
「また切れてしまった……。ボラギノールなどの軟膏を塗ればいったんは落ち着くのに、しばらくするとまた同じことの繰り返し」
「排便のたびにピリッとガラスの破片が通るような鋭い痛みが走って、紙に血がつく。トイレに行くのが怖くなってきた」
「このまま繰り返して慢性化すると、最終的に手術になることもあると聞いて不安だ……」
排便時の強烈な痛みと出血を繰り返す「切れ痔(裂肛:れっこう)」。
市販の軟膏でその場はなんとかしのげても、また少しすると切れてしまう——この「繰り返し」に心底疲れ果てて、太陽堂にご相談に来られる方の多くが、「市販薬を塗っても結局治まらなかった」という経緯をお持ちです。
今回は、切れ痔が繰り返される理由と病院・市販薬の位置づけを整理したうえで、太陽堂の漢方アプローチである「まず出血と痛みを鎮める → 血流とお通じ(腸の環境)を整える」という二段構えと、時期によって変わるセルフケアについて、薬剤師の視点から詳しく解説いたします。
(※脱肛・痔ろうに続く、太陽堂の「痔の解説」3部作の完結編となります。)
【この記事の結論:「繰り返す切れ痔」に対する漢方の考え方】
- 痛みの正体(原因): 西洋医学では硬い便や勢いの強い下痢が肛門出口の皮膚を物理的に傷つけて起きるとされますが、漢方では傷ついた粘膜の炎症(熱)と、切れやすい状態を作っている骨盤内の「血流の滞り(瘀血)」や「腸の潤い不足」が土台にあると考えます。
- 漢方の解決策: まず漢方で出血や痛みなどの自覚症状(炎症)を速やかに鎮静させ、そのうえで血流とお通じを整える漢方へ移行する「二段構え」で、『切れても治す』から『そもそも切れにくい身体』への転換を目指します。
- 対象となる主な疾患・お悩み: 繰り返す切れ痔(裂肛)、市販の軟膏(ボラギノール等)で治まらない方、排便時の鋭い痛み・出血、便秘や下痢とセットで切れる方、慢性化して手術と言われる前に手を打ちたい方
切れ痔(裂肛)とは?繰り返す理由と病院・市販薬の位置づけ
切れ痔(裂肛)は、肛門の出口付近にある知覚神経の通った皮膚(肛門上皮)がピッと切れて、排便時の鋭い痛みと出血を起こす状態です。便秘による「硬くて太い便」が無理に通る時に切れるのが典型ですが、実は「勢いの強い下痢」による強烈な刺激で切れてしまう方もいらっしゃいます。
切れ痔の最もやっかいな点は、「慢性的に繰り返す悪循環」に陥りやすいことです。
- 切れる(痛い・血が出る)
- 痛いので、無意識のうちにトイレ(排便)を我慢してしまう
- 便が腸の中に長く留まり、水分を奪われてさらにカチカチに硬くなる
- その硬い便を無理に出そうとして、傷が治りきっていない肛門が「また深く切れる」
この悪循環を長期間繰り返すうちに、傷が深い「潰瘍」になったり、傷の端が腫れて「見張りいぼ」ができたり、炎症によって肛門の出口がどんどん狭くなる「肛門狭窄(こうもんきょうさく)」を引き起こします。ここまで慢性化が進んでしまうと、最終的には手術が必要になるケースがあります。
病院・市販薬での主な対処
病院やドラッグストアでは、以下のようなお薬が使われます。
- 市販の軟膏・坐薬(ボラギノールなど): 傷の炎症を抑え、局所の痛みを麻酔成分などで和らげます。切れた直後の応急処置の定番です。
- 便を柔らかくするお薬(酸化マグネシウムなど): 硬い便が傷を広げないように、便の水分を保ちます。
- 手術: 慢性化して潰瘍や肛門狭窄まで進み、排便が困難になった場合に、狭くなった部分を広げる処置(用手肛門拡張術や括約筋切開術など)を行います。
これらは非常に大切な対処です。しかし、太陽堂に来られる方の多くは「軟膏を塗っても治まらない」「塗れば落ち着くが、やめると数日後にまた切れる」という堂々巡りの中にいます。なぜなら、塗り薬は『今できている傷』への手当てであって、『切れやすい状態・体質』そのものを内側から変えるものではないからです。
※【受診について】出血が続くときは、一度肛門科・消化器科へ
「トイレで紙に血がつく」という症状は、切れ痔だけでなく、いぼ痔(痔核)や、まれに大腸からの出血(大腸ポリープや大腸がんなど)でも起こります。出血が長く続く場合や、便自体に血が混ざる・黒っぽい血が出る場合は、自己判断せず一度肛門科や消化器科での診察をおすすめします。切れ痔だと確認できていれば、その後の漢方の組み立ても安心して進められます。
【薬剤師コラム①】かかとの「あかぎれ」を思い出してください
担当薬剤師:石川 満理奈(調剤薬局での勤務経験あり)
「軟膏を塗ると一時的によくなるのに、どうしてまた切れるんでしょうか?」——これは、切れ痔のご相談で私たちが一番多くいただくご質問です。
私はこのお悩みに対して、よく冬場の「かかとのあかぎれ(ひび割れ)」に例えてお話しします。
冬にひび割れて血がにじんだかかとに、保湿クリームや軟膏を塗れば、傷はいったんふさがって痛みは和らぎます。でも、皮膚が極度に乾燥して血流が悪く「ひび割れやすい状態」そのものが変わっていなければ、歩く刺激ですぐにまた割れてしまいますよね。
切れ痔も全く同じなのです。軟膏は「今の傷」をふさぐ応急手当てです。でも、硬い便や勢いの強い下痢が毎日そこを通り、さらに「傷ついた粘膜に、修復のための十分な血流と栄養が届いておらず、回復が追いつかない」——この「切れやすい身体の環境」が続いている限り、傷はふさがってはまた開くことを延々と繰り返します。
だからこそ太陽堂では、傷そのものだけでなく、「そこを通る便(腸)の状態」と「傷を治す力=骨盤内の血流」の両方に同時に手を入れます。塗り薬で変わらなかった方にこそ、この「内側からのアプローチ」を試す価値が大いにありますよ。
【比較表】市販薬・病院(西洋医学)と漢方薬(太陽堂)のアプローチの違い
| 比較項目 | 市販薬・病院(西洋医学) | 漢方薬(太陽堂の体質ケア) |
| 主な目的 | 今できている傷の炎症・痛みを抑える、便を柔らかくする | 出血・痛みを鎮めたうえで、「切れにくいお通じと粘膜」を育てる |
| 得意なこと | 切れた直後の速やかな応急処置、慢性化した場合の外科的手術 | 「塗ってもまた切れる」繰り返しの土台ケア、血流と腸の状態の立て直し |
| 代表的な手段 | 軟膏・坐薬(ボラギノール等)、酸化マグネシウム、手術 | 出血・痛みを鎮める漢方薬 → 血流と腸を整える漢方薬への「二段構え」 |
| 気になる点 | 「塗っている間だけ」「やめると繰り返す」という根本的な不安 | 体質の変化を実感するまでに一定の期間(まずは3ヶ月が目安)が必要 |
| 両者の関係性 | 今の傷を守り痛みを和らげる「大切な応急手当て」 | 切れにくい身体を内側から育てる「頼もしい土台」 |
漢方から見た切れ痔——「鎮める→整える」の二段構え
太陽堂では、繰り返す切れ痔に対して、症状の段階に合わせた「二段構え」の漢方アプローチを行います。
第一段階:出血・痛みなどの「自覚症状」を鎮静させる
- 狙い: まずは、今一番つらい「出血」と「痛み(傷とその周りの炎症)」を鎮めることを最優先にします。つらい症状が毎日続いたままでは、トイレに行く恐怖で生活も気持ちも守れないからです。炎症の熱を冷まし、止血を助ける漢方薬(黄芩、地黄など)を用います。
第二段階:血流とお通じ(腸の状態)を根本から整える
- 狙い: 出血や痛みが落ち着いてきたら、傷を治す力の土台である「骨盤内の血流(瘀血の改善)」と、切れる原因を運んでくる「お通じ(腸の環境)」を整える漢方薬に軸足を移していきます。
- 便秘の方へ: 大黄などの強い下剤で無理に降ろすのではなく、腸に潤いを与える生薬(麻子仁、当帰など)を用いて、コロコロ便を柔らかく「スルッ」と出せる腸へ導きます。
- 下痢気味の方へ: 胃腸の働き(脾)を整え、勢いのない穏やかな腸へ導きます。
※「便秘の人がなるもの」とは限りません
切れ痔=便秘気味の女性、というイメージがありますが、太陽堂の店頭の実感では、便秘気味の方は全体の3〜4割程度です。ご相談のメインの訴えは便秘そのものよりも「出血」と「痛み」であり、便秘がなくても切れる方は切れるのです。だからこそ、便の硬さだけでなく、粘膜を強くする「身体側の土台(血流)」を見ることが必須となります。
【薬剤師コラム②】セルフケアにも「順番」があります
担当薬剤師:林 泰太郎(調剤薬局・漢方専門薬局での勤務経験あり)
切れ痔のご相談で、私が店頭で必ずお伝えしているのは「時期によって、やって良いセルフケアと避けるべきセルフケアが変わりますよ」ということです。漢方の組み立てが二段構えなのと同じで、セルフケアにも明確な「順番」があるのです。
①【出血や痛みがある時期(守りの期間)】
この時期は、アルコール、唐辛子などの辛い刺激物、甘いものの摂りすぎを徹底して控えてください。これらは傷とその周りの炎症をあおり、出血を長引かせてしまいます。
②【出血が治まってきた時期(攻めの期間)】
痛みが落ち着いてきたら、ウォーキングやジョギングなど、下半身をしっかり動かす運動を始めてください。おしりの周り(骨盤内)は、デスクワークなどで座りっぱなしだと最も血流が滞りやすい場所です。下半身を動かすことが、傷をスピーディに治し、切れにくくするための「血流」を育てる一番の近道となります。
「控える時期」と「動く時期」。この切り替えのタイミングを間違えないことが、繰り返しをピタッと断ち切るための大きなコツですよ。
ご自宅でできる切れ痔のセルフケア・食養生
※「お尻は温めて良い?」——痔の種類で答えが変わります
「痔=温める」というイメージが強いですが、実は種類によって正解が異なります。
- いぼ痔(痔核): 血流のうっ滞が主役なので、温めるのが基本です。
- 痔ろう(あな痔): 膿(うみ)の強い炎症があるため、温めすぎには注意です。
- 切れ痔(裂肛): 出血や熱感、痛みが強い時期は、温めすぎない方が良いです。温めると血流が急激に増し、出血や炎症をあおることがあります。長風呂や熱いお湯は控えめに。炎症がすっかり落ち着いてからは、血流を促すために身体を「冷やさない」ことが大切になります。
日常生活のポイント
- 出血期はアルコール・刺激物・甘いものを控える: いずれも炎症の火種をあおる方向に働きます。まず「悪化させないこと」から始めましょう。
- お通じを「切れない状態」に整える: 水分と食物繊維をしっかりと摂り、トイレで5分以上長くいきまないこと。痛みを恐れて排便を我慢すると、便がさらに硬くなって切れやすくなる悪循環に入ります。
- 出血が治まったら下半身を動かす: ウォーキングで骨盤内の血流を育てましょう。座りっぱなしの仕事の方は、1時間に一度立ち上がる(または伸びをする)だけでも血流の滞りは違ってきます。
よくあるご質問(FAQ)
ボラギノールなどの市販の軟膏と、漢方薬は併用できますか?
はい、基本的には併用可能です。
軟膏で今ある傷を外から守りながら、漢方薬で「切れにくい身体の土台」を内側から整える役割分担が可能です。実際の店頭では「軟膏を塗っても治まらなかった」という経緯で来られる方が多いのですが、土台が整うにつれて、軟膏の出番そのものが減っていくことを目指します。
私は便秘ではないのに頻繁に切れます。なぜですか?
切れ痔=便秘、とは限らないからです。店頭の実感でも、便秘気味の方は全体の3〜4割程度です。
勢いの強い下痢による刺激で切れる方や、粘膜の回復力や血流が落ちていて、ほんの小さな刺激でも切れてしまう方も多くいらっしゃいます。だからこそ、便の硬さだけを見るのではなく、「骨盤内の血流」と「腸の粘膜の状態」の両方を総合的に見て漢方を組み立てる必要があるのです。
お風呂でしっかりお尻を温めてもいいですか?
出血や熱感、排便後の痛みが強い時期は、温めすぎない方が良いです。
切れ痔で炎症が強い時期に温めすぎると、かえって出血や熱感をあおることがあります。痛みが強い間は、長風呂や熱いお湯は控えめにしてください。炎症が落ち着いてからは、血流を良くするために身体を「冷やさない」ことが味方になります。
病院で「このまま繰り返すと手術になる」と言われました。漢方で間に合いますか?
肛門狭窄などまで進む前の、「繰り返している(慢性化の途中)段階」こそ、体質から手を打つタイミングです。
すでに手術が必要な状態(潰瘍が深い、狭窄がひどい)かどうかの判断は肛門科で受けていただいたうえで、「まだ手術はしたくないが繰り返している」という段階であれば、切れにくいお通じと粘膜を育てる漢方のアプローチを試す価値は十分にあります。
どのくらいの期間で変化を感じられますか?
まずは「3ヶ月」を一区切りの目安としてお願いしております。
第一段階(出血・痛みの鎮静)→第二段階(血流とお通じの立て直し)の順で進み、「切れる頻度が減ってきた」「切れても治りが早くなった(長引かない)」が変化のサインです。3ヶ月続けて何の変化もなければ、組み立てを見直すタイミングです。
まとめ:「切れたら塗る」から、「切れない身体」へ
切れ痔の本当のつらさは、排便時の痛みや出血そのものに加えて、「また切れるかもしれない」「痛い思いをするかもしれない」と、毎日トイレに行くたびに恐怖で身構えてしまう精神的なストレスにあります。
軟膏でその場をしのぐ「いたちごっこ」の暮らしから抜け出すためのステップを整理します。
- 出血が続く・便に血が混ざる場合は、まず肛門科で切れ痔かどうかを確認し安全を確保する
- 出血期はアルコール・刺激物を控え、「温めすぎない」。治まったら下半身を動かして血流を促す
- 漢方薬で「出血・痛みを鎮める → 血流とお通じを整える」の二段構えで、切れにくい身体を根本から育てる
「軟膏を塗っても、数日後にはまた切れてしまう」
「トイレのたびに、痛みと出血に怯える毎日はもう嫌だ」
そんな深いお悩みを抱えている方は、どうぞ一人で我慢せずに太陽堂へご相談ください。切れる頻度や痛み方、お通じの状態、出血の様子を丁寧にお伺いし、全国対応のオンライン相談・店頭相談にて、あなたの体質にピタリと合わせた漢方ケアをご提案いたします。
【ご相談をご希望の方へ】
切れ痔(裂肛)に対する具体的な漢方アプローチについては、こちらのページにて詳しく解説しております。全国対応のオンライン相談も承っておりますので、まずはお気軽にお声がけください。
関係性の深い病気;ご相談も多数いただいております。
切れ痔だけでなく、痔・おしりに関するさまざまなお悩みについても、太陽堂では数多くのご相談をいただいております。気になる症状がある方は、以下のページもあわせてご覧ください。
脱肛の解説記事いきむと出てくる・指で戻す痔にお悩みの方に。
痔ろうの解説記事繰り返す膿・肛門周囲膿瘍にお悩みの方に。
痔核(いぼ痔・脱肛)いぼ痔の痛み・腫れにお悩みの方に。
太陽堂の特徴
”当薬局のHPをご覧いただき、ありがとうございます。
私たち太陽堂は「一人でも多くの方の笑顔を見る為に」という思いのもと開局しました。
漢方薬とお客様の出会いがお悩み、体質改善の一助になれれば幸いです。”
特徴その1.
当薬局では、お客様「ひとりひとりに合わせた漢方薬」をその場で調合いたします。
そのため初めてのご相談では、「約1時間~1時間半」ほど相談時間をいただいております。
(遠方のお客様や、お忙しいお客様へは配送の受付もしております。詳しくはお問合せください)
特徴その2.
お作りする漢方薬は、国内外から厳選した生薬の力を、余すことなくお客様に届けるため
「煎じ薬」をお勧めしております。
特徴その3.
当薬局は漢方専門の薬剤師が「得意とする専門分野」にわかれて日々研鑽しています。
お客様の健康を第一に考え、漢方の勉強会なども積極的に開催しております。
記事作成者 薬剤師 石川 満理奈

得意な疾患:胃腸疾患・耳鼻咽喉疾患・不妊症・婦人科・肝臓・腎臓
開業医だった父の影響で小さい頃から医療は身近に。
薬学部を卒業後、調剤薬局に勤務。
自分自身の胃腸の不調も漢方薬により改善。
よりご来局頂いた方の体質に沿った治療の選択をできるようになりたいという思いから「漢方の道」へ。
記事作成者 薬剤師 林 泰太郎

実績:伝統漢方研究会 2015~2017年・2019年・2020年・2022年・2025年 学術発表
調剤薬局で3年間勤め、西洋の薬だけでは治療が難しい病気の壁に直面。
・「治療の難しい病気をなんとか治したい。」
・「ひとりでも多くの患者さんを笑顔にしたい。」
という想いから漢方の道へ。
漢方薬局で3年間修業をして、2015年 『漢方薬局 太陽堂』を立ち上げ。
開局10年を迎えた今も1ヶ月の平均来局数は900名を超え、お客様にご愛顧いただいている太陽堂の漢方薬剤師です。















