
「何の前触れもなく、急に心臓がバクバクと速く打ち出して息苦しくなる」
「人前や緊張する場面になると、ドキドキが止まらずパニックになりそうになる」
「病院の心電図検査では異常なしと言われた。でも、あのバクバクがいつまた来るかと思うと怖くて外出が億劫だ」
「頻脈(ひんみゃく:脈が通常より異常に速くなる状態)」のご相談で最も多いのは、こうした「発作的に突然バクバクするタイプ」と「緊張などのストレスをきっかけに速くなるタイプ」の2つです。
命に関わるような大きな病気が見つからなくても、「またあの恐怖に襲われるかもしれない」という不安(予期不安)は、日常生活の質を大きく下げてしまいます。
この記事では、頻脈に悩む方が一番最初に確認しておくべき「隠れた原因」の除外と、突き上げるような心臓のドキドキを漢方でどう穏やかに整えていくか、そして発作が来たときの「その場のしのぎ方」について、薬剤師の視点から詳しく解説いたします。
【この記事の結論:「発作的な頻脈・ドキドキ」に対する漢方の考え方】
- 不調の正体(原因): 西洋医学では交感神経の過剰な興奮や甲状腺の機能異常などとされますが、漢方ではストレスで滞ったエネルギーが下から上へ急激に突き上げる「気の上衝(きの上しょう)」や「心(しん)」を養う血の不足が原因と考えます。
- 漢方の解決策: まず病院で隠れた疾患(甲状腺異常や貧血等)がないかを確認したうえで、漢方で過剰な「気の上昇」を鎮め、精神を落ち着かせる生薬を組み合わせることで、パニックになりにくい安定した自律神経の土台を作ります。
- 対象となる主な疾患・お悩み: 発作性頻拍、心臓神経症、パニック障害に伴う動悸、自律神経失調症、緊張による過度な頻脈
※頻脈を含む脈の乱れに対する太陽堂の具体的な漢方アプローチについては、こちらの総合ページもあわせてご覧ください。
まず血液検査を——頻脈の裏に「隠れた原因」があることも
脈が速くなる不整脈(頻脈)のご相談をお受けする際、太陽堂では必ず「病院で血液検査や心電図の検査を受けていらっしゃいますか?」と確認しています。
というのも、脈が異常に速くなる背景には、心臓そのものの異常(発作性上室性頻拍や心房細動など)以外にも、甲状腺の働きの変化(バセドウ病など)や重度の貧血といった「隠れた要因」が潜んでいる可能性を捨てきれないからです。
西洋医学的な検査(心電図・ホルター心電図・血液検査)で「器質的な異常(心臓の形や血液の数値に問題がないか)」をしっかりと確認しておくことは、安全に漢方の体質ケアへ進むための大切な第一歩です。
【要注意】こんな時は迷わず循環器内科へ
- 強い胸の痛みや締め付けられるような圧迫感を伴う
- 頻脈と同時に目の前が真っ暗になって失神した
- 脈がバラバラに乱れ(不整脈)、冷や汗や息苦しさが続く
このような症状がある場合は、狭心症や心筋梗塞、危険な不整脈の可能性があります。漢方相談の前に、まずは至急、循環器内科を受診してください。
病院で「異常なし」と言われた場合の西洋医学的アプローチ
病院の検査で「心臓や甲状腺に異常はありません、自律神経の乱れかストレスでしょう」と診断された場合、以下のようなお薬が処方されることが一般的です。
- 抗不安薬(安定剤): ソラナックス、デパスなど。脳の過剰な興奮を抑え、緊張による動悸を和らげます。
- β遮断薬(ベータブロッカー): メインテート、インデラルなど。交感神経の働きをブロックし、心臓の過剰な拍動を直接抑えて脈をゆっくりにします。
これらのお薬は、「今起きている激しい動悸を静める」ために非常に有効です。しかし、根本的な「ストレスに過敏に反応してしまう体質」そのものが変わるわけではないため、お薬を手放せなくなってしまうことに不安を感じて漢方相談に来られる方が大勢いらっしゃいます。
【比較表】西洋医学と漢方薬(太陽堂)のアプローチの違い
| 比較項目 | 西洋医学(病院のアプローチ) | 漢方薬(太陽堂の体質ケア) |
| 主な目的 | 危険な疾患の除外診断と、交感神経の興奮を薬で直接ブロックする | 動悸の根本原因である「気の上昇」を鎮め、自律神経の土台を整える |
| 得意なこと | 発作時の即効的な鎮静、ホルター心電図等による客観的な病態診断 | 検査で「異常なし」の動悸の緩和、予期不安の軽減、体質からの安心感 |
| 代表的な手段 | β遮断薬、抗不安薬、抗不整脈薬、(重症例の)カテーテルアブレーション | 降気薬(気を下げる生薬)、安神薬(精神を安定させる生薬)の処方 |
| お互いの関係性 | 安全を確認し、急場の発作を抑え込む「治療の要」 | 発作が起きにくい心と身体の余裕を内側から育てる「土台作り」 |
【薬剤師コラム①】突き上げるバクバクの正体は「気の上衝(じょうしょう)」
担当薬剤師:椙田 彩純
病院の検査で大きな異常がないのに起こる発作的な頻脈やパニックのような動悸を、漢方では「気(生命エネルギー)が下から突き上げるように昂(たかぶ)った状態」と捉えます。
通常、気は全身を穏やかに巡っているものですが、過度な緊張や強いストレス、精神的なショックなどをきっかけに、体のエネルギーが一気に頭や心臓へ向かって駆け上がり、大暴れしてしまうことがあります。これを東洋医学で「気の上衝(きの上しょう)」と呼びます。
お腹の下の方から「ウワッと何かが突き上げてくる感覚」の直後に心臓がバクバクと速く打つのは、この気の上衝の典型的なサインです。
そこで太陽堂では、「心臓を直接どうにかする」というよりは、「心臓を急かしている過剰なエネルギーの昂りを鎮め、下に降ろす」方向と、「精神を落ち着かせる」方向を組み合わせて漢方を選定します。
この「突き上げてくる発作」の性質は、パニック障害の発作にとても近いものです。気の上衝を静める漢方の考え方を用いながら、発作の起きにくい体質へと導いていきます。
漢方から見た「頻脈が起きやすい体質」3つのタイプ
太陽堂では、頻脈や動悸の背景にある体質を主に以下の3つに分類してアプローチします。
① ストレスで気が突き上げるタイプ(気の上衝・肝気鬱結)
- 主な症状: 緊張する場面で急にバクバクする、お腹から胸へ突き上げるような動悸、イライラ、のぼせ。
- 漢方的見解: ストレスにより自律神経(肝)が緊張し、滞った気が爆発するように上へ突き上げて心臓を煽っている状態です。
- アプローチ: 上に昇った「気」を下に降ろす生薬(桂皮など)や、緊張を解きほぐす生薬(柴胡など)を用いて気の巡りを穏やかに整えます。
② 心臓を休ませる栄養が不足しているタイプ(心血虚:しんけっきょ)
- 主な症状: 疲れた時や夜間に動悸がする、不安感が強い、眠りが浅い、顔色が青白い。
- 漢方的見解: 精神と血脈を司る「心(しん)」に十分な栄養と潤い(血)が届いておらず、心臓がオーバーヒートして空回りしている状態です。
- アプローチ: 心に栄養を補給し、精神を安定させる生薬(酸棗仁、竜眼肉、茯苓など)を用いて、安心感の土台を養います。
③ 水の巡りが悪く心臓を圧迫しているタイプ(水毒・痰飲)
- 主な症状: めまいや立ちくらみを伴う動悸、胃のあたりでポチャポチャ音がする、身体がむくむ。
- 漢方的見解: 胃腸などの働きが弱り、体内に溜まった余分な水分(水毒)が気の上昇とともに胸へ押し上げられ、心臓の働きを邪魔している状態です。
- アプローチ: 不要な水分の排出を促し、胃腸を温めて動悸を鎮める生薬(半夏、茯苓、桂皮など)を組み合わせます。
発作が来たときの、その場のしのぎ方(セルフケア)
「またバクバクが来るかもしれない」という不安(予期不安)は、さらに自律神経を過敏にしてしまいます。いざ発作が始まったときにパニックにならないための、簡単な対処法を知っておきましょう。
① 「一度座って、吐く息を長くする深呼吸」
バクバクが始まったときに店頭で必ずお伝えしているのは、「まずは安全な場所に座ること」です。
立ったまま「どうしようどうしよう」と慌てて動き回ると、交感神経がさらに刺激され、昂った「気」はどんどん上へ駆け上がってしまいます。
まずは腰を下ろして身体を安定させ、目を閉じて「吸う息の2倍の時間をかけて、細く長く息を吐き出す」深呼吸をゆっくりと繰り返します。上に駆け上がったエネルギーを、長い呼吸とともに下腹部(丹田)へスーッと降ろしていくイメージを持つことが大切です。
② カフェインと睡眠不足を避ける
コーヒーやエナジードリンクに含まれるカフェインは、交感神経をダイレクトに刺激して頻脈の引き金となります。心臓が過敏になっている時期は控えましょう。また、睡眠不足は「心」の栄養を枯渇させる最大の敵です。夜はしっかり休むことを最優先にしてください。
【薬剤師コラム②】「異常なし」は、漢方ケアへ進むための前向きなサインです
担当薬剤師:林 泰太郎
頻脈でご来店される患者さまの多くが、「病院で色々と検査をしたけれど、心電図も血液検査もすべて『異常なし』と言われてしまい、どうしたらいいか分からず途方に暮れています」とおっしゃいます。
つらい症状があるのに原因が分からないのは、本当に不安で恐ろしいですよね。
しかし東洋医学の立場からお伝えすると、「大きな器質的疾患(心臓病など)がないということが西洋医学で証明されている」ことは、漢方による体質ケアへ安心して進んでよいという大変前向きなサインなのです。
「異常がない=治療法がない」ではありません。「心臓の形や血管に問題はないけれど、それを動かす自律神経のスイッチが入りやすくなっているだけ」と考えれば、そのスイッチの過敏さを和らげることは漢方薬が最も得意とする領域です。
検査結果をお持ちいただければ、西洋医学的な安全を確認した上で、あなたに最適な漢方アプローチを見立てることができます。ぜひ安心してご相談ください。
【サポート実例】太陽堂での体質改善エピソード
【動悸・頻脈】60代女性|2ヶ月で頻脈が減少し、5ヶ月で安定
1年前から突然のバクバクとした動悸と、体調が悪いと心臓がキュッとなる感覚に襲われるようになり、病院で「自律神経失調症」と診断されました。心電図等の検査では異常がなく、抗不安薬(安定剤)を処方されましたが体調が優れず、ご来店されました。
お身体の状態を「自律神経の過剰な緊張(気滞)」と「水分・エネルギーの滞り」と見立て、①自律神経の昂りを静める漢方薬 ②気や水の流れを整える漢方薬 の2種類をお渡ししました。
- 2ヶ月後: 突然襲ってくる頻脈・動悸の回数が明らかに減り、心臓がキュッとなる不快感も和らいできました。
- 4ヶ月後: 動悸の症状はほぼ感じなくなり、「以前より夜ぐっすり深く眠れるようになりました」と睡眠の質の向上も実感。
- 5ヶ月後: 漢方薬を減量しても症状はほぼなく、落ち着いた状態が続いています。
※効果の感じ方や必要な期間には個人差があります。
よくあるご質問(FAQ)
緊張するとすぐに脈が速くなるのですが、これは病気ですか?
緊張や運動で一時的に脈が速くなること自体は、身体の正常な防衛反応(交感神経の働き)です。
しかし、その反応が人よりも過剰に強く出すぎてパニックのようになったり、緊張の場面が終わっても長時間バクバクが収まらなかったりする場合は、自律神経が過敏に昂りやすい体質のサインと言えます。漢方で体質の土台を整えることで、同じ緊張する場面に直面しても、反応の大きさを穏やかに変えていくことができます。
病院の抗不安薬(安定剤)やβ遮断薬と一緒に漢方薬を飲んでも大丈夫ですか?
はい、基本的には安心して併用いただけます。
病院のお薬は「今起きている発作を直接的に抑え込む」役割、漢方薬は「発作が起きにくいリラックスした身体の土台を作る」役割です。それぞれの強みを活かして併用することが可能です。お使いのお薬手帳をぜひご提示ください。
どのくらいの期間、漢方薬を続ければ良いですか?
お身体の状態によりますが、まずは3ヶ月程度が一つの目安となります。
「発作の回数が減ってきた」「発作が来ても以前より軽く、早く収まるようになった」という形で少しずつ変化が現れることが多いです。自律神経の癖を整えるには時間がかかりますので、焦らずじっくりと取り組むことをお勧めします。
まとめ|「また来るかも」という予期不安に振り回されない体は作れる
「また急にあの恐ろしいバクバクが来るかもしれない……」
発作的な頻脈の一番つらいところは、この「いつ来るか予測できない恐怖(予期不安)」によって、外出や人前に出ることが制限されてしまうことです。
- まず病院(循環器科等)の検査で隠れた心臓疾患や甲状腺の異常がないかを確認する
- 発作が起きたら「一度座って、長く息を吐く深呼吸」で気を下へ降ろす
- 漢方で「気が突き上がりやすい体質」そのものを穏やかに整えていく
この3つのステップを踏み、発作の回数と大きさが少しずつ減っていけば、「また来るかも」という不安も自然と薄れていきます。
「バクバクに怯えずに、もう一度自信を持って人前に立てるようになりたい」
「検査は異常なしだったからこそ、体質の根本から見直したい」
そんなお悩みを抱えている方は、どうぞ一人で我慢せず、お気軽に太陽堂へご相談ください。
病院の検査結果(血液検査や心電図の控え)をお持ちいただければより詳しくお話しできます。専門の薬剤師があなたの「昂りのタイプ」を丁寧に見極め、落ち着いた穏やかな毎日を取り戻すためのケアを全力でサポートいたします。
関係性の深い病気;ご相談も多数いただいております。
頻脈だけでなく、心臓や自律神経に関するさまざまなお悩みについても、太陽堂では数多くのご相談をいただいております。気になる症状がある方は、以下のページもあわせてご覧ください。
心臓神経症検査で異常がないのに、動悸や胸の違和感・不安が続いている方に。
パニック障害突然の強い動悸と「また起きたら…」という予期不安にお悩みの方に。発作的な頻脈と性質が近いお悩みです。
自律神経の乱れ脈の速さのほかに、不眠・だるさなど検査で異常のない不調が重なっている方に。
太陽堂の特徴
”当薬局のHPをご覧いただき、ありがとうございます。
私たち太陽堂は「一人でも多くの方の笑顔を見る為に」という思いのもと開局しました。
漢方薬とお客様の出会いがお悩み、体質改善の一助になれれば幸いです。”
特徴その1.
当薬局では、お客様「ひとりひとりに合わせた漢方薬」をその場で調合いたします。
そのため初めてのご相談では、「約1時間~1時間半」ほど相談時間をいただいております。
(遠方のお客様や、お忙しいお客様へは配送の受付もしております。詳しくはお問合せください)
特徴その2.
お作りする漢方薬は、国内外から厳選した生薬の力を、余すことなくお客様に届けるため
「煎じ薬」をお勧めしております。
特徴その3.
当薬局は漢方専門の薬剤師が「得意とする専門分野」にわかれて日々研鑽しています。
お客様の健康を第一に考え、漢方の勉強会なども積極的に開催しております。
記事作成者 薬剤師 椙田 彩純

担当疾患;循環器、身体の痛み
臨床検査技師の両親の影響で、幼い頃から医療に関心を持つ。
大学卒業後、病院薬剤師として勤務。
対症療法が中心の現場で、繰り返す入退院や長期投薬を目の当たりにし、「もっと力になれる方法はないか」と模索する中で漢方と出会う。
現在は漢方の持つ幅広さと可能性に魅了され、一人ひとりの体質に寄り添った根本改善を追求している。
記事作成者 薬剤師 林 泰太郎

実績:伝統漢方研究会 2015~2017年・2019年・2020年・2022年・2025年 学術発表
調剤薬局で3年間勤め、西洋の薬だけでは治療が難しい病気の壁に直面。
・「治療の難しい病気をなんとか治したい。」
・「ひとりでも多くの患者さんを笑顔にしたい。」
という想いから漢方の道へ。
漢方薬局で3年間修業をして、2015年 『漢方薬局 太陽堂』を立ち上げ。
開局10年を迎えた今も1ヶ月の平均来局数は900名を超え、お客様にご愛顧いただいている太陽堂の漢方薬剤師です。













