
「ご飯を食べ始めると、決まって鼻水がタラタラ出てくる。食事のたびにティッシュが手放せない」
「ラーメンやカレーを食べると、鼻水が止まらなくなる。人と食事をするのが少し恥ずかしい」
「高齢の親が、ご飯のたびに鼻水を垂らしている。風邪でもないのに、どうしてだろう……」
風邪をひいているわけでも、花粉症でもないのに、食べるときだけ鼻水が出る。こうした「食後の鼻水」は、医学的には「味覚性鼻炎(みかくせいびえん)」と呼ばれることがあります。
毎日の食事のたびに起きるため、「地味だけれど本当に困る」というお悩みです。新宿の漢方薬局「太陽堂」の店頭でも、「食後に鼻水がドバっと出る」「鼻をかんでも、しばらくするとまた溜まってくる」といったご相談をいただくことがあります。
今回は、食べると鼻水が出る仕組みと耳鼻科を受診する目安を整理したうえで、漢方では「胃腸」と「水の巡り」の関係からこの症状をどう考えるのか、店頭で薬剤師がお伝えしている養生とあわせて解説いたします。
【この記事の結論:「食べると鼻水が出る」に対する漢方の考え方】
- 西洋医学での見方: 食べ物の味・温度・香辛料などの刺激に、鼻の粘膜をコントロールする神経(副交感神経)が反応して、水っぽい鼻水が出る反射と考えられています。辛いもの・熱いもので起きやすく、高齢の方に多いとも言われます。
- 漢方での見方: 食後は胃腸に体のエネルギーが集まるため、余分な水をさばく力が手薄になり、溜まっていた水が鼻水として一気に出てくると考えます。土台にあるのは、胃腸の力の弱りと「水の巡り」の滞りです。
- 漢方での取り組み方: 鼻だけでなく胃腸の働きと水の巡りを整えることを目指し、食事の養生とセットで進めます。まずは1〜2ヶ月、同じ組み立てで様子を見ていくのが太陽堂の考え方です。
- 対象となる主なお悩み: 食べると鼻水が出る(味覚性鼻炎)、食後に鼻水が止まらない、高齢の方の食事中の鼻水、温かい飲み物や歯磨きのときにも出る鼻水
食べると鼻水が出るのはなぜ?「味覚性鼻炎」の仕組みと病院での考え方
鼻の粘膜は、自律神経によって血管の広がり方や鼻水の量が調節されています。口の中に食べ物が入ると、その味や温度、香辛料の刺激が神経を通じて伝わり、副交感神経(体をリラックスさせ、消化を進める側の神経)が働きます。
このとき、鼻の粘膜にも「鼻水を出せ」という指令が一緒に届いてしまうことで、透明で水っぽい鼻水が出てくる——これが味覚性鼻炎の仕組みと考えられています。アレルギーの反応とは別の仕組みのため、アレルギー検査をしても原因が見つからないことが多いのが特徴です。
こんな食べ物・場面で起きやすくなります
- 辛いもの・香辛料: カレー、キムチ、唐辛子やわさび、コショウの効いた料理など。香辛料の刺激は、味覚性鼻炎のきっかけとして最もよく知られています。
- 熱いもの・湯気の立つもの: ラーメン、うどん、鍋もの、熱いスープなど。温かいコーヒーやお茶のあとに鼻水が出るという方もいらっしゃいます。
- 食事そのもの: 特定の食べ物に限らず、「何を食べても食後に出る」というケースもあります。
高齢の方に多いと言われる理由
「ご飯を食べると鼻水が出る」というお悩みは、高齢の方に多いと言われています。年齢を重ねると、鼻の粘膜が吸い込む空気を温めたり潤したりする働きが変化し、水っぽい鼻水が出やすくなると考えられているためです。
病院での診断と対応
耳鼻科では、鼻の中の状態を確認し、必要に応じてアレルギー検査などで他の鼻炎と区別したうえで、症状の出方から判断されるのが一般的です。症状や体の状態に合わせて、鼻水を抑える点鼻薬や飲み薬が検討されることもあります。
なお、アレルギー性鼻炎によく使われる抗ヒスタミン薬は、アレルギーが原因ではない鼻水には効き方に個人差があると言われます。変化を感じにくいときは、そのことも医師に伝えてみてください。
こんな鼻水は、まず耳鼻科を受診してください
食べると出る鼻水の多くは味覚性鼻炎などによるものと考えられますが、次のような場合は別の病気が隠れていることもあります。漢方を考える前に、まずは耳鼻科で鼻の中を確認してもらいましょう。
- いつも片側の鼻からだけ出る・片側だけ詰まる
- 鼻水に血が混じる
- においがしない・においが分かりにくくなった
- 黄色や緑色のドロッとした鼻水や、においの強い鼻水が続く、頬や額が痛む
- 頭のけがや手術のあとから、透明でサラサラの鼻水が片側から出続ける
においの変化が気になる方は、こちらの記事もあわせてご覧ください。
【比較表】西洋医学(病院の治療)と漢方薬(太陽堂)のアプローチの違い
| 比較項目 | 西洋医学(病院のアプローチ) | 漢方薬(太陽堂の体質ケア) |
| 主な目的 | 鼻の中の状態を確かめ、つらい鼻水をその場で抑える | 胃腸の働きと「水の巡り」を整え、鼻水が溜まりにくい体を目指す |
| 得意なこと | 他の病気との見分け、症状の速やかな抑制 | 食後・朝・温かい飲み物のあとなど「出方のくせ」に合わせた体質のケア |
| 代表的な手段 | 鼻の診察、アレルギー検査、点鼻薬や飲み薬 | 胃腸を支える漢方薬、水の巡りを整える漢方薬の組み合わせと食事の養生 |
| 気になる点 | アレルギーが原因でない鼻水には、薬の効き方に個人差がある | 体の変化を確かめるまでに一定の期間(まずは1〜2ヶ月)が必要なこと |
| 両者の関係性 | 鼻の状態を確かめ、つらい症状を抑える「最初の窓口」 | 鼻水が溜まりにくい体を内側から育てる「土台づくり」 |
どちらが良い・悪いではなく、役割が違います。病院で鼻の状態を確かめたうえで、体のくせを漢方で整えていく組み合わせも一つの方法です。
漢方から見た「食後の鼻水」——胃腸と「水の巡り」の関係
漢方では、食後に増える鼻水を鼻だけの問題とは考えません。手がかりは、「なぜ食べたあとに増えるのか」というタイミングです。
溜まって一気に出る鼻水は「水の巡り」の滞りのサイン
漢方では、体の中の水分(津液)は全身をスムーズに巡っているのが良い状態と考えます。この巡りが滞ると、行き場を失った余分な水が体のどこかに溜まります。鼻をかんでもしばらくするとまた溜まり、ある瞬間に一気に出てくる鼻水は、この「水の巡り」の滞り(水滞〈すいたい〉)のサインと捉えます。
食後に増えるのは、エネルギーが胃腸に集まるから
食事をすると、体は食べ物を消化するために多くのエネルギーを使い、そのエネルギーが胃腸に集まります。もともと胃腸の力が弱っている方(漢方でいう「脾虚〈ひきょ〉」=胃腸の力が弱く、水をうまくさばけない状態)は、食後にその分だけ水をさばく力が手薄になり、溜まっていた水が鼻水としてあふれやすくなる——漢方ではこのように考えます。
漢方では「鼻」と「腸」は同じグループ。秋は不調が出やすい季節
漢方の「五行(ごぎょう)」という考え方では、体の働きを5つのグループに分けます。その中で、鼻と腸(大腸)は同じグループに入り、互いに影響し合うとされています。さらに、胃腸はそのグループを下から支える「親」のような関係にあると考えられています。
そのため、胃腸が弱ると鼻にも不調が出やすくなる、というつながりで見ていきます。また、このグループは季節では「秋」にあたり、秋は鼻や腸の不調が出やすい季節とされています。
【薬剤師コラム】「食後にドバっと出る鼻水」のご相談でお伝えしていること
担当薬剤師:椙田
「鼻をかんでも、しばらくするとまた溜まってくる」「食べたあとに一気に出る」——そんなご相談をいただいたときは、まず鼻水の出方のくせを一緒に確認していきます。
店頭では、「溜まってしまって一気に出るっていうのって、水巡りが悪くなってしまってる」とお伝えしています。そして食後にひどくなる理由については、「体がどうしてもそこでエネルギーを使ったりするので…エネルギー自体が胃腸に集まる」というお話をしています。
だからこそ、鼻だけを見るのではなく、胃腸を支えることと水の巡りを整えることを一緒に考えていきます。そしてもう一つ大切にしているのが、毎日の食事です。漢方の考えには「薬は3分、養生7分」という言葉があります。日々の養生が、漢方薬の「受け皿」になっていくのです。
寒暖差で鼻水が出る方は、こちらの記事でも「水の巡り」の考え方をくわしく解説しています。
太陽堂でのご相談の進め方と期間の目安
太陽堂では、「食べると鼻水が出る」という病名や症状名だけで漢方薬を決めることはしません。同じ「食後の鼻水」でも、体の状態は一人ひとり違うためです。
ご相談でお伺いすること
- 鼻水の出方: 1日に何回くらい鼻をかむか、サラサラか粘りがあるか、左右どちらから出やすいか
- 出るタイミング: 食後だけか、朝起きたときや歯磨きのとき、温かい飲み物のあとにも出るか
- 食事と生活: 普段の食事の内容、食べる時間帯、お仕事の時間帯や睡眠
- 体のサイン: 胃腸の調子(便通や胃もたれ)、冷え、足のむくみやすさ、舌の状態など
たとえば朝にも出る場合は、朝がアレルギー症状の出やすい時間帯であり、自律神経が切り替わる時間帯でもある点もあわせて見ていきます。そのうえで、胃腸を支える漢方薬と、水の巡りを整える漢方薬をどう組み合わせるかを考えます。
期間の目安は「まず1〜2ヶ月」
胃腸の力や水の巡りといった体の土台は、数日で入れ替わるものではありません。そのため、組み立てを決めたら、すぐに変えるのではなく「1、2ヶ月同じで見ていきたい」とお伝えすることがあります。
短い期間で次々に変えてしまうと、何が体に合っていたのかが分からなくなります。食事の養生とあわせて続け、鼻をかむ回数や食後の出方を一緒に確かめながら進めます。
※効果の感じ方や必要な期間には個人差があります。
ご自宅でできる食後の鼻水のセルフケア・食養生
食後の鼻水は、毎日の食事と深く関わっています。胃腸をいたわり、余分な水を溜めにくい食事を続けることが、漢方の考え方での養生の中心です。店頭でお伝えしている内容をまとめました。
- 胃腸を支える「ほくほく」した食材を取り入れる: かぼちゃ・さつまいも・じゃがいもなどの芋類、小豆・黒豆などの豆類は、漢方の食養生で胃腸を支える食材とされています。温かい料理でどうぞ。
- 水の巡りを助ける食材も: きゅうりなどのウリ科の野菜は、漢方では余分な水の巡りを助ける食材と考えられています。ただし、ブタクサなど秋の花粉症がある方は、ウリ科の食材で口の中がかゆくなるなどの反応が出ることがあるため、無理に取り入れないでください。
- 黒ごまを続ける: 黒ごまは、漢方の食養生でよく使われる食材の一つです。ご飯にかけるなどして、毎日少しずつ続けてみてください。
- 炭酸飲料と白砂糖は控えめに: 炭酸飲料や白砂糖を多く使った甘いものは、胃腸に負担をかけやすいと考えられるため、店頭では控えめにしていただくようお伝えしています。冷たい飲み物も、胃腸を冷やすので、なるべく常温か温かいものに。
- 食べ方の工夫: 熱い料理は少し冷ましてから、辛いものや香辛料は量を控えめに。湯気を直接吸い込まない工夫も一つです。よく噛んでゆっくり食べることは、胃腸の負担を減らすことにもつながります。
よくあるご質問(FAQ)
食べると鼻水が出るのは病気ですか?放っておいても大丈夫でしょうか?
多くは「味覚性鼻炎」と呼ばれる反射によるもので、命に関わることは少ないと考えられています。
ただし、片側の鼻からだけ出る、血が混じる、においがしないといった場合は、別の病気が隠れていることもあるため、まずは耳鼻科を受診してください。耳鼻科で「異常はない」と言われ、それでも食事のたびに困っている場合は、体質面からのケアを考えるタイミングです。
高齢の家族が、ご飯のたびに鼻水を垂らしています。年齢のせいでしょうか?
年齢による鼻の粘膜の変化が関わることは多いと言われています。
漢方では、年齢とともに胃腸の力が弱りやすくなることも、食後の鼻水に関わると考えます。「年のせい」とあきらめる前に、まず耳鼻科で鼻の状態を確かめ、そのうえで食事や胃腸の調子も含めてご相談ください。
病院の点鼻薬や飲み薬と、漢方薬は併用できますか?
基本的には併用できることが多いですが、お使いのお薬は忘れずにお知らせください。
つらい症状は病院のお薬で抑えながら、漢方で胃腸と水の巡りを整えていく、という役割分担が現実的です。治療中の病気やお薬の内容によっては組み立てを考える必要があるため、ご相談の際にお薬手帳などをお持ちください。病院のお薬を自己判断でやめるのは避け、主治医とご相談のうえで進めてください。
どのくらいの期間で変化を見ていきますか?
まずは1〜2ヶ月を一区切りの目安にしています。
胃腸の力や水の巡りといった体の土台は、すぐには入れ替わりません。そのため、組み立てを決めたら同じ内容で1〜2ヶ月続け、鼻をかむ回数や食後の出方の変化を一緒に確かめます。変化の感じ方には個人差があり、季節の影響で波が出ることもあります。
費用はどのくらいかかりますか?
漢方薬の費用は、週5,000円前後〜(月2万円前後から)が目安です。相談料は無料です。
体の状態や組み立てによって変わりますので、ご相談の際にあらかじめ金額をお伝えし、ご納得いただいてからスタートします。
▼あわせて読みたい:鼻水がのどに流れる方へ
まとめ:食後の鼻水は「胃腸」と「水の巡り」から見直す
「食べるたびに鼻水が出る」は周りに相談しにくく、我慢を続けてしまいがちなお悩みです。取り組み方の流れは、とてもシンプルです。
- 片側だけ・血が混じる・においがしないなどのサインがあれば、まず耳鼻科で鼻の状態を確かめる
- 芋類・豆類・黒ごまなどで胃腸をいたわり、炭酸や甘いもの、冷たいものは控えめにする
- 漢方薬で胃腸の働きと「水の巡り」を整え、鼻水が溜まりにくい体の土台を育てる
食後の鼻水を「鼻だけの問題」と考えず、胃腸と水の巡りから見直すことで、食事の時間をもっと気楽に楽しめる毎日を目指していきましょう。
「食事のたびにティッシュが手放せない」
「耳鼻科で異常はないと言われたけれど、食後の鼻水が続いている」
そんなお悩みを抱えている方は、どうぞ一人で抱え込まずに太陽堂へご相談ください。鼻水の出方や食事、胃腸の調子などを丁寧にお伺いし、あなたの体質に合わせた漢方ケアをご提案いたします。
ご遠方の方には、ヒアリングシートのやり取りによるご相談も全国から承っておりますので、まずはお気軽にお声がけください。
【ご相談をご希望の方へ】
アレルギーではない鼻水・鼻づまりに対する漢方のアプローチについては、こちらのページにて詳しく解説しております。
関係性の深い病気;ご相談も多数いただいております。
食後の鼻水だけでなく、鼻に関するさまざまなお悩みについても、太陽堂では数多くのご相談をいただいております。気になる症状がある方は、以下のページもあわせてご覧ください。
▼花粉症・アレルギー性鼻炎
▼後鼻漏
▼太陽堂が考える鼻疾患
太陽堂の特徴
”当薬局のHPをご覧いただき、ありがとうございます。
私たち太陽堂は「一人でも多くの方の笑顔を見る為に」という思いのもと開局しました。
漢方薬とお客様の出会いがお悩み、体質改善の一助になれれば幸いです。”
特徴その1.
当薬局では、お客様「ひとりひとりに合わせた漢方薬」をその場で調合いたします。
そのため初めてのご相談では、「約1時間~1時間半」ほど相談時間をいただいております。
(遠方のお客様や、お忙しいお客様へは配送の受付もしております。詳しくはお問合せください)
特徴その2.
お作りする漢方薬は、国内外から厳選した生薬の力を、余すことなくお客様に届けるため
「煎じ薬」をお勧めしております。
特徴その3.
当薬局は漢方専門の薬剤師が「得意とする専門分野」にわかれて日々研鑽しています。
お客様の健康を第一に考え、漢方の勉強会なども積極的に開催しております。
太陽堂がはじめての方へ
ご相談を考え始めた方は、まずこちらをどうぞ。
記事作成者 薬剤師 椙田 彩純

担当疾患;循環器、身体の痛み
臨床検査技師の両親の影響で、幼い頃から医療に関心を持つ。
大学卒業後、病院薬剤師として勤務。
対症療法が中心の現場で、繰り返す入退院や長期投薬を目の当たりにし、「もっと力になれる方法はないか」と模索する中で漢方と出会う。
現在は漢方の持つ幅広さと可能性に魅了され、一人ひとりの体質に寄り添った根本改善を追求している。
記事作成者 薬剤師 石川 満理奈

得意な疾患:胃腸疾患・耳鼻咽喉疾患・不妊症・婦人科・肝臓・腎臓
開業医だった父の影響で小さい頃から医療は身近に。
薬学部を卒業後、調剤薬局に勤務。
自分自身の胃腸の不調も漢方薬により改善。
よりご来局頂いた方の体質に沿った治療の選択をできるようになりたいという思いから「漢方の道」へ。














