
「熱中症予防のために毎日たくさん水を飲んでいるのに、なぜか体がだるい…」
「冷たいお茶をゴクゴク飲んだ後、お腹がチャプチャプして食欲がわかない…」
「しっかり水分補給しているはずなのに、夕方になると足がパンパンにむくむ…」
連日の猛暑の中、「こまめな水分補給」は命を守るための鉄則です。しかし、その「飲み方」を一歩間違えると、かえって体に大きな負担をかけ、夏バテや胃腸の不調、ひどいむくみを引き起こす原因になってしまうことをご存知でしょうか。
「とりあえずたくさん飲めば安心」と、冷たい水を一気に流し込んでいると、体の中の巡りはどんどん悪くなり、せっかく摂った水分が細胞に届かず「ただの不要な水」として停滞してしまいます。
今回は、夏のだるさやむくみを招く間違った水分補給のメカニズムや、漢方における「胃腸(脾)」と水分の深い関係、そして体を内側から潤す正しい飲み方について、太陽堂の薬剤師が詳しく解説いたします。
【太陽堂が教える、夏の正しい水分補給の養生まとめ】
まずは、当薬局が考える夏の水分トラブル(だるさ・むくみ)へのアプローチを簡潔にまとめました。
- 漢方の見立て(原因):西洋医学では「水分の過剰摂取による胃液の希釈・消化不良や、電解質バランスの崩れ(水中毒)」とされる夏の水分トラブルですが、漢方では、真夏の「厳しい暑さ」を凌ぐための「冷たい水の大量摂取」が、消化吸収を担う胃腸(脾)を冷やして働きを低下させ、体内の「水分代謝のバランス」を崩して余分な水が滞る「水滞(すいたい)・脾虚(ひきょ)」の状態に注目して原因を探ります。
- アプローチ(対策):常温の麦茶やハトムギ茶など「胃腸に負担をかけず水はけを促す飲み物」を取り入れた日常のケア(養生)と、一人ひとりの体質に合わせたオーダーメイドの煎じ薬を通じて、夏の湿気や冷えに負けない「巡りの良い体の土台づくり」をサポートします。体が本来持つ水分を正しく吸収・排出する力を内側から引き出します。
- 今後のステップ(根本ケア):一時的な利尿剤などで無理に水分を出すだけでなく、根本的な原因(胃腸の弱りによる水分代謝の低下や、冷えやすい体質など)を見極めるため、まずはじっくりとご相談を重ね、季節の変化にも揺らぎにくい長期的な体質と向き合っていきます。
【薬剤師 林の視点】水分代謝のメカニズムと、西洋医学・漢方のアプローチ
こんにちは、薬剤師の林です。
夏は脱水症が怖い季節ですが、同時に「水の飲み過ぎ・飲み間違い」による不調も多発します。水は体にとって必要不可欠ですが、処理能力を超えると途端に「毒」に変わってしまうのです。
西洋医学の視点:胃腸機能の低下と電解質バランスの崩れ
私たちの体は、飲んだ水を胃や腸で吸収し、血液に乗せて全身に運びます。しかし、冷たい水を一度に大量に(がぶ飲み)摂取すると、胃腸が急激に冷やされ、消化酵素の働きがストップしてしまいます。また、胃酸が薄まることで消化不良を起こし、夏特有の「食欲不振」や「胃もたれ」「下痢」を引き起こします。
さらに、汗で塩分(ナトリウム)などのミネラルが失われている時に、水だけを大量に飲み続けると、血液中のナトリウム濃度が危険なレベルまで薄まることがあります。これが「水中毒」と呼ばれる状態で、強い疲労感や頭痛、めまい、ひどいむくみを引き起こします。
西洋医学的な視点では、脱水を防ぎつつ電解質を保つために経口補水液などを適切に活用し、胃腸の症状に対しては整腸剤や胃薬を用いて、コンディションが自然に整うのをサポートすることが推奨されます。
漢方の視点:胃腸(脾)がフリーズして起こる「水滞(すいたい)」
一方、漢方の視点では、飲んだ水を体内で利用できる形(津液:しんえき)に変え、全身に巡らせる役割を「脾(ひ=胃腸)」が担っていると考えます。脾は「温かい環境」を好み、「冷えと湿気」を極端に嫌います。うだるような暑い日に、氷たっぷりのジュースや水をゴクゴクと飲むと、脾は冷え切って完全にフリーズしてしまいます。脾が働かなくなると、飲んだ水は体に吸収されず、ただ胃の中にチャプチャプと溜まるか、足元などに下がって重だるい「むくみ」となります。このように、体の中に不要な水が滞っている状態を「水滞(すいたい)」または「水毒(すいどく)」と呼びます。水滞になると、体は重だるく、頭はスッキリせず、いくら水を飲んでも本当の意味で「潤った」状態にはなりません。
漢方では、このような状態に対し、冷え切った胃腸(脾)を温めて働きを助け、体内に停滞している余分な水をスムーズに排出させるアプローチ(健脾利水:けんぴりすいなどの考え方)を用いて、水分を正しく巡らせる健やかな体の土台づくりを内側からサポートしていきます。
【薬剤師 椙田の視点】体を潤し、巡りを整える「正しい水分補給」のコツ
薬剤師の椙田です。
熱中症を防ぐための水分補給は必須ですが、胃腸を労わりながら「正しく吸収させる」ことが何より大切です。日々の飲み方と、飲み物の選び方を少し変えるだけで、体の軽さが大きく変わります。
鉄則は「常温以上」を「こまめに一口ずつ」
胃腸をフリーズさせないための最大のポイントは、「温度」と「量」です。冷蔵庫から出したばかりの冷たい水は避け、できるだけ「常温」か、それ以上の温かい飲み物を選びましょう。そして、喉がカラカラになってから一気に飲むのではなく、「コップ半分の量を、こまめにゆっくりと飲む」のが正解です。点滴のように少しずつ体内に入れることで、脾(胃腸)に負担をかけずにスムーズに吸収させることができます。
「利水(りすい)」のお茶で、余分な水は出す
水分補給には、体内の水はけを良くして余分な水を排出する働き(利水作用)を持つお茶を選ぶのがおすすめです。
- おすすめの飲み物: 麦茶、ハトムギ茶、黒豆茶、とうもろこしのヒゲ茶 など。夏の定番である「麦茶」は、体にこもった熱を優しく冷ましながら潤いを補う、非常に理にかなった飲み物です。また、足のパンパン感が気になる時は、利水作用の高いハトムギ茶や黒豆茶を取り入れると、水滞の解消をサポートしてくれます。糖分の多いジュースや、利尿作用の強すぎるカフェイン飲料(アイスコーヒーなど)は、かえって体を乾かしたり胃腸を疲れさせたりするため、水分補給のメインには向きません。
食材から「食べる水分補給」を
水やお茶だけでなく、食事から水分を摂ることも非常に効果的です。
きゅうり、トマト、スイカなどの夏野菜には、たっぷりの水分とともにミネラルが含まれており、体に優しく吸収されます。また、温かいお味噌汁やスープは、胃腸を温めながら水分と塩分を同時に補給できるため、夏の朝食に最適なメニューです。
【比較表】夏の水分補給の正解!OK・NG行動リスト
| カテゴリ | 〇 おすすめ(巡りを整え、正しく潤す) | × 要注意(巡りを滞らせ、胃腸を弱らせる) |
| 温度と量 | 常温のお茶を、コップ半分ずつこまめに飲む (胃腸に負担をかけず、細胞の隅々までしっかり吸収させる) | 氷入りの冷水を、喉が渇いた時に一気飲みする (胃腸が急激に冷えてフリーズし、水が吸収されずに滞る) |
| 飲み物の種類 | 麦茶、ハトムギ茶、黒豆茶などのノンカフェイン (体を優しく潤し、不要な水分は利水作用でスムーズに出す) | 糖分の多いジュースや、アイスコーヒーの多飲 (血糖値の急上昇や、カフェインの利尿作用でかえって体が乾く) |
| 食事からの工夫 | 夏野菜や温かいお味噌汁から水分・塩分を摂る (胃腸を温めながら、ミネラルと水分をバランス良く補う) | 食事の最中に冷たい水を大量に飲みながら食べる (胃液が薄まり、消化不良を起こして夏バテの原因になる) |
夏の水分補給に関するよくある質問(FAQ)
熱中症予防にはスポーツドリンクが良いと聞きますが、毎日飲んでも良いですか?
炎天下での作業や激しいスポーツ時以外は、飲み過ぎに注意が必要です。
市販のスポーツドリンクには、想像以上の糖分が含まれています。涼しい室内にいる時や日常的な水分補給としてガブ飲みすると、糖分の過剰摂取で胃腸がもたれたり、血糖値が急上昇してかえってだるさを感じることがあります。普段は麦茶などを中心とし、大量に汗をかいた時のレスキューとして活用するのがおすすめです。
常温の水だと美味しくなくて飲めません。
レモンを絞ったり、風味のあるお茶に変えたりしてみてください。
どうしても冷たいものが飲みたい場合は、氷を入れず冷蔵庫で少しだけ冷やした状態にするか、口の中で少し温めてから飲み込むように工夫しましょう。また、常温の水にレモンの絞り汁を少し加えると、酸味が胃腸の働きを助け、さっぱりと飲みやすくなります。
お腹がチャプチャプ鳴る時は、どうすれば良いですか?
すでに「水滞」が起きています。温めて胃腸を休ませましょう。
お腹が鳴るのは、胃腸が水を処理しきれていないサインです。その時は無理に水を飲まず、温かいお茶(ほうじ茶など)を少量飲む程度にとどめ、お腹に手を当てたり腹巻をしたりして外側からも温めてください。胃腸の働きが戻るのを待つことが大切です。
まとめ:正しい水分補給で、だるさとむくみのない軽やかな夏へ
「水をしっかり飲んでいるのに、なぜか体がだるくてむくむ…」
その不調は、決してあなたの努力が足りないからではなく、「冷たい水のがぶ飲み」によって胃腸(脾)が悲鳴を上げ、体内の巡りが滞っているサインです。
飲む温度を常温にし、こまめに一口ずつ飲むという基本の生活養生からスタートし、漢方の視点を取り入れて内側からしっかりと「水はけ」と「胃腸の働き」を整えることで、過酷な夏でもだるさやむくみに悩まされない、健やかな体の土台を作ることができます。
「むくみがひどくて足が痛い」「夏バテで食欲がなく、胃腸の調子がずっと悪い」という方は、ぜひ太陽堂までお気軽にご相談ください。お一人おひとりの体質に合わせた、無理のない養生法をご提案いたします。
関連ページ
太陽堂では、水分のトラブルや胃腸のお悩みだけでなく、心と体の様々なお悩みに対する漢方サポートを行っております。気になる症状がございましたら、以下のページもぜひご覧ください。
太陽堂の特徴
”当薬局のHPをご覧いただき、ありがとうございます。
私たち太陽堂は「一人でも多くの方の笑顔を見る為に」という思いのもと開局しました。
漢方薬とお客様の出会いがお悩み、体質改善の一助になれれば幸いです。”
特徴その1.
当薬局では、お客様「ひとりひとりに合わせた漢方薬」をその場で調合いたします。
そのため初めてのご相談では、「約1時間~1時間半」ほど相談時間をいただいております。
(遠方のお客様や、お忙しいお客様へは配送の受付もしております。詳しくはお問合せください)
特徴その2.
お作りする漢方薬は、国内外から厳選した生薬の力を、余すことなくお客様に届けるため
「煎じ薬」をお勧めしております。
特徴その3.
当薬局は漢方専門の薬剤師が「得意とする専門分野」にわかれて日々研鑽しています。
お客様の健康を第一に考え、漢方の勉強会なども積極的に開催しております。
記事作成者 薬剤師 林 泰太郎

実績:伝統漢方研究会 2015~2017年・2019年・2020年・2022年・2025年 学術発表
調剤薬局で3年間勤め、西洋の薬だけでは治療が難しい病気の壁に直面。
・「治療の難しい病気をなんとか治したい。」
・「ひとりでも多くの患者さんを笑顔にしたい。」
という想いから漢方の道へ。
漢方薬局で3年間修業をして、2015年 『漢方薬局 太陽堂』を立ち上げ。
開局10年を迎えた今も1ヶ月の平均来局数は900名を超え、お客様にご愛顧いただいている太陽堂の漢方薬剤師です。
記事作成者 薬剤師 椙田 彩純

担当疾患;循環器、身体の痛み
臨床検査技師の両親の影響で、幼い頃から医療に関心を持つ。
大学卒業後、病院薬剤師として勤務。
対症療法が中心の現場で、繰り返す入退院や長期投薬を目の当たりにし、「もっと力になれる方法はないか」と模索する中で漢方と出会う。
現在は漢方の持つ幅広さと可能性に魅了され、一人ひとりの体質に寄り添った根本改善を追求している。














