
「整形外科でステロイド注射を打って、一度は楽になったのに、数ヶ月でまた再発。『注射はもう限界だから、次は手術だね』と言われてしまった」
「産後、赤ちゃんを抱っこするたびに手首がピキッと激しく痛む。でも育児で手を使わないわけにはいかない」
「更年期に入ってから、朝起きると指が曲がったまま引っかかって伸びなくなり(ばね指)、激痛が走るようになった」
手首の「腱鞘炎(ドケルバン病など)」や、指の付け根が引っかかる「ばね指」のご相談で太陽堂に来られるのは、産後や更年期の女性、そしてパソコン作業や美容師・料理人など手を酷使するお仕事の方がほとんどです。
日常で手を休ませることができないため症状が長期化・慢性化しやすく、「注射はもう打てない、でも手術は避けたい」という深い行き止まり感を抱えた方が多くいらっしゃいます。
今回は、「もう手術しかない」と言われて迷っている方への店頭での正直な答えと、患部の熱(炎症)・血流・潤いの3方向から「炎症を起こしにくい手(体質)」を根本から育てる漢方の考え方を、薬剤師の視点から詳しく解説いたします。
【この記事の結論:「腱鞘炎・ばね指で手術を迷っている」に対する漢方の考え方】
- 痛みの正体(原因): 西洋医学では手の使いすぎによる腱と腱鞘の物理的な摩擦・炎症とされますが、漢方では加齢や産後による「ホルモン(潤い)の枯渇=陰虚」と、筋肉や腱を養う「血の不足と滞り(血虚・瘀血)」が根本原因と考えます。
- 漢方の解決策: 手術でトンネル(腱鞘)を物理的に切り開くのではなく、漢方で①患部の熱(炎症)を冷ます ②血流を促して修復を助ける ③潤い(女性ホルモンの代わり)を補って摩擦を減らす——という3方向から身体の土台を立て直します。
- 対象となる主な疾患・お悩み: 腱鞘炎(ドケルバン病)、ばね指(弾発指)、ステロイド注射を繰り返している方、手術を勧められ迷っている方、産後や更年期の手首・指の痛み、手を休められないお仕事の方
なぜ「注射 → 再発 → 手術」の流れになりやすいのか
私たちの指や手首は、筋肉の力を骨に伝える紐(ひも)である「腱(けん)」が、トンネルのような「腱鞘(けんしょう)」の中を滑らかに行き来することでスムーズに動いています。
しかし、手の使いすぎなどによって腱と腱鞘が激しく擦れ合うと、そこに炎症が起きて腫れ上がり、トンネルの通り道が極端に狭くなります。この状態で無理に動かそうとすると、激痛が走ったり、カクンと引っかかったりします。これが「腱鞘炎・ばね指」です。
病院での治療と「手術」への迷い
整形外科では、まず湿布や塗り薬、サポーターでの安静が指示され、それでも痛みが強ければ「ステロイド注射(ケナコルト等)」を腱鞘内に直接打つ流れが一般的です。
注射は一時的に炎症を強力に抑えるため、よく効きます。しかし、同じ場所に何度も繰り返し打つと、腱そのものが脆(もろ)くなって断裂する恐れがあるため、打てる回数には制限(一般的に数回まで)があります。それでも再発を繰り返す場合は、最終手段として「狭くなった腱鞘(トンネル)をメスで切り開く手術(腱鞘切開術)」が検討されます。
ここで多くの方が深く悩みます。
「手術で今の指は楽になるかもしれない。でも、手を使う生活環境も、年齢によるホルモンの変化もそのままなのに、また別の指や反対の手が痛くなったら、次々と手術をする羽目になるのではないか?」——実際、この患者さまの疑問と恐怖は非常に的を射ているのです。
【薬剤師コラム①】「手術しかない」と言われた方への、店頭での答え
担当薬剤師:椙田
「病院の先生に『注射はもう限界だから、次は手術だね』と言われたのですが、どうしてもメスを入れるのが怖くて……他に方法はないのでしょうか」
この切実なご質問に、店頭で私たちはいつも、こうはっきりとお答えしています。
「手術以外でも、漢方薬で良くなる方は多いですよ」
もちろん、手術は狭くなったトンネルを物理的に切り開く確実な方法です。それを否定するつもりは全くありません。ただ、「炎症が長引きやすく、再発を繰り返してしまう体質(血流の悪さや潤い不足)」が変わらないままだと、別の指や手首に同じことが起こる可能性は残ります。
だからこそ、手術を迷っているそのタイミングは、身体の内側から「炎症を起こしにくい環境(土台)」を作る漢方ケアを試す価値が十分にある時期だと考えています。
もちろん、痛みの状態が極めて深刻で、指が完全にロックして動かないような場合は、手術をおすすめすることもあります。迷ったら、今のあなたの手の状態を正直に私たちにお聞かせください。
【比較表】西洋医学(病院)と漢方薬(太陽堂)のアプローチの違い
| 比較項目 | 西洋医学(病院のアプローチ) | 漢方薬(太陽堂の体質ケア) |
| 主な目的 | 局所の炎症を薬で強力に抑え込む・狭くなった腱鞘をメスで切り開く | 炎症が長引き再発を繰り返す「体質・土台」の側を根本から整える |
| 得意なこと | 激しい痛みへの圧倒的な即効性(注射)、物理的な閉塞の解決(手術) | ホルモンバランス・血流・潤いといった「背景要因」へのアプローチ |
| 代表的な手段 | 消炎鎮痛剤(ロキソニン等)、湿布、ステロイド注射、腱鞘切開手術 | 患部の熱を冷ます漢方薬、血流を促す漢方薬、潤いを補う漢方薬 |
| 気になる点 | 注射の回数制限、手術しても別の指に再発する可能性があること | 体質からの変化のため、効果を実感するまでに一定の期間が必要なこと |
| 両者の関係性 | 今の痛みをその場で抑え込む「対処療法の軸」 | 再発しにくい丈夫な手を内側から育てる「土台づくりの軸」 |
漢方から見た腱鞘炎・ばね指——3方向の組み立て
太陽堂では、腱鞘炎やばね指を「ただの使いすぎ」とは考えず、患者さまの体質と痛みの状態に合わせて、以下の「3方向」から漢方をオーダーメイドで組み立てます。
軸① 患部の熱(炎症)を冷ます(清熱解毒)
- 狙い: 手首を動かすと「ピキッ!」と電気が走るような激痛がある、患部が腫れて熱を持っているタイプは、激しい摩擦で生じた過剰な熱(強い炎症)がこもっている状態です。まずはこの熱を身体の内側から穏やかに冷まし、炎症を鎮める方向の漢方薬で組み立てます。
軸② 血流を促して、組織の修復を助ける(活血化瘀・補血)
- 狙い: 「朝起きると指がこわばって動かない」「慢性的な重だるい痛みがある」という方は、血流の滞り(瘀血)によって、傷ついた腱の修復に必要な栄養(血)が末端まで届いていない状態です。滞ったドロドロの血を流し、手の末端の毛細血管までしっかりと栄養を届けて、硬くなった腱をしなやかに保つサポートをします。
軸③ 潤いを補って、摩擦そのものを減らす(滋陰・補腎)
- 狙い: 更年期以降や産後に発症した方は、ホルモンバランスの急激な変化によって関節や腱を滑らかにする「潤い(陰液)」が減り、摩擦が起きやすくなっているタイプです。全身の潤いと栄養を補い(補陰・補腎)、腱と腱鞘の滑りを良くする土台を作ります。
【薬剤師コラム②】産後・更年期に多いのは、偶然ではありません
担当薬剤師:前原
腱鞘炎やばね指のご相談は、パソコン等で手を酷使するお仕事の方を除けば、「産後の授乳・育児中の方」と「更年期(40代後半〜50代)の女性」に圧倒的に集中しています。
患者さまは皆一様に「赤ちゃんの抱っこで使いすぎたから」「家事を長年やりすぎたから」とおっしゃるのですが、実は原因はそれだけではありません。同じように家事や育児をしていても、痛くならない時期・ならない人はいるのです。
その最大の理由は「女性ホルモン(エストロゲン)」にあります。
エストロゲンには、筋肉や腱、関節の炎症を抑え、滑らかに(しなやかに)保つという素晴らしい働きがあります。産後と更年期は、まさにこのエストロゲンが「急激に減少(枯渇)する時期」です。
つまり、女性ホルモンという『天然の潤滑油』が切れてしまっているため、同じ手の使い方をしても、腱と腱鞘がダイレクトに傷つきやすく、激しい炎症を起こしやすい無防備な身体になっているのです。
だからこそ太陽堂では、手の局所(痛み)だけでなく、背景にある「ホルモンバランスの乱れ・枯渇(陰虚)」を含めて漢方の組み立てを考えます。「手を少し使ったくらいでは痛みにくい身体」を目指す——これが、今の痛みを抑える注射とは違う、漢方薬の受け持ちなのです。
ご自宅でできる、手を守る暮らしの基本(セルフケア)
- 「完全に休ませる」より「負担を分散する」工夫を: 育児や仕事がある中で「手を全く使わない生活」は現実的ではありません。無理に休ませようとするより、抱っこの持ち方(手首の角度)を変える、市販のサポーターやテーピングで固定して関節の負担を減らすなど、同じ場所に負担を集中させない工夫を第一にしてください。
- 「温める習慣」で血流を促す: 慢性期のこわばりや重だるさには、洗面器にお湯を張って手首までしっかり浸かる「手浴(しゅよく)」や、お風呂で温めて血流を助けてあげましょう。※ただし、ズキズキと腫れて熱を持っている急性期(炎症が強い時)は、温めすぎると悪化するため注意してください。
- 痛む場面を細かくメモする: 「朝起きた直後が一番痛い」「重いものを持った時にピキッと痛む」「夕方になるとだるくなる」——どの動作・どの時間帯に痛むかの記録は、漢方のタイプ(熱・血流・潤いのどれが不足しているか)を見極めるための、極めて大切な手がかりになります。
よくあるご質問(FAQ)
「次は手術」と病院で言われています。その前に漢方薬を試す価値はありますか?
店頭では「手術以外でも、漢方薬で良くなる方は多いですよ」とお伝えしています。
手術を迷っているタイミングこそ、身体の内側から「炎症を起こしにくい環境」を作る漢方ケアを検討する価値のある時期です。ただし効果の出方には個人差があり、指が完全にロックして動かない等の状態によっては手術が適している場合もあります。まずは今の状態を詳しくお聞かせください。
整形外科のステロイド注射や痛み止め(ロキソニン等)と併用できますか?
はい、基本的には併用可能です。
痛みが激しい時期は、病院のお薬やサポーターで局所の炎症を抑えながら、漢方薬で体質の側(血流・潤い)を整える並行アプローチが現実的です。現在使用中のお薬はご相談時に必ずお知らせください。
産後の授乳中でも、漢方の相談はできますか?
はい、ご相談いただけます。必ず「現在授乳中であること」をお知らせください。
漢方薬の中にも、授乳中に適しているもの・避けるべきものがあります。お母様の身体の状態を伺ったうえで、授乳中でもお使いいただきやすいものを選んで組み立てます。自己判断で市販薬を重ねる前に、一度ご相談ください。
手を使う仕事をどうしても休めません。それでも良くなりますか?
「どうしても手を休められない」という前提で組み立てを考えるのが、太陽堂の漢方の役割だと思っています。
手を使い続けなければならない以上、局所の安静だけに頼る作戦には限界があります。だからこそ、炎症を起こしにくい体質、血流、ホルモンの潤いという「身体の内側の条件」を整えることに意味があるのです。負担を分散する工夫もあわせてお伝えします。
どのくらいの期間で変化を感じられますか?
炎症の強さ、手の使用頻度、体質によって幅があるため、一概には申し上げられません。
ご相談時に詳しい状態を伺ったうえで、見立てとあわせて目安をお伝えします。注射のような即効性ではなく、体質の側からの変化のため、焦らずじっくり取り組んでいただくのが基本です。
改善した実例はありますか?
店頭では、手術以外の道で良くなっていく方を多く見ている、というのが正直な実感です。腱鞘炎・ばね指として掲載できる症例記録は、現在準備を進めています。
近い症状である手根管症候群(手のしびれ・痛み)の改善実例は公開していますので、手の不調の経過の参考にご覧ください。
まとめ:「手術か我慢か」の二択の前に、漢方という選択肢を
「注射はもうこれ以上打てない。でも、手術は怖い」
その板挟みの状態で、毎日の痛みに顔を歪めながら家事や仕事を頑張り続けているあなたへ。
- 腱鞘炎・ばね指は産後・更年期の女性と手を使う方に多く、ホルモン(潤い)の変化が深く関わっています。
- 店頭の正直な答えは「手術以外でも、漢方薬で良くなる方は多い」です。(※状態によります)
- 漢方薬は「熱を冷ます・血流を促す・潤いを補う」の3方向で、炎症を起こしにくいしなやかな手を根本から育てます。
その行き止まりの辛さを抱えている方は、どうぞ一人で抱え込まずに太陽堂へご相談ください。
痛みの出方、お仕事や育児で手が休められない状況、そして体質(ホルモンバランス等)を丁寧にお伺いし、全国対応のオンライン相談・店頭相談にて、あなたの身体の土台を立て直す漢方ケアをご提案いたします。
【ご相談をご希望の方へ】
腱鞘炎・ばね指に対する具体的な漢方アプローチについては、こちらのページにて詳しく解説しております。全国対応のオンライン相談も承っておりますので、まずはお気軽にお声がけください。
関係性の深い病気;ご相談も多数いただいております。
手の痛み・しびれに関するさまざまなお悩みについて、以下のページもあわせてご覧ください。
▼手根管症候群(手のしびれ)
▼ヘバーデン結節(指の第一関節の痛み・変形)
▼テニス肘・ゴルフ肘(肘の外側・内側の痛み)
太陽堂の特徴
”当薬局のHPをご覧いただき、ありがとうございます。
私たち太陽堂は「一人でも多くの方の笑顔を見る為に」という思いのもと開局しました。
漢方薬とお客様の出会いがお悩み、体質改善の一助になれれば幸いです。”
特徴その1.
当薬局では、お客様「ひとりひとりに合わせた漢方薬」をその場で調合いたします。
そのため初めてのご相談では、「約1時間~1時間半」ほど相談時間をいただいております。
(遠方のお客様や、お忙しいお客様へは配送の受付もしております。詳しくはお問合せください)
特徴その2.
お作りする漢方薬は、国内外から厳選した生薬の力を、余すことなくお客様に届けるため
「煎じ薬」をお勧めしております。
特徴その3.
当薬局は漢方専門の薬剤師が「得意とする専門分野」にわかれて日々研鑽しています。
お客様の健康を第一に考え、漢方の勉強会なども積極的に開催しております。
太陽堂がはじめての方へ
ご相談を考え始めた方は、まずこちらをどうぞ。
記事作成者 薬剤師 石川 満理奈

得意な疾患:胃腸疾患・耳鼻咽喉疾患・不妊症・婦人科・肝臓・腎臓
開業医だった父の影響で小さい頃から医療は身近に。
薬学部を卒業後、調剤薬局に勤務。
自分自身の胃腸の不調も漢方薬により改善。
よりご来局頂いた方の体質に沿った治療の選択をできるようになりたいという思いから「漢方の道」へ。
記事作成者 薬剤師 林 泰太郎

実績:伝統漢方研究会 2015~2017年・2019年・2020年・2022年・2025年 学術発表
調剤薬局で3年間勤め、西洋の薬だけでは治療が難しい病気の壁に直面。
・「治療の難しい病気をなんとか治したい。」
・「ひとりでも多くの患者さんを笑顔にしたい。」
という想いから漢方の道へ。
漢方薬局で3年間修業をして、2015年 『漢方薬局 太陽堂』を立ち上げ。
開局10年を迎えた今も1ヶ月の平均来局数は900名を超え、お客様にご愛顧いただいている太陽堂の漢方薬剤師です。














