
「会議中や人と話すとき、意識していないのにまばたきや首振りが何度も出てしまう。大人になってもこんな症状が続くなんて……」
「子どもの頃に一度完全に治まったはずなのに、社会人になってストレスが増えてからまた出るようになってしまった」
「咳払いや鼻を鳴らす『んっ、んっ』という動作が癖のように続いていて、周りの目が気になる。これってチック? それとも鼻の病気?」
チック症は世間では「子どもの病気」と思われがちですが、実は太陽堂にお寄せいただくチックのご相談のうち、25%前後は大人の方。特に20代の方が多くいらっしゃいます。
今回は、太陽堂の店頭でのご相談データから見えてきた「大人のチック」の実像を数字で整理したうえで、自律神経の過緊張と「気」の詰まりへの漢方アプローチに、大人ならではの「生活の養生」を組み合わせる考え方を、症状の出ない日が続くようになった実例とともに薬剤師の視点から詳しく解説いたします。
【この記事の結論:「大人のチック」に対する漢方の考え方】
- 大人のチックの実像: 子どもの頃からの持ち越しが約65%、大人になってから再発した方が約35%。「大人になって突然」という方は、実は少数派です。症状は、まばたき(40%)・首振りなど動作系(35%)・声(20%弱)・鼻鳴らし(10%弱)の順に多くなっています。
- 不調の正体(原因): 西洋医学では脳の神経伝達物質の異常やストレスの関与とされますが、漢方では長期的なストレスや疲労の蓄積による自律神経の過緊張と、気の詰まりが土台にあると考えます。
- 漢方の解決策: 漢方で「筋肉の過緊張を鎮める」「気の巡りを整える」ことに加え、大人特有の生活の乱れ(睡眠・食事)を立て直す「養生」をセットにして土台を育てます。
- 対象となる主な疾患・お悩み: 大人のチック症(トゥレット症候群)、まばたき・首振り・顔のしかめ(運動チック)、咳払い・鼻鳴らし(音声チック)、子どもの頃からの持ち越し、大人になってからの再発でお悩みの方
なお、チック症という病気そのものの解説と症例はチック症・トゥレット症の専門ページにまとめています。この記事では「大人のチック」に絞ってお話しします。
大人のチックの実像——店頭の数字で見る「持ち越し」と「再発」
チックは、本人の意思とは関係なく、まばたき・顔のしかめ・首振りなどの動き(運動チック)や、咳払い・鼻鳴らし・声(音声チック)が突発的かつ不規則に繰り返し出てしまう症状です。
多くは子どもの頃(幼少期〜学童期)に始まり、成長とともに自然に軽くなっていくケースが多いのですが、大人になっても症状が続く方、あるいは大人になってから再発する方が決して少なくありません。
太陽堂の店頭でのご相談データから見えてくる「大人のチックの実像」は以下の通りです。
- 経緯: 子どもの頃からずっと続いている「持ち越し」が約65%、子どもの頃に一度治まって大人になってから「再発」した方が約35%です。「大人になって突然初めて発症した」という方は、実は少数派です。
- ストレスとの関係: ストレスとの関連を自覚されている方は50%弱です。ただし「特定の仕事のストレスが原因だ」とはっきり特定できる方は10%ほどで、多くは「何となく疲労や負荷がかかっている」という状態の長年の積み重ねです。
- よくある症状: 一番多いのはまばたき(40%)、次いで首を振るなどの動作系(35%)、声が出る音声チック(20%弱)、鼻鳴らし・咳払い(10%弱)です。運動チックと音声チックの両方が併発している方も多くいらっしゃいます。
大人のチックが何より辛いのは、症状そのものの苦痛よりも「仕事の会議や、人前で出てしまうことへの恥ずかしさ」にあります。気にするほど緊張が高まり、緊張が高まるほど症状が出やすくなる——この悪循環に深く悩む方が非常に多いのです。
【薬剤師コラム①】その咳払い・鼻ならし、チック?それとも鼻の病気?
担当薬剤師:石川
「喉のイガイガが取れなくて、咳払いや鼻を鳴らすのがずっと続いているんですが、これはチックなのでしょうか? それとも後鼻漏(こうびろう)などの鼻や喉の病気なのでしょうか?」
このご質問は店頭でも本当に多くいただきます。実際、太陽堂にご相談に来られる音声チックの方のうち、慢性鼻炎や後鼻漏など「鼻関連の既往歴がある」とおっしゃる方は30%ほどいらっしゃいます。
店頭で私たちがまず確認するのは、「実際に、鼻水や痰が物理的に出ているのかどうか」という点です。物理的に出ている場合は、さらに以下のポイントを伺います。
- 色や状態の確認: 黄色い・粘っこい痰が出るなら、鼻側の炎症のサインの可能性が高いです。
- 季節による変動: 花粉や乾燥の時期に明らかに悪化するなら、鼻側の要素が大きいです。
これらの要素を総合して、自律神経(チック)との関連度合いを判断していきます。逆に、「鼻水や痰は全く出ていないのに咳払いを繰り返してしまう」「一人でいる時は出ないが、人前で緊張する場面になると増える」という場合は、チック(自律神経の過緊張側)の可能性が非常に高くなります。
どちらの要素が強いのかで、選ぶ漢方薬の組み立ては全く変わってきます。両方の要素が複雑に混ざっている方も少なくありませんので、自己判断で「私はチックだ」と決めつけず、症状の出方やタイミングをありのままに私たちに教えてくださいね。
【比較表】西洋医学(病院)と漢方薬(太陽堂)のアプローチの違い
| 比較項目 | 西洋医学(病院のアプローチ) | 漢方薬(太陽堂の体質ケア) |
| 主な目的 | お薬で脳の神経伝達物質を調整し、症状を直接抑え込む | 自律神経の過緊張と気の詰まりを整え、チックの出にくい体質を育てる |
| 得意なこと | 症状が日常生活に支障を来すほど重度の場合の速やかな抑制 | 幼少期からの蓄積・生活習慣の乱れ・長年のストレスといった土台へのアプローチ |
| 代表的な手段 | 抗精神病薬(ハロペリドール等)、抗不安薬、行動療法(CBIT等) | 筋肉の緊張を鎮める漢方薬、気の巡りを整える漢方薬 + 養生(生活指導) |
| 気になる点 | お薬の眠気やだるさ等の副作用が気になり、仕事中に飲み続けにくいこと | 大人は子どものチックに比べて、体質の変化までに時間がかかること(3ヶ月以上目安) |
| 両者の関係性 | 症状が強くて辛い時期の生活を支える「対症療法の軸」 | 体質と生活習慣の側からじっくり立て直す「根本的な土台づくり」 |
漢方から見た大人のチック——子どもと同じ軸に、「養生」を足す
大人のチックに対する漢方アプローチの大まかな方向性は、子どものチックと同じです。しかし、大人ならではの「長年の蓄積」があるため、以下の3つの軸を組み合わせてサポートを行います。
軸① 自律神経の過緊張と、気の詰まりへのアプローチ(平肝・理気)
- 狙い: チックの直接的な引き金になっている「筋肉の過緊張(肝風内動)」と、ストレスによる「気の詰まり(気滞)」を緩めます。釣藤鈎や柴胡などの生薬を含む、筋肉の緊張を鎮め、気の巡りを整える漢方薬を患者さまの体質に合わせて組み合わせます。実例でも中心となる組み立てです。
軸② 大人ならではの「蓄積」に、体質改善で向き合う(補気・補血)
- 狙い: 大人の場合は、幼少期から何十年も抱えてきた症状の蓄積に加えて、不規則な睡眠、バランスの偏った食事といった「生活習慣の乱れ」が重なっています。そのため、単に緊張を鎮めるだけでなく、身体のエネルギー(気・血)を根本から立て直す「体質改善」に比重を置いた漢方薬を検討する場合も多くあります。
軸③ 養生——生活の立て直しが、大人には特に効く
- 狙い: 睡眠のリズム、食事のバランス、過度なカフェインやアルコールの制限、ストレスとの距離の取り方など、大人のチックでは漢方薬とあわせて「養生(生活の整え方)」の指導が極めて重要になります。ここをご自身で一緒に立て直していただくことが、遠回りに見えて実は一番の近道となります。
【薬剤師コラム②】大人のチックは、「焦らないこと」が一番の味方です
担当薬剤師:前原
ご相談に来られる大人の患者さまに、私が最初にお伝えしておきたい正直なことがあります。それは、「大人のチックは、子どものチックに比べると、改善の兆候が現れるまでに時間がかかる」ということです。
子どもの場合は、生命力が強く柔軟なため、漢方薬を飲み始めて1〜2ヶ月でスッと変化を感じる方が多いです。しかし大人の場合は、最低でも「3ヶ月以上」を一つの目安として見ていただくことが多いです。
これは決して治らないという意味ではなく、「それだけ長い年月をかけて積み重なってきた深い緊張や、強固な生活の癖に対して、体質の側から根本的に向き合っていくから」です。
ですから、焦って「今日もまだ治らない、明日も治らない」と毎日をカウントするよりも、「そういえば今日は、会議の時にまばたきが出なかった」「今日は首振りを意識せずに過ごせた」という『成功体験の日』を少しずつ増やしていくことを目標にしてください。
実例の方々も、そうやって3ヶ月、半年と焦らず進む中で、気づけば症状の出ない日が当たり前のように続くようになっていきました。「大人になってまでチックなんて恥ずかしい」とご自身を責める必要は全くありません。ご相談の25%の方が大人です。あなただけではありませんよ。
【改善実例】大人の方の症状が落ち着いていったエピソード
①【まばたき・顔に力が入る】20代 男性|1年11ヶ月、症状の出ない日が長く続くように
【ご相談時の状態】 1年前から顔に違和感を覚え、病院の診察でチック症と診断。病院薬は飲まずに様子を見ていたものの症状が強くなってきたため、ご相談に来られました。眼を強くつぶる・まばたき、鼻や顔に力が入るのが気になるとのことでした。
【太陽堂の提案】 ①筋肉の緊張を鎮める漢方薬 ②気の巡りを整える漢方薬 の2種類をお渡ししました。
- 3ヶ月後: 顔に力が入る感覚が徐々に減ってきたとのこと。
- 10ヶ月後: 当初に比べて明らかに症状がなくなってきているとのこと。
- 1年11ヶ月後: 症状の出ない日が長く続いているとのことでした。
②【咳払い・喉のイガイガ】50代 男性|3ヶ月で咳払いが減り、1年1ヶ月で漢方を減量へ
【ご相談時の状態】 2年前から気になる動作が増え、病院でチック症と診断された方です。病院の漢方やお薬を服用したものの改善が見られず、ご相談に来られました。咳払い・喉のイガイガが気になり、疲労がたまると症状が多く出るとのことでした。
【太陽堂の提案】 ①筋肉の緊張を鎮める漢方薬 ②気の巡りを整える漢方薬 の2種類をお渡ししました。
- 3ヶ月後: 咳払いが少なくなってきたとのこと。6ヶ月後には喉のイガイガも取れてきました。
- 9ヶ月後: 時々咳払いは出るものの、症状の全く出ない日もあるとのこと。
- 1年1ヶ月後: 症状の出ない日が増えてきたので、漢方を減量して様子を見ることになりました。
※効果の感じ方や必要な期間には個人差があります。症状の改善を100%保証するものではありません。
ご自宅でできる、大人のチックを遠ざける暮らしの基本(養生)
- 睡眠のリズムを「最優先」で立て直す: 不規則な睡眠時間や慢性的な寝不足は、大人の自律神経を乱し、チックを悪化させる生活要因の代表格です。まずは「毎日同じくらいの時間に就寝し、起床する」という当たり前のリズムを揃えることから始めましょう。
- 食事のバランスを見直す: 偏った食事も身体のエネルギー不足(気虚)の一因になります。特に一人暮らしや外食続きの20代・30代の方は、サプリメントに頼る前に、まず「毎日同じくらいの時間に、温かいご飯を食べる」だけでも身体の土台は大きく変わってきます。
- 症状が出る場面をメモする: どんな場面(会議中、上司と話す時、通勤の満員電車、疲れた夜など)で症状が出やすいかのメモは、ストレスとの関連度合いを判断するための極めて大切な手がかりになります。スマホのメモ機能などで構いませんので、気づいた時に記録してみてください。
よくあるご質問(FAQ)
大人ですが、チックの相談をしてもいいのでしょうか?
はい、もちろんです。チックのご相談の25%前後は大人の方で、特に20代の方が多くいらっしゃいます。
「大人になってまで」とご自身を責める方が多いのですが、子どもの頃からの持ち越し(65%)や再発(35%)はよくあることです。安心してご相談ください。
大人のチックは、漢方で良くなりますか?
自律神経の過緊張と気の詰まりを整え、症状の出ない日を増やしていくことを目指せます。ただし、子どもより時間がかかるのが正直なところです。
実例のように、3ヶ月ごろから変化を感じ、1年以上かけて症状の出ない日が続くようになった方もいらっしゃいます。効果の出方には個人差があります。
咳払い・鼻ならしが続いています。チックと鼻の病気、どう見分けますか?
まず「実際に鼻水や痰が出ているか」を確認します。
物理的に出ている場合は、色や状態・季節による変動を伺って、鼻側(後鼻漏など)と自律神経側(チック)の関連度合いを判断します。鼻関連の既往がある方は30%ほどいらっしゃり、両方が混ざっている方も少なくありません。
仕事のストレスが原因でしょうか?
ストレスとの関連を感じている方は50%弱いらっしゃいますが、「仕事のストレスが原因」とはっきり特定できる方は10%ほどです。
多くの方は、幼少期からの持ち越しという土台の上に、生活習慣の乱れや日々の負荷が積み重なって症状が出ています。だからこそ「原因探し」よりも、体質と生活の立て直しに力を注ぐことをおすすめしています。
病院のお薬と併用できますか?
はい、基本的には併用可能です。
病院で処方されているお薬がある場合は、続けたまま漢方が並走できます。お薬の内容を変えたい・減らしたい場合は、自己判断せず必ず処方している先生と相談して進めてください。飲んでいるお薬は、ご相談の際にお知らせください。
どのくらいの期間で変化を感じられますか?
大人の場合は「3ヶ月以上」を目安に見ていただいています。
子どもは1〜2ヶ月で兆候が見える方が多いのに対し、大人は蓄積が深いぶん時間がかかる印象です。「今日は出なかった」という日を一つずつ増やしていくイメージで、じっくり進めていきましょう。
まとめ:大人のチックは、体質ケアと生活の「二本立て」で進もう
「大人になってもまばたきや首振りが治まらず、恥ずかしくて人前に出るのが辛い」
「一度治ったのに再発してしまって、この先一生付き合っていくのかと絶望している」
大人のチックは、ご本人が思っている以上に珍しいものではありません。そして、決してあなたご自身の性格の弱さや努力不足のせいでもありません。
- 大人のチックは珍しくない(太陽堂の相談の25%が成人。持ち越し65%+再発35%)
- 漢方薬で「自律神経の過緊張」と「気の詰まり」を整え、体質改善に比重を置く
- 睡眠・食事・ストレスとの距離という「大人の養生」を一緒に立て直す
この「体質ケア」と「生活の立て直し」の二本立てが、大人のチックを遠ざける一番のアプローチです。
どんな場面で症状が出るのか、お仕事の状況や生活リズム、体質を丁寧にお伺いし、全国対応のオンライン相談・店頭相談にて、あなたに合わせた漢方ケアをご提案いたします。どうぞ一人で抱え込まずに、太陽堂へお気軽にご相談くださいね。
【ご相談をご希望の方へ】
チック症・トゥレット症に対する具体的な漢方アプローチについては、こちらのページにて詳しく解説しております。全国対応のオンライン相談も承っておりますので、まずはお気軽にお声がけください。
関係性の深いお悩み;ご相談も多数いただいております。
チックに関するさまざまなお悩みについて、以下の記事もあわせてご覧ください。
▼子どものチックに悩む親御さんへ
▼エビリファイとチックの漢方
▼抑肝散でチックが変わらなかった方へ
▼自律神経失調症
太陽堂の特徴
”当薬局のHPをご覧いただき、ありがとうございます。
私たち太陽堂は「一人でも多くの方の笑顔を見る為に」という思いのもと開局しました。
漢方薬とお客様の出会いがお悩み、体質改善の一助になれれば幸いです。”
特徴その1.
当薬局では、お客様「ひとりひとりに合わせた漢方薬」をその場で調合いたします。
そのため初めてのご相談では、「約1時間~1時間半」ほど相談時間をいただいております。
(遠方のお客様や、お忙しいお客様へは配送の受付もしております。詳しくはお問合せください)
特徴その2.
お作りする漢方薬は、国内外から厳選した生薬の力を、余すことなくお客様に届けるため
「煎じ薬」をお勧めしております。
特徴その3.
当薬局は漢方専門の薬剤師が「得意とする専門分野」にわかれて日々研鑽しています。
お客様の健康を第一に考え、漢方の勉強会なども積極的に開催しております。
太陽堂がはじめての方へ
ご相談を考え始めた方は、まずこちらをどうぞ。
記事作成者 薬剤師 前原 信太郎

実績:伝統漢方研究会 2017年・2021年・2025年 学術発表
沖縄で開業医をしていた祖父と薬の話しをしていた事から薬剤師の道を目指すように。
調剤薬局の薬剤師として6年間勤務。
漢方の勉強をして、より患者さんの治療の選択肢の幅を広げたいという思いから「漢方の道」に。
調剤薬局も経験している為、西洋学の知識も勉強を積み今に至ります。
記事作成者 薬剤師 林 泰太郎

実績:伝統漢方研究会 2015~2017年・2019年・2020年・2022年・2025年 学術発表
調剤薬局で3年間勤め、西洋の薬だけでは治療が難しい病気の壁に直面。
・「治療の難しい病気をなんとか治したい。」
・「ひとりでも多くの患者さんを笑顔にしたい。」
という想いから漢方の道へ。
漢方薬局で3年間修業をして、2015年 『漢方薬局 太陽堂』を立ち上げ。
開局10年を迎えた今も1ヶ月の平均来局数は900名を超え、お客様にご愛顧いただいている太陽堂の漢方薬剤師です。















