
「寒くなってきてから、肩と首が石のようにガチガチに固まって辛い…」
「マッサージに行くとその時は楽になるのに、数日経つとまた元のこわばった状態に戻ってしまう…」
「朝起きた瞬間から首が重く、ひどい日は目の奥までズーンと重くなってくる…」
11月22日ごろの「小雪(しょうせつ)」。北国からは初雪の便りが届き始め、平地でも木々の葉が落ち、朝晩の冷え込みがいよいよ本格化してくる節気(せっき:昔の暦で季節の移り変わりを表す目印)です。
実はこの時期、太陽堂へのご相談でぐっと増えるのが、「肩こり・首こりの悪化」に関するお悩みです。
寒さによって体は無意識に縮こまり、筋肉がこわばり、血の巡りが滞ってしまう。この冬特有の頑固なこりは、「外から強く揉んでほぐす」だけでは、すぐにまた固まってしまいます。なぜなら、その根本には「冷えによる巡りの渋滞」という原因が隠れているからです。
今回は、寒くなると肩や首が固まるメカニズムや、漢方における「不通則痛(ふつうそくつう)」という奥深い考え方、そして固まった体を内側から温めてほぐす小雪からの養生法を、太陽堂の薬剤師が詳しく解説いたします。
【太陽堂が教える、小雪の肩こり・首こり養生まとめ】
まずは、当薬局が考える「冬の肩こり・首こり」へのアプローチを簡潔にまとめました。
- 漢方の見立て(原因): 西洋医学では「寒さによる筋肉の緊張と血管の収縮による血行不良」とされる冬のこりですが、漢方では、外から入り込む寒さの邪気(寒邪:かんじゃ)によって筋肉がこわばり、気(エネルギー)や血(栄養)の巡りが滞った「不通則痛(巡らないから痛む)」や「瘀血(おけつ)」の状態に注目して原因を探ります。
- アプローチ(対策): 青魚や玉ねぎなど「血の巡りを助ける食材」を取り入れた毎日の食事ケアや、首の付け根(風門)を温める習慣(養生)、そしてお一人おひとりの体質に合わせたオーダーメイドの煎じ薬を通じて、「外から揉むだけでなく、自ら巡らせる温かい体の土台づくり」をサポートします。
- 今後のステップ(根本ケア): マッサージや湿布でその場をしのぐだけでなく、根本的な原因(慢性的な冷えや、ストレスによる気の滞りなど)を丁寧に見極めるため、まずはじっくりとご相談を重ね、冬の寒さにもこわばりにくい長期的な体質と向き合っていきます。
【薬剤師 林の視点】なぜ寒くなると、肩と首はガチガチに固まるのか
こんにちは、薬剤師の林です。
冬になると肩こりがひどくなるのは、決して気のせいではありません。そこには、気温の低下に対する「体の自然な防御反応」が関係しています。
西洋医学の視点:寒さは「筋肉の緊張」と「血行不良」の悪循環を作る
私たちの体は、寒い場所に出ると、大切な体温を外に逃がさないようにするため、無意識のうちに肩をすくめ、体を丸めて筋肉をこわばらせます。
同時に、体の表面の血管はキュッと収縮するため、筋肉に酸素や栄養を届ける血流が減少します。すると、筋肉の中に疲労物質や、痛みを引き起こす物質が流れずに溜まりやすくなります。この物質が神経を刺激して痛みを起こし、その痛みがまた筋肉を硬くする——。つまり、「寒さによる緊張 → 血行不良 → 痛み → さらに筋肉が緊張する」という負の悪循環が始まってしまうのです。
さらに冬は、重たいコートなどの厚着で肩や腕が物理的に動かしにくくなるうえに、寒くて外を歩かなくなる、暖かいこたつに入って長時間スマホを見るなど、日常の中で「動かない要因」が重なりやすい季節でもあります。
マッサージなどで外から一時的にほぐしても、この「冷え・動かない生活・血行不良」という生活背景そのものが変わらなければ、数日ですぐに元のこわばった状態に戻ってしまうのです。
漢方の視点:「不通則痛(ふつうそくつう)」——巡らないから、痛む
一方、漢方の視点では、この冬特有の頑固なこりを「巡りの渋滞」として深く捉えます。
漢方には、「不通則痛(ふつうそくつう)」という有名な言葉があります。これは「通じざれば則ち痛む」、つまり「気(エネルギー)や血(栄養)の巡りが滞った場所に、こりや痛みが生まれる」という根本的な考え方です。
冬の肩こりの黒幕は、外からやってくる「寒邪(かんじゃ:寒さの邪気)」です。寒邪には、すべてのものをぎゅっと縮こまらせ、川の水を凍りつかせるように流れを止めてしまう性質があります。この寒邪が体に入り込むと、首や肩の血の巡りが滞ります。
この滞った状態が長く続くと、漢方でいう「瘀血(おけつ:ドロドロと滞った古い血)」となり、こりが慢性化し、石のようにガチガチに固定化していきます。
だからこそ漢方では、冬の肩こりに対して「ただ外から強く揉む」のではなく、「体の内側から温めて、滞った巡りを再び通す」ことこそが根本的なアプローチだと考えます。また、デスクワークのプレッシャーや日常のストレスで気(エネルギー)の巡りまで滞っている方(気滞:きたい)は、肩こりに加えて、胸のつかえ感やため息、イライラを伴うことも多くなります。
漢方では、お一人おひとりのこりの原因(冷えなのか、瘀血なのか、ストレスなのか)を見極め、温めて巡りを整えるアプローチ(温経散寒:おんけいさんかん、活血化瘀:かっけつかおなどの考え方)を用いて、「揉まなくても自ら巡る、こわばりにくい体の土台づくり」をサポートしていきます。
【薬剤師 椙田の視点】固まった体を「温めてほぐす」小雪の食事と生活養生
薬剤師の椙田です。
冬の頑固なこりを和らげるための生活養生のキーワードは、「首の付け根の温め」と「食べる巡りケア」、そして「固まる前に動かす」ことです。日々のちょっとした習慣が、巡りの良い体を作ります。
首の付け根(風門)を「蒸しタオル」でじんわり温める
東洋医学において、風邪(ふうじゃ)や寒邪といった外からの冷たい邪気が真っ先に入り込む「入り口」とされているのが、首の後ろの付け根(少し下あたり)にある「風門(ふうもん)」というツボの周辺です。ここは同時に、温めることで首・肩全体の血流がフワッとゆるむ「巡りのスイッチ」でもあります。
- 蒸しタオルの活用: 水で濡らして軽く絞ったタオルを、電子レンジ(500W〜600Wで40〜60秒程度)で温め、火傷に注意しながら首の付け根に当てて5分ほどリラックスします。一日の終わりのリセットに最適です。
- 貼るカイロの活用: 日中、寒さを感じる時は、肩甲骨の間(服の上から)に貼るカイロを当てるのが効果的です。(※低温やけど防止のため、肌に直接貼ったり、就寝時に貼ったままにしたりするのは絶対に避けてください。)
- 湯船に肩まで浸かる: シャワーだけで済ませず、40℃前後の湯船に10〜15分ほど、しっかりと肩まで浸かりましょう。温熱効果に加えて、お湯の浮力によって筋肉の緊張が自然とゆるみます。
血の巡りを助ける「活血(かっけつ)」の食材を摂る
巡りの改善は、外から温めるだけでなく、毎日の「食事」からも強力にアプローチできます。薬膳の世界で「血の巡りを助け、滞りをほどく」とされる食材を意識して取り入れましょう。
- 青魚(さば・いわし・さんまなど): 血液をドロドロにさせず、サラサラに保つ良質な油(オメガ3系脂肪酸)の代表格です。旬の今こそ、食卓の主役にしてください。
- 玉ねぎ・らっきょう・にら: 巡りを促し、体の滞りをほどく力を持つ辛味野菜です。温かいスープや炒め物にたっぷりと使いましょう。
- 黒酢・シナモン: 体を温めながら巡りを良くする、最高の名脇役です。温かい飲み物にシナモンをひとさじ加えたり、お料理の隠し味に黒酢を使ったりしてみてください。
- 逆に、氷の入った冷たい飲み物や生野菜サラダばかりの食事は、胃腸から体を冷やし、内側から血流を止めてしまうため、この時期は「常温以上」を心がけてください。
「1時間に1回、肩甲骨を回す」を習慣にする
筋肉が完全に石のように固まってから揉みほぐすのではなく、「固まる前にこまめに動かす」のが冬の鉄則です。
おすすめは、「両肘を曲げて、肘で大きな円を描くようにして、肩甲骨から大きく10回ゆっくりと回す」ことです。デスクワークの方は、1時間に1回、スマホのタイマーをかけてでも、意識してこのストレッチを行ってみてください。
また、こたつやソファに座ってスマホを見続ける時間は、首が前に落ちて、頭の重さ(ボウリングの球と同じ約5kg)が首と肩にのしかかり続ける、最悪の姿勢です。「スマホを見る時は目の高さまで上げる」「30分に一度は必ず画面から目を離して首を回す」というルールを作るだけでも、翌朝の首の重だるさは劇的に変わってきます。
【比較表】小雪からのこわばりを防ぐ!OK・NG行動リスト
| カテゴリ | 〇 おすすめ(温めて、巡らせる) | × 要注意(冷やして、滞らせる) |
| 温めとケア | 蒸しタオルや湯船で、首の付け根をじんわり温める (血流のスイッチが入り、こわばった筋肉が内側からゆるんでいく) | シャワーだけで済ませ、首元の開いた服で冷たい外へ出る (首元から寒邪が入り込み、筋肉の緊張と血行不良がさらに加速する) |
| ほぐし方 | 完全に固まる前に、1時間に1回、肩甲骨を大きく回す (滞りが起きる前にこまめに動かすことで、慢性的なこりを防ぐ) | ガチガチに痛くなってから、力任せに強く揉んだり叩いたりする (筋肉の繊維が傷つき、修復される過程でさらに硬くこわばってしまう) |
| 食事の工夫 | 青魚・玉ねぎ・黒酢など、血の巡りを助ける食材を摂る (ドロドロの瘀血を防ぎ、体の内側からスムーズな血流をサポートする) | 冬でも氷入りの冷たい飲み物を飲み、体を内側から冷やす (胃腸から全身が冷え切り、血管が収縮して血の流れが止まってしまう) |
| 日常の姿勢 | スマホは目の高さに上げ、30分で一度休憩して遠くを見る (首への5kgの負担を減らし、筋肉の過度な緊張を防ぐ) | こたつで背中を丸め、首を落としたまま長時間スマホを見続ける (首と肩に絶え間ない負荷がかかり続け、強烈なこりの原因になる) |
小雪の養生に関するよくある質問(FAQ)
肩こりには、冷感湿布と温めるカイロ、どちらがいいのでしょうか?
冬の慢性的なこりや重だるさには、「温める(カイロなど)」のが基本の正解です。
冷感湿布(冷やすケア)が向いているのは、ぎっくり腰や急に筋を違えた時のような「熱を持ってズキズキ痛む急性の炎症」の時です。寒さと長時間の血行不良でガチガチに固まった冬の慢性的なこりには、カイロや蒸しタオル、湯船でしっかりと温めて血流を再開させる方が、体のメカニズムとして理にかなっています。
温めて楽になるようであれば、そのまま温めケアを続けてください。もし、温めるとかえってズキズキと痛みが悪化する場合は、炎症が起きている可能性があるため、無理をせず整形外科などにご相談ください。
マッサージや整体に通っても、数日でまたすぐガチガチに戻ってしまうのはなぜですか?
外から「一時的にほぐす」だけでは、こりを作り出している「土台の環境」が変わっていないからです。
マッサージで筋肉をほぐしてもらうことは、その時の血流を改善する素晴らしいアプローチです。しかし、根本にある「冬の寒さ」「慢性的な血行不良(瘀血)」「日常の姿勢の悪さ」という、こりを再生産してしまう環境や体質が残ったままであれば、数日生活するうちにまた同じ場所が固まってしまいます。
外からケアを受けつつ、蒸しタオルでの温めや、巡りを良くする食事、そして漢方で「巡りやすい体の土台」を内側から育てていく。この「外と内の二本立て」こそが、すぐに戻らない体を作るための最短の近道です。
肩こりがひどい日は、頭まで重く、目の奥も辛くなります。関係ありますか?
はい、大いに関係があります。首や肩の血流は、頭部への血流に直結しています。
首や肩の筋肉がガチガチに固まると、その中を通って頭や目へ向かう血管が圧迫され、血流が阻害されます。その結果、頭に十分な酸素や栄養が届かなくなり、どんよりとした頭の重だるさや、目の奥の重痛さ、時には締め付けられるような緊張型頭痛へと繋がることが非常に多いのです。
首や肩のこわばりと、朝からの頭重感が常にセットで起こる方には、滞りをほどいて巡りを整える体質ケアが向いている可能性がありますので、ぜひ一度ご相談ください。
まとめ:冬のこりは「揉む」より「温めて巡らせる」
「急に寒くなってから、首も肩もガチガチで毎日辛い…」
小雪の頃から強くなるその肩こり・首こりは、単なる筋肉疲労ではなく、寒さが作り出した「気と血の巡りの渋滞」のサインです。
蒸しタオルで首の付け根のスイッチを温める。青魚や玉ねぎの食事で内側から巡りを助ける。固まってしまう前に、1時間に1回肩甲骨を回す。「温めて、巡らせる」を日々の合言葉にして、渋滞が慢性化して石のようになる前に、優しくほどいてあげましょう。
「マッサージに行ってもすぐ戻る、何年も続く頑固なこりをそろそろ根本から何とかしたい」「こりに加えて、頭の重さや手足の冷えも気になっている」という方は、ぜひ太陽堂までお気軽にご相談ください。お一人おひとりの巡りの状態と体質を丁寧に見極め、無理のない根本からの立て直しプランをご提案いたします。
関連ページ
太陽堂では、季節のお悩みだけでなく、心と体の様々なお悩みに対する漢方サポートを行っております。気になる症状がございましたら、以下のページもぜひご覧ください。
太陽堂の特徴
”当薬局のHPをご覧いただき、ありがとうございます。
私たち太陽堂は「一人でも多くの方の笑顔を見る為に」という思いのもと開局しました。
漢方薬とお客様の出会いがお悩み、体質改善の一助になれれば幸いです。”
特徴その1.
当薬局では、お客様「ひとりひとりに合わせた漢方薬」をその場で調合いたします。
そのため初めてのご相談では、「約1時間~1時間半」ほど相談時間をいただいております。
(遠方のお客様や、お忙しいお客様へは配送の受付もしております。詳しくはお問合せください)
特徴その2.
お作りする漢方薬は、国内外から厳選した生薬の力を、余すことなくお客様に届けるため
「煎じ薬」をお勧めしております。
特徴その3.
当薬局は漢方専門の薬剤師が「得意とする専門分野」にわかれて日々研鑽しています。
お客様の健康を第一に考え、漢方の勉強会なども積極的に開催しております。
記事作成者 薬剤師 林 泰太郎

実績:伝統漢方研究会 2015~2017年・2019年・2020年・2022年・2025年 学術発表
調剤薬局で3年間勤め、西洋の薬だけでは治療が難しい病気の壁に直面。
・「治療の難しい病気をなんとか治したい。」
・「ひとりでも多くの患者さんを笑顔にしたい。」
という想いから漢方の道へ。
漢方薬局で3年間修業をして、2015年 『漢方薬局 太陽堂』を立ち上げ。
開局10年を迎えた今も1ヶ月の平均来局数は900名を超え、お客様にご愛顧いただいている太陽堂の漢方薬剤師です。
記事作成者 薬剤師 椙田 彩純

担当疾患;循環器、身体の痛み
臨床検査技師の両親の影響で、幼い頃から医療に関心を持つ。
大学卒業後、病院薬剤師として勤務。
対症療法が中心の現場で、繰り返す入退院や長期投薬を目の当たりにし、「もっと力になれる方法はないか」と模索する中で漢方と出会う。
現在は漢方の持つ幅広さと可能性に魅了され、一人ひとりの体質に寄り添った根本改善を追求している。















