
「秋風を感じるようになってから、目がショボショボと乾いて、夕方になると文字がぼやけてかすんでくる…」
「目薬を差した瞬間は潤うけれど、数分経つとすぐにまた乾いてしまって、目薬が手放せない…」
「パソコンやスマホを見る時間は夏と変わらないはずなのに、目の奥の重だるさや疲れだけが急にひどくなった…」
過ごしやすくなるはずの秋に、このような目の不調を訴える方が急増するのには、明確な理由があります。秋の空気の乾燥によって目の表面の涙が蒸発しやすくなるという物理的な要因に加えて、東洋医学において目の栄養源とされる大切な「血(けつ)」が、夏のダメージによってすっかり減ってしまっているからです。つまり、秋の目は「外からの乾燥」と「内からの栄養不足」というダブルパンチを受けている状態なのです。
この「内側の乾きと栄養不足」に対しては、いくら外から目薬を差してしのいでも、根本的な解決には届きません。デジタルデバイスで日々目を酷使せざるを得ない現代だからこそ、単に休ませるだけでなく、積極的に「目を養う」という習慣が大きな違いを生み出します。
今回は、秋に目が乾き、かすみやすくなるメカニズムや、漢方における「肝(かん)と目」の深い関係、そして毎日の食事と生活で目を内側から養うための養生法を、太陽堂の薬剤師が詳しく解説いたします。
【太陽堂が教える、秋の目のトラブル養生まとめ】
まずは、当薬局が考える秋の目の不調(乾き・かすみ・疲れ)へのアプローチを簡潔にまとめました。
- 漢方の見立て(原因): 西洋医学では「空気の乾燥による涙の蒸発と、長時間の画面作業によるまばたき回数の減少(ドライアイ)」とされる秋の目の乾きですが、漢方では、「肝(かん)は目に開竅(かいきょう)する=目は肝の状態を映し出す窓である」という考えのもと、夏の過酷な消耗と日常的な目の酷使によって、肝に蓄えられた栄養である「血(けつ)」が不足し、目に十分な潤いと栄養が届かなくなった「肝血虚(かんけっきょ)」の状態に注目して原因を探ります。
- アプローチ(対策): クコの実や菊花茶など「血を補い目を養う食材」を取り入れた日常の食事ケア(養生)と、目を休める温めの習慣づくり、そしてお一人おひとりの体質に合わせたオーダーメイドの煎じ薬を通じて、「長時間使っても乾きにくく、かすみにくい目の土台づくり」をサポートします。
- 今後のステップ(根本ケア): (※急激な視力低下、視野の欠け、目の強い痛みなどを伴う場合は、まず眼科での専門的な検査を最優先してください。) 検査で大きな異常が見つからない慢性的な乾き、夕方のかすみ、重たい疲れ目に対しては、目薬だけに頼るのではなく、体質(血の不足や巡りの滞り)からの根本的な立て直しを、じっくりとご相談を重ねながら進めていきます。
【薬剤師 林の視点】秋に目が乾くメカニズムと、西洋医学・漢方のアプローチ
こんにちは、薬剤師の林です。
現代人の目は、起きている間ずっとフル稼働しており、一年中働きづめの状態です。そこに秋特有の「乾燥」という気候の変化が重なることで、限界に達した目が悲鳴を上げ始めるのです。
西洋医学の視点:空気の乾燥による涙の蒸発と、まばたきの減少
西洋医学の観点から見ると、目の表面は常に「涙の薄い膜(涙液層)」によって覆われ、乾燥や摩擦、細菌などの外敵から守られています。しかし、秋になって空気の湿度が急激に下がると、この大切な涙の膜がすぐに蒸発してしまい、目の表面がむき出しに近い無防備な状態になってしまいます。
これに追い打ちをかける最大の要因が、パソコンやスマートフォンなどの「長時間の画面作業」です。
人間は、何かに集中して画面を見つめているとき、無意識のうちにまばたきの回数が普段の3分の1程度にまで激減すると言われています。まばたきは、目の表面に新しい涙を運び、古い涙を排出するワイパーのような役割を果たしています。つまり、画面作業中は「涙の補給が減る」上に、秋の乾燥で「蒸発が増える」という、乾き目(ドライアイ)にとって最悪の条件が揃ってしまうのです。
目の表面が乾いて凸凹した状態になると、光が綺麗に屈折せず、ピントを合わせるために目の筋肉(毛様体筋)に余計な負担がかかります。これが、夕方になるにつれて感じる視界のかすみや、目の奥の重だるい疲れへと直結します。
西洋医学的な視点では、まずはヒアルロン酸などの成分を含む人工涙液(目薬)で外から涙を補うこと、そして意識的なまばたきとこまめな休憩で物理的に目を守ることが基本とされます。(※ただし、急な視力の低下や見えにくさ、強い痛みや充血がある場合は、別の眼疾患の可能性があるため、迷わず眼科を受診してください。)
漢方の視点:目は「肝の窓」。血が減れば、目はたちまち乾いてかすむ
一方、漢方の視点では、目の潤いは外から差す目薬だけでなく、体の内側から供給される「血(けつ)」によってもたらされると考えます。
東洋医学には、「肝(かん)は目に開竅(かいきょう)する」という非常に重要な考え方があります。これは、「目は五臓の『肝』の状態をそのまま映し出す窓である」という意味です。「肝」にたっぷりと蓄えられた栄養と潤いである「血」が、経絡(気血の通り道)を通って目までしっかりと届いて初めて、目は潤いを保ち、物を見るという機能を正常に果たすことができるのです。
ところが、漢方にはもう一つ、現代人にとって耳の痛い教えがあります。それは「目を使うこと(久視:きゅうし)は、血を激しく消耗する」というものです。
スマホやパソコン、テレビなどで一日中目を酷使する現代の生活スタイルは、肝に蓄えられた血の貯金を、ものすごいスピードで日々取り崩し続けています。
夏の間、大量の汗とともに大切な血と潤いをすっかり消耗してしまった体に、秋の空気の乾燥が重なればどうなるでしょうか。目に回すための血の余裕はいよいよなくなり、目は完全に栄養失調と水分不足に陥ります。この状態を「肝血虚(かんけっきょ)」と呼びます。
肝血虚になると、ただ乾くだけでなく、目に栄養がいかないためにピントが合わなくなり、夕方になるとショボショボとかすんだり、光を異常に眩しく感じたり、目の奥が痛むほどの重い疲れとして症状が現れます。
漢方では、このような状態に対し、外からの目薬だけに頼るのではなく、肝にたっぷりと血を補い、目への栄養と潤いの供給ルートを再建するアプローチ(補血養肝:ほけつようかん、明目:めいもくなどの考え方)を用いて、「一日中使っても乾きにくく、疲れにくい目」の土台づくりを内側から根本的にサポートしていきます。
【薬剤師 椙田の視点】目を養い、潤いを取り戻す秋の食事と生活養生
薬剤師の椙田です。
目のケアは、酷使しないようにする「使い方」の工夫と、減った栄養を補う「養い方」の両輪で行うことが大切です。どちらも、特別なことではなく、今日からすぐに始められる習慣ばかりです。
「目を養う赤と黒の食材」——クコの実は東洋のアイケアの王様
漢方において、肝の血をたっぷりと補い、目の働きを助ける(明目)とされる食材を、日々の食事やお茶の時間に積極的に取り入れてみましょう。
- おすすめの食材: クコの実、菊花茶(きっかちゃ)、にんじん、ほうれん草、レバー、黒ごま、黒豆、ブルーベリー など。
中でも特におすすめしたいのが「クコの実(ゴジベリー)」です。杏仁豆腐の上にちょこんと乗っているあの赤い実は、漢方の世界では「目の薬膳」と呼ばれるほど、肝と腎を養い、目に潤いと栄養を届ける力が強い定番食材です。そのまま食べることもできるので、1日に10〜20粒程度をヨーグルトに混ぜたり、スープに入れたりして手軽に取り入れてみてください。
また、お茶でおすすめなのが「菊花茶(きっかちゃ)」です。菊の花には、目の充血や熱、高ぶった神経を優しく鎮める働きがあります。クコの実と一緒に熱湯に入れて「クコ菊花茶」として飲むと、血を補いながら目の熱を取るという、非常に相性の良い最高のアイケアティーになります。
「20分に1回、遠くを見る」でピントの筋肉をリセットする
パソコンやスマホの画面を至近距離で見続けていると、目のピントを合わせる筋肉(毛様体筋)はずっと緊張して縮みっぱなしの状態になります。これが眼精疲労の大きな原因です。
この筋肉の緊張を解くためには、「20分作業したら、6メートル以上遠くの景色を、20秒間ぼんやりと眺める」(20-20-20ルール)という習慣をつけてください。遠くを見るだけで、ピント調節の筋肉はフワッと緩み、リセットされます。
これとあわせて、意識的にまぶたをギュッとしっかり閉じる「ゆっくりまばたき」を数回行いましょう。これにより、目の表面に新しい涙の膜が全体に行き渡り、乾きが大きく和らぎます。
夜の「蒸しタオル」と、寝る前30分の画面オフ
一日がんばって働いた目には、夜のリラックスタイムに「蒸しタオル」のケアをしてあげましょう。
水で濡らして軽く絞ったタオルを、電子レンジ(500W〜600Wで30秒〜1分程度)で温め、火傷に注意しながら閉じたまぶたの上に1〜2分乗せます。温めることで目の周りの血流が良くなるだけでなく、まぶたの縁にある「マイボーム腺」という油の分泌腺が温まって開き、涙の蒸発を防ぐ油分がスムーズに出やすくなります。
そして、漢方には「肝の血は、目を閉じて静かに休んでいる間(睡眠中)にのみ養われる」という重要な原則があります。
寝る直前まで暗い部屋でスマホの強い光を浴び続けることは、血を養う時間を奪い、目の消耗を最大化させてしまいます。寝る前30分は思い切ってすべての画面をオフにし、十分な睡眠時間を確保することこそが、翌日の目の潤いを作る最強のアイケアとなります。
【比較表】秋の目を守り抜く!OK・NG行動リスト
| カテゴリ | 〇 おすすめ(目を潤し、血を養う) | × 要注意(消耗を深め、乾きを進める) |
| 目の使い方 | 20分に1回、遠くを見る+ゆっくりまばたきをする (ピントの筋肉を緩め、涙を目の表面全体にしっかり行き渡らせる) | 休憩なしで、まばたきを忘れて画面を見続ける (涙が極端に減少し、表面が乾き続けて細胞が傷つく) |
| 食事・お茶 | クコの実・菊花茶・にんじん・レバーなどを摂る (肝の血をたっぷりと補い、目への栄養と潤いを直接届ける) | お酒の飲みすぎや、夜更かしのお供の辛い刺激物 (肝臓(肝)に負担をかけ、目を養うための血の回復を妨げる) |
| 夜の習慣 | 蒸しタオルで温め+寝る前30分の画面オフ+十分な睡眠 (目の血流を促し、目を閉じて眠っている間に血をしっかりと養う) | 暗い部屋で、至近距離から布団の中でスマホを見る (至近距離と暗さのダブルパンチで、目の筋肉と血の消耗が最大になる) |
秋の目の不調に関するよくある質問(FAQ)
乾くのが辛くて、市販の目薬を1日に何度も差しています。問題ありませんか?
種類によりますが、「差しても差してもすぐに乾く」のであれば、内側のケアの出番です。
市販の目薬の中には、防腐剤が含まれているものや、充血を取るための血管収縮剤が含まれているものがあります。これらを1日に何度も頻繁に使用すると、かえって目の表面の細胞を傷めたり、自力で涙を出す働きを鈍らせたりすることがあります。回数が増えている方は、防腐剤フリーの人工涙液タイプへの変更や、一度眼科へ相談することをおすすめします。そのうえで、「涙を作る力そのもの」や「目を養う血」という内側の土台を漢方で支えてあげると、次第に目薬の回数自体を減らしていくことができます。
夕方になると物がかすむのは、もう年齢(老眼)のせいだと諦めるしかないのでしょうか?
「夕方だけかすむ」のであれば、年齢だけでなく、疲れと血の不足のサインである可能性が高いです。
朝ははっきりと見えているのに、夕方になるとかすむ、ぼやけるというのは、一日の目の酷使によってピント調節の筋肉が疲れ果て、目を養うための「血」が枯渇してきた状態と考えられます。これは漢方では典型的な「肝血虚」の症状です。まずは眼科で白内障や緑内障などの病気がないことを確認したうえで、目を休める習慣と血を補う体質ケアを取り入れてみてください。終日かすむ場合や、急に見えにくさが進んだ場合は、年齢のせいと自己判断せず、早めの受診を優先してください。
目の不調と一緒に、最近爪が割れやすくなったり、足がつったり(こむら返り)します。関係ありますか?
はい、大いに関係があります。それらはすべて「肝の血の不足」で説明がつく、仲間のサインです。
漢方では、目だけでなく、「爪」や「筋(筋肉や腱)」もすべて、肝の血によって養われていると考えます。そのため、肝の血が不足すると、目の乾きのほかに、爪がもろくなって割れやすい、筋肉に栄養がいかず足がつりやすい、といった症状が同時に現れやすくなります。これらのサインが揃ってきたら、体全体の血が不足しているという体からの警告です。目だけの局所的な問題として対処するよりも、血を補う体質ケアで根本からまとめて立て直すのが最も効率的です。
まとめ:目薬に「内側から養う習慣」を足して、かすまないクリアな秋へ
「目薬を差しても、すぐにショボショボと乾く。夕方には画面の文字がかすんで仕事にならない…」
その不調は、決してあなたの目が弱すぎるからではありません。秋の物理的な空気の乾燥と、現代の目を酷使する生活、そして夏に消耗しきった「肝の血」の不足という3つの要素が重なって起こった、目からのSOSサインです。
外から目薬を差して潤すだけでなく、内側から栄養を「養う」という視点を足してあげましょう。
クコの実と菊花茶を飲む、20分に1回遠くを見る、夜は蒸しタオルで温めてスマホを置く。まずはこの日常の養生からスタートしてみてください。そして、漢方の視点でしっかりと肝の血を補ってあげれば、「一日中画面を見ても、夕方まで平気なクリアな目」の土台は必ず取り戻すことができます。
「目の乾きとかすみが年々ひどくなってきて不安」「目薬が手放せない今の生活を根本から変えたい」という方は、ぜひ太陽堂までお気軽にご相談ください。お一人おひとりの体質や目の使い方に合わせた、無理のないアイケアをご提案いたします。
関連ページ
太陽堂では、目のお悩みだけでなく、心と体の様々なお悩みに対する漢方サポートを行っております。気になる症状がございましたら、以下のページもぜひご覧ください。
太陽堂の特徴
”当薬局のHPをご覧いただき、ありがとうございます。
私たち太陽堂は「一人でも多くの方の笑顔を見る為に」という思いのもと開局しました。
漢方薬とお客様の出会いがお悩み、体質改善の一助になれれば幸いです。”
特徴その1.
当薬局では、お客様「ひとりひとりに合わせた漢方薬」をその場で調合いたします。
そのため初めてのご相談では、「約1時間~1時間半」ほど相談時間をいただいております。
(遠方のお客様や、お忙しいお客様へは配送の受付もしております。詳しくはお問合せください)
特徴その2.
お作りする漢方薬は、国内外から厳選した生薬の力を、余すことなくお客様に届けるため
「煎じ薬」をお勧めしております。
特徴その3.
当薬局は漢方専門の薬剤師が「得意とする専門分野」にわかれて日々研鑽しています。
お客様の健康を第一に考え、漢方の勉強会なども積極的に開催しております。
記事作成者 薬剤師 前原 信太郎

実績:伝統漢方研究会 2017年・2021年・2025年 学術発表
沖縄で開業医をしていた祖父と薬の話しをしていた事から薬剤師の道を目指すように。
調剤薬局の薬剤師として6年間勤務。
漢方の勉強をして、より患者さんの治療の選択肢の幅を広げたいという思いから「漢方の道」に。
調剤薬局も経験している為、西洋学の知識も勉強を積み今に至ります。
記事作成者 薬剤師 椙田 彩純

担当疾患;循環器、身体の痛み
臨床検査技師の両親の影響で、幼い頃から医療に関心を持つ。
大学卒業後、病院薬剤師として勤務。
対症療法が中心の現場で、繰り返す入退院や長期投薬を目の当たりにし、「もっと力になれる方法はないか」と模索する中で漢方と出会う。
現在は漢方の持つ幅広さと可能性に魅了され、一人ひとりの体質に寄り添った根本改善を追求している。















