
1月20日頃は、二十四節気の最後を飾る「大寒(だいかん)」。文字通り、一年の中で最も寒さが厳しくなり、最低気温を記録することも多い時期です。
この凍えるような寒さの底で、こんな不調を感じてはいませんか?
「朝、目覚ましが鳴ってもどうしても布団から出られない…」
「とくに悲しい理由もないのに気分が落ち込み、何もやる気が出ない…」
「お腹が空いているわけではないのに、甘いものばかり無性に欲しくなる…」
このような自分を「私が怠けているからだ」「意志が弱いからだ」と責める必要はありません。実はそれ、寒さと日照時間不足が体に影響を与えて起こる「冬季うつ(ウインターブルー)」のサインかもしれないのです。
今回は、寒さの底である今こそ知っておきたい「冬のメンタル不調」のメカニズムと漢方の考え方、そして運気も元気も底上げする「大寒卵」の養生法を、太陽堂の薬剤師が詳しく解説いたします。
【太陽堂が教える、大寒のメンタル養生まとめ】
まずは、当薬局が考える「大寒のメンタル不調」へのアプローチを簡潔にまとめました。
- 漢方の見立て(原因): 西洋医学では「日照時間の減少によるセロトニン不足と自律神経の乱れ」とされる冬のメンタル不調ですが、漢方では、一年で最も厳しい寒さ(寒邪)によって、生命力と「志(やる気)」の貯金箱である「腎(じん)」のエネルギーが極限まで消耗した状態(腎虚:じんきょ)に注目して原因を探ります。
- アプローチ(対策): 栄養が凝縮された「大寒卵」や体を温める発酵食品(酒粕など)を取り入れた食事ケア(養生)と、お一人おひとりの体質に合わせて冷え切った体を内側から温め、枯渇した腎を補うオーダーメイドの煎じ薬を通じて、「寒さと気分の沈み込みに負けない心の土台づくり」をサポートします。
- 今後のステップ(根本ケア): 「自分の怠けだ」とご自身を責めて無理に頑張るのではなく、根本的な原因(気血の不足や腎の弱り)を丁寧に見極め、まずはじっくりとご相談を重ね、春に向けて長期的な体質と向き合っていきます。
【薬剤師 林の視点】冬に心が折れやすいメカニズムと、西洋医学・漢方のアプローチ
こんにちは、薬剤師の林です。
「どうして冬の終わりが近づくにつれて、心まで弱ってしまうのだろう」。その答えは、あなたの性格の中ではなく、季節と連動した体のメカニズムの中にあります。
西洋医学の視点:日照不足による「セロトニン」の低下
西洋医学的に見ると、冬のメンタル不調の大きな原因は「日照時間の短さ」にあります。
秋から冬にかけて日差しを浴びる時間が減ると、脳内で精神の安定を保つ神経伝達物質である「セロトニン(幸せホルモン)」の分泌が極端に減少します。セロトニンが減ると、不安感が増し、やる気が起きず、感情のコントロールが難しくなります。
さらに、セロトニン不足を補おうとして、脳が「手っ取り早くエネルギー(糖分)を入れろ」と指令を出すため、甘いものや炭水化物を異常に欲するようになります。
また、日照不足は睡眠リズムを司るホルモン(メラトニン)の乱れにも直結するため、「いくら寝ても眠い」「朝起きられない」という状態(過眠)を引き起こします。これらはご自身の意志の弱さとは全く無関係の、体の防衛反応なのです。
漢方の視点:冬に心が折れるのは、生命力の貯金箱「腎」の弱り
漢方の視点では、このメンタル不調をもう少し深く「五臓」のバランスから紐解きます。
東洋医学では、冬は五臓の中で「腎(じん)」に最も大きな負担がかかる季節だと考えます。漢方でいう「腎」とは、単なる尿を作る臓器ではなく、私たちが生きて活動するための生命エネルギー(精:せい)を蓄えておく「生命力の貯金箱」のような場所です。
そして同時に、腎は人間の精神活動のうち「志(こころざし・やる気)」や「根気」を司る場所でもあります。
一年で最も厳しい「大寒」の寒さ(寒邪)に長期間さらされることで、この腎のエネルギーの貯金は極限まで消耗し、底をつきかけます。この状態を「腎虚(じんきょ)」と呼びます。
腎のエネルギーが枯渇すると、体を温められない(冷え)だけでなく、精神をしっかりと支えきれなくなります。
「根気が続かない」「不安感が異常に強くなる」「物事を決断できなくなる」。これらはすべて、寒さによって体のバッテリー(腎)が低下しているという明確なサインです。「やる気が出ない」のは、決して怠けではなく、漢方的な視点で見れば「腎からのSOS」なのです。
漢方では、このような心と体の底冷えに対し、枯渇した腎のエネルギーをしっかりと補い、体を内側から温めて持ち上げるアプローチ(補腎温陽:ほじんおんようなどの考え方)を用いて、「寒さの底でも心が折れない体の土台づくり」をサポートしていきます。
【薬剤師 椙田の視点】内側から整える、大寒の食事と生活養生
薬剤師の椙田です。
心と体が極限まで冷え切った大寒の時期、無理にテンションを上げようとする必要はありません。日々の食事と休み方で、少しずつ「内側の熱」を養っていきましょう。
今年の運気を食べる!「大寒卵(だいかんたまご)」の力
大寒の時期にぜひ取り入れていただきたいラッキーフードがあります。それが「大寒卵(だいかんたまご)」です。
大寒卵とは、その名の通り「大寒の日(1月20日頃)」に産み落とされた卵のことです。昔の鶏は、冬の厳しい寒さの中ではエネルギーを温存するため、あまり卵を産みませんでした。そのため、この極寒の中で産み落とされた貴重な卵には、鶏の生命力がギュッと凝縮されており、栄養価が非常に高いとされてきました。
風水の世界でも、大寒卵には強いパワーが宿ると言われ、「黄身(きみ)が金運を呼び込み、白身(しろみ)が厄を落とす」として、食べると一年の運気が上がるとされています。
さらに漢方・薬膳の視点で見ても、卵は「血(栄養)」や「陰(潤い)」を強力に補う優れた食材です。精神の不安や不眠を和らげる働き(安神作用:あんじんさよう)もあると考えられており、気分が落ち込みやすいこの時期には、まさに心と体を支える心強い存在なのです。
寒さの底を乗り切る「温活」と「発酵食」
卵と合わせて食卓に取り入れたいのが、体の内側から熱を生み出し、巡りを助けてくれる食材です。この時期は酒造りが最盛期を迎えるため、「酒粕(さけかす)」や「麹(こうじ)」などの発酵食品がとびきり美味しくなります。
- 粕汁(かすじる): 酒粕には体を芯から温める強い作用があり、血行を促進して、消耗した「腎」の働きを力強く助けてくれます。
- お味噌汁: お味噌も立派な発酵食品です。毎日の温かい一杯が、お腹の冷えを防いで腸内環境を整えます。(腸は心の安定に関わる物質の生成に深く関わっているため、お腹を温めることはメンタルケアに直結します)
【比較表】大寒の不調を防ぐ!OK・NG行動リスト
| カテゴリ | 〇 おすすめ(腎を養い、エネルギーを温存する) | × 要注意(腎を消耗し、エネルギーを漏らす) |
| 朝の過ごし方 | 「早寝遅起き」を心がけ、無理せず睡眠を確保する (体がエネルギーを温存しようとする自然な働きに逆らわず、腎を休ませる) | 「怠けだ」と自分を責め、睡眠を削って無理やり気合いで起きる (バッテリーが空の状態で無理に動かすため、日中の気分の落ち込みが激化する) |
| 食事の選び方 | 大寒卵や粕汁、温かいお味噌汁で内側から熱を補給する (栄養と熱をしっかりと補給し、精神の安定と免疫の土台を整える) | 甘いお菓子や菓子パンばかり食べて空腹を満たす (血糖値の乱高下を招き、さらに強い眠気とメンタルの不安定さを引き起こす) |
| 温め方の工夫 | 腹巻きやカイロで「腰(腎の場所)」を重点的に温める (腎の働きを物理的にサポートし、全身の冷えや不安感を和らげる) | 「室内は暖かいから」と薄着で過ごし、腰や足元を冷やす (寒邪がダイレクトに腎を直撃し、腰のだるさや頻尿、気力の低下を招く) |
| 心の持ち方 | 「今は冬だから仕方ない、春への準備期間だ」と割り切る (自然のサイクルを受け入れることで、自責のストレスから心を解放する) | 「なんでこんなにやる気が出ないんだ」と焦り、無理に予定を詰める (さらなるストレスが自律神経を乱し、冬の不調を春先まで長引かせてしまう) |
大寒の養生に関するよくあるご質問(FAQ)
どうしても朝起きるのが辛いです。気合いを入れて、無理にでも起きるべきですか?
冬は「早寝遅起き」が漢方における養生の基本です。ご自分を責める必要はありません。
太陽が昇り、気温が少し上がってから活動を始めるのが、冬の自然の理にかなった過ごし方です。この大寒の時期に布団から出られないのは、体がエネルギーを温存しようとする「正常な防衛反応」です。気合いが足りないのではなく、バッテリーが少ない状態ですので、無理をせず、できるだけ睡眠時間を長く確保することを最優先にしてください。
「大寒卵」は、1月20日の当日中に食べないと御利益がないのでしょうか?
「大寒の日(あるいは大寒の期間)に産み落とされた卵」であれば、食べるのは別の日でも意味は変わらないと言われています。
この時期になると、スーパーの卵売り場などでも「大寒卵」のシールが貼られたものを見かけることがあります。見つけたらぜひ手にとって、温かいお味噌汁に落としたり、だし巻き卵にしたりして、その凝縮されたエネルギーを有り難くいただいてみてください。
毎年、春の花粉症がひどくて憂鬱です。いつから対策を始めるべきですか?
まさに今、「大寒」の時期から始めるのがベストタイミングです。
花粉症などのアレルギー症状は、バリア機能(免疫の土台)の乱れが大きく関わっています。そしてその土台を支えているのが「腎」です。本格的に花粉が飛び始める春になってから慌ててお薬で抑え込むのではなく、今の時期に腎をケアして土台の免疫力を整えておくことが、春の症状を軽くするための大きな鍵になります。漢方による体質ケアは、今からスタートするのが最も理にかなっています。
まとめ:大寒は「春への助走期間」。しゃがみ込む自分を許してあげよう
大寒は「寒さの底」です。しかし、底を打ったということは、あとはもう上がっていくしかないということです。
あと半月もすれば「立春」を迎え、暦の上では暖かな春が始まります。今あなたが感じている不調ややる気のなさは、春に向けて大きく高くジャンプするために、体が深くしゃがみ込んで力をためている状態なのです。
「やる気が出ない自分」「朝起きられない自分」を責めるのは今日でやめにして、温かい粕汁や栄養たっぷりの卵料理を食べて、頑張っているご自身を優しくいたわってあげてください。
「毎年、この時期の気分の落ち込みがひどくて本当に辛い」
「冷えが体の芯まで入り込んで、春になっても体調が戻らない」
もしそんな深いお悩みをお持ちなら、漢方薬で「腎」のエネルギーをしっかりと補給し、心と体を根本から温めるお手伝いができるかもしれません。
春を笑顔で、軽やかに迎えるために。今のあなたの心と体に寄り添った無理のない養生プランを一緒に考えていきましょう。ぜひ太陽堂までお気軽にご相談ください。
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太陽堂の特徴
”当薬局のHPをご覧いただき、ありがとうございます。
私たち太陽堂は「一人でも多くの方の笑顔を見る為に」という思いのもと開局しました。
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記事作成者 薬剤師 林 泰太郎

実績:伝統漢方研究会 2015~2017年・2019年・2020年・2022年・2025年 学術発表
調剤薬局で3年間勤め、西洋の薬だけでは治療が難しい病気の壁に直面。
・「治療の難しい病気をなんとか治したい。」
・「ひとりでも多くの患者さんを笑顔にしたい。」
という想いから漢方の道へ。
漢方薬局で3年間修業をして、2015年 『漢方薬局 太陽堂』を立ち上げ。
開局10年を迎えた今も1ヶ月の平均来局数は900名を超え、お客様にご愛顧いただいている太陽堂の漢方薬剤師です。
記事作成者 薬剤師 椙田 彩純

担当疾患;循環器、身体の痛み
臨床検査技師の両親の影響で、幼い頃から医療に関心を持つ。
大学卒業後、病院薬剤師として勤務。
対症療法が中心の現場で、繰り返す入退院や長期投薬を目の当たりにし、「もっと力になれる方法はないか」と模索する中で漢方と出会う。
現在は漢方の持つ幅広さと可能性に魅了され、一人ひとりの体質に寄り添った根本改善を追求している。












