
「朝起きた瞬間、のどがイガイガして声がかすれる。お茶を飲んでも、日中なんとなくのどに違和感が残ってすっきりしない…」
「鼻の中がカサカサして、ムズムズしたりツンと痛んだりする。鼻をかむと、ティッシュに少し血がつくことも…」
「日中はまだ夏の陽気で暑い日もあるのに、朝晩の空気が急にひんやりしてきた。そのせいか、のどや鼻の調子が急に変わってきた気がする…」
9月7日ごろの「白露(はくろ)」は、朝晩の空気が冷えて、草花に朝露が宿り始める節気(せっき:昔の暦で季節の移り変わりを表す目印)です。この頃から、空気は夏の湿気を含んだ状態から一転し、本格的に乾き始めます。
そして、その季節の変化を私たちの体の中でいち早く、最初に感じ取るのが、外の冷たく乾いた空気と直接触れ合っている「のど」と「鼻」なのです。
「日中はまだ暑いから、夏の感覚のままでいいだろう」と何のケアもしないでいると、のどと鼻の粘膜はどんどん乾いてバリアの働きが落ちてしまいます。イガイガや違和感が長引くだけでなく、この先さらに深まる秋の空咳や、冬の風邪・インフルエンザといった本格的なトラブルを招き入れる「入り口」になってしまうのです。
今回は、白露の頃からのど・鼻のトラブルが始まるメカニズムと、漢方における「肺は乾燥に弱い」という重要な考え方、そして粘膜を内側から潤してバリアを整える食事と生活の養生法を、太陽堂の薬剤師が詳しく解説いたします。
【太陽堂が教える、白露ののど・鼻の養生まとめ】
まずは、当薬局が考える「のど・鼻の乾きはじめ」へのアプローチを簡潔にまとめました。
- 漢方の見立て(原因): 西洋医学では「空気の乾燥と朝晩の冷え込みによる、のど・鼻の粘膜の防御機能(線毛運動など)の低下」とされるこの時期の不調ですが、漢方では、秋に主役となる臓器である「肺」が、秋特有の乾燥という邪気(燥邪:そうじゃ)のダメージを受け始め、のど・鼻という「肺への直接の入り口」からいち早く潤いが失われていく状態に注目して原因を探ります。
- アプローチ(対策): 梨や白きくらげなど「肺を潤す白い食材」を取り入れた食事ケアと、寝室の加湿・鼻呼吸・マスクといった「粘膜を物理的に守る習慣」(養生)、そしてお一人おひとりの体質に合わせたオーダーメイドの煎じ薬を通じて、「乾いた季節の空気に負けない、潤ったのど・鼻の強固な土台づくり」を内側からサポートします。
- 今後のステップ(根本ケア): のど飴や一時的なうがいでその場をしのぐだけでなく、根本的な原因(体の内側の絶対的な潤い不足や、粘膜を養う機能そのものの低下)を丁寧に見極めるため、まずはじっくりとご相談を重ね、空気が完全に乾き切る冬本番に向けて、揺らぎにくい長期的な体質と向き合っていきます。
【薬剤師 林の視点】白露の頃からのど・鼻が乾き始めるメカニズムと、西洋医学・漢方のアプローチ
こんにちは、薬剤師の林です。
「なぜ季節の変わり目、特に秋の始まりには、真っ先にのどと鼻から不調が始まるのか」。ここには、人間の体が持つ防御システムと環境変化との関係から、はっきりとした理由が説明できます。
西洋医学の視点:湿度の低下と朝晩の冷えが、粘膜の「防御ライン」を弱らせる
私たちののどや鼻の奥の粘膜は、常に薄い粘液の層で覆われています。この粘液が、吸い込んだ空気の中に含まれるウイルス、細菌、ホコリなどの外敵をペタッと絡め取り、粘膜の表面にある「線毛(せんもう)」という細かい毛がほうきのように動いて、それらを体外へと運び出しています。これが、私たちの体を感染症から守る最前線の防御ラインです。
ところが白露の頃になり、空気の湿度が急激に下がり始めると、この大切な粘液の層が乾いて薄くなってしまいます。潤いがなくなると線毛の動きも途端に鈍くなり、外敵を外へ運び出すことができなくなります。
さらに、朝晩の冷え込みによって鼻やのどの血管がキュッと縮んでしまうと、粘膜に栄養と潤いを届ける血流が減少し、防御ラインの働きはさらに大きく低下してしまいます。
その結果、朝起きた時ののどのイガイガ、声のかすれ、鼻の中のカサつき、ムズムズ感といった症状が分かりやすく出やすくなるのです。特に、睡眠中に「口を開けて寝る癖(口呼吸)」がある方は、一晩中乾いた空気が直接のどを直撃するため、朝の症状がより強く出ることになります。
西洋医学的な視点では、まずは「寝室の適切な加湿(湿度50〜60%が理想)」、外出時のマスクの活用、そしてこまめなうがいと水分補給によって、粘膜を物理的に潤して守ることが基本の対策になります。
※ただし、のどの強い痛みや発熱を伴う場合、あるいは黄色や緑色のドロドロとした鼻水が続く場合は、単なる乾燥ではなく細菌やウイルスによる感染症(副鼻腔炎など)の可能性が高いため、早めに耳鼻咽喉科や内科を受診することをおすすめします。
漢方の視点:のど・鼻は「肺への入り口」。乾燥(燥邪)のダメージを最初に受ける場所
漢方では、秋は「肺」の機能が主役となる季節であると同時に、最もダメージを受けやすい季節だと考えます。ここでいう「肺」とは、単なる呼吸をする臓器というだけでなく、のど、鼻、そして皮膚までを含めた「外気と接して体を守る防御システム全体」を指す、とても広い意味を持った言葉です。
秋特有の乾いた空気のことを、漢方では「燥邪(そうじゃ)」と呼びます。この燥邪は、呼吸とともに体の中に入り込もうとし、肺のシステムのうち、外の空気と直接触れ合う「入り口」、つまりのどと鼻から順番にダメージを与え、潤いを奪っていきます。
白露の頃に、のど・鼻のカサつきやイガイガから不調が始まるのは、漢方の視点から見るとまさに「教科書どおりの順番」で秋のダメージが進行しているサインなのです。
そして、この「入り口の乾き」を大したことはないと放っておくと、燥邪は次第に体の奥深く、肺そのものへと進み、長引く空咳、肌の激しいカサつき、便がウサギのフンのように固くなるといった「本格的な秋の乾燥トラブル」へと一気に広がっていきます。だからこそ、入り口であるのどと鼻の段階で、乾燥を食い止めることが極めて重要なのです。
漢方では、この時期ののど・鼻の初期の不調に対し、一時的にのどを潤すだけでなく、体の内側から肺のシステム全体にたっぷりと潤いを供給し、粘膜の働きを助けるアプローチ(潤肺:じゅんぱい、生津:しょうしんなどの考え方)を用いて、「これから乾燥が本格化しても簡単には崩れない、強固な潤いの防御ラインづくり」を内側から根本的にサポートしていきます。
【薬剤師 石川の視点】のど・鼻を潤す、白露の食事と生活養生
薬剤師の石川です。
のどと鼻のケアを成功させる合言葉は、「外から守り、内から潤す」です。加湿器などの外側からのケアと、食事による内側からのケア。どちらか片方ではなく、両方を組み合わせることで、粘膜のバリア機能はぐっと高まります。
「白い潤い食材」で、内側から肺と粘膜を養う
漢方において、「白い食材」は肺の働きを助け、その入り口であるのど・鼻に潤いを与える代表選手とされています。毎日の食卓に意識して取り入れてみましょう。
- おすすめの食材: 梨、白きくらげ、れんこん、大根、百合根(ゆりね)、はちみつ、豆腐、山芋 など。
特にこの時期に旬を迎える「梨」は、漢方でものどの渇きを癒やし、熱を取る果物の代表です。冷蔵庫でキンキンに冷やしすぎず常温でいただくか、お腹の冷えが気になる方は、蒸したりコンポートにして「温かい梨」として食べるのがのどに優しくおすすめです。
また、すりおろした「れんこん」や「大根」を加えたスープやみぞれ汁は、昔から風邪のひき始めやのどのケアに使われてきた、理にかなった家庭の薬膳です。
逆に、唐辛子などの「強すぎる辛味」や過度なアルコールは、発汗を促して体の中の潤いを外へ逃がし、のどを刺激して炎症を悪化させてしまうため、のど・鼻がカサつくときは控えめにしてください。
寝室の加湿と「鼻呼吸」で、寝ている間の無防備な乾きを防ぐ
のどや鼻がいちばん無防備になり、激しく乾くのは、実は「寝ている間」です。何時間も同じ空間で呼吸を続けるため、寝室の空気が乾いていると、朝起きる頃にはのどはカラカラの砂漠状態になってしまいます。
寝室の湿度は、必ず50〜60%を目安に保つようにしてください。加湿器がない場合は、濡らしたバスタオルを1枚部屋に干しておくだけでも、湿度は大きく変わります。
また、朝起きた時ののどの乾きや痛みが強い方は、「口を開けて寝ている(口呼吸)」サインです。人間の鼻は優れた「天然の加湿・空気清浄機」であり、鼻で吸った空気は適度に温められ、潤った状態で肺へと届きます。日中から意識して鼻呼吸の練習をし、寝ている間に口が開いてしまう場合は、市販のマウステープ(口元に貼るテープ)などのグッズを活用して、物理的に鼻呼吸を促すのも非常に有効な手段です。
マスクと「温かいこまめな一口」で、日中の防御ラインを支える
日中も、乾いた秋の外気と、まだ使っているエアコンの風が、のど・鼻から水分を静かに奪い続けています。
人混みの中や湿度の低い室内では、マスクをするだけでも、自分の吐く息の湿気がマスク内にこもるため、のど・鼻の湿度を手軽に保つことができます。
そして水分の摂り方は、「のどが渇いた時に一度に冷たいものをたくさん飲む」のではなく、「常温か温かい飲み物を、一口ずつこまめに飲む」ことが鉄則です。温かいお茶や白湯が入ったマイボトルを常に手元に置き、のどの粘膜を15〜30分おきに定期的に「湿らせてあげる」イメージで水分を補給しましょう。
【比較表】白露からの乾きに備える!OK・NG行動リスト
| カテゴリ | 〇 おすすめ(粘膜を潤し、バリアを保つ) | × 要注意(乾きを進め、防御を弱らせる) |
| 食事と飲み物 | 梨・れんこん・白きくらげなど「白い潤い食材」を取り入れる (肺とのど・鼻の粘膜を体の内側から潤し、乾きに強い防御ラインを作る) | 辛いもの・お酒・味の濃いものでのどを刺激し続ける (汗や利尿作用で全身の潤いが失われ、粘膜のイガイガや炎症がさらに悪化する) |
| 寝る時の工夫 | 寝室の湿度を50〜60%に保ち、鼻呼吸を意識する (寝ている間の乾燥ダメージを防ぎ、朝のイガイガ・声がれを予防できる) | 加湿しない乾いた部屋で、口を開けたまま(口呼吸で)寝る (何時間ものどが直接乾き続け、防御の働きが朝までに劇的に低下してしまう) |
| 日中の習慣 | マスクの活用と、温かい飲み物を「一口ずつこまめに」飲む (粘膜を常に適度に湿った状態に保つことができ、ウイルスやホコリから守れる) | のどがカラカラに渇いてから、氷の入った冷たい飲み物をがぶ飲みする (粘膜は潤わないまま胃腸だけが冷え、体全体の防御の力がさらに落ちる) |
白露の養生に関するよくある質問(FAQ)
朝、のどのイガイガが続いています。ただの乾燥か、風邪のひき始めか、見分け方はありますか?
乾燥によるイガイガは「朝起きた時がいちばん強く、日中に水分をとると軽くなる」のが特徴です。痛みが強まる、または熱が出るなら風邪を疑ってください。
空気が乾き始めた時期のイガイガの多くは、寝ている間にのどが乾燥することが主な原因です。そのため、朝がいちばん不快で、起きてお茶を飲んだりうがいをしたりすると、お昼頃には気にならなくなる傾向があります。
一方、風邪(感染症)の場合は、時間とともにのどの痛みが徐々に強くなり、飲み込むのも辛くなったり、発熱や悪寒、色のついた(黄色や緑色)鼻水・痰を伴うことが多くなります。痛みが強い場合や何日も長引く場合は、無理をせず医療機関を受診してください。
そのうえで、「風邪ではないけれど、毎年この時期になると必ずのどをやられて何週間もイガイガが続く」という方は、肺の潤いが足りない「乾燥に弱い体質(陰虚)」の明確なサインですので、漢方による体質からの根本的な潤いケアをぜひご相談ください。
鼻の中がカサついて、鼻をかむとティッシュに少し血が混じることがあります。大丈夫でしょうか?
粘膜が乾燥して弾力を失い、切れやすくなっているサインです。頻繁に続く場合は耳鼻咽喉科で確認してください。
空気が乾き始めると、鼻の入り口付近のデリケートな粘膜が乾いてひび割れ、鼻をかむ、あるいは軽くこすった刺激だけで毛細血管が切れ、少量の血がつくことがあります。多くは秋の空気の乾きによる一時的なものですが、出血が頻繁に続く場合や、ポタポタと量が多い場合は、他の原因(鼻の病気など)も考えられるため、耳鼻咽喉科での確認を強くおすすめします。
日常のケアとしては、部屋の加湿を徹底することに加えて、純度の高いワセリンなどを綿棒で鼻の入り口に薄く塗って保護する方法が、手軽で非常に有効です。あわせて、白い潤い食材と漢方で、粘膜そのものを内側から強く養っていきましょう。
白露の時期にどんな準備をしておくと、この先の本格的な冬が楽になりますか?
「のど・鼻の防御ライン(入り口)」を今のうちにしっかりと立て直しておくことが、そのまま冬の風邪予防の最大の土台になります。
空気の乾燥と気温の低下は、白露から冬にかけて一方通行でどんどん進んでいきます。一番の入り口である「のど・鼻の粘膜」が、今の時期にしっかりと潤っているか、それともすでにカサカサに乾いているかで、インフルエンザなどのウイルスが活発になる冬本番に、外敵を防げるかどうかが大きく変わってきます。
加湿・鼻呼吸・潤い食材という基本の養生を、この白露の時期からしっかりと習慣にしておくこと。そして「毎年冬に必ず風邪をひく」「一度のどをやられると咳が何ヶ月も長引く」という方は、本格的な寒さと乾燥が来る前に、漢方で体の内側の「潤い」と「防御の力(衛気)」を整えておくことを強くおすすめします。
まとめ:のど・鼻の乾きは「秋本番」の合図。入り口の潤いから整えよう
「朝ののどのイガイガや、鼻のカサつきくらい、よくあることだから大したことない」と放っておくのは、実は非常に危険で「もったいない」不調のサインです。
のど・鼻の乾きは、秋の乾いた空気が体の入り口に確実に届き始めたという、季節からの最初の重要な合図なのです。ここでしっかりと「潤いの防御ライン」を立て直しておけば、この先待ち受けている長引く空咳、肌の激しいカサつき、そして冬の風邪といった大きなトラブルの多くを、水際(入り口)で食い止めることができます。
梨やれんこんなどの白い食材を食べる、寝室を加湿して鼻呼吸を意識する、こまめに温かい一口を飲む。まずはこの3つの簡単な養生からスタートしてみてください。そして、漢方の視点で内側から肺と粘膜をたっぷりと潤してあげれば、これから長く続く乾いた季節を通して、のども鼻も心地よくスッキリと過ごせる体は、必ずつくることができます。
「毎年、秋から冬にかけてのどのトラブルが絶えない」「乾燥に弱く、すぐ声がかすれてしまう体質を根本から変えたい」という方は、ぜひ太陽堂までお気軽にご相談ください。お一人おひとりの体質や症状に合わせた、無理のない確実な潤い養生をご提案いたします。
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太陽堂の特徴
”当薬局のHPをご覧いただき、ありがとうございます。
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記事作成者 薬剤師 林 泰太郎

実績:伝統漢方研究会 2015~2017年・2019年・2020年・2022年・2025年 学術発表
調剤薬局で3年間勤め、西洋の薬だけでは治療が難しい病気の壁に直面。
・「治療の難しい病気をなんとか治したい。」
・「ひとりでも多くの患者さんを笑顔にしたい。」
という想いから漢方の道へ。
漢方薬局で3年間修業をして、2015年 『漢方薬局 太陽堂』を立ち上げ。
開局10年を迎えた今も1ヶ月の平均来局数は900名を超え、お客様にご愛顧いただいている太陽堂の漢方薬剤師です。
記事作成者 薬剤師 石川 満理奈

得意な疾患:胃腸疾患・耳鼻咽喉疾患・不妊症・婦人科・肝臓・腎臓
開業医だった父の影響で小さい頃から医療は身近に。
薬学部を卒業後、調剤薬局に勤務。
自分自身の胃腸の不調も漢方薬により改善。
よりご来局頂いた方の体質に沿った治療の選択をできるようになりたいという思いから「漢方の道」へ。















