
「運動の秋だと思って久しぶりに走ってみたら、翌日から膝がズキッと痛み出してしまった…」
「休日のハイキングで下り坂を歩いていたら、膝がガクガクと笑ってしまって、全く力が入らなくなった…」
「階段の上りは大丈夫なのに、下りる時だけ膝に痛みが走る。もう年齢のせいだと諦めるしかないのかな…」
厳しい暑さが落ち着き、さわやかな風が吹く秋。気候の良いこの季節は、ジョギングやハイキングなど、気持ちの良い運動を再開するには絶好のタイミングです。しかし、同時に「久しぶりに動いたことで起きた膝のトラブル」のご相談が一年で最も増える季節でもあります。
「もう歳だから仕方ない」と痛みを理由に運動そのものを諦めてしまうと、膝を支えている大切な筋肉がさらに落ちてしまい、ちょっとした動作でもますます痛みやすくなるという悪循環に陥ってしまいます。
正しい動き方のコツを知り、体の内側からのケアで土台を整えれば、諦めかけていた運動の秋は必ず取り戻せます。
今回は、久しぶりの運動で膝が痛むメカニズムや、漢方における「筋(すじ)と骨を養う」という考え方、そして関節を守りながら楽しむための食事と動き方の養生法を、太陽堂の薬剤師が詳しく解説いたします。
【太陽堂が教える、運動の秋の膝の養生まとめ】
まずは、当薬局が考える秋の膝トラブルへのアプローチを簡潔にまとめました。
- 漢方の見立て(原因): 西洋医学では「運動不足によって落ちた筋力のまま、急に関節へ負荷をかけたことによる炎症」とされる秋の膝の痛みですが、漢方では、「肝(かん)は筋(すじ)を、腎(じん)は骨を司る」という考えのもと、加齢や過労によって筋と骨を養うエネルギーが減少しているところへ、秋の冷えと雨の湿気が侵入し、痛みをさらに増幅させている状態に注目して原因を探ります。
- アプローチ(対策): 山芋や黒豆など「肝と腎を養う食材」を取り入れた毎日の食事ケア(養生)と、膝を守る動き方や温め方の実践、そしてお一人おひとりの体質に合わせたオーダーメイドの煎じ薬を通じて、季節の変化に負けない「動ける膝の土台づくり」を内側からサポートします。
- 今後のステップ(根本ケア): (※膝が赤く腫れて熱を持っている、水が溜まっている感覚がある、痛みが数週間引かない場合は、まず整形外科での検査を優先してください。) その上で、一時的な痛み止めだけでなく、「痛みにくい体質」への根本的な立て直しを、じっくりとご相談を重ねながら二人三脚で進めていきます。
【薬剤師 前原の視点】久しぶりの運動で膝が痛むメカニズムと、西洋医学・漢方のアプローチ
こんにちは、薬剤師の前原です。
「昔と同じつもり」で動いたはずの膝が突然悲鳴を上げるのには、しっかりとした仕組みがあります。責めるべきは年齢ではなく、「準備不足」と「材料不足」です。
西洋医学の視点:膝を守る「筋肉のサスペンション」が弱っている
膝の関節は、単なる骨と骨の繋ぎ目ではありません。太ももの前側にある大きな筋肉(大腿四頭筋)が、サスペンションのように衝撃を吸収し、クッションの役割を果たすことで守られています。
ところが、夏の猛暑で運動不足になり、この筋肉がすっかり落ちてしまった状態で急に秋の運動を始めるとどうなるでしょうか。筋肉というクッションがないまま、体重と動きの衝撃がダイレクトに関節の軟骨や靭帯を直撃してしまうのです。
特に負担が跳ね上がるのが「下り」の動作です。下り坂や階段を下りる時には、膝になんと「体重の3〜5倍」の負荷がかかると言われています。「登りは平気なのに、下りで痛む」というのは、筋肉のサスペンションが弱っている時の典型的なパターンです。
西洋医学的な視点では、急な痛みや腫れが出た直後(急性期)には「安静と冷却」を基本とし、痛みが落ち着いてからの慢性期には「温めと筋力トレーニング」によって筋肉のクッションを取り戻すことが推奨されます。また、痛みが辛い場合には消炎鎮痛剤(湿布や飲み薬)を用いて炎症をコントロールし、運動機能の回復をサポートします。
漢方の視点:「肝は筋を、腎は骨を司る」。膝は消耗のバロメーター
一方、漢方の視点では、この痛みを「膝の関節だけの問題」とは見ません。体全体のエネルギーと栄養のバランスから紐解いていきます。
東洋医学には、「肝(かん)は筋(すじ)を司り、腎(じん)は骨を司る」という非常に重要な考え方があります。筋肉や靭帯のしなやかさは「肝」に蓄えられた血(栄養)によって養われ、骨や関節の強さは「腎」に蓄えられた精(生命力の貯金)によって養われます。
つまり、膝という関節は、この「肝と腎の残高」が最もダイレクトに現れやすいバロメーターなのです。これを「肝腎要(かんじんかなめ)」と言います。
加齢や長年の過労によってこの残高が減ってくると、膝の周りの筋は乾いた古い革のようにしなやかさを失い、骨はもろくなり、ちょっとした負荷ですぐに痛みが出るようになります。
さらに、秋口特有の朝晩の冷え(寒邪)と、秋雨による湿気(湿邪)は、関節の痛みを増幅させる「外からの敵」となります。冷えや湿気が関節に入り込むと、血流が滞って痛みが強くなります。雨の降る前の日に膝が重く痛むという方は、この湿気の影響を受けやすい体質のサインです。
漢方では、このような状態に対し、肝と腎をたっぷりと養って筋と骨の「材料」を根本から補い、同時に冷えと湿気から関節を守り抜くアプローチ(補肝腎:ほかんじん、祛風湿:きょふうしつなどの考え方)を用いて、「また安心して山に登れる膝」の土台づくりを内側からサポートしていきます。
【薬剤師 椙田の視点】膝を守る、秋の食事と動き方の養生
薬剤師の椙田です。
運動の秋を長く楽しむための最大のコツは、「始め方」にあります。体の内側から材料を養いながら、賢く、安全に運動を再開しましょう。
「肝腎を養う食材」で、筋と骨の材料を補給する
漢方において、筋と骨の材料となり、肝と腎を養ってくれるとされる食材を、運動を再開するこの時期こそ毎日の食事に意識して取り入れてみてください。
- おすすめの食材: 山芋(長芋)、黒豆、黒ごま、くるみ、鶏の手羽先、小魚、きのこ類 など。
特に「山芋」と「黒い食材(黒豆・黒ごま)」は、漢方で肝腎を養う代表選手です。また、手羽先や牛すじなどのコラーゲン(軟骨の材料)を含む食材は、ビタミンCを多く含む野菜と一緒に摂ることで、より効率的に体内で合成されます。
さらに、運動後30分以内にタンパク質(豆乳やゆで卵など)を補給することも、ダメージを受けた筋肉の回復を助ける有効な養生です。
再開のルールは「昔の6割から」「下りこそゆっくり」
久しぶりの運動を始める時は、「昔できた量の6割」からスタートし、2週間かけてゆっくりと元の量に戻していくのが最も安全なラインです。「もう少し動けそうだな、ちょっと物足りないな」と思うくらいでやめておくのが、怪我なく長く続けられる人の鉄則です。
ハイキングやウォーキングでは、負荷の大きい「下り」こそ要注意です。下りでは歩幅をあえて小さくし、ジグザグに歩くように意識してください。ハイキングであれば、膝への負担を分散させるためにストック(杖)を使用するのも賢い選択です。
そして、運動前の準備運動と、終わった後の「太ももの前側」を伸ばすストレッチは、膝を守るために決して忘れないでください。
日常でできる「膝の貯筋」——ゆっくりスクワット
膝を守る一番の強力な保険は、サポーターよりも「太ももの筋肉(大腿四頭筋)」です。
ジムに行かなくても、日常生活の中で簡単に「貯筋」ができます。それが、椅子から立つ・座る動作を、3秒かけてゆっくりと10回繰り返すことです。これだけで立派なスクワット運動になります。この時、膝がつま先より前に出ないよう、お尻を少し後ろに引くように意識するのがポイントです。
また、朝晩の冷える時間帯には、サポーターやレッグウォーマーを活用して「膝の関節を物理的に冷やさない」ことも、痛みの予防に直結する大切なケアです。
【比較表】運動の秋を楽しむ!OK・NG行動リスト
| カテゴリ | 〇 おすすめ(膝を守り、育てる) | × 要注意(関節を痛め、悪循環を招く) |
| 再開の仕方 | 「昔の6割」から始めて、2週間かけてゆっくり戻す (筋肉のサスペンションが再び育つ時間を安全に確保できる) | 「昔と同じつもり」で、いきなりフルパワーで動く (クッションを失った関節に、衝撃がダイレクトに直撃する) |
| 動き方とケア | 下りは歩幅を小さくし、前後のストレッチを欠かさない (体重の3〜5倍かかる下りの激しい負荷を分散できる) | 準備運動なしで、下り坂を大股でズンズンと歩く (膝への最大負荷を、無防備な状態のまま受け続ける) |
| 痛んだ後の対応 | 腫れや熱があれば冷やして休む。長引けば受診する (炎症を悪化させず、軟骨などの隠れた損傷も見逃さない) | 「歳のせい」と諦めて、動くこと自体を完全にやめてしまう (筋肉がさらに落ちてしまい、もっと痛みやすい状態になる) |
秋の膝の痛みに関するよくある質問(FAQ)
膝が痛むときは、温めるのと冷やすの、どちらが正解ですか?
「急な痛み・腫れ・熱」は冷やす、「慢性的な痛み・こわばり」は温める、が基本の使い分けです。
運動した直後にズキズキと痛み、触ると熱を持っているようなら、それは急性の炎症が起きているサインですので、まずは氷のうなどで冷やして休ませます。一方、朝起きた時のこわばりや、冷える日・雨の日にズーンと重だるく痛むような慢性的なタイプは、温めて血流を良くするのが正解です。ご自身の痛みがどちらのタイプか分からないときは、お気軽にご相談ください。
整形外科でヒアルロン酸の注射に通っています。漢方と併用できますか?
はい、併用できます。注射が「関節への直接的なケア」なら、漢方は「根本的な土台の体質ケア」です。
整形外科での治療(注射やリハビリ)はしっかりと続けながら、漢方を用いて筋と骨を養う材料を内側から補い、冷えや湿気に負けない体質を整えていく——この二本立ては非常に理にかなった進め方です。「注射をしても、しばらくするとすぐ痛みが戻ってしまう」という方ほど、材料を補う土台側のケアを検討する価値が十分にあります。
一度痛みが出てから、また痛くなるのが怖くて歩けなくなりました。動かないほうが良いですか?
強い痛みが引いた後は、「痛くない範囲で少しずつ動かす」ほうが回復は早まります。
痛いからといって動かさない期間が長引けば長引くほど、膝を守る筋肉はあっという間に落ちてしまい、かえって関節は弱くなります。まずは平地の短い散歩や、浮力で負担が減るプールでの水中歩行、ご自宅でのゆっくりとした椅子スクワットなど、膝に優しい運動から少しずつ再開しましょう。ただし、痛みが数週間続く場合は自己判断せず、必ず整形外科の検査を受けてください。
まとめ:膝の材料を養いながら、運動の秋を取り戻す
「久しぶりに動いたら膝が痛くなってしまった。もう歳だから仕方ない…」
その痛みは、年齢への降伏勧告ではありません。「今の動きに対して、筋肉の準備と骨の材料が足りていないよ」という、あなたの膝からの大切なお知らせなのです。
外側から支える筋肉のサスペンションと、内側から支える肝腎という土台。この両方を丁寧に育てていけば、膝はまだまだあなたの動きに応えてくれます。
まずは、昔の6割からの無理のない再開、下りの丁寧な歩き方、そして山芋と黒豆を取り入れた食卓からスタートしてみてください。漢方の視点で筋と骨をしっかりと養えば、来年の秋はもっと遠くまで、軽やかに歩けるはずです。
「膝の痛みが不安で、楽しみだった山歩きや旅行を諦めかけている」「注射をしても戻ってしまう痛みを、体質から根本的に変えたい」という方は、ぜひ太陽堂までお気軽にご相談ください。お一人おひとりの体質や目標に合わせた、無理のない養生プランをご提案いたします。
関連ページ
太陽堂では、関節のお悩みだけでなく、心と体の様々なお悩みに対する漢方サポートを行っております。気になる症状がございましたら、以下のページもぜひご覧ください。
太陽堂の特徴
”当薬局のHPをご覧いただき、ありがとうございます。
私たち太陽堂は「一人でも多くの方の笑顔を見る為に」という思いのもと開局しました。
漢方薬とお客様の出会いがお悩み、体質改善の一助になれれば幸いです。”
特徴その1.
当薬局では、お客様「ひとりひとりに合わせた漢方薬」をその場で調合いたします。
そのため初めてのご相談では、「約1時間~1時間半」ほど相談時間をいただいております。
(遠方のお客様や、お忙しいお客様へは配送の受付もしております。詳しくはお問合せください)
特徴その2.
お作りする漢方薬は、国内外から厳選した生薬の力を、余すことなくお客様に届けるため
「煎じ薬」をお勧めしております。
特徴その3.
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お客様の健康を第一に考え、漢方の勉強会なども積極的に開催しております。
記事作成者 薬剤師 前原 信太郎

実績:伝統漢方研究会 2017年・2021年・2025年 学術発表
沖縄で開業医をしていた祖父と薬の話しをしていた事から薬剤師の道を目指すように。
調剤薬局の薬剤師として6年間勤務。
漢方の勉強をして、より患者さんの治療の選択肢の幅を広げたいという思いから「漢方の道」に。
調剤薬局も経験している為、西洋学の知識も勉強を積み今に至ります。
記事作成者 薬剤師 椙田 彩純

担当疾患;循環器、身体の痛み
臨床検査技師の両親の影響で、幼い頃から医療に関心を持つ。
大学卒業後、病院薬剤師として勤務。
対症療法が中心の現場で、繰り返す入退院や長期投薬を目の当たりにし、「もっと力になれる方法はないか」と模索する中で漢方と出会う。
現在は漢方の持つ幅広さと可能性に魅了され、一人ひとりの体質に寄り添った根本改善を追求している。















