
「外は猛暑なのに、部屋に入ると凍えるように冷える」
「夏なのに、なんだか体がだるい、むくみやすい…」
他の記事で夏の寝苦しさの原因となる「心火(過剰な熱)」について解説しましたが、夏の健康管理は「熱」対策だけではありません。実は、夏の暑さから逃れるための「冷房」と、冷たいものの摂りすぎが招く「冷え」や「胃腸の弱り」も、健やかなコンディションを崩す大きな要因となるのです。
今回は、自律神経の乱れ(クーラー病)や水分の摂りすぎによる体の余分な水(水毒)のメカニズム、そして根本的なリズムを整える漢方の養生法を薬剤師が解説します。
▼【夏の休息トラブル】暑くて寝苦しい夜に。「心火(しんか)」を優しく鎮める漢方の知恵と快眠養生は、こちらのページをご覧ください。
【薬剤師 林の視点】夏の冷えメカニズムと、西洋医学・漢方のアプローチ
こんにちは、薬剤師の林です。 夏の「冷え」と「胃腸バテ」は、自律神経の乱れと、体内の水分バランスの崩れが複雑に関係しています。
西洋医学の視点:クーラー冷え(自律神経の乱れ)と水分の摂りすぎ
人は、自律神経が体温調節を行っています。
しかし、猛暑の外と冷え切った室内を何度も往復すると、自律神経がパニックを起こし、体温調節がうまくいかなくなります(いわゆる「クーラー病」)。また、夏の脱水ケアは不可欠ですが、冷たい水をがぶ飲みすると、胃腸が冷えて消化機能が低下します。
カフェイン飲料(緑茶やコーヒーなど)の摂りすぎも、利尿作用で余計に水分を失うリスクがあります。 このような西洋医学的な視点では、エアコンの温度設定(除湿と冷房の使い分け)、腹巻の活用、温かい飲み物を摂る習慣が大切です。
また、夏の冷えによる痛みがある場合は、市販の解熱鎮痛薬(ロキソニンなど)を適切に使用しつつ、根本的なリズム調整には漢方が役立ちます。
漢方の視点:冷えによる巡りの滞り「瘀血(おけつ)」と余分な水「水毒(すいどく)」
漢方では、冷えによって体の生命エネルギーである「気(き)」や「血(けつ)」の巡りが滞ってしまう状態(瘀血(おけつ)など)に注目します。
また、胃腸(脾)が弱っているところに冷たい水やビールなどを摂りすぎると、体の中に余分な水分が溜まってしまいます。これを「水毒(すいどく)」と呼びます。 水毒が強くなると、体が重だるく感じたり、むくみやすくなったり、胃がチャプチャプしたりします。
漢方では、五苓散(ごれいさん)などの考え方を用いて、「体の余分な水分を外へ出しながら、滞った『気』や『血』の巡りをスッキリさせる」というアプローチで、穏やかなコンディションづくりをサポートします。
【薬剤師 椙田の視点】夏の胃腸を健やかにする「温活(おんかつ)」の食事と生活養生
薬剤師の椙田です。 夏の「冷え」と「水毒」を整え、バテにくい体を作るためには、日々の食事と生活習慣の積み重ねが大切です。
「お腹」を温め、水を巡らせる食材
漢方では、胃腸を温め、水を巡らせる食材が役立つとされています。生姜、ネギ、ニラなどの「温性(おんせい)」の食材は、お腹を温め、巡りを健やかにするサポートをしてくれます。 また、小豆(あずき)やハトムギなどは、体の余分な水を出すのを手助けしてくれる優秀な食材です。夏野菜を食べる際も、常温や温かい調理法で、胃腸の負担を和らげましょう。
エアコンの適切な使い分け
エアコンは、単に温度を低く設定するだけでなく、「除湿」機能を上手に活用するのがおすすめです。湿度が下がるだけでも、体感温度は下がり、寝苦しさが和らぐことがあります。
また、夜はエアコンをつけっぱなしにする場合、27℃〜28℃の少し高めの温度設定にし、風が直接体に当たらないように工夫することが、朝まで穏やかな休息に繋がります。
【比較表】夏の隠れ不調を整える!OK・NG行動リスト
| カテゴリ | 〇 おすすめ(温め、水を巡らせる) | × 要注意(冷やし、水をこもらせる) |
| 飲食 | 常温または温かい飲み物(麦茶、生姜茶など) (胃腸を温め、水を巡らせる) | 冷たい水、カフェイン、ビールのがぶ飲み (胃腸を冷やし、利尿作用で余計に水分を失う) |
| 食事 | ゴーヤ、トマト、豚肉、山芋、生姜、小豆 (熱を冷まし、活力を補い、水を巡らせる食材) | そうめんやアイスなど冷たい炭水化物のみ (栄養が偏り、ビタミンB群不足で疲労が加速) |
| 環境 | エアコンを27〜28℃・除湿に設定する (朝まで適温を保ち、途中で目が覚めるのを防ぐ) | エアコンを切って寝る、風を直接体に当てる (寝苦しさの原因や、過度な冷え・だるさの引き金に) |
| 生活 | 腹巻や靴下を活用し、お腹と足を温める (「隠れ冷え」を防ぎ、自律神経のリズムを整える) | シャワーだけで済ませる、寝る直前にスマホを見る (深部体温がうまく下がらず、休息の質が低下) |
夏の不調・隠れ脱水に関するよくある質問(FAQ)
経口補水液(OS-1など)は毎日飲んでもいい?
基本的には可能ですが、日常の水分補給には注意が必要です。
経口補水液は、極度の発汗時や脱水のリスクが高い時に水分とミネラルを補給する目的で作られています。毎日のがぶ飲みは、塩分や糖分の過剰摂取に繋がることがあります。
日常の水分補給は、麦茶や常温の水をこまめに摂ることが理想的です。
冷たいものが欲しい時はどうすれば?
常温の水で一口、二口ゆっくりと含むようにしてください。
冷たい水は胃腸を驚かせてしまいます。常温の水や、温かい麦茶などをゆっくりと含むようにして、潤いを補ってください。
夏の冷えに市販薬は効く?
一時的なコンディション調整には役立ちますが、根本的なケアが重要です。
解熱鎮痛薬(ロキソニンなど)は、夏の冷えによる痛みの緩和に役立つことがあります。
しかし、冷えによるコンディションの崩れそのものを整えるものではありません。エアコンの設定温度調整や、漢方、食事の見直しなど、根本的なケアを取り入れるのがおすすめです。
まとめ:冷えと水を整え、健やかなコンディションを保つ
「毎年、夏になるとコンディションを崩しやすい」
夏のその隠れ不調は、自律神経の乱れと、体内の水分バランスの崩れ(水毒)が原因かもしれません。水分補給などの外からの対策だけでなく、漢方の視点を取り入れて内側の「冷え」と「水」のバランスを整えることで、厳しい暑さも健やかに過ごせるようになります。
「色々試してもコンディションが整わない」「自分に合った養生法を知りたい」という方は、ぜひ太陽堂までお気軽にご相談ください。お一人おひとりの体質に合わせたアドバイスを行っております。
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記事作成者 薬剤師 林 泰太郎

実績:伝統漢方研究会 2015~2017年・2019年・2020年・2022年・2025年 学術発表
調剤薬局で3年間勤め、西洋の薬だけでは治療が難しい病気の壁に直面。
・「治療の難しい病気をなんとか治したい。」
・「ひとりでも多くの患者さんを笑顔にしたい。」
という想いから漢方の道へ。
漢方薬局で3年間修業をして、2015年 『漢方薬局 太陽堂』を立ち上げ。
開局10年を迎えた今も1ヶ月の平均来局数は900名を超え、お客様にご愛顧いただいている太陽堂の漢方薬剤師です。
記事作成者 薬剤師 椙田 彩純

担当疾患;循環器、身体の痛み
臨床検査技師の両親の影響で、幼い頃から医療に関心を持つ。
大学卒業後、病院薬剤師として勤務。
対症療法が中心の現場で、繰り返す入退院や長期投薬を目の当たりにし、「もっと力になれる方法はないか」と模索する中で漢方と出会う。
現在は漢方の持つ幅広さと可能性に魅了され、一人ひとりの体質に寄り添った根本改善を追求している。














