「病院に行くたびに利尿剤がだんだん増えていくのが不安。このまま増え続けるのだろうか…」
「利尿剤のせいでトイレが近くて、夜中に何度も起きる。日中もふらつきがあって、少し薬を減らせないか先生に聞きたいけれど、言い出しにくい」
「利尿剤を毎日飲んでいるのに、夕方になると足がパンパンにむくんで重く、息切れがする…」
心不全の治療で使われる利尿剤(フロセミド、ラシックスなど)は、体に溜まった余分な水を外へ出して心臓と肺の負担を減らす、命を守るための大切なお薬です。自己判断で絶対にやめたり減らしたりしてはいけません。
そのうえで、新宿の漢方薬局「太陽堂」では、病院のお薬の「利尿」と、漢方薬の「利水(りすい)」は根本的に違うものだと患者さまにお伝えしています。
このページでは、その違いと、「利尿剤をこれ以上増やしたくない・減らしたい」と感じている方へ向けて、身体の土台から立て直す漢方の考え方をご説明します。
(※心不全そのものの全体像・初期〜中期の症状・病院治療については、記事末尾でご案内する本体ページも合わせてご覧ください。)
【この記事の結論:利尿剤と漢方の「利水」に対する考え方】
- むくみ・息切れが起こる理由: 西洋医学では心臓のポンプ機能の低下により血液が滞り、血管の外に水分が漏れ出して「むくみ・息切れ」が起こるとされます。漢方では、心臓を動かすエネルギー不足(心気虚)と、全身の水分代謝の滞り(水毒・痰飲)、そして老廃物を排出する腎の力の低下が背景にあると考えます。
- 漢方の考え方: 病院の利尿剤で「出口」を開けて命を守りながら、漢方で①心臓のエネルギーを補う ②滞った水を全身でうまく巡らせる(利水) ③腎臓の負担を助ける——という組み立てで、水が滞りにくい体の土台を整え、むくみと息切れの波を穏やかにします。減薬の判断は必ず主治医の先生が行います。
- 対象となる主なお悩み: 慢性心不全(初期〜中期)、利尿剤が増えていく不安がある方、夜間の頻尿・ふらつき・こむら返り等の副作用に悩む方、薬を飲んでいても残るむくみと息切れ、腎機能の低下(クレアチニン値)が気になり始めた方
利尿剤の役割と、「増えていく」不安
心不全では、心臓のポンプの力が落ちることで全身の血流が滞り、行き場を失った水分が体に溜まり、足のむくみや肺に水が溜まる息切れ(労作時呼吸困難)が起こります。
病院で処方される利尿剤は、その余分な水を尿として外へ出し、心臓と肺の負担を軽くするお薬です。
一方で、利尿剤を毎日飲み続ける中で、「トイレが近すぎて外出しにくい」「夜中に何度も起きて眠れない」「日中ふらつく(血圧低下・脱水)」「足がつる(低カリウム血症)」「常にだるい」といったお悩みが出てくることもあります。
太陽堂の店頭で患者さまのお話を伺っていると、利尿剤のトイレの回数そのもので困って来られる方は、実はそこまで多くありません。
むしろ、心不全が進んで利尿剤の量が増えてくるにつれて、「腎臓の数値(クレアチニンなど)が悪くなってきた」と指摘され、「このまま利尿剤が増え続けたら、私の腎臓はどうなってしまうのか」という『先の見えない不安』をご相談される方が多いのです。
その不安に対して、漢方薬には西洋医学とは「別の角度」からできることがあります。
※安静にしていても息が苦しい、横になれないほど息苦しい(起座呼吸)、胸に強い痛みや圧迫感がある、数日で急に体重が増えた、といった場合は心不全が急に悪化している可能性があります。漢方薬に頼らず、すぐに医療機関(循環器内科や救急)を受診してください。
病院での検査と治療(西洋医学の役割)
病院(循環器内科)では、心電図、胸部X線(レントゲン)、心エコー(超音波)検査に加え、血液検査で心臓への負担を示す数値(BNPやNT-proBNP)と腎臓の数値(eGFR・クレアチニン)を確認します。
治療は、余分な水を減らして心臓の負担を取る「利尿薬(ループ利尿薬など)」、血圧を下げて心臓の抵抗を減らす「降圧薬(ACE阻害薬、ARB)」、疲れた心臓を休ませて守る「β遮断薬」などを組み合わせます。近年ではSGLT2阻害薬なども使われます。
これらは症状をコントロールし、命を守り、心不全の悪化(入院)を防ぐために欠かせないお薬です。漢方薬は、これらを「置き換える(やめさせる)」ものではなく、「並走して土台を支える」ものです。
「利尿」と「利水」は何が違うのか
店頭でこの一番大切な違いを聞かれたとき、薬剤師はこうお伝えしています。
「西洋医学の利尿は、『出口を開けて』水を外に出すこと。漢方薬の利水は、身体の中に滞っている水を『うまく巡らせて』、行くべき所へ流すこと。根本的な違いがあります」
【比較表】病院の利尿剤(利尿)と漢方薬(利水)の違い
| 比較項目 | 病院の利尿剤(利尿) | 漢方薬の利水(りすい) |
| 働き | 腎臓に直接働きかけて、水を尿として体の外に出す | 胃腸や腎臓の働きを助け、全身に滞っている水を巡らせて流す |
| 得意なこと | 溜まった水を短時間で減らし、心臓と肺の負担を軽くする | 水が滞りにくい体の土台を整え、むくみ・息切れの波を穏やかにする |
| 気になる点 | 出しすぎると脱水・ふらつき・こむら返り・腎負担が出ることがある | 効き方は穏やかで、効果実感にまず3ヶ月単位の期間が必要 |
| 両者の関係 | 命と心臓を守るための「治療の主役」 | 利尿剤の代わりにはならない。並走して「水はけの土台」を作る相棒 |
漢方では、心不全のむくみや息切れを「水毒(すいどく:水の滞り)」と「心気虚(しんききょ:心臓を動かすエネルギーの不足)」が重なった状態ととらえ、この両方を整えます。
【薬剤師コラム①】「利尿剤を減らせますか?」と聞かれたら
担当薬剤師:前原
「漢方薬を飲めば、この利尿剤を減らせますか?」というご質問に、店頭では「できますよ」とお答えしています。
ただし、これには守っていただきたい『順番』があります。「漢方薬が利尿剤を減らす」のではありません。漢方薬でむくみや息切れが落ち着いてきたという『結果』を見て、主治医の先生が「調子がいいから利尿剤を少し減らしましょうか」と判断する。これが正しい順番です。
利尿剤は、言わば「ダムの放流ゲート(出口)を開けて水を出す」お薬です。病院のお薬がゲートを開けてくれている間に、漢方薬で「そもそもダムに水が溜まりにくい(滞りにくい)体質」を整えていく。そうして体の水はけが良くなってくると、主治医の先生の判断で薬の量が調整されていくことがあります。
だからこそ、副作用が辛いからといって、自己判断で利尿剤を減らすこと(飲むのをサボること)は命に関わるため、しないでください。病院の検査結果(BNP・腎臓の数値・体重)を一緒に見ながら、「そろそろ先生に減薬を相談してみてもいいかもしれませんね」というタイミングを、私たちからもお伝えします。
自宅でできるセルフケア・食養生
漢方薬の服用と併せて、日常生活でも以下の点に気をつけることで、水の巡りが整いやすくなります。
- 塩分と水分の制限は「医師の指示」を守る: 病院から1日の水分制限や塩分制限(1日6g未満など)の指示がある場合は、漢方薬を飲んでいても必ずそのまま守ってください。
- 体を冷やさない: 冷えは血流と水の巡りを滞らせます。足元や首まわりを温かく保ち、お風呂は心臓に負担のかからない「ぬるめのお湯(半身浴など)」にしてください。
- 毎朝、同じ時間に「体重」と「むくみ」を記録する: 数日で1〜2kgの急な体重増加は、太ったのではなく「水が溜まっている(心不全の悪化)」サインです。体重手帳の記録は主治医の先生にも、私たち漢方薬局にとっても、お薬を調整するための大切な情報になります。
3ヶ月で何を目安に見るか・店頭の記録
漢方は「魔法」ではないため、飲んで翌日にむくみが消えるわけではありません。
太陽堂では「まず3ヶ月」を一つの単位として、①むくみ(夕方の足のすねの凹み具合、朝の顔の腫れ)と ②息切れ(同じ距離や階段を歩いたときの苦しさ)の2つを中心に、夜のトイレ回数や毎朝の体重の推移も合わせて一緒に確認します。
変化が出てきたら、その手帳の記録を持って主治医の先生に相談していただきます。
【改善実例】心不全と息苦しさで服用を始めた記録(経過中)
太陽堂に実際にご相談に来られた方の実例をご紹介します。
【心不全による胸水と息苦しさ】90代 女性|1ヶ月で息苦しさが軽減(継続中)
【ご相談時の状態】 1年ほど前に息苦しさが気になって病院を受診し、心不全(胸水)と診断された方です。病院の利尿剤等を飲んでいますが、息苦しさや身体の重だるさが抜けないため、少しでも生活を楽にしたいとご相談に来られました。
【太陽堂の提案】 ご高齢による心臓のエネルギー不足(心気虚)と水分の停滞(水毒)ととらえ、①心臓の働き(気)を助ける漢方薬 ②全身の水の巡りを整える漢方薬 を組み合わせてお出しし、現在も調整しながら服用を続けておられます。
- 1ヶ月後: 「以前より息苦しさが少し和らいできた気がする」との変化がありました。
- その後: ご高齢のため急な変化は追わず、病院の治療と並走しながら、むくみや息切れの「波」を穏やかにするための土台づくりとして、現在も漢方薬の服用を継続されています。
(※このほか、頑固な足のむくみと疲労感の60代女性、階段での息切れと胸のつかえの70代男性の記録は、記事末尾でご案内する本体ページでご紹介しています。)
※効果の感じ方や必要な期間には個人差があります。症状の改善を保証するものではありません。お薬の変更は主治医の判断で行ってください。
【薬剤師コラム②】腎臓の数値が気になり始めたら
担当薬剤師:林
心不全が進んで利尿剤の量が増えてくると、血液検査で「クレアチニンの数値が少し悪くなってきたね」と主治医から言われ、不安を覚える方が多くいらっしゃいます。
実は、心臓と腎臓は、体の水を巡らせる仕事を協力して分担している、いわば「セットの臓器(心腎連関)」だからです。
利尿剤で腎臓を働かせ続けると、どうしても腎臓自体が疲れてしまいます。
しかし、漢方薬の「利水」は、腎臓に「もっと水を出せ」と鞭を打つものではありません。胃腸を温めて身体全体で水を巡らせる力を底上げし、腎臓一箇所にかかる負担を全身で分け合うという考え方です。
「腎臓の数値が気になり始めた」という段階で早めにご相談いただけると、まだ身体に水の巡りを整える余地が残っていることが多いです。最新の検査結果(血液検査の紙)をお持ちのうえ、お気軽にご相談ください。
よくあるご質問(FAQ)
利尿剤やβ遮断薬など、病院でたくさんの薬を飲んでいます。漢方薬は併用できますか?
はい、基本的には併用していただけます。
病院のお薬は心臓の負担を減らし、命を守るために重要です。漢方薬は水の巡りと体の土台を整える「サポート役」です。ご相談の際は必ずお薬手帳をお持ちいただき、飲み合わせを確認したうえで漢方をお作りします。
漢方薬を飲めば、利尿剤を減らせますか?
店頭では「できますよ」とお伝えしています。ただし、減らす判断をするのは漢方薬ではなく『主治医の先生』です。
漢方でむくみや息切れが落ち着いてきたという「結果」と、検査の数値(BNP等)を見て、主治医の先生が減薬を調整します。自己判断で減らすことは心不全の悪化を招くため、絶対にしないでください。
漢方薬で心臓の機能は元に戻りますか? 病院の薬はいつかやめられますか?
薬剤師として、「落ちた心臓の機能が元に戻る」「病院の薬をやめられる」とは申し上げられません。
漢方薬が担うのは、水の巡りと体の土台を整え、むくみや息切れの波を穏やかにして「今の生活を楽にすること」です。心不全治療の主役は病院のお薬であり、漢方はそれを支える立場です。
どのくらいの期間で変化を感じられますか?
まずは「3ヶ月」を一つの単位として、夕方の足のむくみと、階段等の息切れの変化を一緒に確認します(※個人差があります)。
心不全は長く付き合っていくご病気ですので、一喜一憂せず、半年から1年単位で、病院の治療と並走しながらじっくり土台を整えていきます。
費用はどのくらいかかりますか?
漢方薬の費用は、週5,000円前後〜(月2万円前後〜)が目安です。相談料は無料です。
体質や症状の組み合わせによって漢方の内容が変わりますので、お作りする前に必ず金額をお伝えします。ご相談時にご予算も含めて率直にお伝えください。無理なく続けられる形を一緒に考えます。
まとめ|出口を開ける薬と、流れを整える漢方
「このまま利尿剤が増え続けたら、自分の腎臓も心臓もどうなってしまうのか」
その終わりの見えない不安に、今日からできることを整理しましょう。
- 利尿剤は「出口を開けて水を出す」お薬。漢方薬の利水は「滞っている水の流れを身体全体で整える」もの。役割が違うからこそ、一緒に使う意味があります。
- 利尿剤を減らせるかどうかを決めるのは、主治医の先生です。漢方薬は、その判断の材料になる「むくみが取れたという体の変化」を作る側にいます。
- 腎臓の数値が気になり始めた時こそ、漢方で負担を分担する余地があります。
薬が増えていく不安、腎臓の数値への不安を、一人で抱え込まないでください。
これまでの心臓と腎臓の数値、お薬の内容、むくみや息切れの具体的な症状、そしてあなたの体質を丁寧にお伺いし、全国対応のオンライン相談・店頭相談にて、新宿の漢方薬局「太陽堂」があなたの身体に合った漢方ケアをご提案いたします。
関連するお悩み
心不全の不調は、全身の水の巡り、血圧、不整脈と深く関わっています。ご自身の症状に近いページもぜひご参照ください。
太陽堂の特徴
”当薬局のHPをご覧いただき、ありがとうございます。
私たち太陽堂は「一人でも多くの方の笑顔を見る為に」という思いのもと開局しました。
漢方薬とお客様の出会いがお悩み、体質改善の一助になれれば幸いです。”
特徴その1.
当薬局では、お客様「ひとりひとりに合わせた漢方薬」をその場で調合いたします。
そのため初めてのご相談では、「約1時間~1時間半」ほど相談時間をいただいております。
(遠方のお客様や、お忙しいお客様へは配送の受付もしております。詳しくはお問合せください)
特徴その2.
お作りする漢方薬は、国内外から厳選した生薬の力を、余すことなくお客様に届けるため
「煎じ薬」をお勧めしております。
特徴その3.
当薬局は漢方専門の薬剤師が「得意とする専門分野」にわかれて日々研鑽しています。
お客様の健康を第一に考え、漢方の勉強会なども積極的に開催しております。
太陽堂がはじめての方へ
ご相談を考え始めた方は、まずこちらをどうぞ。
記事作成者 薬剤師 前原 信太郎

実績:伝統漢方研究会 2017年・2021年・2025年 学術発表
沖縄で開業医をしていた祖父と薬の話しをしていた事から薬剤師の道を目指すように。
調剤薬局の薬剤師として6年間勤務。
漢方の勉強をして、より患者さんの治療の選択肢の幅を広げたいという思いから「漢方の道」に。
調剤薬局も経験している為、西洋学の知識も勉強を積み今に至ります。
記事作成者 薬剤師 林 泰太郎

実績:伝統漢方研究会 2015~2017年・2019年・2020年・2022年・2025年 学術発表
調剤薬局で3年間勤め、西洋の薬だけでは治療が難しい病気の壁に直面。
・「治療の難しい病気をなんとか治したい。」
・「ひとりでも多くの患者さんを笑顔にしたい。」
という想いから漢方の道へ。
漢方薬局で3年間修業をして、2015年 『漢方薬局 太陽堂』を立ち上げ。
開局10年を迎えた今も1ヶ月の平均来局数は900名を超え、お客様にご愛顧いただいている太陽堂の漢方薬剤師です。














