の店頭記録は、記事末尾の症例一覧でご覧いただけます。
お一人おひとり経過は異なりますので、「こういう道筋もある」という参考としてご覧ください。あなたの状況に合わせた見通しは、ご相談時に率直にお伝えします。
費用はどのくらいかかりますか?
目安として、1週間あたり5,000円前後〜(1ヶ月で2万円前後から)とお考えください。相談料は無料です。
患者さまの体質や症状の重さ、組み合わせる漢方薬の種類によって金額が変わるため、お作りする前に必ず金額をはっきりとお伝えし、ご納得いただいてからスタートします。ご予算のご希望(まずはこれくらいから始めたい等)も遠慮なくお聞かせください。
まとめ:「減らすと戻る」の輪は、身体の側から変えられます
「このままステロイドの点耳を一生続けるしかないのか」
「少し減らしただけで、またあのドロッとした耳だれが出てくる恐怖」
その終わりの見えない不安に、今日からできることを整理しましょう。
- 好酸球性中耳炎は、耳・鼻・肺が連動した「呼吸器の炎症を起こしやすい体質」の表れです。耳の局所だけでなく、呼吸器全体で見直します。
- 病院の治療(ステロイド)は続けたまま併用します。減らす判断は主治医と相談し、漢方薬は「減らしても戻りにくい土台環境」を作ることに徹します。
- 経過の物差しは「耳だれの量」です。まず3ヶ月を区切りに確認し、喘息や副鼻腔炎の調子もあわせて見ていきます。
「もう何年もこの繰り返しで疲れた」——そう思われた方は、どうぞ一人で抱え込んで諦めずに太陽堂へご相談ください。
これまでの辛い治療の経緯、いま使っているすべてのお薬、喘息や鼻の状態、そしてあなたの体質を丁寧にお伺いし、全国対応のオンライン相談・店頭相談にて、あなたの身体を土台から立て直す漢方ケアをご提案いたします。
【ご相談をご希望の方へ】
好酸球性中耳炎に対する具体的な漢方アプローチについては、こちらのページにて詳しく解説しております。全国対応のオンライン相談も承っておりますので、まずはお気軽にお声がけください。
関係性の深い病気;ご相談も多数いただいております。
耳・鼻・呼吸器に関するさまざまなお悩みについて、以下のページもあわせてご覧ください。
▼慢性副鼻腔炎——抗生剤を繰り返しても治らない・手術しても再発する方へ
▼中耳炎(総合)——繰り返す耳の痛み・切開・抗生剤の不安に
▼好酸球性中耳炎の店頭記録(症例一覧)
太陽堂の特徴
”当薬局のHPをご覧いただき、ありがとうございます。
私たち太陽堂は「一人でも多くの方の笑顔を見る為に」という思いのもと開局しました。
漢方薬とお客様の出会いがお悩み、体質改善の一助になれれば幸いです。”
特徴その1.
当薬局では、お客様「ひとりひとりに合わせた漢方薬」をその場で調合いたします。
そのため初めてのご相談では、「約1時間~1時間半」ほど相談時間をいただいております。
(遠方のお客様や、お忙しいお客様へは配送の受付もしております。詳しくはお問合せください)
特徴その2.
お作りする漢方薬は、国内外から厳選した生薬の力を、余すことなくお客様に届けるため
「煎じ薬」をお勧めしております。
特徴その3.
当薬局は漢方専門の薬剤師が「得意とする専門分野」にわかれて日々研鑽しています。
お客様の健康を第一に考え、漢方の勉強会なども積極的に開催しております。
太陽堂がはじめての方へ
ご相談を考え始めた方は、まずこちらをどうぞ。
記事作成者 薬剤師 前原 信太郎

実績:伝統漢方研究会 2017年・2021年・2025年 学術発表
沖縄で開業医をしていた祖父と薬の話しをしていた事から薬剤師の道を目指すように。
調剤薬局の薬剤師として6年間勤務。
漢方の勉強をして、より患者さんの治療の選択肢の幅を広げたいという思いから「漢方の道」に。
調剤薬局も経験している為、西洋学の知識も勉強を積み今に至ります。
記事作成者 薬剤師 石川 満理奈

得意な疾患:胃腸疾患・耳鼻咽喉疾患・不妊症・婦人科・肝臓・腎臓
開業医だった父の影響で小さい頃から医療は身近に。
薬学部を卒業後、調剤薬局に勤務。
自分自身の胃腸の不調も漢方薬により改善。
よりご来局頂いた方の体質に沿った治療の選択をできるようになりたいという思いから「漢方の道」へ。














