
「秋風が心地よくなってきた頃から、お通じがウサギのフンのようにコロコロと固くなって、すっきり出ない日が増えた…」
「便秘対策のつもりで、毎日意識してたくさんお水を飲んでいるのに、なぜか全く良くならない…」
「出ても残便感があってお腹がずっと張っているし、最近は吹き出物など肌まで一緒に荒れてきてしまった…」
夏の間はごく普通だったお通じが、秋になると急に固くなったり、出にくくなったりする。実はこれ、決して偶然でも気のせいでもありません。秋に急増するこの「コロコロ便」の多くは、空気が乾燥して肌がカサつくのと同じ理由、つまり「腸の中が乾燥していること」で引き起こされるのです。
この「乾燥タイプ」の便秘に対して、「出ないから」と刺激の強い市販の下剤で無理やり腸を動かして対抗し続けていると、腸の粘膜はさらに乾き、次第に自力で動けなくなって慢性的な便秘へと陥ってしまいます。
ご自身の便秘のタイプに合った、根本的な手当てを知ることが何よりも大切です。
今回は、秋にコロコロ便が増えるメカニズムや、漢方における「腸を潤す」という重要な考え方、そして食事と生活で腸の潤滑油を補う養生法を、太陽堂の薬剤師が詳しく解説いたします。
【太陽堂が教える、秋の便秘(コロコロ便)の養生まとめ】
まずは、当薬局が考える秋のお通じトラブルへのアプローチを簡潔にまとめました。
- 漢方の見立て(原因): 西洋医学では「涼しくなることによる飲水量の減少と、発汗の名残による便の水分不足」とされる秋のコロコロ便ですが、漢方では、夏の大量の汗で体内の「潤い(陰液)」を消耗しきったところへ、秋の乾燥(燥邪:そうじゃ)が追い打ちをかけ、腸の中をスムーズに進むための潤滑油が完全に切れてしまった「腸燥便秘(ちょうそうべんぴ)」の状態に注目して原因を探ります。
- アプローチ(対策): 白ごまやくるみなど「良質な油分で腸を潤す食材」を取り入れた毎日の食事ケア(養生)と、お一人おひとりの体質に合わせたオーダーメイドの煎じ薬を通じて、季節の乾燥に負けない「自力でするっと出る腸の土台づくり」をサポートします。体が本来持つ、自然な排便のリズムを内側から引き出します。
- 今後のステップ(根本ケア): 一時的に刺激性の下剤を使ってその場をしのぐだけでなく、根本的な原因(内側の潤い不足や、腸を動かすエネルギーそのものの低下など)を見極めるため、まずはじっくりとご相談を重ね、下剤に頼りきらない長期的な体質改善と向き合っていきます。
【薬剤師 前原の視点】秋にコロコロ便が増えるメカニズムと、西洋医学・漢方のアプローチ
こんにちは、薬剤師の前原です。
「便秘解消のためにたくさん水を飲んでいるのに、なぜかコロコロのまま出ない」——実はこのお悩みにこそ、秋の便秘特有の見落とされがちなポイントが隠されています。
西洋医学の視点:飲んだ水は、意外と大腸まで届かないという事実
便の固さは、最終的に「大腸の中でどれだけの水分が保たれているか」によって決まります。理想的なバナナ状の便は、約70〜80%が水分でできています。
ところが、私たちが「喉が渇いたから」と一度にがぶ飲みした大量の水は、その大半が胃を通過した後の「小腸」で速やかに吸収されてしまい、尿や汗として排出されるルートに回ってしまいます。つまり、意識してたくさん水を飲んでいるつもりでも、その水分は便の終着点である大腸にまでは十分に届いていないことが多いのです。「水を飲んでいるのに固い」という現象は、この体の吸収メカニズムに理由があります。
さらに秋という季節は、夏に比べて涼しくなるため、体感として「喉の渇き」を感じにくくなります。そのため、無意識のうちに一日の飲水量そのものが夏より2〜3割減ってしまう方が多い季節です。しかし実際には、秋口はまだ意外と汗をかいており、空気の乾燥によって皮膚や呼吸からも水分が奪われています。補給が減る一方で水分の喪失は続くため、体は軽い「かくれ水分不足」に傾き、大腸にある便からさらに水分が吸収されてしまい、結果として便がどんどん乾いてウサギのフンのようにコロコロと固くなってしまうのです。
西洋医学的な視点では、こまめな水分補給と食物繊維(特に保水力の高い水溶性食物繊維)の摂取、そして腸の蠕動(ぜんどう)運動を促す適度な運動を基本とします。それでも改善しない場合は、便に水分を集めて柔らかくするタイプのお薬(酸化マグネシウムなどの塩類下剤)を使うことが推奨されます。ただし、腸を直接刺激して無理やり動かすタイプの下剤(大腸刺激性下剤)の常用は、次第に腸が「薬がないと動かない」と自力を弱めてしまうため、注意が必要です。
漢方の視点:腸の「潤滑油」がすっかり切れた「腸燥便秘」
一方、漢方の視点では、秋のコロコロ便を単なる水分の問題ではなく、体全体の「潤い不足(腸の乾燥)」として深く捉えます。
漢方では、便が痛みもなくするっとスムーズに出るためには、ただ水があれば良いのではなく、腸の粘膜にゼリーのような「潤い(陰液:いんえき)」という潤滑油がたっぷりと満ちている必要があると考えます。
夏の間、厳しい暑さの中で大量の汗をかいた体は、この大切な潤いをすでに激しく消耗しています。その「潤いが足りない状態」のまま、空気がカラカラに乾く秋を迎えるとどうなるでしょうか。腸の潤滑油はいよいよ完全に枯れ果て、便が腸壁に張り付くように進めなくなり、コロコロと固く滞ってしまうのです。これを漢方では「腸燥便秘(ちょうそうべんぴ)」と呼びます。
興味深いことに、漢方では内臓の働きを五行説で分類し、「肺と大腸は表裏の関係にある(密接に繋がっている)」と古くから考えられてきました。
呼吸を司る「肺」は、秋の乾燥(燥邪)に最も弱いデリケートな臓器です。空気が乾燥して肺がダメージを受け弱ると、その表裏のパートナーである「大腸」も連動して潤いを失い、調子を崩しやすくなるのです。また、肺は「皮膚」のバリア機能もコントロールしています。
秋になると、肌がカサカサに乾燥し、コンコンと空咳が出て、同時にお通じもコロコロの便秘になる…。これらが一緒にやってくるのは偶然ではなく、「体全体の潤いが根本から不足している」という、根っこが全く同じ原因から起こるサインなのです。
漢方では、このような腸燥便秘のタイプに対し、強い下剤で無理やり腸を動かすのではなく、腸の粘膜に上質な油分と潤いをたっぷりと補給して「ツルッと滑りやすい腸」に戻すアプローチ(潤腸通便:じゅんちょうつうべんなどの考え方)を用いて、下剤に頼らずに自然なお通じがやってくる土台づくりを、内側から優しくサポートしていきます。
【薬剤師 石川の視点】腸を潤し、滑りを良くする秋の食事と生活養生
薬剤師の石川です。
乾燥タイプのコロコロ便のケアにおいて、最も大切なキーワードは「無理に出す」ことではなく、まず「潤す」ことです。便秘だからと焦って野菜(食物繊維)ばかりを大量に食べても、腸の中に潤滑油がなければ、かえって便が詰まってお腹がパンパンに張ってしまいます。
「種実類の油分」で、腸の壁に潤滑油を足す
漢方において、腸燥便秘を解消するための強力な定番食材とされているのが、「木の実や種(種実類)」が持つ上質な油分です。
- おすすめの食材: 白ごま・黒ごま、くるみ、松の実、アーモンド、はちみつ、バナナ、さつまいも など。
ごまやくるみに含まれる良質な油分は、乾いた腸の粘膜をコーティングし、便がするっと進むための潤滑油として働いてくれます。「すりごま」を毎食スプーン1杯、お味噌汁やお粥、ほうれん草の和え物にパラパラとかけるだけでも、立派で効果的な潤いケアになります。
また、秋の味覚である「さつまいも」は、便のかさを増やす食物繊維と、腸を潤す自然な糖分・油分をバランス良く併せ持つ、秋のお通じの最強の味方です。皮の近くに栄養が多いため、よく洗って焼きいもやふかし芋にして、できれば皮ごと召し上がってください。
水分補給は「朝いちばんの白湯」と「日中のこまめな一口」が鉄則
先ほどもお伝えした通り、冷たい水のがぶ飲みは胃腸を冷やし、大腸には届きません。大腸まで水分を届け、腸を目覚めさせるためには「飲み方」にコツがあります。
朝、起き抜けの空っぽの胃に、コップ1杯の温かい「白湯(さゆ)」をゆっくりと飲む習慣をつけてみてください。温かい水分が胃に入ると、その重みと温かさの刺激が「胃・結腸反射」というスイッチを押し、眠っていた大腸が動き始めて、朝の自然なお通じのリズムを作ってくれます。
そして日中は、喉が渇くのを感じる前に、常温の水や麦茶を「一口ずつ、こまめに」飲んでください。涼しくなっても、1日のトータルの飲水量を意識し、夏の8割程度はキープして「かくれ水分不足」を防ぐことが大切です。
朝食後の「トイレのゴールデンタイム」と、お腹の「の」の字マッサージ
腸が1日のうちで最もダイナミックに動くゴールデンタイムは、「朝食をとった直後」です。
便意があってもなくても、まずは朝食後に5分間だけ、リラックスしてトイレに座る習慣をつけてみてください。毎日同じ時間に座ることで、体が「この時間は出す時間だ」とリズムを少しずつ覚えてくれます。
また、便が詰まって残便感があり、お腹がパンパンに張って苦しい時は、おへその周りを時計回りに「の」の字を描くように優しくマッサージしてあげましょう。冷えも腸の動きを鈍らせる大敵ですので、腹巻きなどを使って物理的にお腹を温めることも、腸の蠕動運動を助ける大きなサポートになります。
【比較表】秋のお通じを整える!OK・NG行動リスト
| カテゴリ | 〇 おすすめ(腸を潤し、自然なリズムを作る) | × 要注意(乾燥を深め、腸の自力を奪う) |
| 食事の工夫 | すりごま・くるみ・さつまいもなど、油分と繊維をセットで摂る (腸の潤滑油と、便の材料となる食物繊維の両方で、するっと出る便を作る) | 極端な油抜きや、過度な糖質抜きダイエット (腸の中を進むための潤滑油まで完全に断ってしまい、コロコロ便がさらに悪化する) |
| 水分の摂り方 | 朝の白湯1杯+日中は常温のお茶をこまめに一口ずつ (胃結腸反射を起こし、細胞や腸の潤いを一日中切らさないようにする) | 「涼しくて喉が渇かないから」と飲水量が夏の半分以下になる (かくれ水分不足に陥り、大腸から水分が奪われて便がどんどん乾いて固くなる) |
| 出し方とケア | 朝食後5分のトイレ習慣と、マッサージやお腹の温め (腸のゴールデンタイムを活かし、自力で出す自然なリズムをじっくり育てる) | 刺激の強い市販下剤への頼りっぱなし・便意の我慢の常習化 (腸が自力で動く力を次第に失い、薬がないと出ない慢性的な便秘になる) |
秋の便秘に関するよくある質問(FAQ)
出ないのが苦しくて、市販の下剤を毎日使っています。漢方と併用できますか?
併用は十分に可能ですが、「お使いの下剤の種類」の確認が大切です。また、漢方を始めたからといって、急に今の下剤をやめる必要はありません。
市販の便秘薬の多くに含まれる「刺激性の下剤(センナ、大黄、アロエ、コーラックなど)」を長く常用している場合、腸はその刺激がないと動かない状態になっています。そのため、急に下剤をやめると全く出なくなってしまい、大変苦しい思いをします。
まずは今の下剤を続けながら、並行して漢方や「ごま」などの食事で腸を潤すケアを行い、「するっと出やすい土台」を作ります。その土台が整ってきた段階で、少しずつ下剤の量や頻度を減らしていくのが最も安全で確実なステップです。今お使いのお薬名を教えていただければ、飲み合わせとスムーズな減らし方を一緒に考えますので、ご安心ください。
便秘に良いと聞いて、野菜(サラダ)を毎日たくさん食べているのに、全く良くなりません。
秋の「乾燥タイプ」の便秘の場合、食物繊維「だけ」を増やすと、かえって逆効果になることがあります。
葉物野菜やきのこ、ごぼうなどに多く含まれる「不溶性食物繊維」は、便の材料となり「かさ」を増やす働きがあります。しかし、腸の中に潤滑油(水分や油分)が足りない状態のまま、便の「かさ」だけが大きくなると、腸のトンネルの途中で固く詰まってしまい、かえって便秘とお腹の張りが悪化することがあります。
乾燥タイプの便秘には、ごまやくるみの上質な「油分」と、海藻類やオクラ、さつまいもなどのヌルヌル・ネバネバした「水溶性食物繊維」を組み合わせて、「便のかさ+潤滑油」のバランスを整えてみてください。
便秘になると、決まって肌が荒れて吹き出物が出たり、空咳が出たりします。関係ありますか?
はい、大いに関係があります。漢方では「肺と大腸と皮膚」は、同じ乾燥ダメージを受ける「表裏一体の仲間」だと考えます。
記事でもお話しした通り、秋の乾燥(燥邪)は、呼吸器である「肺」、その表裏のパートナーである「大腸」、そして肺がコントロールしている「皮膚」の3か所に、同時にダメージを与えます。
便秘になり、肌がカサカサして荒れ、空咳まで揃って出たとしたら、それは「あなたの体全体の潤いが根本から不足していますよ」という体からの明確なサインです。便秘薬や保湿クリーム、咳止めと別々に対処するのではなく、漢方による「潤いを補う体質ケア」を行うことで、この3つのトラブルをまとめて底上げして解決していくのが、漢方治療の最も得意とする分野です。
まとめ:「出す」より「潤す」。下剤に頼らない、するっと快適な秋のお通じへ
「水をしっかり飲んで、野菜も食べているのに、お通じはコロコロのままでスッキリしない…」
その辛い秋の便秘は、あなたの努力が足りないからではありません。夏の過酷な汗と秋の乾燥によって、体内の水分が奪われ、「腸の中の潤滑油」がすっかり切れてしまっているというサインなのです。今のあなたの腸に必要なのは、強い刺激で無理やり動かすことではなく、たっぷりの潤いの補給です。
毎食のすりごま、朝いちばんの温かい白湯、そして朝食後のリラックスしたトイレ習慣。まずはこの日々の養生からスタートしてみてください。そして、漢方の視点で内側から優しく腸を潤してあげれば、下剤に頼らなくても「するっと自然に出る心地よい秋」は必ず作ることができます。
「もう何年も、下剤なしでは出ない体になってしまって不安」「毎年秋から冬にかけて、便秘と肌荒れのセットで悩まされる」という方は、ぜひ太陽堂までお気軽にご相談ください。お一人おひとりの体質と腸の状態に合わせた、無理のない根本からの立て直しプランをご提案いたします。
関連ページ
太陽堂では、お通じのお悩みだけでなく、心と体の様々なお悩みに対する漢方サポートを行っております。気になる症状がございましたら、以下のページもぜひご覧ください。
太陽堂の特徴
”当薬局のHPをご覧いただき、ありがとうございます。
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記事作成者 薬剤師 前原 信太郎

実績:伝統漢方研究会 2017年・2021年・2025年 学術発表
沖縄で開業医をしていた祖父と薬の話しをしていた事から薬剤師の道を目指すように。
調剤薬局の薬剤師として6年間勤務。
漢方の勉強をして、より患者さんの治療の選択肢の幅を広げたいという思いから「漢方の道」に。
調剤薬局も経験している為、西洋学の知識も勉強を積み今に至ります。
記事作成者 薬剤師 石川 満理奈

得意な疾患:胃腸疾患・耳鼻咽喉疾患・不妊症・婦人科・肝臓・腎臓
開業医だった父の影響で小さい頃から医療は身近に。
薬学部を卒業後、調剤薬局に勤務。
自分自身の胃腸の不調も漢方薬により改善。
よりご来局頂いた方の体質に沿った治療の選択をできるようになりたいという思いから「漢方の道」へ。















