
「多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)と言われた。ネットで調べると、桂枝茯苓丸や当帰芍薬散が出てくるけれど、自分はどれなの?」
「市販の同じ名前の漢方を飲んでみたけれど、生理不順も基礎体温も変わらない。合っていないのかな……」
「ピルや排卵誘発剤(クロミッドなど)と一緒に飲める漢方はあるの? 妊娠が分かったら、どうすればいいの?」
多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)は、卵巣の中で卵が育ちきらず、排卵がうまくいかなくなる状態です。病院でPCOSと診断を受けたあと、「漢方薬の名前」を調べている方がとても多くいらっしゃいます。
このページでは、新宿の漢方薬局「太陽堂」がPCOSの方に実際に使うことが多い漢方薬を、体質タイプ別にご紹介します。ネットでよく挙がる薬の店頭での位置づけ、桂枝茯苓丸と当帰芍薬散の見分け方、市販薬との違い、「飲んでいるのに効かない」ときに多い理由、注意点まで、薬剤師が解説します。
(※このページは「薬の名前と選び方」の解説です。PCOSという病気そのものの説明、太陽堂の考え方、改善の実例は、本体ページにまとめています。この記事だけで自己診断せず、気になる症状はまず婦人科を受診してください。)
【太陽堂が解説する「PCOSの漢方薬」のポイント】
- 基本は「血の滞り」を整える薬: PCOSの要因は「瘀血(おけつ)=血の巡りの滞り」が多くを占めるため、太陽堂では桂枝茯苓丸や温経湯といった「血流を整える(駆瘀血)」漢方薬を中心に使います。
- 体質に合わせて足し引きする: むくみ・体重増加、血の不足・冷え、ストレスといった体質の違いは、ベースの薬に生薬を加減して調整します。「どの薬を1つ選ぶか」ではなく、「○○をベースに、体質に合わせて加減して調合する」のが太陽堂のやり方です。
- 市販の同じ名前の薬とは中身が違う: お一人おひとりに合わせて、量と生薬を一味ずつ調整しています。市販の同名の漢方薬で、同じ結果になる可能性は低いと考えています。
【コラム】薬剤師 石川の視点「痩せ型でも、体重が増えるタイプでも、薬の基本は同じです」
「PCOSのご相談では、痩せ型の方と、体重が増えやすい方の両方がいらっしゃいます。食事や生活の養生は、お二人で変わります。ただ、要因として瘀血(血の滞り)が多くを占めているので、漢方薬の基本は、どちらのタイプでも血流を整える「駆瘀血剤(くおけつざい)」です。
そのうえで、貧血ぎみで顔色が白いなど「血の不足(血虚)」の特徴が強い方には、血を補う薬を兼ねたり、合わせたりすることを検討します。薬の名前だけで決めるのではなく、舌や経血の様子、冷え方を見ながら、お一人ずつ組み立てています。」
PCOSに使うことが多い漢方薬——体質タイプ別の早見表
太陽堂の店頭でPCOSの方に使うことが多い漢方薬を、体質タイプ別にまとめました。どのタイプでも、「血流を整える薬をベースに、体質に合わせて生薬を加減して調合する」のが基本の形です。
| 体質タイプ | よくあるサイン | 太陽堂で使うことが多い漢方薬・生薬 |
| ①血の巡りが滞るタイプ (瘀血) ※PCOSの基本はここ | 生理周期が長めで不順、経血に塊が混じる、生理の始まる前後に痛みが強くなる、手足は冷えるのにのぼせる。 | 桂枝茯苓丸(けいしぶくりょうがん)/温経湯(うんけいとう) 血流を整える(駆瘀血)漢方薬をメインに使います。 |
| ②むくみ・体重増加タイプ (痰湿) | むくみやすい、体重が増えやすい、身体が重だるい、食べる量が多い。 | ①の薬をベースに、薏苡仁(よくいにん)や茯苓(ぶくりょう)といった水はけを良くする生薬を加えます。食べすぎで体重が増えている方には山査子(さんざし)を足すことも検討します。 |
| ③血が足りず冷えるタイプ (血虚・冷え) | 貧血ぎみ、顔色や爪の色が白っぽい、経血の量が少ない・色が薄い、全身が冷える。 | 四物湯(しもつとう)/温経湯 瘀血をベースに血の不足を伴う方、年齢を考慮したい方に、血を補う方向を兼ねます。 |
| ④ストレスで悪化するタイプ (気滞) | イライラや不安が強い、ストレスで生理が乱れる、眠りが浅い。 | 加味逍遙散(かみしょうようさん)など、自律神経の乱れを整える漢方薬。自律神経の乱れでPCOSが悪化している場合に検討します。 |
(※表の薬名は、ブログでご紹介できるものだけを挙げています。実際には、この表に無い生薬を足したり、量を変えたりして、お一人ずつ調整します。)
表に出てきた漢方薬の解説記事はこちらです。
ネットでよく挙がる漢方薬の、太陽堂での位置づけ
「PCOS 漢方」で検索すると、たくさんの薬名が出てきます。その中で、太陽堂の店頭で「メインで使う」「条件つきで使う」「使わない」ものを、正直にお伝えします。
| 漢方薬 | 太陽堂での位置づけ | 理由・使う条件 |
| 桂枝茯苓丸 (+薏苡仁) | メインで使う | 血流を整える駆瘀血剤として、PCOSの中心になる薬です。 |
| 温経湯 | メインで使う | 同じく駆瘀血剤。血の不足や冷えを伴う方にも使います。 |
| 当帰芍薬散 | あまり使わない | 血を補う目的なら、四物湯を使うことの方が多いです。血の不足と水の滞りが両方見られるタイプには検討します。 |
| 加味逍遙散 | 条件つき | 自律神経の乱れによってPCOSが悪化している場合に検討します。 |
| 芍薬甘草湯 | 条件つき | 生理痛や排卵痛が強いときの頓服(痛いときだけ飲む使い方)、または高プロラクチン血症(ホルモンの一つが高い状態)を併発している場合に検討します。 |
| 補中益気湯 | 条件つき | 疲れやすく気力が落ちている「気虚」の傾向があるときに検討します。PCOSに対してメインでは使いません。 |
| 防風通聖散 | 使わない | 体重が気になる方が選びがちですが、太陽堂ではPCOSに使いません。 |
| 婦宝当帰膠 | 使わない | 太陽堂では取り扱っていません。 |
検索でよく出てくる薬が、そのままあなたに合う薬とは限りません。当帰芍薬散のように「有名だけれど、太陽堂ではあまり使わない」薬もあります。それぞれの薬の詳しい解説は、こちらをご覧ください。
「桂枝茯苓丸と当帰芍薬散、自分はどっち?」——見分けのポイント
この2つで迷う方がとても多いので、店頭で見ているポイントを表にしました。見るのは「舌」「生理の様子」「冷え方」「体型」の4つです。ご自身の身体と照らし合わせてみてください。
| 見るところ | 桂枝茯苓丸タイプ(瘀血) | 当帰芍薬散タイプ(血虚・水滞) |
| 舌 | 舌の裏の血管が太く浮き出ている(怒張)。全体に赤みや、くすんだ色味が強い。 | 色が薄く白っぽい。潤いが多い。舌の中央に筋(裂紋)が入ることもある。 |
| 生理 | 周期が長めで不順。経血に塊が混じる。生理の始まる前後に痛みが強くなる。 | 経血の量が少なめで色が薄い。生理2〜3日目頃に痛みが強くなり、期間の後半にかけて体調が悪くなる。 |
| 冷え | 手足は冷えるのに、顔はのぼせる。 | 全身が冷える。 |
| 体型・見た目 | (体型は決め手にしません) | 痩せ型、色白、もち肌。下まぶたの裏や爪に血色が少ない。 |
ただし、先ほどの表のとおり、太陽堂ではPCOSに当帰芍薬散を使うことはあまりありません。当帰芍薬散タイプの特徴が強い方には、四物湯で血を補いながら、血流を整える薬を合わせる形を考えます。「どっちか分からない」という方は、舌の写真と生理の様子をお聞かせいただければ、こちらで整理します。
市販の同じ名前の漢方を飲んでもいい?——「効かない」ときに多い理由
「桂枝茯苓丸」はドラッグストアでも買えます。市販品を試すこと自体を止めはしませんが、太陽堂の調合とは中身が違う、ということは知っておいてください。
太陽堂では、その方に合わせて、量と生薬を一味(ひとつ)単位で調整しています。同じ「桂枝茯苓丸」という名前でも、中身の組み立てが違うため、市販の漢方を飲んでも同等の変化が出る可能性は低いと考えています。
【コラム】薬剤師 前原の視点「漢方を飲んでいるのに効かない、という方に多い3つの理由」
「『漢方を飲んでいるのに変わらない』というご相談では、体質に合っていない可能性も十分にあります。ただ、それ以外にも、よくある理由が3つあります。
①飲んでいる期間が短い(3ヶ月未満)。②決められた量と時間で続けられていない(飲み忘れが多い・量が少ない・飲む時間がバラバラ)。③食事や生活に改善点がある(脂っこい食事が多い・身体を冷やす習慣が続いている)。
太陽堂では、他のご相談と同じように、まず3ヶ月続けていただいてから状態を判断します。『効かない』と感じたら、やめる前に、飲み方と生活のことを一度お聞かせください。」
病院のお薬との併用・妊娠が分かったとき・注意点
ピル・クロミッド・レトロゾールとの併用: 病院のお薬と漢方は併用できます。これらのお薬を使っているからといって、漢方薬の選び方を特別に変えることはありません。お薬手帳をお持ちいただければ、飲み合わせを確認します。
妊娠が分かったとき: 血流を整える駆瘀血剤は、妊娠が分かった時点で中止します(流産のリスクを上げないためです)。ご希望があれば、妊娠を支える方向の漢方薬(安胎薬)に切り替えます。妊娠検査薬で陽性が出たら、次の分を飲む前に、まずご連絡ください。
甘草(かんぞう)の重なり: 複数の種類の漢方を一緒に飲むときは、甘草という生薬が重なって、むくみや血圧上昇(偽アルドステロン症)が起こることがあります。市販薬や他の漢方と一緒に飲むときは、必ずお知らせください。
胃腸が弱い方: 駆瘀血剤に含まれる地黄(じおう)や牡丹皮(ぼたんぴ)などで、胃もたれや軟便が出ることがあります。胃腸が弱い方は、はじめにお伝えください。そのほかにも、身体の状態によってはお使いいただけない場合がありますので、持病のある方は必ずご相談ください。
変化の目安: まず3ヶ月続けていただき、生理周期・基礎体温・肌・むくみの変化を見て、状態を判断します(※個人差があります)。
短い実例|どの方向の漢方で、どう変わったか
薬の方向のイメージとして、店頭の記録から2件だけご紹介します。いずれも、駆瘀血剤をベースに、体質に合わせて生薬を加減して調合したもので、市販の同名の薬ではありません。
- 30代|瘀血タイプ: 血流と水の流れを改善する方向の漢方。服用開始から2ヶ月で妊娠検査が陽性となり、胎嚢(たいのう)も確認されました。その後、9ヶ月間、安胎薬に切り替えて服用し、無事に出産されました。
- 20代|瘀血+血虚タイプ: 血を補いながら、血流と水の流れを改善する方向の漢方。2ヶ月で冷えが改善し、生理周期が整ってきました。4ヶ月で便秘が解消。9ヶ月で妊娠検査が陽性となり、その後5ヶ月間、安胎薬を服用して出産されました。
※効果の感じ方や必要な期間には個人差があります。症状の改善や妊娠を保証するものではありません。
詳しい経過を載せた改善症例や、太陽堂のPCOSに対する考え方は、本体ページにまとめています。
PCOSの漢方薬についてのよくあるご質問(FAQ)
市販の桂枝茯苓丸を買って飲んでもいいですか?
止めはしませんが、太陽堂では量と生薬を一味ずつその方に合わせて調整しているため、市販の同じ名前の漢方で同等の変化が出る可能性は低いと考えています。自己判断で長く飲み続ける前に、舌や生理の様子を添えて一度ご相談ください。
ピルやクロミッド、レトロゾールと一緒に飲めますか?
はい、併用できます。これらのお薬を使っているからといって、漢方薬の選び方を特別に変えることはありません。お薬手帳をお持ちいただければ、飲み合わせを確認します。
何種類も組み合わせて飲むのですか?
「桂枝茯苓丸をベースに、体質に合わせて生薬を加減して調合する」という形が基本です。複数の種類を一緒に飲む場合は、甘草の重なりに注意して組み立てます。
妊娠が分かったら、漢方はどうすればいいですか?
血流を整える駆瘀血剤は、妊娠が分かった時点で中止します。ご希望があれば、妊娠を支える方向の漢方薬(安胎薬)に切り替えますので、陽性が出たらまずご連絡ください。
どのくらいで変化を感じられますか?薬を見直すのはいつですか?
他のご相談と同じく、まず3ヶ月続けていただいてから、生理周期・基礎体温・肌・むくみの変化を見て状態を判断します(※個人差があります)。そのうえで、中身を見直すかどうかを決めます。
まとめ:薬の名前より、「瘀血」と体質で選ぶ
PCOSに使う漢方薬の種類と、体質タイプ別の選び方について解説しました。ポイントは次の3つです。
- PCOSの基本は「瘀血」。桂枝茯苓丸・温経湯など血流を整える薬をベースに、体質に合わせて生薬を加減する
- ネットで有名な薬でも、当帰芍薬散はあまり使わず、防風通聖散・婦宝当帰膠は使わない
- 市販の同名の薬とは中身が違う。「効かない」ときは、期間(3ヶ月)・飲み方・生活を先に見直す。妊娠が分かったら駆瘀血剤は中止
「自分はどの薬が合うのか」は、舌・生理の様子・冷え方・体型を見ないと決められません。薬の名前で迷ったまま市販薬を飲み続ける前に、全国対応のオンライン相談・店頭相談にて、新宿の漢方薬局「太陽堂」にお気軽にご相談ください。
関連するページ
PCOSの詳しい漢方相談や、関連する記事はこちらをご覧ください。
太陽堂の特徴
”当薬局のHPをご覧いただき、ありがとうございます。
私たち太陽堂は「一人でも多くの方の笑顔を見る為に」という思いのもと開局しました。
漢方薬とお客様の出会いがお悩み、体質改善の一助になれれば幸いです。”
特徴その1.
当薬局では、お客様「ひとりひとりに合わせた漢方薬」をその場で調合いたします。
そのため初めてのご相談では、「約1時間~1時間半」ほど相談時間をいただいております。
(遠方のお客様や、お忙しいお客様へは配送の受付もしております。詳しくはお問合せください)
特徴その2.
お作りする漢方薬は、国内外から厳選した生薬の力を、余すことなくお客様に届けるため
「煎じ薬」をお勧めしております。
特徴その3.
当薬局は漢方専門の薬剤師が「得意とする専門分野」にわかれて日々研鑽しています。
お客様の健康を第一に考え、漢方の勉強会なども積極的に開催しております。
太陽堂がはじめての方へ
ご相談を考え始めた方は、まずこちらをどうぞ。
記事作成者 薬剤師 石川 満理奈

得意な疾患:胃腸疾患・耳鼻咽喉疾患・不妊症・婦人科・肝臓・腎臓
開業医だった父の影響で小さい頃から医療は身近に。
薬学部を卒業後、調剤薬局に勤務。
自分自身の胃腸の不調も漢方薬により改善。
よりご来局頂いた方の体質に沿った治療の選択をできるようになりたいという思いから「漢方の道」へ。
記事作成者 薬剤師 前原 信太郎

実績:伝統漢方研究会 2017年・2021年・2025年 学術発表
沖縄で開業医をしていた祖父と薬の話しをしていた事から薬剤師の道を目指すように。
調剤薬局の薬剤師として6年間勤務。
漢方の勉強をして、より患者さんの治療の選択肢の幅を広げたいという思いから「漢方の道」に。
調剤薬局も経験している為、西洋学の知識も勉強を積み今に至ります。














