
「暑さで食欲がわかず、お昼はいつも冷たいそうめんだけで済ませてしまう…」
「少し食べただけで胃が重くもたれて、なかなか消化されない感じがする…」
「冷たい飲み物をがぶ飲みしてしまい、お腹がゆるくなりやすい…」
連日の厳しい暑さと高い湿度にさらされる夏。私たちの体は、自分が思っている以上に大きなダメージを受けています。
これまで、夏の体力低下や睡眠トラブル、イライラ、そして肌や髪のダメージについて解説してきましたが、これらの不調を立て直すための「大前提」となる重要な器官があります。それが、「胃腸(消化器官)」です。
いくら体に良い食材やサプリメントを摂っても、それを受け入れて消化吸収する胃腸が弱っていては、全身に栄養を届けることができません。
今回は、夏の冷たい飲食や湿気が胃腸の働きを低下させるメカニズムや、漢方における「脾(ひ)」の重要性、そして食事の工夫で消化の土台を立て直す養生法を、太陽堂の薬剤師が詳しく解説いたします。
【太陽堂が教える、夏の食欲不振・胃もたれの養生まとめ】
まずは、当薬局が考える夏の胃腸トラブルへのアプローチを簡潔にまとめました。
- 漢方の見立て(原因):西洋医学では「自律神経の乱れや冷えによる消化機能の低下」とされる夏の胃もたれですが、漢方では、日本の夏特有の過酷な湿気と冷たい飲食によって、消化吸収を担う「脾(ひ)」の働きが著しく弱った「脾虚(ひきょ)」の状態に注目して原因を探ります。
- アプローチ(対策):山芋やかぼちゃなど、胃腸を温めながら働きを助ける食材を取り入れた食事ケア(養生)と、一人ひとりの体質に合わせたオーダーメイドの漢方を通じて、栄養をしっかりと吸収できる「胃腸の土台づくり(健脾:けんぴ)」をサポートします。
- 今後のステップ(根本ケア):一時的な市販薬でしのぐだけでなく、根本的な原因(日々の冷たい飲食のクセやストレスなど)を見極めるため、まずはじっくりとご相談を重ね、季節の変化にもバテにくい、無理のないペースで体質と向き合っていきます。
【薬剤師 前原の視点】夏の胃もたれのメカニズムと、西洋医学・漢方のアプローチ
こんにちは、薬剤師の前原です。
夏場に急増する「食欲不振」や「胃もたれ」は、単なる夏バテの症状の一つというだけでなく、体のエネルギーを作り出す工場そのものがストップしてしまっている状態です。
西洋医学の視点:自律神経の乱れと、冷えによる消化酵素の働き低下
私たちの胃腸の働き(食べ物を細かくすりつぶす蠕動運動や、胃酸の分泌など)は、「自律神経」によってコントロールされています。しかし、猛暑の屋外と冷房の効いた涼しい室内を行き来していると、激しい温度差によって自律神経が乱れ、胃腸が正常に働くためのスイッチがうまく入らなくなってしまいます。
さらに、暑いからといって冷たい飲み物やアイスばかりを口にしていると、胃腸が直接冷やされてしまいます。
消化酵素は体温に近い温度で最も活発に働くため、胃腸が冷え切ってしまうと消化能力がガクッと落ち、結果として「いつまでも胃に食べ物が残っている感じ(胃もたれ)」や「お腹のゆるさ」を引き起こすのです。
西洋医学的な視点では、まずは冷たいものの摂りすぎを控え、症状に応じて市販の健胃薬(胃の働きを促す生薬配合のもの)や消化酵素剤などを活用し、胃腸の負担を和らげることが推奨されます。
漢方の視点:湿気と冷えに弱い「脾(ひ)」がダメージを受ける「脾虚」
一方、漢方の視点では、胃腸の消化吸収機能を「脾(ひ)」と呼びます。
漢方における「脾」は、食べたものから生命エネルギーである「気(き)」や、全身を潤す「血(けつ)」を作り出す、非常に重要な役割を担っています。しかし、この「脾」には大きな弱点があります。それは「湿気」と「冷え」を極端に嫌うということです。
日本の夏は非常に湿度が高く、空気中の湿気(湿邪:しつじゃ)が体内に侵入しやすくなります。そこに加えて、冷たい飲み物や氷の入った麺類などを摂り続けることで、脾は外側からも内側からも大きなダメージを受け、働きがストップしてしまいます。
このように脾が弱り切った状態を「脾虚(ひきょ)」と呼びます。脾虚になると、いくら栄養のあるものを食べてもエネルギー(気・血)に変換できず、全身の強い疲労感やだるさ、めまい、肌荒れなど、あらゆる不調の引き金となってしまうのです。
漢方では、このような状態に対し、胃腸を優しく温め、余分な湿気を払いながら脾の働きを立て直すアプローチ(健脾:けんぴの考え方)を用いて、栄養をしっかりと吸収できる体の土台づくりを内側からサポートしていきます。
【薬剤師 石川の視点】夏の「脾(ひ)」を立て直す、温かな食事と胃腸メンテナンス
薬剤師の石川です。
胃腸が弱っている時は、無理にたくさん食べる必要はありません。大切なのは「脾(ひ)」の負担を減らし、消化しやすい形で少しずつ栄養を届けることです。
「健脾(けんぴ)」の食材で、胃腸を優しくサポート
漢方において、弱った脾の働きを助け、エネルギーを補う働きを持つ食材を日常的に取り入れることが、胃腸ケアの基本となります。
- おすすめの健脾食材: 山芋(長芋)、かぼちゃ、さつまいも、キャベツ、インゲン豆、白身魚など。
これらの食材は、お腹を温め、消化吸収を穏やかにサポートしてくれます。
例えば、冷たいそうめんばかり食べてしまう時は、すりおろした「山芋(とろろ)」をかけたり、ネギや生姜、シソといった「お腹を温める薬味」をたっぷりと添えるだけでも、胃腸への負担を大きく減らすことができます。
飲み物は「氷抜き」か「常温・温かいもの」を
夏場は喉が渇くため、どうしても氷がたっぷり入ったキンキンに冷えた水を一気に飲みたくなります。しかし、これが脾を最も痛めつける原因です。
冷たいものを飲むときは、せめて「氷を抜く」、あるいは「常温の麦茶」などを選ぶようにしましょう。また、胃が重いと感じる朝は、温かいお味噌汁やスープをゆっくりと飲むことで、眠っていた胃腸が優しく目覚め、消化の準備を整えてくれます。
「よく噛むこと」は最高の胃腸薬
どんなに消化に良いものを食べても、丸飲みしてしまっては胃に大きな負担がかかります。口の中の「唾液」には、立派な消化酵素が含まれています。
一口につき最低でも30回はよく噛み、食べ物をドロドロの状態にしてから飲み込むことを意識するだけで、胃腸の負担は劇的に軽くなります。毎日の食事で今日からすぐに実践できる、最も効果的な養生法です。
【比較表】夏の胃腸を守る!OK・NG行動リスト
| カテゴリ | 〇 おすすめ(脾を労わり、消化を助ける) | × 要注意(脾を冷やし、働きを弱める) |
| 食事の内容 | 山芋、かぼちゃ、温かいスープや味噌汁 (お腹を温め、脾の働きを優しくサポートする) | そうめんだけ、冷たいサラダだけの偏った食事 (栄養が不足し、胃腸が冷えて消化不良を起こす) |
| 飲み物 | 常温の麦茶、温かいお茶をこまめに飲む (胃腸の温度を下げず、負担をかけずに水分補給する) | 氷入りの冷たいジュースや水の「がぶ飲み」 (脾をダイレクトに冷やし、消化酵素の働きをストップさせる) |
| 食べ方 | 一口30回よく噛み、腹八分目で抑える (唾液と混ぜ合わせて消化を助け、胃の処理能力を超えない) | あまり噛まずに流し込む、お腹いっぱいまで食べる (胃に多大な負担がかかり、いつまでも胃もたれが続く) |

夏の食欲不振・胃もたれに関するよくある質問(FAQ)
食欲がない時は、無理にでも食べた方が良いですか?
無理に食べる必要はありません。胃腸を休めるサインです。
食欲が全くわかないのは、胃腸が「今は処理しきれないから休ませて」とサインを出している状態です。
無理に固形物を詰め込むと、かえって負担になります。温かいスープや重湯、お味噌汁の上澄みなど、消化にエネルギーを使わない液状のものから少しずつ栄養と水分を補い、胃腸を休ませてあげましょう。
市販の胃薬と漢方薬はどう使い分ければ良いですか?
目的によって異なります。(併用可能な場合も多いです)
食べ過ぎた後など、今すぐ「胃もたれ」をスッキリさせたい場合は、消化酵素が配合された市販の胃薬が役立ちます。
一方、漢方薬は「そもそも胃もたれしやすい、食欲がわかない『脾虚』の体質」そのものを内側から立て直し、自分の力で消化吸収できるようにサポートする役割を持ちます。根本的な胃腸ケアを目指す方に漢方は適しています。
辛いものを食べると食欲が出ますが、胃腸には良くないですか?
適度なスパイスは良いですが、激辛料理は控えましょう。
カレーなどに含まれるスパイス(生姜、カルダモンなど)には、胃腸を温めて食欲を刺激する働きがあります。
しかし、唐辛子などを大量に使った激辛料理は、胃の粘膜を荒らし、炎症を引き起こす原因になります。胃腸が弱っている時は、刺激の少ないマイルドな味付けを心がけてください。
まとめ:弱った「脾」を立て直し、全身に栄養が巡る健やかな体へ
「夏はどうしても食欲が落ちて、麺類ばかり食べてしまう…」
その習慣が続くと、胃もたれだけでなく、秋以降の激しい抜け毛や肌荒れ、深い疲労感といった様々な不調に繋がってしまいます。すべての健康の源は「胃腸(脾)」にあります。
まずは冷たい飲み物を常温に変え、よく噛んで食べるという日々の養生からスタートし、漢方の視点を取り入れて内側から「脾」の働きを立て直すことで、しっかりと栄養を吸収し、季節の変わり目にもバテない健やかな体の土台を作ることができます。
「色々気をつけても、すぐにお腹を下してしまう」「慢性的な胃もたれを根本から整えたい」という方は、ぜひ太陽堂までお気軽にご相談ください。お一人おひとりの体質に合わせた、無理のない養生法をご提案いたします。。
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太陽堂の特徴
”当薬局のHPをご覧いただき、ありがとうございます。
私たち太陽堂は「一人でも多くの方の笑顔を見る為に」という思いのもと開局しました。
漢方薬とお客様の出会いがお悩み、体質改善の一助になれれば幸いです。”
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記事作成者 薬剤師 前原 信太郎

実績:伝統漢方研究会 2017年・2021年・2025年 学術発表
沖縄で開業医をしていた祖父と薬の話しをしていた事から薬剤師の道を目指すように。
調剤薬局の薬剤師として6年間勤務。
漢方の勉強をして、より患者さんの治療の選択肢の幅を広げたいという思いから「漢方の道」に。
調剤薬局も経験している為、西洋学の知識も勉強を積み今に至ります。
記事作成者 薬剤師 石川 満理奈

得意な疾患:胃腸疾患・耳鼻咽喉疾患・不妊症・婦人科・肝臓・腎臓
開業医だった父の影響で小さい頃から医療は身近に。
薬学部を卒業後、調剤薬局に勤務。
自分自身の胃腸の不調も漢方薬により改善。
よりご来局頂いた方の体質に沿った治療の選択をできるようになりたいという思いから「漢方の道」へ。















