
【この記事の結論(まとめ):「水の飲みすぎ」と東洋医学の養生】
まずはこの記事の重要なポイントをまとめます。
- 原因: 西洋医学では過度な水分摂取による「水中毒(低ナトリウム血症など)」が注意喚起されますが、東洋医学では水の巡りが滞り、胃に溜まる「水滞(胃内停水など)」と考えます。
- アプローチ: 西洋医学では症状に応じて利尿剤などが用いられることがありますが、東洋医学・漢方では「胃腸(脾胃)の働きを整え、余分な水の排出をサポートする生薬(白朮・茯苓・半夏など)」を用い、体全体のバランスを整えることを目指します。
- 日常のケア: 空調の効いた涼しい部屋にいる場合は過度な水分摂取に注意し、発汗や適度な運動、水はけを良くする食養生(苦味のある野菜や適度な香辛料)を取り入れることが大切です。
毎日暑い日が続きますね。
毎年「どこまで暑くなるのだろう」と思うほどの猛暑ですが、私自身はスポーツで野球をしていたので、この時期になると甲子園が楽しみになってきます。ただ、これだけ暑いとみんな倒れてしまうのではないかと心配にもなります(そろそろドーム化した方がいいのではと個人的には思っています…笑)。
さて、テレビやインターネットでは連日「こまめな水分補給」「脱水への注意」が呼びかけられています。
もちろん、熱中症などを防ぐためにある程度の水分を摂ることは非常に重要です。しかし、実は「水の摂りすぎによる不調」があるのをご存知でしょうか?
今回は、人間の身体における「水」の役割と、飲み過ぎた時に起こりやすいサイン、そして東洋医学の観点から見た「水の巡り」をサポートする養生法についてお話ししていきます。
身体の半分以上は「水」でできている
私たちの身体の半分以上は「体液」と呼ばれる水分で構成されています。
- 新生児: 約80%
- 成人男性: 約60%
- 成人女性: 約55%
- 高齢者: 約50%
余談ですが、私たちが住んでいる地球の表面も約7割が水分(海)です。人間も地球も、半分以上が「水」でできていると思うとなんだか面白いですよね。
水の3つの大切な役割
水分は腸から吸収され、血液などの体液となって全身を絶えず循環しています。身体の中で水は主に以下の3つの役割を担っています。
| 役割 | 働き・メカニズム |
| ① 運搬 | 血液として酸素や栄養分を身体の隅々まで運び、同時に不要になった老廃物を回収して体外へ排出するよう働きかけます。 |
| ② 体温調節 | 皮膚への血液循環を増やし、汗をかくことで身体の熱を逃がし、体温を一定に保つサポートをします。 |
| ③ 環境維持 | 体内の水分の割合を調節し、血液がドロドロになるのを防ぎ、健康的な体内環境を維持します。 |
身体にとって、水はなくてはならない大切な存在であることがわかります。
西洋医学と東洋医学でみる「水の飲みすぎ」のリスク
水分は大切ですが、必要以上に摂りすぎると身体に負担がかかります。
西洋医学における「水中毒」とは?
西洋医学では、水分を過剰に摂取することで血液中のナトリウム濃度が薄まってしまう状態を「水中毒(低ナトリウム血症)」と呼びます。病院などでは、重度のむくみや水の滞りに対して「利尿剤(おしっこを出しやすくするお薬)」が処方されることがありますが、これも体内の余分な水分を外へ出すためのアプローチの一つです。
東洋医学における「水滞(すいたい)」「胃内停水(いないていすい)」
一方、東洋医学では水の巡りが悪くなることを「水滞」と呼びます。中でも有名なのが「胃内停水」です。
文字通り「胃の中に水が滞っている状態」を指し、主な原因として以下の2つが挙げられます。
- 水の摂り過ぎ
- 水の巡りの悪さ(代謝の低下)
【先生コラム】薬剤師 前原先生:現代人は「隠れ水分過多」かも?
夏場は「脱水に注意!」とよく言われますが、実は「水分は足りているのに、上手く巡っていない」という方が近年とても増えています。
その大きな理由は「発汗不足」と「運動不足」です。
炎天下で外仕事をする方やスポーツをする方には積極的な水分補給が必要ですが、クーラーが一日中効いた涼しい室内でデスクワークをしている方は、汗をかかないため、飲んだ水が体内に溜まりやすくなります。自分の生活環境に合わせて、水分の摂り方を調整することが大切ですね。
「胃内停水」のサインと漢方の考え方
胃に水がポチャポチャと溜まった状態になると、身体に様々なサインが現れやすくなります。東洋医学では、症状の出方によって漢方薬のアプローチを変えていきます。
① 胃腸の弱り(脾胃虚)によるサイン
水が滞ることで、頭全体が重く締め付けられるように感じたり、フワフワとした不調を感じたりすることがあります。このような「脾胃(胃腸)」の弱りに対しては、体内の余分な水を捌くのをサポートする「白朮(ビャクジュツ)」や「茯苓(ブクリョウ)」といった生薬が含まれる漢方薬が選ばれることが多いです。
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② 水が上へ昇ってくるサイン
本来下へ流れるべき水が上に逆流してしまうと、吐き気を感じたり、コンコンとした不調や、透明な鼻水が出やすくなったりします。この場合は、胃を温めながら水の上昇を抑える「半夏(ハンゲ)」や「生姜(ショウキョウ)」などの生薬を中心にバランスを整えていきます。
※漢方薬は個人の体質に合わせて選ぶことが重要です。ご自身の状態に合った漢方を知りたい方は、ぜひ専門家にご相談ください。
【先生コラム】薬剤師 椙田先生:水はけを良くする「食養生」
水の巡りが悪い、パンパンに張りやすいと感じる方は、毎日の食事「食養生(しょくようじょう)」を見直してみましょう!
東洋医学では、「苦味」は体内の余分な水分を飛ばし「乾燥」に導くと考えられています。ゴーヤ、茄子、牛蒡(ごぼう)、コーヒー、お茶などは利尿をサポートしてくれるためおすすめです。
また、身体を温めて水の巡りを促すために、唐辛子、ワサビ、胡椒、紫蘇(しそ)などの香辛料を適度に取り入れるのも良いですね。
逆に、摂りすぎに気をつけたいのが「潤い」をもたらす食材です。
海藻や小魚などの「海産物」、塩分の多い「塩辛いもの」、水分の多い「果物(※柿は例外でアクがあり乾燥に導きます)」は、水が溜まっている時は少し控えるように意識してみてくださいね。
よくある質問(FAQ)
1日にどれくらいの水を飲めばいいですか?
一般的には1日1.5〜2リットルと言われますが、東洋医学では「体質と環境」によって異なると考えます。クーラーの効いた部屋にいる方と、外で汗をかく方では必要な水分量は大きく変わります。喉の渇きを感じた時に、少しずつこまめに飲むのが理想的です。
水は冷たい方が吸収されやすいですか?
暑いと冷たい水を一気飲みしたくなりますが、冷たい水は胃腸(脾胃)を冷やし、働きを低下させて「胃内停水」の原因になりやすいです。できるだけ常温のお水や、温かいお茶を選ぶことをおすすめします。
体の巡りが気になるとき、病院のお薬と漢方はどう違いますか?
西洋医学の利尿剤などは、直接的に尿の排出を促すため即効性が期待されます。
一方、漢方では「なぜ水が滞るのか」という根本原因(胃腸の弱りや冷えなど)にアプローチし、自分自身の力で水分代謝ができる身体づくり(体質改善)を目指します。
まとめ:自分の環境に合わせた水分補給を
いかがだったでしょうか。
夏の時期に多い「胃内停水」や「水の滞り」についてお話ししました。
外で活動する事が多い方や運動をする方に関しては水分をしっかり摂ることが大切ですが、涼しい室内で過ごす方は「水の摂り過ぎ」に注意が必要です。
水の滞りは、頭の重だるさや吐き気などの不調に繋がってしまいます。巡りの悪さを感じる方は、飲み物の温度や、水はけを良くする食養生をぜひ試してみてくださいね。
毎日の生活習慣を少し意識して、健やかな毎日を目指しましょう!
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記事作成者 薬剤師 前原 信太郎

実績:伝統漢方研究会 2017年・2021年・2025年 学術発表
沖縄で開業医をしていた祖父と薬の話しをしていた事から薬剤師の道を目指すように。
調剤薬局の薬剤師として6年間勤務。
漢方の勉強をして、より患者さんの治療の選択肢の幅を広げたいという思いから「漢方の道」に。
調剤薬局も経験している為、西洋学の知識も勉強を積み今に至ります。
記事作成者 薬剤師 椙田 彩純

担当疾患;循環器、身体の痛み
臨床検査技師の両親の影響で、幼い頃から医療に関心を持つ。
大学卒業後、病院薬剤師として勤務。
対症療法が中心の現場で、繰り返す入退院や長期投薬を目の当たりにし、「もっと力になれる方法はないか」と模索する中で漢方と出会う。
現在は漢方の持つ幅広さと可能性に魅了され、一人ひとりの体質に寄り添った根本改善を追求している。















