
「糖尿病の合併症で網膜症と言われた。まさか目まで悪くなるなんて思っていなかった……」
「眼科でレーザー治療を受けたけれど、この先どうなるのか不安でたまらない」
「視野の欠けやぼやけが出てきた。このまま見えなくなってしまうのでは……」
糖尿病網膜症(とうにょうびょうもうまくしょう)は、糖尿病の三大合併症のひとつです。長期間の高血糖によって網膜の細い血管が傷つき、視野の欠けやぼやけ・ゆがみが現れる進行性の病気です。
太陽堂へご相談に来られる方の多くが、目のお悩みと糖尿病そのもの(血糖)のお悩みをセットで抱えていらっしゃいます。そして、私たちが患者さまにいつも最初にお伝えしているのは、「目だけを見ていても、目は守れない。大元の血糖を整えることが、目を守る一番の近道」だということです。
今回は、西洋医学的なメカニズムや病院の治療法(レーザーや注射など)の役割を整理しながら、「血糖と目の血流を同時に整える」漢方の考え方について、薬剤師の視点から詳しく解説いたします。
【この記事の結論:「糖尿病網膜症」に対する漢方の考え方】
- 病気の正体(原因): 西洋医学では慢性的な高血糖による網膜毛細血管の損傷・閉塞・新生血管の発生とされますが、漢方では血糖の乱れの大元(膵臓の炎症・糖代謝の低下)と、目の血管の血流停滞(瘀血:おけつ)が重なった状態と考えます。
- 漢方の解決策: 病院での血糖管理と眼科治療を続けながら、漢方で「血糖コントロールの土台(膵臓・糖代謝)」と「目の血流」を同時に整え、網膜症をこれ以上悪化させない身体を内側から作ります。
- 対象となる主な疾患・お悩み: 糖尿病網膜症(単純〜増殖)、糖尿病黄斑浮腫、レーザー治療や抗VEGF注射への不安、血糖値・HbA1cがなかなか安定しない方
糖尿病網膜症とは?西洋医学的なメカニズムと進行度
血液中の糖分が過剰な状態(高血糖)が長く続くと、全身の細い血管(毛細血管)がもろく傷ついていきます。目は特に細い血管が集中しているため、ダメージを非常に受けやすい部位です。
糖尿病網膜症は、血管の傷み具合によって大きく3つの段階(進行度)に分けられます。
- 単純網膜症(初期): 血管に小さなコブ(毛細血管瘤)ができたり、点状の小さな出血が出始めた段階です。自覚症状はほとんどありません。
- 増殖前網膜症(中期): 血管が詰まり(血管閉塞)、網膜の広範囲に酸素や栄養が届きにくくなる(虚血)段階です。かすみ目を感じることがありますが、まだ無症状の方もいます。
- 増殖網膜症(末期): 酸素不足を補おうとして、非常にもろくて破れやすい「新生血管」が伸びてくる段階です。この血管が破れて硝子体出血を起こしたり、網膜剥離を引き起こすと、急激で大きな視力低下につながる危険が高まります。
また、進行の途中で、視力の中心である「黄斑(おうはん)」に血液の成分が漏れ出して水ぶくれになる「糖尿病黄斑浮腫(おうはんふしゅ)」が起こると、ゆがみや急な視力低下が現れます。
初期のうちは自覚症状がほぼないため、内科で「糖尿病」と言われたら、目の症状がなくても年に1回以上の定期的な眼底検査が絶対に欠かせません。
病院で行われる主な治療と西洋薬
病院での治療は、大きく「内科での血糖管理」と「眼科での局所治療」に分かれます。
1. 内科での血糖コントロール(大原則)
すべての治療の土台となります。HbA1c(過去1〜2ヶ月の血糖の平均を示す数値)を7.0%未満(状態により異なる)に保つことを目標に、食事・運動療法とともにお薬で管理します。
- 主な処方薬: インスリン注射、DPP-4阻害薬(ジャヌビア等)、SGLT2阻害薬(フォシーガ等)、ビグアナイド薬(メトホルミン)など。
2. 眼科での局所治療
網膜症が進行した場合、視力を守るための直接的な治療が行われます。
- レーザー治療(網膜光凝固術): 酸素不足になっている網膜周辺をレーザーで焼き固め、新生血管の発生を防ぎます。進行を食い止めるための最も標準的な治療です。
- 抗VEGF注射(アイリーア、ルセンティス等): 黄斑浮腫や新生血管の増殖を促す原因物質(VEGF)の働きをブロックする注射を目に打ち、漏れと腫れを抑えます。
- 硝子体手術: 大量に出血した場合や、網膜剥離が起きた場合に行われます。
【薬剤師コラム①】目のご相談は、必ず「血糖の数値」とセットで考えます
担当薬剤師:前原
糖尿病網膜症のご相談をお受けするとき、私たちは必ず目のお話と一緒に、「直近のHbA1cの数値」や「現在飲んでいる糖尿病のお薬の種類」について詳しくお伺いします。
なぜなら、網膜症のすべての大元の原因は「高血糖で血管が傷み続けること」だからです。大元の血糖が乱れたままでは、目に良いサプリメントを飲んでも、目薬を差しても、目を守り切ることはできません。逆に、HbA1cが安定してくると、目の出血や浮腫の状態も落ち着きやすくなります。
「眼科でレーザー治療を受けた後、これからどうなるのか不安です」とご来店される方も多くいらっしゃいます。レーザー治療は、今そこにある悪化を食い止めるための命綱となる素晴らしい治療です。
そのうえで、「これ以上レーザーが必要にならないような身体を作る」=大元の血糖代謝と血流を整えることが、私たち漢方の最も重要な受け持ちだと考えています。
血液検査の結果(HbA1c等)とお薬手帳をお持ちいただければ、目と血糖の両方から一緒に作戦を立てていきましょう。
【比較表】西洋医学と漢方薬(太陽堂)のアプローチの違い
糖尿病網膜症の治療において、病院の治療(西洋医学)と東洋医学(漢方)は、見事に役割を分担できるパートナーとなります。
| 比較項目 | 西洋医学(病院の治療) | 漢方薬(太陽堂の体質ケア) |
| 主な目的 | 血糖の数値管理と、網膜病変への直接的・物理的治療 | 血糖が乱れる大元(膵臓の炎症・糖代謝)と目の血流を体質から整える |
| 得意なこと | 進行した病変(出血・新生血管)への速効性のある対処、数値の強制管理 | 血糖コントロールの土台作り、網膜の微小血流改善、これ以上悪化させない体作り |
| 代表的な手段 | 血糖降下薬・インスリン、レーザー光凝固術、抗VEGF注射 | 膵臓の炎症を和らげる漢方薬、糖代謝を高める漢方薬、血流を良くする漢方薬(活血薬) |
| お互いの関係性 | 数値と病変を直接コントロールする「治療の最前線」 | 血糖と目の血流を底から支える「頼もしい土台」 |
漢方から見た糖尿病網膜症へのアプローチ——「血糖」と「血流」の両輪
太陽堂では、糖尿病網膜症に対して「血糖コントロールの土台」と「目の血流の改善」の2つを同時に進めることを大切にしています。ご本人の進み具合によって、使う漢方薬も変わります。
① 血糖の土台を整える(大元のケア)
- 初期の段階(膵臓の負担): 高血糖が始まったばかりの時期は、インスリンを出す「膵臓」が疲弊して熱(炎症)を持っている状態と捉え、「膵臓の炎症を和らげる漢方薬」を用います。
- 中期以降の段階(代謝の低下): 長引く糖尿病によって、身体の糖を処理する力(代謝)そのものが落ちている状態と捉え、「糖代謝を高めてエネルギーを生み出す漢方薬」を用います。
- 目標: 内科の治療と併せて、HbA1cの安定化を目指していきます。
② 目の血流を整える(目のケア)
- 漢方的見解: 高血糖でドロドロになった血液によって網膜の毛細血管が傷つくと、血流の強烈な滞り(瘀血:おけつ)が起こり、酸素と栄養が視細胞に届かなくなっています。
- アプローチ: 滞った血を流す「活血薬(かっけつやく:丹参や川芎など)」を中心に用いて網膜の微細な血流を整え、必要に応じて「目の働きそのものを活性化する漢方薬」を組み合わせて、視細胞の環境をサポートします。
【薬剤師コラム②】「欠けた部分」は戻らなくても、「これから」は守れます
担当薬剤師:林
目のご相談すべてに共通してお伝えしているのは、「目は『元の見え方に良くする』ことよりも、『これ以上悪化させない』ことが何より大事」だということです。
正直にお伝えすると、網膜の出血や黄斑のダメージによって一度大きく欠けてしまった視野を元に戻すことは、現代の医療技術をもってしても困難です。実際、後ほどご紹介する改善実例の患者さまも、視野の欠けた部分そのものが完全に消えたわけではありません。
それでも、漢方で血糖と血流を整えることで、目の不快感(かすみやぼやけ)が和らぎ「見え方の質」が良くなる方は多くいらっしゃいます。そして何より、「これ以上欠けさせない、悪化させない」状態を長く保つことができるようになります。これは、生涯にわたって目を使うためにおいて、とても大きな価値です。
「このまま少しずつ見えなくなってしまうのでは」という不安は、糖尿病網膜症と診断された方が皆さま等しく抱えるものです。その不安を、血糖の数値の改善・眼底検査・体質ケアという「具体的な前向きな行動」に変えて、一緒に大切な目を守っていきましょう。
【改善実例】太陽堂での体質改善エピソード(服用終了まで)
【糖尿病網膜症】昭和23年生 男性|HbA1cが6.7→6.3へ改善し、2年6ヶ月でご卒業
10年以上前に糖尿病と診断され、最近になって合併症である「腎症」と「網膜症」の症状が強くなってきたことで不安を感じ、ご相談に来られました。視野の欠損や目のぼやけが気になり、HbA1cは病院のお薬を飲みながら「6.7」で推移している状態でした(服薬前は8.0前後)。
お渡ししたのは、①膵臓の炎症を取る漢方薬 ②血流を良くする漢方薬 ③眼の働きを活性化する錠剤 の3種類です。
- 3ヶ月後: 血液検査でHbA1cが「6.5」まで改善。ご自身でも「目が少し見えやすくなってきた感覚がある」とのこと。
- 8ヶ月後: HbA1cが「6.3」まで改善し、気になっていた目のぼやけも和らいで見え方の質が良くなってきたと実感。
- 1年1ヶ月後: 調子が良く、主治医の判断により病院の糖尿病薬が少し減量になりました。
- 2年後: 非常に安定しているため、漢方薬の量を半分に減量。目のぼやけはほとんど気にならない状態になりました。
- 2年6ヶ月後: 順調に経過し、血糖コントロールの土台がしっかりと定着したため、漢方ケアの服用終了(ご卒業)となりました。視野の欠けた部分そのものは変わりませんが、見え方の不快感が減り、なにより血糖コントロールが安定している状態を保てています。
※効果の感じ方や必要な期間には個人差があります。
今日からできる「血糖と目」を守る生活養生
日々の生活習慣が、直接「血糖値」と「網膜の血管」の健康状態に直結します。
- 症状がなくても眼科での眼底検査を定期的に: 網膜症の初期〜中期は自覚症状が全くありません。内科で「糖尿病」と言われたら、目の自覚症状がなくても最低年1回以上(眼科医の指示があればその間隔で)の眼底検査を必ず受け続けましょう。
- 食事は「ベジファースト・よく噛んでゆっくり」: 野菜(食物繊維)から先に食べ、よく噛んで15分以上かけて食事をすることで、食後の血糖の急上昇(血糖スパイク)を緩やかに抑えることができます。
- 食後10〜15分の軽い散歩: 食後に軽く身体を動かす(ウォーキングや家事など)ことは、血液中の糖分を筋肉で消費させる最も手軽で効果的な血糖コントロール法です。
- 血圧の管理も忘れずに: 高血圧は、ただでさえもろくなっている網膜の血管への「強力な追い打ち」になります。塩分を控え、血圧のコントロールも同時に行いましょう。
- 「禁煙」の徹底: タバコに含まれるニコチンは血管を強力に収縮させ、網膜の酸素不足をさらに悪化させて新生血管の発生を助長します。目を守る上で禁煙は必須です。
よくあるご質問(FAQ)
病院の糖尿病のお薬や眼科の治療(レーザー等)と、漢方薬は併用できますか?
はい、基本的には安心して併用いただけます。
病院の治療は「数値の強制コントロールと病変の直接治療」、漢方薬は「血糖が乱れにくく血流の良い体質づくり」と、役割が明確に異なります。併用することでより安定した状態を目指せます。ただし、低血糖を防ぐためにも、必ず現在のお薬手帳と直近の血液検査の結果をお持ちください。実例のように、経過が良くなって病院のお薬が減った方もいらっしゃいます(※減薬の判断は必ず主治医の先生が行います)。
すでにレーザー治療を受けました。今からでも漢方を飲む意味はありますか?
はい、大いにあります。レーザー後こそ「これ以上進ませない体づくり」が大切です。
レーザー治療は、現状の悪化を食い止めるための重要な防波堤です。しかし、大元の高血糖や血流障害が治ったわけではありません。レーザー後こそ、大元の血糖と網膜の血流を整えておくことが、追加のレーザーや手術が必要になりにくい状態を保つことにつながります。ご不安も含めてお気軽にご相談ください。
欠けてしまった視野や視力は戻りますか?
一度大きく欠けてしまった視野や、失われた視力を元に戻すことは、現代の医療技術でも困難です。
だからこそ、「これ以上悪化させないこと」が何より大切になります。漢方で血糖と血流を整えることで、目のぼやけや疲労感が減って「見え方の質」が良くなり、残っている大切な視野と視力を長く保ちやすくなります。
どのくらいの期間、漢方薬を続ければ良いですか?
血糖と代謝という根深い体質から整えるため、じっくり取り組む疾患です。まずは3ヶ月程度が最初の目安となります。
HbA1cは「過去1〜2ヶ月の血糖の平均」を映す数値なので、変化の確認には数ヶ月単位の経過が必要になります。目の疲れの軽減などは早めに感じられることもありますが、実例のように1〜2年かけて血糖と目の状態を安定させていくケースが多くなります。
まとめ|目を守る近道は、大元の「血糖」を整えること
糖尿病網膜症は、「目の病気」であると同時に、全身の血管を蝕む「血糖の病気」です。
① 病院での血糖コントロールと定期的な眼底検査という土台を守る ② レーザーや注射など、眼科の治療をきちんと受ける ③ 漢方で「血糖の土台(膵臓・代謝)」と「目の血流」を同時に整える この3つを揃えることが、大切な視野を「これ以上悪化させない」一番の近道となります。
「目のことも血糖のことも、別々ではなくまとめて相談したい」
「レーザー後の将来が不安でたまらない」
そんな方は、どうぞ一人で抱え込まず、お気軽に太陽堂へご相談ください。血液検査の結果(HbA1c等)とお薬手帳をご用意いただけると、より詳しくお話しできます。専門の薬剤師があなたの目と体質に優しく寄り添い、血糖と目の両方を守るケアを全力でサポートいたします。
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太陽堂の特徴
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記事作成者 薬剤師 前原 信太郎

実績:伝統漢方研究会 2017年・2021年・2025年 学術発表
沖縄で開業医をしていた祖父と薬の話しをしていた事から薬剤師の道を目指すように。
調剤薬局の薬剤師として6年間勤務。
漢方の勉強をして、より患者さんの治療の選択肢の幅を広げたいという思いから「漢方の道」に。
調剤薬局も経験している為、西洋学の知識も勉強を積み今に至ります。
記事作成者 薬剤師 林 泰太郎

実績:伝統漢方研究会 2015~2017年・2019年・2020年・2022年・2025年 学術発表
調剤薬局で3年間勤め、西洋の薬だけでは治療が難しい病気の壁に直面。
・「治療の難しい病気をなんとか治したい。」
・「ひとりでも多くの患者さんを笑顔にしたい。」
という想いから漢方の道へ。
漢方薬局で3年間修業をして、2015年 『漢方薬局 太陽堂』を立ち上げ。
開局10年を迎えた今も1ヶ月の平均来局数は900名を超え、お客様にご愛顧いただいている太陽堂の漢方薬剤師です。















