
「ひどいニキビ(ざ瘡)や化膿で『排膿散及湯』を出されたけれど、どんなお薬?」
「ドラッグストアで『排膿散』という薬も見たけれど、何が違うの?」
化膿したニキビ、歯ぐきの腫れ(歯槽膿漏)、蓄膿症などでお悩みの方がよく目にする「排膿散及湯(はいのうさんきゅうとう)」と「排膿散(はいのうさん)」。
名前がそっくりなので、「自分にはどちらが合っているの?」と迷ってしまいますよね。さらに、「湯」と「散」という2つの漢字が両方入っていて、なんだか不思議な名前です。
今回は、太陽堂の薬剤師がこの2つの漢方薬の決定的な違いと、化膿に対する漢方的なアプローチについて分かりやすく解説します。

結論:「排膿散及湯」は、2つの漢方を「合体」させたお薬!
まず最大の疑問である「排膿散及湯と排膿散の違い」の答えをお伝えします。
実は漢方の歴史をたどると、もともと「排膿散(はいのうさん)」と「排膿湯(はいのうとう)」という、全く別の2つの漢方薬が存在していました。
「排膿散及湯」の「及(きゅう)」という字は、日本語の「および」を意味します。 つまり、【排膿散】および【排膿湯】をミックスしたお薬、という意味なのです。
では、なぜわざわざ2つの薬を混ぜる必要があったのでしょうか?それは、化膿の「進行度」に秘密があります。
そもそも「化膿(かのう)」ってどんな状態?
外からバイ菌が入ってくると、私たちの体は免疫細胞(好中球など)を出してバイ菌と戦います。この戦いの現場が熱を持ち、赤く腫れるのが「炎症」です。 そして、バイ菌と戦い終わった免疫細胞の残骸が黄色い液体となって外に出ようとする状態、これが「化膿(膿:うみ)」です。
「排膿散」と「排膿湯」の決定的な違い(使い分け)
「排膿散」と「排膿湯」は、この化膿が「今、どの段階にあるか(患部の硬さはどうか)」によって使い分けられていました。
1. 「排膿散」=ピーク時のカチカチに硬い化膿に
- 構成生薬: 桔梗(キキョウ)、芍薬(シャクヤク)、枳実(キジツ)
- 得意なこと: 症状が進行し、患部がカチカチに硬く(硬結して)腫れ上がっている時に使います。芍薬と枳実の力で、ガチガチに緊張した患部を柔らかくほぐし、中に溜まった膿を外に出しやすくします。
2. 「排膿湯」=初期や治りかけの柔らかい化膿に
- 構成生薬: 桔梗(キキョウ)、甘草(カンゾウ)、大棗(タイソウ)、生姜(ショウキョウ)
- 得意なこと: 化膿の初期(まだ患部が柔らかい時)や、膿が出終わって治りかけの時に使います。甘草や大棗、生姜といった「胃腸(脾胃)を整える生薬」がたっぷり入っており、体の自然治癒力を高めながら優しく膿を排出します。
※どちらにも入っている「桔梗(キキョウ)」は、膿を排出し、抗菌・抗炎症作用を持つ、化膿治療の主役となる生薬です。
なぜ合体させた?「排膿散及湯」が万能な理由
化膿の状態(硬さ)によって使い分けるのは理にかなっていますが、現実のニキビや化膿は、「昨日は柔らかかったのに、今日はカチカチに腫れている」「治りかけて膿が出たと思ったら、隣にまた新しいニキビができた」というように、刻一刻と状態が変化し、様々な段階の化膿が混在します。
そこで、江戸時代の有名な漢方医である吉益東洞(よします とうどう)先生が、「それなら、最初から2つを混ぜてしまえば、初期からピーク、治りかけまで全部カバーできる!」と考え、生み出されたのが「排膿散及湯」なのです。
「排膿散」の患部を柔らかくする力と、「排膿湯」の胃腸を労わり自然治癒力を高める力。この両方を兼ね備えているため、現在では化膿性疾患の第一選択として、病院でも非常によく処方される万能薬となりました。
【コラム】薬剤師 前原先生の視点「『外から塗る』と『内から治す』の違い」
私が以前、調剤薬局に勤めていた時、化膿したニキビ(ざ瘡)に対して、抗生物質の『塗り薬』と一緒に、この『排膿散及湯』が出されるのをよく見かけました。
塗り薬は『今ある表面のバイ菌を殺す』のには即効性がありますが、漢方薬は『体の中に溜まった熱や毒素(膿)を外に押し出し、自分の治癒力で治す』というアプローチをします。
特に排膿散及湯は、胃腸を整える生薬も含まれているため、体に負担をかけずに『内側からの体質改善』を促してくれるのが大きな魅力です。
【豆知識】漢方の「湯」と「散」の本来の意味とは?
「排膿散及湯」の名前の由来は分かりましたが、そもそも漢方薬の最後に付く「〜湯」や「〜散」には、どのような意味があるのでしょうか?
- 湯(とう): 生薬を水でグツグツと「煎じて(煮出して)」、そのエキスを飲む液体の薬です。(例:葛根湯、排膿湯など)
- 散(さん): 生薬を乾燥させ、細かくすりつぶして「粉末」にした薬です。(例:当帰芍薬散、排膿散など)
一般的に、「湯(煎じ薬)」の方が成分がしっかり抽出されるため効果が高く、「散(粉薬)」はサッと飲めて効き目が早い(即効性がある)と言われています。
※現在、病院や薬局で処方される漢方薬(エキス顆粒)は、一度「湯」として煎じたエキスをフリーズドライにして粉末状にしているため、名前に「湯」とついていても粉薬の形をしています。
ニキビだけじゃない!「排膿散及湯」が活躍する症状
排膿散及湯は、「清熱(熱を冷ます)」「解毒(毒素を消す)」「排膿(膿を出す)」という3つの効果を併せ持つため、ニキビ以外にも、体のどこかに「赤み・腫れ・痛み・膿」がある場合に幅広く使われます。
- 蓄膿症(副鼻腔炎): 鼻の奥に溜まったドロドロの黄色い鼻水(膿)を出しやすくします。
- 歯槽膿漏・歯肉炎: 歯ぐきの化膿、腫れ、痛みを鎮めます。
- 面疔(めんちょう): 顔にできる大きくて痛いおできの改善に。
- 中耳炎・扁桃炎: 喉や耳の化膿性炎症のサポートに。
【コラム】薬剤師 石川先生の視点「繰り返す大人ニキビには『根本のケア』を」
『大きな赤ニキビが治っては、また別の場所にできる…』と悩む女性のご相談をよくお受けします。排膿散及湯は、今ある痛いニキビの膿を出して早く治すのにはとても優秀です。
しかし、『なぜ何度も化膿してしまうのか?』という根本原因(ストレスによるホルモンバランスの乱れ、食生活による胃腸の熱、冷えや血行不良など)は人それぞれ違います。
万能薬とはいえ、ご自身の体質に合っていないと繰り返してしまうため、長引く肌荒れはお気軽に私たちにご相談くださいね。
まとめ:「排膿散」と「排膿湯」の良いとこ取り!
- 排膿散: カチカチに硬く腫れたピーク時の化膿を柔らかくして膿を出す。
- 排膿湯: 初期や治りかけの柔らかい化膿に対し、胃腸を労わりながら治す。
- 排膿散及湯: 上記の2つを「合体(及)」させ、どんな段階の化膿にも対応できるようにした万能薬。
「ドラッグストアで『排膿散』を見かけたけれど、どうしよう?」と迷った時は、「患部がガチガチに硬くしこっているか」を一つの目安にしてみてください。もし進行度が分からなかったり、様々な状態のニキビが混在している場合は、両方の良さを持つ「排膿散及湯」を選ぶのが安心です。
太陽堂では、化膿性疾患や長引くニキビ(ざ瘡)・副鼻腔炎に対し、表面的な症状を抑えるだけでなく、あなたの体質に合わせた「内側からの根本治療」をご提案しています。ぜひ以下の関連ページも参考にされてみてください。
太陽堂の特徴
”当薬局のHPをご覧いただき、ありがとうございます。
私たち太陽堂は「一人でも多くの方の笑顔を見る為に」という思いのもと開局しました。
漢方薬とお客様の出会いがお悩み、体質改善の一助になれれば幸いです。”
特徴その1.
当薬局では、お客様「ひとりひとりに合わせた漢方薬」をその場で調合いたします。
そのため初めてのご相談では、「約1時間~1時間半」ほど相談時間をいただいております。
(遠方のお客様や、お忙しいお客様へは配送の受付もしております。詳しくはお問合せください)
特徴その2.
お作りする漢方薬は、国内外から厳選した生薬の力を、余すことなくお客様に届けるため
「煎じ薬」をお勧めしております。
特徴その3.
当薬局は漢方専門の薬剤師が「得意とする専門分野」にわかれて日々研鑽しています。
お客様の健康を第一に考え、漢方の勉強会なども積極的に開催しております。
記事作成者 薬剤師 前原 信太郎

実績:伝統漢方研究会 2017年・2021年・2025年 学術発表
沖縄で開業医をしていた祖父と薬の話しをしていた事から薬剤師の道を目指すように。
調剤薬局の薬剤師として6年間勤務。
漢方の勉強をして、より患者さんの治療の選択肢の幅を広げたいという思いから「漢方の道」に。
調剤薬局も経験している為、西洋学の知識も勉強を積み今に至ります。
記事作成者 薬剤師 石川 満理奈

得意な疾患:胃腸疾患・耳鼻咽喉疾患・不妊症・婦人科・肝臓・腎臓
開業医だった父の影響で小さい頃から医療は身近に。
薬学部を卒業後、調剤薬局に勤務。
自分自身の胃腸の不調も漢方薬により改善。
よりご来局頂いた方の体質に沿った治療の選択をできるようになりたいという思いから「漢方の道」へ。















