
「暑い外から屋内に入った途端、胸がドキドキして落ち着かない…」
「夜、寝ようとすると心臓の音が大きく聞こえて気になってしまう…」
「軽い階段の上り下りや、少し動いただけですぐに息切れして動悸がする…」
夏は、気温の上昇とともに体への負担がピークに達する季節です。暑さによる疲労やだるさはよく知られていますが、実は「動悸(どうき)」も、この時期に急増するお悩みの一つです。
「単なる疲れのせいだろう」と放置していると、心臓や体に無用な負担をかけ続け、秋口に急激な気力低下や不調を感じることもあります。特に夏は、漢方の視点では「心(しん)」という、生命維持を司る重要な部分が最も影響を受けやすい季節なのです。
今回は、夏に動悸が起こるメカニズムや、漢方における「心」と「汗」の深い関係、そして心身を穏やかに整えるための養生法を、太陽堂の薬剤師が詳しく解説いたします。
【太陽堂が教える、夏の動悸・体調養生まとめ】
まずは、当薬局が考える、夏の胸のお悩みへのアプローチを簡潔にまとめました。
- 漢方の見立て(原因):西洋医学では「自律神経の乱れによる頻脈や、脱水による血流量の減少」とされる夏の動悸ですが、漢方では、真夏の「厳しい暑さ(熱邪)」と「大量の発汗」が、生命エネルギーを司る「心(しん)」の働きを弱め、血液(血)や潤い(陰)を消耗させてバランスを崩した「心気虚(しんききょ)」や「心陰虚(しんいんきょ)」の状態に注目して原因を探ります。
- アプローチ(対策):蓮の実やナツメなど「心を養い精神を安定させる食材」を取り入れた日常の食事ケア(養生)と、一人ひとりの体質に合わせたオーダーメイドの煎じ薬を通じて、暑さに負けない「心身の土台づくり」をサポートします。体が本来持つ落ち着きを取り戻し、リズムを整えます。
- 今後のステップ(根本ケア):一時的な鎮静剤でドキドキを抑えるだけでなく、根本的な原因(胃腸の弱りによるエネルギー不足や、慢性的な睡眠不足など)を見極めるため、まずはじっくりとご相談を重ね、季節の変化にも揺らぎにくい長期的な体質と向き合っていきます。
【薬剤師 前原の視点】夏の動悸のメカニズムと、西洋医学・漢方のアプローチ
こんにちは、薬剤師の前原です。
夏に感じる動悸は、体が「これ以上、暑さに耐えるのは厳しいです!」と送っている切実なアラートかもしれません。
西洋医学の視点:脱水と自律神経の乱れによる心臓の負担
夏は気温が高いため、体は体温を下げようと皮膚の血管を拡張させ、血液を体の表面に送ります。すると、心臓は血液を全身に循環させるために、普段よりも速く、強く拍動しなければならなくなります。これが「動悸」として感じられる一つの要因です。
さらに、大量に汗をかくと体内の水分とミネラルが失われ、血液がドロドロになりやすくなります。血液のボリュームが減ると、心臓はさらにポンプの回転数を上げて全身に酸素を送ろうとするため、心拍数が増加し、ドキドキを感じやすくなります。また、暑さと湿気は自律神経を乱し、交感神経を過剰に優位にさせるため、リラックスできず心臓が緊張状態になりやすいのです。
西洋医学的な視点では、まずは水分・電解質の補給を基本とし、コンディションが安定しない場合には、自律神経を調整するお薬や、心臓の負担を和らげるサポート剤を用いて、体が本来の落ち着きを取り戻すまでの期間を助けることが推奨されます。
漢方の視点:汗は「心の液」であり、エネルギーの消耗サイン
一方、漢方の視点では、動悸の悩みは「心(しん)」の働きの低下と深く関わっていると考えます。漢方では、心は「血液を送り出し、精神(神:しん)を宿す」重要な臓器であり、「汗は心の液である」という考え方があります。大量に汗をかくということは、汗と一緒に心のエネルギー(心気)や、潤い(心陰)まで流し出しているのと同じことなのです。
心のエネルギーが不足すると「心気虚(しんききょ)」となり、動悸や息切れ、疲れやすさが現れます。また、心の中の潤いが枯渇すると「心陰虚(しんいんきょ)」となり、寝ている間にドキドキして眠れない、イライラする、顔が火照るといった症状が出やすくなります。
夏場に汗をかきすぎたり、寝苦しさで睡眠不足が続いたりすると、まさにこの状態に陥りやすくなります。
漢方では、このような状態に対し、不足した「心」のエネルギーや潤いを丁寧に補い、精神を安定させるアプローチ(養心安神:ようしんあんじんなどの考え方)を用いて、季節の厳しさに負けない健やかな心身の土台づくりをサポートしていきます。
【薬剤師 椙田の視点】心を養い、リズムを整える夏の養生食
薬剤師の椙田です。
胸の高鳴りを感じる時は、心臓だけでなく「心(しん)」全体が疲弊しています。無理をせず、心を落ち着かせ、穏やかなリズムを取り戻すための食事養生を取り入れてみましょう。
「心を養う食材」で穏やかなエネルギーをチャージする
漢方において、精神を落ち着かせ、疲れた心にエネルギーを届けてくれる食材を日常に取り入れましょう。
- おすすめの食材: 蓮の実(れんじつ)、ナツメ、百合根(ゆりね)、小麦(全粒粉など)、鶏肉 など。これらは、漢方でも「安神(あんしん)」といって、精神を安定させ、動悸を和らげるサポートをする食材として重宝されてきました。例えば、ナツメをおやつ代わりにしたり、蓮の実をお粥に入れたりと、穏やかなエネルギーを補う工夫がおすすめです。
「苦味」は適度に摂ることで心を助ける
夏の暑さで体が熱っぽく、胸がざわついてイライラする時は、適度な「苦味」が心を助けます。
- おすすめの苦味食材: ゴーヤ、ピーマン、セロリ、ミョウガなど。「苦味」は、体にこもった過剰な熱を冷まし、イライラや高ぶりを鎮める働きがあります。ただし、冷え性で胃腸が弱い方は、苦味の強いものを摂りすぎると胃を冷やしてしまいます。加熱調理をしたり、少量ずつ取り入れるのがコツです。
「呼吸」を整えることが最高の安定剤
胸のドキドキを感じたら、まずは「深呼吸」をしましょう。
吸うことよりも「長く吐くこと」を意識してください。長く息を吐くことで、緊張を司る交感神経から、リラックスを司る副交感神経へと自律神経のスイッチを切り替えることができます。これは、体が「落ち着いて!」とサインを出している時です。静かな場所で腰を下ろし、深くゆっくりとした呼吸を繰り返すだけで、心の安定を取り戻す助けになります。
【比較表】夏の動悸を防ぐ!OK・NG行動リスト
| カテゴリ | 〇 おすすめ(心を養い、リズムを整える) | × 要注意(エネルギーを消耗し、心を急かす) |
| 食事 | 蓮の実、ナツメ、苦味野菜などを食べる (消耗したエネルギーを補い、高ぶった心を穏やかにする) | カフェイン(コーヒー・エナジードリンク)の摂りすぎ (心臓を無理に刺激し、ドキドキを助長させてしまう) |
| 習慣 | 意識的に「長く吐く」深呼吸を行う (副交感神経を優位にし、心拍数を落ち着かせる) | 予定を詰め込み、常に追い立てられるように過ごす (精神的な緊張が続き、心が休まる暇がなくなる) |
| 水分 | 常温の麦茶や、ナツメ茶をこまめに飲む (胃腸を冷やさず、心と体に必要な潤いを届ける) | 冷たいジュースやアルコールのがぶ飲み (胃腸が冷えてエネルギーが作られず、心臓に負担がかかる) |
夏の動悸に関するよくある質問(FAQ)
ドキドキして眠れない時は、どうすれば良いですか?
心を落ち着かせる「安神(あんしん)」の食材を試してみてください。
夜の胸の高鳴りは、血(栄養)が不足して精神が浮ついていることが多いです。寝る前に、温かいナツメ茶を飲んだり、リラックスできる音楽を聴いたりして、副交感神経を優位にしましょう。もし長引くようなら、体が休息を求めているサインですので、無理をせずお早めにご相談ください。
カフェインをやめた方が良いですか?
症状が気になる時は、しばらく控えることをおすすめします。
コーヒーやエナジードリンクに含まれるカフェインは、心臓の拍動を強くし、交感神経を刺激します。気になる時期は、カフェインレスの飲み物や、心を整えるハーブティーなどに置き換えてみてください。
漢方はどのくらいで体質が整いますか?
人によって異なりますが、まずは心の落ち着きから変化を感じる方が多いです。
漢方は、あなたの「心(気・血・陰)」を補い、土台を立て直すサポートをします。焦らず、ご自身の体調を観察しながら続けていくことで、「ドキドキしにくくなった」「よく眠れるようになった」といった良い変化の積み重ねが、長期的な体質改善へと繋がっていきます。
まとめ:心を養い、穏やかなリズムを取り戻す夏を
「ドキドキして、なんだか落ち着かない…」
その動悸は、過酷な夏の暑さと発汗によって、あなたの「心」という大切なエネルギーの貯蔵庫が消耗し、バランスを崩してしまったサインかもしれません。
まずは、苦味や滋養のある食材で心を養い、深呼吸を大切にするという日々の養生からスタートし、漢方の視点を取り入れて内側からしっかりとエネルギーを補うことで、暑い夏でも穏やかで軽やかな体の土台を作ることができます。
「動悸が気になり、仕事や家事に集中できない」「毎年夏は心が落ち着かない」という方は、ぜひ太陽堂までお気軽にご相談ください。お一人おひとりの体質に合わせた、無理のない養生法をご提案いたします。
関連ページ
太陽堂では、動悸や心のお悩みだけでなく、心と体の様々なお悩みに対する漢方サポートを行っております。気になる症状がございましたら、以下のページもぜひご覧ください。
太陽堂の特徴
”当薬局のHPをご覧いただき、ありがとうございます。
私たち太陽堂は「一人でも多くの方の笑顔を見る為に」という思いのもと開局しました。
漢方薬とお客様の出会いがお悩み、体質改善の一助になれれば幸いです。”
特徴その1.
当薬局では、お客様「ひとりひとりに合わせた漢方薬」をその場で調合いたします。
そのため初めてのご相談では、「約1時間~1時間半」ほど相談時間をいただいております。
(遠方のお客様や、お忙しいお客様へは配送の受付もしております。詳しくはお問合せください)
特徴その2.
お作りする漢方薬は、国内外から厳選した生薬の力を、余すことなくお客様に届けるため
「煎じ薬」をお勧めしております。
特徴その3.
当薬局は漢方専門の薬剤師が「得意とする専門分野」にわかれて日々研鑽しています。
お客様の健康を第一に考え、漢方の勉強会なども積極的に開催しております。
記事作成者 薬剤師 前原 信太郎

実績:伝統漢方研究会 2017年・2021年・2025年 学術発表
沖縄で開業医をしていた祖父と薬の話しをしていた事から薬剤師の道を目指すように。
調剤薬局の薬剤師として6年間勤務。
漢方の勉強をして、より患者さんの治療の選択肢の幅を広げたいという思いから「漢方の道」に。
調剤薬局も経験している為、西洋学の知識も勉強を積み今に至ります。
記事作成者 薬剤師 椙田 彩純

担当疾患;循環器、身体の痛み
臨床検査技師の両親の影響で、幼い頃から医療に関心を持つ。
大学卒業後、病院薬剤師として勤務。
対症療法が中心の現場で、繰り返す入退院や長期投薬を目の当たりにし、「もっと力になれる方法はないか」と模索する中で漢方と出会う。
現在は漢方の持つ幅広さと可能性に魅了され、一人ひとりの体質に寄り添った根本改善を追求している。















