
「寒くなると、決まって咳や息苦しさが出やすくなってしまう」
「暖かい部屋から寒い屋外に出た瞬間、冷気で激しく咳き込んでしまう」
「冬に風邪をひくと、そのたびに肺の調子が一段悪くなってしまうのが怖い」
冬は、呼吸器に持病をお持ちの方にとって、一年の中で最も試練の多いデリケートな季節です。
太陽堂でも、冬が近づくと「寒さで呼吸が苦しくなる」「暖房による乾燥と屋外の寒暖差についていけない」といったご相談が毎日のように寄せられます。
今回は、西洋医学的な知識(冬に気道が悪化するメカニズムやお薬の役割)も交えながら、肺の弱い方が冬を穏やかに乗り切るための「養生法」と「体を内側から温めて整える漢方の考え方」について、薬剤師の視点から詳しく解説いたします。
【この記事の結論:「冬の呼吸器養生(寒さ・寒暖差対策)」に対する漢方の考え方】
- 不調の正体(原因): 西洋医学では冷気刺激による気管支収縮・乾燥による粘膜バリア低下やウイルス感染とされますが、漢方では「外寒(冷えの侵入)」と「肺気(バリア力)・肺陰(潤い)の不足」が根本原因と考えます。
- 漢方の解決策: 西洋薬で急な気管支の収縮や過剰な炎症を緩和しつつ、漢方で体を温めて「肺」のバリア機能を高め、粘膜に潤いを与えることで、冬の寒さや風邪に負けない体の土台を整えます。
- 対象となる主な疾患・お悩み: 気管支喘息・咳喘息、COPD(慢性閉塞性肺疾患・肺気腫)、肺MAC症(非結核性抗酸菌症)、気管支拡張症、間質性肺炎
なぜ冬に呼吸器の不調が悪化するのか?(西洋医学的メカニズム)
冬になると、咳・痰・息苦しさといった症状が強まりやすくなります。西洋医学の視点から見ると、冬には呼吸器の不調を引き起こす「3つの大きな敵」が存在します。
1. 冷気刺激による気管支の収縮
冷たい空気を急に吸い込むと、気管支の表面にある神経が過敏に反応し、気管支の平滑筋がギュッと収縮します(気道過敏性の増悪)。特に喘息やCOPDをお持ちの方は気道が繊細なため、冷気そのものが強い刺激となり、咳き込みや息苦しさを誘発します。
2. 乾燥による粘膜バリア(線毛運動)の低下
冬の空気は湿度が低く、さらにエアコンや暖房器具を使うことで室内も著しく乾燥します。気道の表面は通常、粘液と「線毛(せんもう:異物を追い出す細かい毛)」で守られていますが、乾燥すると粘膜が乾いて線毛の動きが鈍くなり、ゴミや病原体を排出しづらくなります。
3. 屋内と屋外の「激しい寒暖差」
暖かいリビングから寒い廊下や脱衣所、あるいは屋外へ移動する際の急激な温度変化は、自律神経に大きな負担をかけます。自律神経が乱れると、気管支の収縮や拡張のコントロールがうまくいかなくなり、突発的な咳の原因となります。
4. 冬の感染症による「急性増悪(きゅうせいぞうあく)」
インフルエンザ、RSウイルス、ライノウイルス、肺炎球菌などの感染症は、冬に流行のピークを迎えます。肺や気管支に持病のある方がこれらの感染症にかかると、一時的に激しい炎症が起き、呼吸機能が階段を一段降りるように悪化してしまう「急性増悪」を引き起こすリスクが高まります。
病院で行われる検査と西洋薬の役割
冬場に呼吸器の不調を感じて呼吸器内科を受診した場合、以下のような検査やお薬でのアプローチが行われます。
病院での主な検査
- 酸素飽和度(SpO2): 指先で測定し、血液中に酸素がしっかり取り込まれているかを確認します(95%以上が正常値)。
- 胸部レントゲン・CT検査: 肺炎や気管支炎の増悪、肺の影の進行がないかを画像で直接確認します。
- 血液検査(CRP・白血球数): 体内で細菌感染や強い炎症が起きていないかを調べます。
病院で処方される代表的な西洋薬
- 吸入ステロイド薬(ICS) / 長時間作用性気管支拡張薬(LAMA/LABA): シムビコート、ビレーズトリ、スピリーバなど。気道の過敏なアレルギー炎症を和らげ、狭くなった気管支を開いて息苦しさを防ぎます。
- 去痰薬・消炎剤: ムコダイン、ムコソルバンなど。乾燥や炎症で粘り気が出た痰を柔らかくし、排出しやすくします。
- 抗生剤・抗ウイルス薬: 感染症による急性増悪が疑われる場合、原因となる細菌やウイルスを迅速に抑えるために使用されます。
西洋薬は、急な気管支の収縮を直接広げたり、激しい感染・炎症を即効性をもって鎮めるために欠かせない生命線です。
【薬剤師コラム①】養生はシンプルに。「冷えない」「風邪を引かない」
担当薬剤師:林
ご相談者さまから「冬の呼吸器養生で一番大切なことは何ですか?」と聞かれたとき、私たちがお伝えするのは、実はとてもシンプルな2つのことです。それは、「体を冷やさないこと」と「風邪を引かないこと」。あれこれ難しいことを頑張るよりも、この2つを徹底する方が、肺と気管支にとってずっと大きな守りになります。
特に意識していただきたいのが「首元」の保温です。東洋医学では、首の後ろに「風門(ふうもん)」という重要なツボがあり、冷えや風邪(ふうじゃ)はここから体内に侵入すると考えられてきました。
外出時はもちろん、家の中でも肌寒さを感じたらマフラーやネックウォーマーで首元を優しく守ってあげるだけで、冷気刺激による咳と風邪予防の両方に大きな効果があります。
「毎年冬になると必ず調子を崩してしまう」という方は、悪くなってから慌てるのではなく、寒さが本格化する前からの準備が一番の鍵となります。
【比較表】西洋医学のアプローチと漢方薬による冬の体質ケアの違い
冬の呼吸器トラブルに対して、病院(西洋医学)でのアプローチと、太陽堂が提案する漢方薬での体質ケアには、以下のような特徴や役割の違いがあります。
| 比較項目 | 西洋医学(病院のアプローチ) | 漢方薬(太陽堂の体質ケア) |
| 主なアプローチ対象 | 狭くなった気管支の拡張、急性の感染・炎症抑制 | 体の冷えの改善、バリア機能(免疫)の強化、粘膜の潤い補給 |
| 得意なこと | 激しい息苦しさの即効緩和、細菌・ウイルス感染の鎮圧 | 寒暖差による過敏さの軽減、風邪を引きにくい体質づくり、冬の悪化予防 |
| 代表的な手段 | 吸入ステロイド薬、吸入気管支拡張薬、抗生剤など | 体を温める生薬、免疫を高める生薬、粘膜を潤す生薬の組み合わせ |
| 両者の関係性 | 急な発作や感染症から命と呼吸を守る「速効の柱」 | 寒さや感染症に負けない強さを内側から育てる「土台作り」 |
漢方から見た冬の呼吸器不調と体質タイプ
東洋医学において、「肺(はい)」は乾燥を非常に嫌い、温かさを好む繊細な臓器(温を好み、燥を悪(にく)む)とされています。冬の冷気と乾燥は、肺の働きを直接弱めてしまいます。
漢方では、冬に崩れやすいお身体の状態を主に以下の3つの体質タイプに分けて考えます。
① 温めるエネルギーが不足しているタイプ(肺気虚・陽虚)
- 主な症状: 寒い場所に出るとすぐコンコンと咳が出る、手足やお腹が冷えやすい、疲れやすく風邪を引きやすい。
- 漢方的見解: 体を温め、外からの冷えを防ぐバリアエネルギー(衛気:えき)が不足している状態です。
- アプローチ: 身体を温めながら「気(エネルギー)」を補う生薬(黄耆・桂皮・人参など)を用いて、冷気に負けないバリアの膜を強めます。
② 気道の粘膜が乾き切っているタイプ(肺陰虚)
- 主な症状: 暖房の効いた部屋でコンコンと乾いた空咳が出る、喉がカラカラに乾く、夜間に咳き込みやすい。
- 漢方的見解: 寒さと暖房の乾燥によって、気道粘膜を守る水分(陰液)が枯渇し、粘膜がむき出しになって過敏になっている状態です。
- アプローチ: 肺と気道にたっぷりと潤いを与える生薬(麦門冬・地黄・百合など)を用いて、デリケートな粘膜を優しく保護します。
③ 冷えによって体内に余分な水分が溜まるタイプ(寒痰・水毒)
- 主な症状: 寒い場所に行くと透明でサラサラした鼻水や薄い痰が大量に出て、ゴホゴホと咳き込む、体が重だるい。
- 漢方的見解: 体が冷えることで水分代謝が滞り、気道内に「冷えたお水(水毒)」が溜まって不快感を引き起こしている状態です。
- アプローチ: 体の内側から温めて水分の滞りをさばく生薬(細辛・干姜・半夏など)を用いて、余分な痰や鼻水を流していきます。
【薬剤師コラム②】「冬の前の仕込み」が春の調子を大きく左右します
担当薬剤師:椙田
呼吸器に持病をお持ちの方の経過を年間通して見ていると、「冬をどのように崩さずに過ごせたか」が、翌年の春から夏にかけての体調を大きく決定づけると実感します。
冬場に風邪やインフルエンザをきっかけに大きく調子を落としてしまうと、低下した体力や傷ついた気道を元に戻すまでに何ヶ月もかかってしまいます。一方で、冬の間を穏やかに越えられた方は、春先以降も安定した状態を維持しやすくなります。
だからこそ太陽堂では、本格的な寒さが訪れる前からの「事前の仕込み」をおすすめしています。
寒くなる前から体を内側から温め、免疫力を高める漢方薬で土台を作っておくことで、冬の寒気や寒暖差をしなやかに受け流せるようになります。もしすでに咳や痰が出始めている方は、痰の色(透明か、黄色く粘り気があるか)も体質を見極める大切なサインになりますので、お早めにご相談くださいね。
【改善実例】太陽堂での体質改善エピソード(服用終了まで)
①【寒暖差による喘息・長引く咳】昭和40年代 女性|冬の寒暖差に強くなり、2年で体質ケア完了
毎年冬になると、暖かい室内から寒い屋外へ出た瞬間に激しい咳き込みが起き、一度風邪をひくと数ヶ月咳が残ってしまうというお悩みでご相談に来られました。病院では「寒暖差による気道過敏性と咳喘息」と言われ、吸入薬を使用しているものの、冬場のつらさが解消されない状態でした。
お渡ししたのは、①体を内側から温めて冷えの侵入を防ぐ漢方薬 ②過敏になった気道粘膜に潤いを与える漢方薬 の2種類です。
- 3ヶ月後: 外出時に冷気を吸い込んだときの「急な咳き込み」の回数が明らかに減り、喉の乾燥感が和らいできました。
- 1年後: 寒さの厳しい時期を迎えても、例年のように大きな風邪を引くことなく、吸入薬の使用頻度も穏やかに減らすことができました。
- 2年後: 冬場を一度も大きく崩すことなく快適に越えることができ、十分な体質改善が定着したため、無事に漢方ケアの服用終了(ご卒業)となりました。
②【COPD・冬の急性増悪予防】昭和20年代 男性|冬場の風邪・増悪を防ぎ、1年半で安定
長年COPD(肺気腫)を患っており、毎年冬場に風邪を引くたびに激しい息切れと濁った痰が出て入院を繰り返してしまうため、「今年の冬は何とか無事に過ごしたい」と秋口にご来店されました。
お渡ししたのは、①肺のバリアエネルギーを高める漢方薬 ②胃腸を助けて体力を補う漢方薬 の2種類です。
- 2ヶ月後: 朝夕の寒さが強まってきたものの、普段より体が温かく感じられ、いつもより元気に動ける日が増えてきました。
- 8ヶ月後: 最も懸念していた冬場を、一度も風邪を引かず、急性増悪を起こさずに無事乗り切ることができました。主治医の先生からも「今冬はとても安定していますね」と褒められたとのことです。
- 1年6ヶ月後: 翌年の冬も体調良好で安定して過ごせる体力が定着したことから、ご相談の上で体質ケアの完了(ご卒業)を迎えられました。
※効果の感じ方や必要な期間には個人差があります。
今日からできる冬の呼吸器・生活養生リスト
日常のちょっとした工夫を積み重ねることが、冬の冷えや乾燥から肺を守る大きな盾となります。
| 生活の場面 | 養生・セルフケアの具体例 |
| 外出時 | マフラーやネックウォーマーで首元(風門)をしっかり保護。マスクを着用し、冷気刺激の直接吸入を防ぎつつ「吐く息の湿度」で喉を加湿する。 |
| 室内環境 | 暖房の設定温度を高くしすぎず、屋外や他のお部屋との「寒暖差」を小さく保つ。加湿器を活用して室内湿度を40〜60%に維持する。 |
| お風呂・脱衣所 | 脱衣所や浴室にあらかじめ暖房を入れて温めておき、急激な寒暖差(ヒートショック・気道収縮)を防ぐ。お湯はぬるめにして湯冷めに注意する。 |
| 飲食・食養生 | 冷たいジュースや生ものを避け、温かいスープや白湯を選ぶ。肺を潤す「白い食材(大根、山芋、ゆりね、豆腐)」と体を温める食材(生姜、ねぎ)を積極的に摂る。 |
| 感染予防 | 帰宅後の丁寧な手洗い・うがい。人混みへ行く際はマスクを徹底し、風邪やインフルエンザのウイルスを家庭内に持ち込まない。 |
よくあるご質問(FAQ)
毎年冬に体調を崩します。いつ頃から漢方を始めるのが理想ですか?
寒さが本格化する前、秋(10月〜11月頃)からのスタートが最も理想的です。
不調になってから慌てて立て直すよりも、体調が比較的安定している秋のうちから体を温め、免疫の土台を作っておく(事前の仕込み)方が、冬をずっと楽に乗り切ることができます。「毎年冬がつらい」と分かっている方こそ、早めのご相談をおすすめします。
病院で処方されている吸入ステロイド薬や予防投与のお薬と併用できますか?
はい、基本的には安心して併用いただけます。
病院のお薬は「気管支を直接広げたり局所の炎症を抑える」役割を果たし、漢方薬は「体全体の冷えを取り、免疫力や粘膜のバリア機能を高める」役割を果たします。役割が異なるため、併用することでお互いの良さを活かした相乗的な体質ケアが可能です。お薬手帳を忘れずにお持ちください。
部屋の寒暖差を防ぐために暖房を使いたいですが、乾燥が気になります。どうすればいいですか?
暖房と加湿器の「セット使い」が基本となります。
冷えは肺の大敵ですので、暖房を我慢することは避けてください。暖房使用時は、加湿器を併用して室内の湿度を50%前後に保つことが大切です。また、濡れタオルをお部屋に干したり、温かい白湯をこまめに飲むことで、内側と外側の両方から潤いを補いましょう。
万が一、冬場に風邪をひいてしまったらどう対応すべきですか?
肺に持病をお持ちの方は「ただの風邪」と自己判断せず、早めに医療機関へご連絡ください。
発熱が続く、痰が透明から黄色や緑色に変わった、息苦しさが強くなったといった変化は、急性増悪のサインです。こじらせる前に主治医の先生の適切な処方を受けつつ、漢方でも急性期に対応した処方へ一時的に切り替えるなどのサポートを行います。
まとめ|「冷えない・風邪を引かない」で、冬を無事に乗り越える
冬の呼吸器養生は、決して難しいことではありません。
① 首元や体を温めて「冷やさないこと」 ② 手洗い・加湿・防寒で「風邪を引かないこと」 この基本の養生を毎日丁寧に積み重ね、病院のお薬で呼吸を維持しながら、漢方で体全体のバリア力と温かさを育てていく——これが、太陽堂の提案する冬の呼吸器ケアです。
冬を一度も大きく崩さずに無事に越えることができれば、それはそのまま来年一年の健やかな体調の土台となります。
「毎年冬がつらくて不安」「今年こそは元気に冬を越したい」とお悩みの方は、一人で抱え込まず、どうぞお気軽にご相談ください。専門の薬剤師があなたの体質に優しく寄り添い、寒さに負けない体づくりを全力でサポートいたします。
関連するお悩み別・次に読むページ
呼吸器のトラブルや長引く咳に関する詳しい情報は、以下の専門ページでもご紹介しております。
冬の悪化が心配な疾患別の専門ページは、こちらでご紹介しています。
太陽堂の特徴
”当薬局のHPをご覧いただき、ありがとうございます。
私たち太陽堂は「一人でも多くの方の笑顔を見る為に」という思いのもと開局しました。
漢方薬とお客様の出会いがお悩み、体質改善の一助になれれば幸いです。”
特徴その1.
当薬局では、お客様「ひとりひとりに合わせた漢方薬」をその場で調合いたします。
そのため初めてのご相談では、「約1時間~1時間半」ほど相談時間をいただいております。
(遠方のお客様や、お忙しいお客様へは配送の受付もしております。詳しくはお問合せください)
特徴その2.
お作りする漢方薬は、国内外から厳選した生薬の力を、余すことなくお客様に届けるため
「煎じ薬」をお勧めしております。
特徴その3.
当薬局は漢方専門の薬剤師が「得意とする専門分野」にわかれて日々研鑽しています。
お客様の健康を第一に考え、漢方の勉強会なども積極的に開催しております。
記事作成者 薬剤師 林 泰太郎

実績:伝統漢方研究会 2015~2017年・2019年・2020年・2022年・2025年 学術発表
調剤薬局で3年間勤め、西洋の薬だけでは治療が難しい病気の壁に直面。
・「治療の難しい病気をなんとか治したい。」
・「ひとりでも多くの患者さんを笑顔にしたい。」
という想いから漢方の道へ。
漢方薬局で3年間修業をして、2015年 『漢方薬局 太陽堂』を立ち上げ。
開局10年を迎えた今も1ヶ月の平均来局数は900名を超え、お客様にご愛顧いただいている太陽堂の漢方薬剤師です。
記事作成者 薬剤師 椙田 彩純

担当疾患;循環器、身体の痛み
臨床検査技師の両親の影響で、幼い頃から医療に関心を持つ。
大学卒業後、病院薬剤師として勤務。
対症療法が中心の現場で、繰り返す入退院や長期投薬を目の当たりにし、「もっと力になれる方法はないか」と模索する中で漢方と出会う。
現在は漢方の持つ幅広さと可能性に魅了され、一人ひとりの体質に寄り添った根本改善を追求している。














