
「病院で『COPD(肺気腫)は治らない病気です』と言われてしまった……」
「進行を抑えることしかできないなら、この先自分の体はどうなってしまうのだろう」
「少しずつ息切れが強くなっていて、将来への不安ばかりが募っていく」
医療機関で「治らない」という言葉を告げられると、あまりのショックに心が重く沈んでしまう方は少なくありません。しかし、長年多くのご相談者さまと歩んできた経験から、まず最初にお伝えしたいことがあります。それは、「治らない」=「もう良くはなれない・現状維持すらできない」という意味では決してないということです。
今回は、西洋医学的な知識(病態メカニズムや吸入薬の役割)も踏まえながら、COPD・肺気腫と言われた方が前を向いて歩むための漢方の考え方と体質ケアについて、薬剤師の視点から詳しく解説いたします。
【この記事の結論:「COPD・肺気腫の不安」に対する漢方の考え方】
- 病気の正体(原因): 西洋医学ではタバコ煙等による気道の慢性炎症と肺胞破壊(一度壊れた組織は再生しない)とされますが、漢方では呼吸を司る「肺」の損傷に加え、エネルギー源である「脾(胃腸)」や「腎」の衰え(気血両虚・腎虚)が根本原因と考えます。
- 漢方の解決策: 西洋薬で気管支を広げ炎症を抑えつつ、漢方で残された肺の機能を最大限に引き出し、胃腸と免疫力を高めることで、呼吸の負担軽減と急性増悪(風邪による急悪化)の予防を目指します。
- 対象となる主な疾患・お悩み: COPD(慢性閉塞性肺疾患)、肺気腫、慢性気管支炎、加齢や病気による体重減少・息切れ
西洋医学的なメカニズムと病院でのお薬・検査
西洋医学において、COPD(慢性閉塞性肺疾患)は、主に長年の喫煙や有毒物質の吸入によって気道や「肺胞(酸素と二酸化炭素を交換するブドウの房状の小さな袋)」に慢性的な炎症が起こる病気です。
炎症が続くと気道が狭くなり(慢性気管支炎)、肺胞の壁が破壊されて弾力性を失い、1つの大きな袋のようになってしまいます(肺気腫)。破壊された肺胞は現代の西洋医学では再生できないため、「不可逆的な(元に戻らない)病変=治らない病気」と説明されるのです。
病院で行われる主な検査と指標
- スパイロメトリー(呼吸機能検査): 息を力強く吐き出したときに「最初の1秒間でどれだけの量を吐き出せるか(1秒量:FEV1)」を測定します。「1秒率(FEV1%)」が70%未満の場合、閉塞性障害(COPDなど)と診断されます。
- パルスオキシメーター(SpO2:経皮的動脈血酸素飽和度): 血液中の酸素量を測定します。95%以上が正常値ですが、進行すると運動時や安静時に数値が低下します。
- 胸部CT検査: 肺胞が破壊されて黒くスカスカになった部分(気腫性変化)を画像で直接確認します。
病院で処方される代表的な治療薬
西洋医学における薬物療法は、狭くなった気管支を維持し、症状を和らげることを目的としています。
- 抗コリン薬(LAMA): スピリーバ、シーブリなど。気管支の収縮を抑え、長時間気道を開きます。
- β2刺激薬(LABA): オンブレスなど。気管支の平滑筋を緩めて呼吸を楽にします。
- 吸入ステロイド薬(ICS): ビレートリ、テリルジー(LAMA/LABAとの配合剤)など。気道の慢性的な炎症を抑え、風邪などがきっかけで起こる急性増悪を防ぎます。
これらのお薬は呼吸を維持するための強力な命綱です。
【薬剤師コラム①】「治らない」=「良くならない」ではありません
担当薬剤師:林
「病院で『治らない』と言われてショックを受けました」と、肩を落として太陽堂を訪れる方やご家族は本当に多いです。そうした方に私たちは、「壊れた肺胞自体を元に戻すことは難しくても、日常の呼吸の楽さや体力を取り戻し、穏やかに過ごせるようになる方はたくさんいらっしゃいますよ。希望を持ってやっていきましょう」とお伝えしています。
実際、息切れが和らぎ外出が増えた方や、病院の検査で「進行が抑えられていて安定している」と主治医から言われ、何年も落ち着いた生活を続けられている方が大勢いらっしゃいます。
また「昔タバコを吸っていた自分が悪い……」とご自分を責める方もいらっしゃいますが、過去を悔やむ必要はありません。大切なのは、今残っている健やかな肺の組織を守り、最大限に活かす体づくりに目を向けることです。
【比較表】西洋医学と漢方薬(太陽堂)のアプローチの違い
COPD・肺気腫に向き合う際、西洋医学の急性期アプローチと東洋医学の体質ケアは、得意とするアプローチの方向性が異なります。
| 比較項目 | 西洋医学(病院のアプローチ) | 漢方薬(太陽堂の体質ケア) |
| 主なアプローチ対象 | 狭くなった気管支、局所の気道炎症 | 残された肺の機能、胃腸の働き(体力)、自律神経と免疫力 |
| 得意なこと | 気管支を直接広げる、急性増悪時の強い炎症抑制 | 慢性的な息苦しさの緩和、風邪予防(免疫維持)、体重低下の防止 |
| 使用されるお薬の例 | 吸入抗コリン薬、吸入ステロイド薬、去痰薬 | 補気薬、補陰薬、清熱化痰薬などを組み合わせたオーダーメイド処方 |
| お互いの役割分担 | 呼吸の物理的な通り道を強力に維持する「柱」 | 息切れに負けない体の土台を底上げする「土台作り」 |
漢方的な原因と体質タイプ別の解説
漢方では、COPD・肺気腫の病態を単に「肺の病気」としてだけでなく、全身のエネルギー循環(気・血・水)のバランスの崩れとして捉えます。東洋医学において呼吸は、息を吸い込む「肺」と、その吸い込んだ気を深くまで引き込んで保持する「腎(じん)」の連携によって成り立っています。
主に以下の3つの体質タイプに分かれ、それぞれアプローチが異なります。
① 肺の炎症・粘液停滞タイプ(肺熱・湿痰)
- 特徴: 黄色く粘り気のある痰が出る、咳が頻繁に出る、胸が苦しい・熱っぽい。
- 原因とアプローチ: 気道に熱や粘り気のある余分な水分(湿痰)が溜まっている状態です。体内にこもった熱を和らげ、粘っこい痰を排出しやすくする生薬(麦門冬・桑白皮など)を用いて気道を清らかに整えます。
② 呼吸と底力の低下タイプ(肺腎両虚)
- 特徴: 少し動いただけで激しく息が切れる、吸う息が浅い、腰や膝がだるい、冷えがある。
- 原因とアプローチ: 呼吸を司る「肺」と、生命エネルギーを蓄える「腎」の双方が弱っている状態です。気を補い「腎」の引き込み運動を助ける生薬(人参・地黄・五味子など)を使い、酸素をしっかり取り込める土台を育てます。
③ 栄養低下・やせ細りタイプ(気血両虚・脾虚)
- 特徴: 体重がどんどん減ってしまう、疲れやすく食欲がない、風邪を引きやすい。
- 原因とアプローチ: 呼吸のために全身のエネルギーを過剰に消耗し、胃腸(脾)の働きが衰えて栄養が全身に行き渡らない状態です。胃腸を元気にし、エネルギー(気)と栄養(血)を補う生薬(黄耆・白朮など)で体力の底上げを図ります。
【薬剤師コラム②】「風邪をひかせないこと」が最大の守りです
担当薬剤師:椙田
COPD・肺気腫の経過を大きく左右するのは、日々の小さな風邪やインフルエンザなどの感染症です。呼吸器機能が低下している状態で風邪をひくと、「急性増悪(きゅうせいぞうあく)」と呼ばれる激しい炎症が起き、坂道を転がり落ちるように症状が悪化してしまうことがあります。
だからこそ太陽堂では、息切れを和らげるアプローチと同じくらい、「風邪を寄せ付けない免疫の土台作り」と「しっかり食事が摂れる体力の維持」を最重要視しています。
特に「最近理由もなく体重が減ってきた」という場合は、呼吸によるエネルギー消費に食事が追いついていない危険なサインです。また、いつも透明だった痰が黄色や緑色っぽく変わったときも感染のサインですので、見逃さずに早めに医療機関へご連絡ください。数値を参考にしながら、焦らず一歩ずつ体を整えていきましょう。
【改善実例】太陽堂での体質改善エピソード
①【肺気腫・息苦しさ】昭和28年生 男性|SpO2が90%を切らない時間が増え、2年7ヶ月安定
4年前に医療機関で肺気腫と診断され、徐々に息苦しさが強まってきたため太陽堂にご相談に来られました。少し動くだけで呼吸が荒くなり、安静時でも酸素飽和度(SpO2)が低下しやすい状態でした。
お身体の状態に合わせ、①肺のこもった炎症を和らげる煎じ薬 ②呼吸の通りを楽にする漢方薬 の2種類をお渡ししました。
- 1ヶ月後: 呼吸の荒さが落ち着き、SpO2の数値も少しずつ持ち直し始めました。
- 7ヶ月後: 運動時でもSpO2が90%を切らない時間が増え、「前より身体が楽に動かせる」とお喜びの声をいただきました。
- 2年7ヶ月後: 激しい咳や痰に悩まされることもなく、安定した状態を維持しながら元気に生活されています。
②【肺気腫・息切れと強い疲労】昭和25年生 女性|体力と体重が戻り、検査でも「進行なし」
7年前に肺気腫と診断され、年々息切れと疲労感がひどくなってきたことでご来店されました。常に体全体が重だるく、食欲も落ちて体重が減ってしまい、無気力感に苛まれていました。
お身体の状態に合わせ、①気道の環境を整える漢方薬 ②胃腸を助けて体力をつける漢方薬 の2種類をお渡ししました。
- 1ヶ月後: 階段での息切れが和らぎ、少しずつお腹が空くようになって活力が戻ってきました。
- 1年11ヶ月後: 病院での定期的検査において主治医から「画像の影や進行は見られず、とても良好に安定している」と伝えられたとのこと。
- 2年11ヶ月後: 食事量もしっかり維持できて体重が持ち直し、疲れやすさに悩まされることもなく、穏やかな毎日をご卒業(服用終了)後も継続されています。
※効果の感じ方や必要な期間には個人差があります。
自宅でできるセルフケア・食養生
日々の小さな積み重ねが、呼吸の負担を軽くし、進行を防ぐ大きな力になります。
- 口すぼめ呼吸と腹式呼吸: 鼻から静かに息を吸い、ろうそくの炎を消すように口をすぼめて、吸った時間の2倍以上の時間をかけてゆっくり息を吐き出します。気道内の圧力を保ち、息が吐き出しやすくなります。
- 「体重減少」を防ぐ高タンパクな食事: COPD患者さまは呼吸をするだけで健康な人の数倍のエネルギーを消費します。卵、豆腐、魚、赤身の肉など消化に良いタンパク質を意識して摂り、痩せ細りを防ぎましょう。
- 感染症予防の徹底: 外出後の手洗い・うがいはもちろん、お部屋の加湿(湿度40〜60%)を保ち、粘膜の乾燥を防ぎます。
- 無理のない範囲でのウォーキング: 「苦しいから」と全く動かないでいると、脚の筋肉が衰えてさらに息切れが悪化します。主治医と相談の上、平地をゆっくり歩く散歩を日課にしましょう。
よくあるご質問(FAQ)
病院で「治らない」と言われましたが、漢方で本当に楽になりますか?
破壊された肺胞自体を元に戻すことはできませんが、体調や呼吸の楽さを整えることは十分に可能です。
西洋医学での「治らない」は組織構造の復元が不可能という意味です。しかし、残されている正常な肺の機能を高め、全身の代謝や筋肉、免疫力を整えることで、息切れの軽減や体力の回復を感じられる方はたくさんいらっしゃいます。
病院で処方されている吸入薬はやめてもいいですか?
絶対に自己判断でやめないでください。
病院の吸入薬は、狭くなった気管支を開いて呼吸を維持するための大切な柱です。漢方薬は吸入薬の代わりではなく、体の内側の土台(自律神経・免疫・体力)を立て直す役割を果たします。併用することでより安定した状態を目指せますので、必ず西洋薬も継続してください。
体重が落ちてきたのですが、関係ありますか?
非常に重要なサインです。早めにご相談ください。
COPDの方は呼吸運動自体で多くのカロリーを消費するため、気づかないうちに筋肉量や体重が落ちてしまいやすい傾向があります。体重の減少は病気の進行や体力低下に直結するため、胃腸を元気にして栄養を吸収できる体作りが急務となります。主治医の先生にも必ずお伝えください。
どのくらいの期間で変化を実感できますか?
体質や進行度にもよりますが、まずは1〜3ヶ月程度が一つの目安です。
「風邪を引きにくくなった」「少し食欲が出てきた」「呼吸の激しさが和らいだ」といった変化から始まり、半年〜数年単位で進行を抑えながら安定した状態を維持していくことを目指します。
まとめ|「治らない」で立ち止まらず、「守れるもの」を育てる
一度壊れてしまった肺胞を元に戻すことは、現代医学では不可能です。しかし、「今残されている肺の働きを護り、活かすこと」「風邪に負けない免疫力を育てること」「しっかり食べて動ける体力を保つこと」は、今からでも十分に育てていくことができます。
病院の治療を大切な柱として継続しながら、体の内側から少しずつ調子を積み上げていく——それこそが太陽堂の提案する体質ケアです。
決して一人で不安を抱え込まず、まずはお気軽にご相談ください。あなたが自分らしい生活を笑顔で続けていけるよう、私たちが全力で伴走いたします。
「階段や坂道で息が切れる」が気になる方には、こちらの記事もどうぞ。
COPD・肺気腫そのものの原因や、太陽堂の漢方サポートの全体像は、こちらの疾患ページでご紹介しています。
関連する呼吸器のお悩みは、こちらでご紹介しています。
太陽堂の特徴
”当薬局のHPをご覧いただき、ありがとうございます。
私たち太陽堂は「一人でも多くの方の笑顔を見る為に」という思いのもと開局しました。
漢方薬とお客様の出会いがお悩み、体質改善の一助になれれば幸いです。”
特徴その1.
当薬局では、お客様「ひとりひとりに合わせた漢方薬」をその場で調合いたします。
そのため初めてのご相談では、「約1時間~1時間半」ほど相談時間をいただいております。
(遠方のお客様や、お忙しいお客様へは配送の受付もしております。詳しくはお問合せください)
特徴その2.
お作りする漢方薬は、国内外から厳選した生薬の力を、余すことなくお客様に届けるため
「煎じ薬」をお勧めしております。
特徴その3.
当薬局は漢方専門の薬剤師が「得意とする専門分野」にわかれて日々研鑽しています。
お客様の健康を第一に考え、漢方の勉強会なども積極的に開催しております。
記事作成者 薬剤師 林 泰太郎

実績:伝統漢方研究会 2015~2017年・2019年・2020年・2022年・2025年 学術発表
調剤薬局で3年間勤め、西洋の薬だけでは治療が難しい病気の壁に直面。
・「治療の難しい病気をなんとか治したい。」
・「ひとりでも多くの患者さんを笑顔にしたい。」
という想いから漢方の道へ。
漢方薬局で3年間修業をして、2015年 『漢方薬局 太陽堂』を立ち上げ。
開局10年を迎えた今も1ヶ月の平均来局数は900名を超え、お客様にご愛顧いただいている太陽堂の漢方薬剤師です。
記事作成者 薬剤師 椙田 彩純

担当疾患;循環器、身体の痛み
臨床検査技師の両親の影響で、幼い頃から医療に関心を持つ。
大学卒業後、病院薬剤師として勤務。
対症療法が中心の現場で、繰り返す入退院や長期投薬を目の当たりにし、「もっと力になれる方法はないか」と模索する中で漢方と出会う。
現在は漢方の持つ幅広さと可能性に魅了され、一人ひとりの体質に寄り添った根本改善を追求している。















