
「忘年会続きで、朝起きると胃がズーンと重い日が当たり前になってきた…」
「お正月はおせちにお餅にごちそう三昧。気づけば胃もたれと胸やけがずっと続いている…」
「お正月休みが明けても、食欲がない。それなのに、時間になると無理に何か食べてしまう…」
忘年会・クリスマス・年越し・お正月・新年会——。12月から1月にかけての年末年始は、一年の中で最も私たちの胃腸に過酷な「連戦」を強いる季節です。しかも、合間に十分な休みがなく、前の食事を消化しきる前に次のごちそうやアルコールが入ってくる。いわば、休場なしの激しい興行が2〜3週間にわたって続くようなものです。
東洋医学では、胃腸は食べ物から私たちが生きるためのエネルギー(気)を作り出す大切な「体の台所」と考えます。ここが連戦で疲れ切ってしまうと、単なる胃もたれだけでなく、全身のだるさ・肌荒れ・眠りの浅さなど、思わぬ全身の不調へと連鎖していきます。
今回は、年末年始に胃腸が疲れ切るメカニズムと、過酷な連戦を乗り切る「食べ方・休ませ方の工夫」、そして疲れた胃腸の土台を立て直す漢方の考え方を、太陽堂の薬剤師が詳しく解説いたします。
【太陽堂が教える、年末年始の胃腸養生まとめ】
まずは、当薬局が考える「年末年始の胃腸疲れ」へのアプローチを簡潔にまとめました。
- 漢方の見立て(原因): 西洋医学では「暴飲暴食による消化管への過剰な負担と、胃酸分泌の乱れ」とされる年末年始の不調ですが、漢方では、食べ物を処理してエネルギーを作り出す「脾胃(ひい:消化吸収のシステム)」が連戦の連続で完全に疲弊して機能停止に陥り、気(エネルギー)を作れなくなってしまった状態に注目して原因を探ります。
- アプローチ(対策): 宴会の翌日は意識的に「休胃日(きゅういび)」を作って胃腸を休ませる食べ方の工夫(養生)と、お一人おひとりの体質に合わせて消化の力を優しく立て直すオーダーメイドの煎じ薬で、連戦に負けない「丈夫な台所づくり」を内側からサポートします。
- 今後のステップ(根本ケア): 市販の胃薬で無理やりその場をしのいで食べ続けるだけでなく、「もともと胃腸が弱い」「毎年この時期に必ずお腹を壊す」という根本の体質(脾虚など)を見極めるため、じっくりご相談を重ねながら、揺らぎにくい胃腸の土台と向き合っていきます。
【薬剤師 林の視点】なぜ年末年始の胃腸は、こんなに疲弊するのか
こんにちは、薬剤師の林です。
年末年始の胃腸の不調は、決してあなたの「消化力が急に落ちた」からではありません。この時期の食環境が、人間の胃腸にとって想像以上に過酷すぎるからなのです。
西洋医学の視点:「量」「時間」「質」の三重苦が、消化管を徹底的に追い込む
年末年始の食事は、胃腸にとって文字通りの「三重苦」です。
1つ目は「量」。忘年会や新年会では、普段の1.5倍から2倍近くの食事量が連日お腹に入ってきます。
2つ目は「時間」。夜遅くまで続く宴会により、本来であれば胃腸が活動を休めて修復に入るはずの深夜の時間帯に、大量の食べ物が放り込まれ、胃腸は休む間もなく強制労働(消化作業)を強いられます。
3つ目は「質」。唐揚げなどの脂っこい料理、味の濃いおせち料理、アルコール、そして締めの甘いデザート。これらはすべて、胃の中で消化するのに膨大な時間とエネルギーを必要とするものばかりが集中しています。
この三重苦によって消化作業が全く追いつかないまま、翌日にまた次の食事が上から入ってくると、胃の中に食べ物が異常に長くとどまり、強烈な胃もたれ、むかつき、胸やけ、食欲不振が起こります。
さらに冬という季節は、寒さから体温を保つために「体の表面(皮膚)」の血流が優先されるため、もともと「お腹(消化管)に回せる血流量が減りやすい」季節でもあります。「冬の寒さ×ごちそうの連戦」は、胃腸にとってまさに最悪の条件なのです。
漢方の視点:「脾胃」は体の台所。台所が止まると、全身のエネルギー生産が止まる
漢方では、私たちの体の中で消化吸収を担うシステムのことを「脾胃(ひい)」と呼びます。脾胃は、口から入った食べ物を処理して、私たちが生きていくためのエネルギー(気)と栄養(血)を作り出す、「体の台所」という最重要ポジションに位置づけられています。
この台所が連戦の過労で疲れ切り、機能停止してしまうと、いくら豪華で栄養のあるものを食べても、それを自分のエネルギーに変換することができなくなります。その結果、「たくさん食べているはずなのにだるい」「休みの間ずっと寝ていたのに疲れが取れない」という、矛盾した状態に陥ります。
胃もたれや食欲不振に加えて、舌に白い苔がべったりと分厚くつく、口の中がネバネバして不快、体が水を含んだように重い——。これらはすべて、脾胃が「もうこれ以上の処理は限界です」と切実に出しているSOSサインなのです。
漢方では、このように疲れ切った脾胃に対し、働きを優しく助けて消化の力を立て直すアプローチ(健脾:けんぴ)や、胃の中に停滞してしまった食べ物や老廃物をスムーズにさばいて下へ降ろすアプローチ(消食導滞:しょうしょくどうたい)を、その方の体質と疲れ方に合わせて使い分けます。「毎年、お正月明けになると必ず胃腸を崩して寝込む」という方は、連戦が本格的に始まる前からの事前の備えが特におすすめです。
【薬剤師 椙田の視点】連戦を乗り切る「賢い食べ方」と「休ませ方」
薬剤師の椙田です。
年末年始の胃腸養生の最大の鉄則は、「連戦の合間に、意識して計画的に『休み』を差し込むこと」です。ごちそうを楽しむためにこそ、胃腸のメンテナンスが必要になります。
宴会の翌日は「休胃日(きゅういび)」——おかゆ・スープで台所に休暇を
暴飲暴食をしてしまった翌日に大切なのは、食事を完全に「抜く(絶食する)」ことではありません。弱った胃腸の働きを優しく動かし続けるために、「消化に全く手間のかからないメニューに切り替える」ことです。これを「休胃日(きゅういび)」と呼びます。
温かいおかゆ、具をクタクタに煮込んだお味噌汁、柔らかい野菜スープ、温かいうどんなどを、普段の腹七分目くらいの量にとどめて食べてください。これだけで、胃腸の労働時間は大幅に短縮され、半日〜1日でかなり回復の兆しが見えてきます。
また、大根に含まれる消化酵素を活かした「大根おろし」や、おかゆに混ぜる「梅干し」は、消化を助け、胃のむかつきを和らげる昔からの素晴らしい知恵です。
宴会当日は「最初の10分」の食べ方で勝負が決まる
どうしても避けられない宴会の日は、席に着いてからの「最初の10分」の食べ方で、翌日の胃もたれ度合いが大きく変わります。
- 最初に「温かい汁物」と「野菜」から: 冷えて空っぽの胃に、いきなりビールと唐揚げを流し込むのが一番の暴力です。まずは温かいスープやお茶、野菜の小鉢からお腹に入れ、胃腸に「これから食べ物が入ってきますよ」という準備運動をさせましょう。
- 意識して「よく噛む」: 消化の第一工程は、胃ではなく「口の中(唾液)」です。最初の数口だけでも「一口20回」を意識してよく噛むだけで、後に続く胃の仕事量と負担は劇的に減ります。
- お酒の合間に「常温の水(チェイサー)」を挟む: アルコールの刺激から胃の粘膜を守り、アルコールの代謝を助けるためにも、お酒と同じ量の常温のお水をこまめに挟む習慣をつけてください。
「夜遅い食事」は、分割してダメージをかわす
忘年会などで帰りが遅くなることが分かっている日は、「分割食べ」というテクニックが非常に有効です。
夕方の17〜18時頃に、小さなおにぎりなどの軽い主食を先に食べておき、宴会や帰宅後の夜遅い時間には、温かいスープやおかずを少量つまむ程度にしておきます。
寝る直前に満腹まで食べてしまうと、睡眠中も胃が残業を強いられ、翌朝の強烈な胃もたれと、浅く質の悪い眠りの両方を招いてしまいます。就寝の2時間前までには、すべての食事を終えておくのが理想のペースです。
【比較表】年末年始の胃腸を守り抜く!OK・NG行動リスト
| カテゴリ | 〇 おすすめ(台所を守り、回復させる) | × 要注意(台所を徹底的に追い込む) |
| 宴会当日の工夫 | 温かい汁物・野菜から食べ始め、よく噛む (冷えたお腹に準備運動をさせ、口での消化を促して胃の仕事量を減らす) | 空きっ腹に、いきなり揚げ物と冷たいお酒を流し込む (無防備な胃腸に最大負荷がかかり、確実に翌日の胃もたれに持ち越す) |
| 宴会の翌日 | 「休胃日」として、おかゆやスープを腹七分目に (消化の手間と時間を減らし、オーバーワークの胃腸に優しい休暇を与える) | 「リセットしよう」と完全に抜く、または普段どおりの量を食べる (極端な絶食も連食も、疲労困憊の胃腸にとってはかえって負担になる) |
| 夜遅くなる日 | 夕方に軽い主食、夜遅くはスープだけの「分割食べ」 (寝ている間の胃腸の消化残業を減らし、良質な眠りも一緒に守る) | 深夜に満腹になるまで食べて、消化しないままそのまま寝る (胃もたれ・逆流感・浅い眠りという最悪の三点セットを招く) |
| 飲み物の選び方 | お酒の合間に常温の水、食後は白湯やほうじ茶 (アルコールから粘膜を守り、胃腸を冷やさずに消化の働きを助ける) | キンキンに冷えたお酒やジュースを、合間を空けずに続けて飲む (胃腸の血流が冷えで極端に落ち、消化機能が停止して疲れが倍増する) |
年末年始の胃腸の不調に関するよくある質問(FAQ)
市販の胃薬を飲みながら、なんとか宴会を乗り切るのはダメですか?
本当に辛い時に頓服的(一時的)に使うのは問題ありませんが、「飲めば食べられるから」と常用するのは考えものです。
市販の胃薬は、出すぎた胃酸を抑えたり、胃の粘膜を保護したりして、一時的に「症状を和らげてくれる」優れた働きがあります。しかし、それは「胃腸の根本的な疲れそのものが回復している」わけではありません。
胃薬で悲鳴(サイン)を強引に消しながら暴飲暴食の連戦を続けると、お正月休みが明けた後に、さらに重たいツケが回ってきて寝込むことになります。「胃薬に頼る回数が増えてきたな」と感じたら、それは薬を飲むサインではなく、翌日に「休胃日」を差し込むべきタイミングだと捉えてください。
お正月にお餅を食べると、必ず胃がもたれてしまいます。相性が悪いのでしょうか?
お餅は「消化に良さそうに見えて、実は腹持ちが良すぎる(=胃に異常に長くとどまる)食べ物」なのです。
お餅の原料であるもち米は、普段私たちが食べているうるち米よりも粘り気が非常に強く、まとまって胃に入ると、消化液が浸透しにくく消化に膨大な時間がかかります。そのため、胃がもたれやすい方は、お雑煮などに入れる際に「できるだけ小さく切る」「クタクタに柔らかく煮る」、そして「大根おろしをたっぷりと添えて食べる(からみ餅など)」のがおすすめです。「毎年お餅で必ずもたれる」というのは、あなた自身の胃腸の消化力(脾胃の働き)自体がベースとして弱っているサインかもしれません。
お正月休みが明けても、胃の重さと食欲不振が元に戻りません。
1〜2週間経っても食欲が戻らない場合は、胃腸の「一時的な疲れ」が「根本的な体質の弱り(脾虚)」にまで進んでしまっている可能性があります。
(※ただし、みぞおちの強い痛みが続く、急激に体重が減る、真っ黒な便が出る、吐き気が止まらないといった症状がある場合は、胃潰瘍などの病気が隠れている可能性があるため、まずは消化器内科で検査を受けてください。)
病院の検査で「特に異常はない、少し胃が荒れている程度」と言われたのに不調が続くのであれば、それはまさに「脾胃の立て直し」という漢方が最も得意とする分野です。おかゆ生活を数日続けても回復しない頑固な胃腸の疲れは、ぜひ太陽堂へ一度ご相談ください。
まとめ:ごちそうを最後まで楽しむために、「休ませる日」を予定に入れる
「忘年会とお正月のごちそう続きで、胃が重くて限界。でも付き合いで断れない…」
年末年始の美味しいごちそうは、無理に我慢するものではなく、本来は心から楽しむべきものです。そのために必要なのは、宴会のスケジュールをカレンダーに書き込むのと同じように、「胃腸を休ませる日(休胃日)」も、あらかじめ計画的に予定に入れておくことです。
宴会の最初の一口は温かい汁物から始める。食べ過ぎた翌日は、温かいおかゆで体の台所に優しい休暇をあげる。夜遅い日は分割食べでダメージをかわす。
このちょっとした工夫の積み重ねだけで、お正月休みが明けた時の「体の軽さ」が驚くほど違ってきます。
「毎年この時期になると必ず胃腸を崩して後悔する」「もともと胃が弱く、年末年始の連戦が今からこわい」という方は、ぜひ太陽堂までお気軽にご相談ください。あなたの胃腸の強さと体質に合わせて、連戦に負けない「丈夫な台所づくり」の漢方プランをご提案いたします。
関連ページ
太陽堂では、季節のお悩みだけでなく、心と体の様々なお悩みに対する漢方サポートを行っております。気になる症状がございましたら、以下のページもぜひご覧ください。
太陽堂の特徴
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記事作成者 薬剤師 林 泰太郎

実績:伝統漢方研究会 2015~2017年・2019年・2020年・2022年・2025年 学術発表
調剤薬局で3年間勤め、西洋の薬だけでは治療が難しい病気の壁に直面。
・「治療の難しい病気をなんとか治したい。」
・「ひとりでも多くの患者さんを笑顔にしたい。」
という想いから漢方の道へ。
漢方薬局で3年間修業をして、2015年 『漢方薬局 太陽堂』を立ち上げ。
開局10年を迎えた今も1ヶ月の平均来局数は900名を超え、お客様にご愛顧いただいている太陽堂の漢方薬剤師です。
記事作成者 薬剤師 椙田 彩純

担当疾患;循環器、身体の痛み
臨床検査技師の両親の影響で、幼い頃から医療に関心を持つ。
大学卒業後、病院薬剤師として勤務。
対症療法が中心の現場で、繰り返す入退院や長期投薬を目の当たりにし、「もっと力になれる方法はないか」と模索する中で漢方と出会う。
現在は漢方の持つ幅広さと可能性に魅了され、一人ひとりの体質に寄り添った根本改善を追求している。















