
「視界の真ん中だけが暗く、丸く抜けたように物が小さくゆがんで見える」
「眼科では『自然に治ることが多いから様子を見ましょう』と言われたけれど、本当にこのままで大丈夫なのか不安……」
「一度は良くなったのに、仕事の繁忙期でストレスが溜まるとまた再発してしまった」
中心性網膜症(正式名称:中心性漿液性脈絡網膜症)は、網膜の中心にある「黄斑(おうはん)」の下に水分が溜まり、視界の中心が暗くなったり、ゆがんで見えたりする病気です。
30代〜50代の働き盛りの世代に多く発症し、過労や睡眠不足、強いストレスとの関わりが非常に深いこと、そして「何度も再発を繰り返しやすいこと」が大きな特徴です。
「このまま見えなくなってしまうのではないか」と強い不安を抱えて太陽堂へご相談に来られる方も多くいらっしゃいます。しかし、病気の仕組みを正しく知り、根本の体質から整えていくことで、決して過度に恐れる必要のない病気です。
今回は、西洋医学的なメカニズムや治療法を整理しながら、「再発を繰り返さない体」を作る漢方の考え方について、薬剤師の視点から詳しく解説いたします。
【この記事の結論:「中心性網膜症の再発」に対する漢方の考え方】
- 病気の正体(原因): 西洋医学では網膜色素上皮(水分のバリア)の異常により黄斑下に水分が漏れ出た状態とされ、ストレスやステロイド薬の影響が指摘されます。漢方では、ストレスによる「気の滞り(気滞)」と全身の水はけの悪さ「水毒」が重なった状態と考えます。
- 漢方の解決策: 病院での経過観察やレーザー治療を続けながら、漢方で目の血流と水分の巡りを整え、自律神経の緊張を解きほぐすことで、溜まった水を引きやすくし、再発しにくい体質を目指します。
- 対象となる主な疾患・お悩み: 中心性網膜症(中心性漿液性脈絡網膜症)、再発を繰り返している方、視界の中心の暗さ・ゆがみ・物が小さく見える(小視症)
中心性網膜症とは?西洋医学的なメカニズムと特徴
私たちの目の奥にある網膜の外側には、「網膜色素上皮(もうまくしきそじょうひ)」と呼ばれる細胞の層があり、外側からの水分の出入りを厳密に管理する「バリア」の役割を果たしています。
中心性網膜症は、何らかの理由でこのバリア機能が一部破綻し、その奥にある脈絡膜(血管の層)から血液中の水分が漏れ出し、網膜の中心である「黄斑」の下に水ぶくれ(漿液性剥離)ができてしまう病気です。
水が溜まって網膜がドーム状に浮き上がるため、カメラのフィルムが歪んだ状態になり、以下のような症状が現れます。
- 中心暗点: 見ようとする中心部分が薄暗く、または丸く抜けて見える
- 変形視・小視症: 直線がゆがんで見えたり、水が溜まった方の目で見ると物が実際よりも小さく見える
- 色覚異常・かすみ: 全体的に白っぽくかすんだり、色が違って見える
働き盛りに多く、ストレスやステロイドが引き金に
30代〜50代の男性に多く見られますが、近年は女性の発症も増えています。発症の引き金として最も多く指摘されるのが、「過労・睡眠不足・強い精神的ストレス」です。また、飲み薬や塗り薬、吸入薬などの「ステロイド薬」を使用していると発症・悪化しやすいことが医学的に分かっています。
病院での治療と「再発」のリスク
- 経過観察(自然軽快): 実は、発症から3〜6ヶ月程度で自然に水が吸収され、元の視力に戻るケースが多くあります。そのため、初診時はお薬を使わず「様子を見ましょう」となることが一般的です。
- レーザー治療(光凝固術): 水が漏れている穴が黄斑の中心から離れている場合、レーザーで穴を焼き固めて漏れを止めます。
- 光線力学療法(PDT)等: 慢性化して水が引かない場合に行われる特殊なレーザー治療です。
中心性網膜症の最大の問題は、「一度治っても、ストレスが溜まったり疲労が重なったりすると、再発を繰り返す方が少なくない」ということです。何度も再発を繰り返していると、網膜の視細胞がダメージを受けて傷跡が残り、水が引いても視力が完全には戻らなくなってしまう危険性があります。
【薬剤師コラム①】「自然に治る」と言われても、不安は消えませんよね
担当薬剤師:前原
中心性網膜症のご相談をお受けしていて一番印象的なのは、「眼科の先生からは『自然に治ることが多いから、しばらく様子を見ましょう』と言われたけれど、視界の中心が暗いまま何もせずに待っているのは、このまま見えなくなってしまうのではないかと不安でたまらない」というお声の多さです。
目の見え方は日々の生活のすべてに関わるものですから、不安が大きくなるのは当然のことです。そして何より厄介なのは、「その強い不安感やストレス自体が、この病気を長引かせる一番良くない材料になってしまう」という悪循環です。
また、「治ったと安心して仕事に復帰したら、繁忙期にまた再発してしまった」というお話を本当によく伺います。
だからこそ太陽堂では、病院での経過観察の期間を「ただ不安に怯えて待つだけの時間」にするのではなく、「水が早く引きやすく、次から再発しにくい体の土台を作る前向きな時間」に変えていくことをご提案しています。ご自身の体に対して「やれることがある」と分かるだけで、心の不安はぐっと軽くなりますよ。
【比較表】西洋医学(病院の治療)と漢方薬(太陽堂)のアプローチの違い
| 比較項目 | 西洋医学(病院の対応) | 漢方薬(太陽堂の体質ケア) |
| 主な目的 | 経過観察による自然軽快の確認、長引く場合のレーザー等による漏れの物理的停止 | 水が溜まりやすい体質(ストレス・水はけの悪さ・血流の滞り)を根本から整える |
| 得意なこと | OCT検査による浮腫(水)の量の正確な把握、病変部への直接的な治療 | 再発予防の体作り、ストレスを発散しやすい自律神経の改善、自然な回復の後押し |
| 代表的な手段 | 経過観察、レーザー光凝固術、光線力学療法(PDT)、ステロイド薬の中止指導 | 水の巡りを良くする漢方薬、目の回復に働きかける生薬、ストレスを和らげる漢方薬 |
| お互いの関係性 | 水の漏れ具合を見極め、必要時に直接対処する「治療の最前線」 | 水が引きやすく、再発しにくい自律神経と代謝の「土台作り」 |
漢方から見た「水が溜まりやすい・再発しやすい」3つの体質タイプ
中心性網膜症において「なぜ網膜に水が溜まるのか?」を漢方的に紐解くと、目の局所の問題だけでなく、全身のストレスや水分の代謝不良が深く関わっています。太陽堂では主に以下の3つのタイプに分けてアプローチします。
① ストレス・緊張が抜けないタイプ(気滞:きたい)
- 主な症状: 常に仕事や家庭のプレッシャーを感じている、肩や首がガチガチにこる、眠りが浅い、イライラしやすい、繁忙期に目の症状が出やすい。
- 漢方的見解: 過度なストレスで「気(エネルギー)」の巡りが滞り、自律神経の過剰な緊張が目の血管や網膜のバリア機能を乱している状態です。中心性網膜症の背景として最も多いタイプです。
- アプローチ: 滞った気を発散させて自律神経をリラックスさせる生薬(柴胡、芍薬など)を用いて、精神的な緊張の糸を解きほぐし、再発の引き金を減らします。
② 水の巡りが滞っているタイプ(水毒:すいどく)
- 主な症状: 体がむくみやすい、胃腸が弱く重だるい、雨の日や天気が悪い日に不調が出やすい、めまいがする。
- 漢方的見解: 全身の水分代謝(水はけ)の悪さが目の中にも波及し、黄斑の下に水が溜まりやすく、また一度溜まった水が吸収されにくい状態です。
- アプローチ: 不要な水分の排出を促す「利水薬(猪苓、沢瀉、茯苓など)」を用いて全身の水の巡りを整え、網膜下の水ぶくれがスッと引きやすい体内環境を作ります。
③ 目の回復力が落ちているタイプ(血虚・瘀血:けっきょ・おけつ)
- 主な症状: 目の疲れが抜けない、パソコンやスマホで目を酷使している、年齢とともに回復に時間がかかるようになった。
- 漢方的見解: 目の周囲の毛細血管の血流が滞り、網膜に十分な栄養や酸素が届かず、ダメージを受けたバリア(網膜色素上皮)の修復が進まない状態です。
- アプローチ: 目の周辺の血流を良くする漢方薬や、細胞の回復を助ける生薬を用いて、網膜の自然な修復力を内側から力強く後押しします。
【薬剤師コラム②】「再発させないこと」=「これ以上悪化させないこと」です
担当薬剤師:林
目のご相談すべてを通じて私たちがお伝えしている大切な鉄則は、「目は『完璧に良くする』ことよりも、『これ以上決して悪化させないこと』が何より大事」だということです。
中心性網膜症の場合、これは「いかに再発を防ぐか」という言葉とほぼ同じ意味になります。1回目の発症では自然に水が引いて視力が元に戻ることが多い病気ですが、2回、3回と再発を繰り返すうちに、網膜の視細胞が少しずつダメージを蓄積し、「水が引いたのに視力が戻らない」「ゆがみが一生残ってしまった」という事態に陥りやすくなるからです。
原因がストレスや過労だと分かっていても、「仕事を休んでストレスを完全になくしてください」と言われても現実的には不可能ですよね。
だからこそ、ストレスを「なくす」のではなく、「同じストレス環境にいても、それを受け流して発散しやすいしなやかな身体に整える」という漢方の考え方が非常に役立ちます。
十分な睡眠、目の休息といった日々の養生と合わせて、二度と繰り返さない強さを一緒に育てていきましょう。
【改善実例】太陽堂での体質改善エピソード(服用終了まで)
【中心性網膜症】昭和52年生 女性|白いかすみが消え、6ヶ月で水も溜まらず安定
半年前から目の不調が現れ、病院で「中心性網膜症(中心性漿液性脈絡網膜症)」と診断されました。お薬の処方はなく経過観察で様子を見ていたものの、「浮腫があり、物が小さくゆがんで見える」「中心部の視野が暗く欠けている」といった症状が改善せず、白くかすんで見えることもあると不安になりご相談に来られました。
お身体の様子から、①眼周辺の回復に働きかける漢方薬 ②眼の血流や水の流れを良くする漢方薬 の2種類をお渡ししました。
- 2ヶ月後: 白いかすみが消えて、遠近の見え方も良くなってきたとのこと。
- 5ヶ月後: 病院の検査で浮腫(水ぶくれ)がほぼ無くなっていることが確認され、見え方も調子が良いとのことでした。
- 6ヶ月後: ゆがみの進行もなく、眼に水も溜まることなく安定して過ごせているとのことでした。
※効果の感じ方や必要な期間には個人差があります。
今日からできる再発予防の生活養生
お薬や漢方ケアと合わせて、毎日のちょっとした習慣を見直すことが、再発を防ぐ最強のバリアになります。
- 「睡眠時間」を何よりも最優先にする: 睡眠不足は自律神経を乱し、再発の最大の引き金となります。仕事の繁忙期で削るべきは睡眠時間ではありません。いかに質の良い睡眠を確保するかを最優先に生活を組み立てましょう。
- 「頑張りすぎのサイン」を自分で決めておく: 肩こりがひどくなる、眠りが浅くなる、目の奥が痛むなど、「自分の限界が近づいているサイン」を事前に把握しておき、そのサインが出たら意識的にデジタルデトックスをして目を休めましょう。
- 片目ずつのセルフチェック習慣: カレンダーの升目や障子の桟などを使い、「中心の暗さ・ゆがみ・物が小さく見えないか」を時々片目ずつ確認し、再発の兆しに少しでも早く気づけるようにしましょう。
- カフェイン・アルコールは控えめに: コーヒーや栄養ドリンク、アルコールの過剰摂取は交感神経を過度に高ぶらせ、目の血管の緊張と血流悪化につながります。
- ステロイド薬の使用は必ず眼科医に申告する: 中心性網膜症はステロイド(内服・点眼・吸入・塗り薬など)の副作用で発症・悪化することがあります。他の科で処方されているお薬や市販薬があれば、必ず眼科の主治医に伝えてください。
よくあるご質問(FAQ)
病院で「自然に治ることが多い」と言われました。それでも漢方薬を飲む必要はありますか?
経過観察の期間を「早く水を引かせ、再発しにくい体を作る前向きな時間」に変えるのが漢方の役割です。
確かに自然に水が吸収されるケースも多いですが、この病気は非常に再発を繰り返しやすいのが特徴です。水が溜まりやすい体質(ストレス過多・水はけの悪さ)をそのままにしておくと、数ヶ月後や数年後に同じ苦しみを味わう可能性が高くなります。漢方で体質を整えておくことは、今回の回復のスピードを後押しするだけでなく、次の再発を予防する強固な土台作りになります。
仕事が激務なので、ストレスをなくすことは難しいです……
ストレスそのものを「完全にゼロにする」必要はありません。「発散しやすい体」に整えましょう。
仕事や家庭のストレス原因をすべて取り除くのは現実的ではありません。漢方薬は、「同じストレスを受けても、自律神経が過剰に緊張せず、受け流して発散できるしなやかな体質」に整えることを得意としています。睡眠や休息の養生と組み合わせることで、目へのダメージを最小限に抑えることができます。
病院でレーザー治療や内服薬を提案されました。漢方薬と併用できますか?
はい、基本的には安心して併用いただけます。
病院のレーザー治療は「水の漏れ穴を直接塞ぐ物理的な対処」、漢方薬は「水が溜まりにくく血流の良い体内環境づくり」と、役割が全く異なります。処方薬がある場合でも、飲むタイミングをずらすなどの調整が可能です。安全のため、現在お使いのお薬手帳をぜひお見せください。
どのくらいの期間、漢方薬を続ければ良いですか?
お身体の状態によりますが、まずは2〜3ヶ月程度が一つの目安となります。
視界のかすみやゆがみ、睡眠の質の変化は1〜3ヶ月頃から実感される方が多くいらっしゃいます。実例のように半年程度で水が引いて安定するケースも多いですが、「再発予防」までしっかり見据えるのであれば、繁忙期などを越えて体質が落ち着くまで、じっくりと継続されることをおすすめします。
まとめ|「様子を見る」だけで終わらせず、再発しない体を育てよう
中心性網膜症は、病気の仕組みを理解して正しく向き合えば、決して過度に恐れる必要のない病気です。しかし、「再発を繰り返すことだけは絶対に避けたい病気」でもあります。
① 眼科での定期的な経過観察・必要な治療をきちんと受ける ② 睡眠と休息の質を高め、再発の引き金となる疲労を減らす ③ 漢方でストレスを発散しやすく、水が溜まりにくい体質の土台を作る
この3つを揃えることが、「これ以上網膜を傷つけない・繰り返さない」ための一番の近道です。
「真ん中が暗くて、将来の視力が不安でたまらない」
「もうあのゆがみと再発を繰り返したくない」
そんな方は、どうぞ一人で抱え込まずにお気軽にご相談ください。眼科のOCT検査の結果や視力データをご用意いただけると、より詳しくお話しできます。専門の薬剤師があなたの目と体質に優しく寄り添い、繰り返さない健やかな体づくりを全力でサポートいたします。
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太陽堂の特徴
”当薬局のHPをご覧いただき、ありがとうございます。
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記事作成者 薬剤師 前原 信太郎

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沖縄で開業医をしていた祖父と薬の話しをしていた事から薬剤師の道を目指すように。
調剤薬局の薬剤師として6年間勤務。
漢方の勉強をして、より患者さんの治療の選択肢の幅を広げたいという思いから「漢方の道」に。
調剤薬局も経験している為、西洋学の知識も勉強を積み今に至ります。
記事作成者 薬剤師 林 泰太郎

実績:伝統漢方研究会 2015~2017年・2019年・2020年・2022年・2025年 学術発表
調剤薬局で3年間勤め、西洋の薬だけでは治療が難しい病気の壁に直面。
・「治療の難しい病気をなんとか治したい。」
・「ひとりでも多くの患者さんを笑顔にしたい。」
という想いから漢方の道へ。
漢方薬局で3年間修業をして、2015年 『漢方薬局 太陽堂』を立ち上げ。
開局10年を迎えた今も1ヶ月の平均来局数は900名を超え、お客様にご愛顧いただいている太陽堂の漢方薬剤師です。















