
「風邪のひき始めに、何を食べれば早く治るのか分からない……」
「熱があって食欲がない。食べないと治らないと言われるけれど、無理に食べると気持ち悪い……」
「みかんは風邪にいいと聞いたのに、食べたら体が冷えた気がする。本当のところはどうなの……」
風邪のときの食べ物は、「これを食べれば治る」というものはありません。けれど、ひき始め・熱がある日・治りかけの3つの段階で「体が今ほしいもの」は変わるので、段階に合わない食べ方をすると、こじらせたり長引かせたりします。太陽堂の店頭でも、冬は「風邪のときに何を食べればいいか」というご質問をよくいただきます。
ご質問で多いのは、順に「食欲がないときも食べたほうがいいか」「みかんや果物はいいのか」「お風呂に入っていいか」「何日休めば戻るか」「漢方はいつ飲むか」です。
このページでは、3つの段階ごとの食べ物と過ごし方、受診の目安、漢方の段階リレーの考え方をご説明します。
(※冬に体を冷やす食材と温める食材の一覧は「冬の不調を悪化させるNG食材」の記事に、毎年風邪をひく方の冬支度は「霜降の養生」の記事に、熱が下がったあとの不調は「風邪・インフルエンザのあと、咳とだるさが残る」の記事にまとめています。このページは、風邪をひいている最中の「3つの段階の食べ方と過ごし方」に向けた考え方です。)
【この記事の結論:風邪のときの食べ物と過ごし方への漢方の考え方】
- 段階で変わる理由(原因): ひき始めは「体を温めて追い出す」、熱がある日は「戦いに力を回す」、治りかけは「使った力を補う」と、体の仕事が変わるからです。漢方では①ひき始め=温めて発散させる食べ物 ②熱がある日=消化に力を使わせない食べ方 ③治りかけ=胃腸から補う食べ物と考えます。
- 漢方の解決策: 食べ物と同じく、漢方も段階でリレーします。ひき始めの「発散」、こじれたときの「調和」、治りかけの「補う」。同じ漢方を最初から最後まで飲み続けないのが、こじらせないコツです。
- 対象となる主なお悩み: 風邪のときの食事に迷う方、食欲がなくて不安な方、毎年風邪が長引く方、ご家族の看病で食事を作る方
風邪のときの食べ物は、「段階」で決める
風邪は、ゾクゾクする「ひき始め」、熱や喉の痛みが強い「戦いの最中」、熱が下がった「治りかけ」の3つの段階を通ります。ひき始めに温める食べ物が合うのは、体が追い出そうとしているのを後押しするから。熱がある日に無理に食べないほうがいいのは、消化に力を取られて戦いに回せなくなるからです。治りかけは、使い切った力を胃腸から戻す段階で、ここで補い方を間違えると、だるさと咳が長引きます。
先に受診してほしいとき
38度以上の熱が3日以上続く、息苦しい・呼吸が速い、水分がとれない・半日おしっこが出ない、強い頭痛や関節痛、高齢の方や持病のある方のぐったりは、食事の工夫で様子を見ずに受診してください。インフルエンザが疑わしいときは、熱が出て12〜24時間たってから検査を受けると正確です。
3つの段階の食べ物と過ごし方
【比較表】段階ごとの「ほしいもの」と「避けたいもの」
| 段階 | 食べるといいもの | 避けたいもの・過ごし方 |
| ① ひき始め(ゾクゾク・喉のイガイガ・首筋のこわばり) | 生姜・ねぎ・にんにくを入れた温かい汁物、うどん、温かいお茶。体を温めて追い出す方向 | 冷たい飲み物・生もの・アイス。汗をかいたら着替えて、その日は早く寝る |
| ② 熱がある日(熱・喉の痛み・だるさ) | 水分と塩分が最優先。経口補水液、薄い味噌汁、重湯、おかゆ、すりおろしりんご。食べたくなければ無理に食べない | 肉・揚げ物・乳製品・甘いお菓子。長風呂は体力を消耗するのでシャワーか拭くだけに |
| ③ 治りかけ(熱が下がった・咳やだるさが残る) | 卵、鶏肉や白身魚のスープ、大根、豆腐、温野菜。量より回数で、胃腸から補う | 熱が下がった翌日の普通食・残業・運動。3日は7割の動きに |
体を冷やす食材と温める食材の細かい一覧は、別の記事「冬の不調を悪化させるNG食材」にまとめています。ここでは、風邪のときに迷いやすい食べ物に絞ってお答えします。
- みかん・柑橘: ビタミンと水分がとれますが、生のまま多く食べると体を冷やします。ひき始めの寒気があるときは控えめに、熱で喉が渇くときは1〜2個まで。温めた焼きみかんや、皮を干した陳皮入りのお茶なら冷やしません。
- 生姜: ひき始めの発散に向きますが、熱が上がりきったあとや、乾いた咳で喉が痛いときは刺激になります。段階で使い分けてください。
- おかゆ: 熱がある日と治りかけの主役。卵や鶏肉を足すのは治りかけから。
- ゼリー飲料・スポーツドリンク: 熱で食べられない日の水分と糖分の補給には役立ちますが、冷やして飲むと胃腸を冷やします。常温で。
- お酒・カフェイン: 「体を温める」つもりの熱燗も、風邪の最中は水分を奪い眠りを浅くします。回復するまでお休みにします。
【セルフチェック】今は、どの段階?
今日の状態で、当てはまるものに印をつけてください。
- ☐ ゾクゾクする寒気がある
- ☐ 喉のイガイガ・くしゃみが出始めた
- ☐ 首筋や肩がこわばる
- ☐ 熱が37.5度以上ある
- ☐ 食べたくない、または吐き気がある
- ☐ 喉が強く痛む、体の節々が痛い
- ☐ 熱が下がって2日以内
- ☐ 咳とだるさが残っている
- ☐ 食欲が少し戻ってきた
- ☐ 便がゆるい、胃がもたれる
読み方:上の3つが中心なら①ひき始め、4〜6番目が中心なら②熱がある日、7〜10番目が中心なら③治りかけです。段階が変わったら、食べ物も漢方も次の段階へ替えます。②の段階で「食べないと」と無理をしないこと、③の段階で「もう治った」と普通食に戻さないことが、長引かせないコツです。
【薬剤師コラム①】「食べないと治らない」は、段階によって逆です
担当薬剤師:林
「食べないと治らないから」と、熱があるのに無理に食べて、胃もたれと吐き気を足してしまう方がいらっしゃいます。熱がある日は、消化に力を使わせないのがいちばんの養生です。水分と塩分がとれていれば、1〜2日食べられなくても心配はいりません。
食べる段階は、熱が下がってからです。治りかけに胃腸から補うことが、咳とだるさを長引かせないコツで、漢方もここで「補う」方向へ切り替えます。
漢方の考え方|風邪の「段階リレー」
漢方の風邪薬は、1種類を最後まで飲むものではなく、段階で選手交代します。ひき始めは、体を温めて汗をかかせ、入ってきたものを外へ追い出す「発散」の漢方(葛根湯や麻黄湯がこの仲間です)。数日たって微熱や吐き気、食欲不振が続く「こじれた段階」では、発散ではなく体の内と外のバランスを整える「調和」の漢方に替えます。熱が下がった治りかけは、使った力を戻す「補う」漢方です。
ひき始めの漢方を治りかけまで飲み続けると、発散に体力を使って回復が遅れます。「どの段階にいるか」で漢方を替えるのが、こじらせない飲み方です。葛根湯の飲むタイミングは「葛根湯はいつ飲む?」の記事、こじれた段階の漢方は「柴胡桂枝湯」の記事に詳しく書いています。
【薬剤師コラム②】看病する方へ。温かいものを「少しずつ、何度も」
担当薬剤師:前原
ご家族の看病で食事を作る方には、「一食分をしっかり」ではなく「温かいものを少しずつ、何度も」とお伝えしています。熱がある人の胃腸は小さくなっていると考えて、お椀半分の汁物や、ひと口のおかゆを回数多く。
お子さんと高齢の方は、食べる量よりおしっこの回数と口の中の乾きで脱水を見てください。半日出ていなければ、食べ物の工夫より受診です。
よくある勘違い3つ
勘違い①「風邪には栄養。肉や卵をしっかり食べる」
熱がある日に肉や脂の多いものを食べると、消化に力を取られて、戦いに回す力が減ります。栄養をつけるのは治りかけの段階で、しかも火を通した卵や鶏のスープのような「消化に力のいらない形」からです。
勘違い②「ビタミンCのために、果物をたくさん食べる」
生の果物は水分とビタミンがとれる一方で、体を冷やします。寒気のあるひき始めに冷たい果物を多く食べると、追い出す力を弱めます。熱で喉が渇く日に1〜2個、治りかけは温めて、が目安です。
勘違い③「汗をかけば治るから、厚着をして熱いお風呂に入る」
無理に汗をかかせると、体温と体力を一緒に失います。熱いお風呂は出たあとに冷えて、寒気をぶり返させます。ひき始めは首の後ろと背中を温めて早く寝る、熱がある日はシャワーか拭くだけ、が本筋です。
よくあるご質問(FAQ)
風邪で食欲がありません。無理にでも食べたほうがいいですか?
熱がある1〜2日は、無理に食べなくて大丈夫です。水分と塩分を優先してください。
食べる段階は熱が下がってから。3日以上まったく食べられない、水分もとれないときは受診してください。
みかんは風邪に良いのですか、悪いのですか?
どちらでもなく、「段階と量」です。寒気があるひき始めは控えめ、熱で喉が渇くときは1〜2個、治りかけは温めて。
生の柑橘を多く食べると体を冷やします。焼きみかんや皮を干したお茶なら、冷やさずに香りと水分がとれます。
風邪のときにお風呂に入ってもいいですか?
熱が高い日とひどくだるい日は避けます。それ以外は、ぬるめに短く、湯冷めしないうちに布団へ。
長風呂は体力を使い、出たあとに体温を奪われます。ひき始めの寒気がある日は、首と背中を温めてから早く寝るほうが向いています。
ゼリー飲料やスポーツドリンクだけで過ごしても大丈夫ですか?
熱がある1〜2日なら大丈夫です。常温で、少しずつ回数を分けて。
冷やして一気に飲むと胃腸を冷やします。熱が下がったら、温かい汁物とおかゆに移ってください。
子どもの風邪のときの食事は、大人と同じ考え方でいいですか?
段階の考え方は同じです。ただし、お子さんは脱水が早いので、食べる量よりおしっこの回数と口の中の乾きを見てください。
半日おしっこが出ない、ぐったりして水分もとれないときは、食事の工夫より受診です。食べられるようになったら、おかゆとバナナのような消化のよいものから。
熱が下がった翌日に、出勤してもいいですか?
出勤するなら、3日は動く量を7割にしてください。熱が下がった翌日の残業と運動は、ぶり返しの一番の原因です。
インフルエンザは、出勤を控える期間が決められていることがあります。職場の決まりを確かめてください。治りかけの過ごし方は「風邪・インフルエンザのあと、咳とだるさが残る」の記事にまとめています。
市販の風邪薬を飲みながら、食事で気をつけることはありますか?
空腹のまま飲まないこと、お酒と一緒に飲まないことの2つです。
食欲がないときは、重湯やおかゆをひと口食べてから飲んでください。漢方と市販薬を一緒に使うときは、名前を薬剤師にお伝えください。
漢方はどの段階で飲めばいいですか? 費用は?
ひき始めは「発散」、こじれたら「調和」、治りかけは「補う」と、段階で替えます。毎年風邪が長引く方は、ひく前の秋から体力を補っておく方法もあります。
費用は週5,000円前後から(月2万円前後から)で、相談料は無料です。風邪の最中は短い期間の服用から始められます。
まとめ|「何を食べるか」より「今どの段階か」
「風邪に効く食べ物を知りたい」
- ひき始めは温めて追い出す食べ物、熱がある日は水分と塩分を優先して無理に食べない、治りかけは胃腸から補う。段階で「ほしいもの」が変わります。
- みかんも生姜も、良い悪いではなく段階と量。冷たいもの・脂っこいもの・お酒は、どの段階でも回復を遅らせます。
- 漢方も段階リレー。発散・調和・補うを替えていくのが、こじらせない飲み方。高熱3日以上・息苦しさ・脱水は食事の工夫で様子を見ずに受診。
「毎年、風邪が長引く」という方は、食べ方と漢方の段階を一度そろえてみてください。
今の段階、食欲と水分の様子、普段の冷えや体力を丁寧にお伺いし、全国対応のオンライン相談・店頭相談にて、新宿の漢方薬局「太陽堂」があなたの段階に合った漢方ケアをご提案いたします。
関連するお悩み
風邪と冬の食べ物には、段階や時期で近いページがいくつかあります。ご自身の状況に近いページもぜひご参照ください。
太陽堂の特徴
”当薬局のHPをご覧いただき、ありがとうございます。
私たち太陽堂は「一人でも多くの方の笑顔を見る為に」という思いのもと開局しました。
漢方薬とお客様の出会いがお悩み、体質改善の一助になれれば幸いです。”
特徴その1.
当薬局では、お客様「ひとりひとりに合わせた漢方薬」をその場で調合いたします。
そのため初めてのご相談では、「約1時間~1時間半」ほど相談時間をいただいております。
(遠方のお客様や、お忙しいお客様へは配送の受付もしております。詳しくはお問合せください)
特徴その2.
お作りする漢方薬は、国内外から厳選した生薬の力を、余すことなくお客様に届けるため
「煎じ薬」をお勧めしております。
特徴その3.
当薬局は漢方専門の薬剤師が「得意とする専門分野」にわかれて日々研鑽しています。
お客様の健康を第一に考え、漢方の勉強会なども積極的に開催しております。
太陽堂がはじめての方へ
ご相談を考え始めた方は、まずこちらをどうぞ。
記事作成者 薬剤師 林 泰太郎

実績:伝統漢方研究会 2015~2017年・2019年・2020年・2022年・2025年 学術発表
調剤薬局で3年間勤め、西洋の薬だけでは治療が難しい病気の壁に直面。
・「治療の難しい病気をなんとか治したい。」
・「ひとりでも多くの患者さんを笑顔にしたい。」
という想いから漢方の道へ。
漢方薬局で3年間修業をして、2015年 『漢方薬局 太陽堂』を立ち上げ。
開局10年を迎えた今も1ヶ月の平均来局数は900名を超え、お客様にご愛顧いただいている太陽堂の漢方薬剤師です。
記事作成者 薬剤師 前原 信太郎

実績:伝統漢方研究会 2017年・2021年・2025年 学術発表
沖縄で開業医をしていた祖父と薬の話しをしていた事から薬剤師の道を目指すように。
調剤薬局の薬剤師として6年間勤務。
漢方の勉強をして、より患者さんの治療の選択肢の幅を広げたいという思いから「漢方の道」に。
調剤薬局も経験している為、西洋学の知識も勉強を積み今に至ります。














